「それじゃあ話を聞きなクソガ……生徒達。」
耳を被いたくなるような汚いしがわれ声が聞こえてきたのは昼休がの終わり頃。
本来なら無視したいところなのだがそういう訳にもいくまい。多分今から話すことは割と重要なことだろうから。
「体育祭もいよいよ終盤さ……お前さん達の頑張りは見せてもらった。けどね、あくまでそれは肉体面の話だけ、学校である以上そろそろ頭も使ってもらわないとね。」
いつものように嫌みったらしい口調で学園長は淡々と語る。
実際問題学者肌のあの人にしてみれば体育祭など関心などないに等しいに違いない。
「と言うわけで、今回のメインイベントでありこれから行う召喚獣バトルの説明を始めるよ。高橋先生。」
学園長の声に合わせて横に控えていた高橋先生がなにやらパソコンを高速でいじりはじめる。
すると学園長のしゃべっている特設ステージに映像が映し出された。
あれは……校庭の見取り図?けどそれにしてはごちゃごちゃし過ぎてるような……
「えー見れば分かると思うけどこれはこの校庭を上から見た図さね。ところで明らかに何もない場所に×やら○やらついてるだろう?察しのいい人は気付いてるかも知れないけどしれないがその通りさ。そう、これは障害物を意味している。今回の種目は召喚獣による障害物競争さ。」
おお!っと校庭のいたる所から声が上がる。
思ったよりもまともな種目でみんな安堵しているのだろう。
あれ、けどそれじゃあなんでクラスから代表2人ずつ?
「ルールは単純明解、1レース5クラスずつで早く抜けた2クラスが準決勝に進出、そしてそこを勝ち抜いたらまた決勝へ……という感じさ。けど、それだけじゃあ芸がない。という訳でここからは普通の障害物競争とは違う特別ルールさ。」
そこまでいかにもつまらなそうに話していた学園長がニヤッと笑みを浮かべる。
その気持ち悪さ、そしてその言葉から感じ取れる嫌な予感に校庭全体が固まるのを感じた。
この感じでババアが作る特別ルールがまともなものなわけがない……!
「一つは単純、プレーヤー同士の妨害行為あり。体育祭と言っても授業の一環だからね。もちろん点が0になれば補習だしその場で失格。これはまあ当たり前だから驚きもなにもないだろうね。」
まあ……それはそうだろう。むしろそうじゃなきゃババアの頭がついにボケたということを認めざるを得まい。
「そして本題はここから……わざわざクラス代表は2人ずつにしてあるだろう?それを活かしてもらう。今回は1人が単純にゴールを目指すランナー、そしてもう1人はそれを守るディフェンダーになってもらう。」
『はあっ!?』
『どういう意味なの?』
ザワザワと周りが騒ぎ出す。その気持ちは僕も一緒だ。正直言って意味がわからない。
「どう?衛宮君はわかる?」
「はっきり言ってサッパリだ。単なる障害物競争じゃないってのは流石にわかるけどな。遠坂、難しい顔してるけどお前、なんかあるだろ。今のはそういうときの顔だ。」
隣の衛宮君もお手上げという風に白旗を上げると更に隣の遠坂さんにふる。
彼女なら確かに何らかのアイデアがあってもおかしくはなさそうだけど。いくらなんでもこの情報のなさじゃむずかしいんじゃ……
「何かある顔ってどういう顔よ……まあだいたいの目星はね。私の予想が当たりなら学園長、相当性格悪いわ。1人にかかる負担、それも精神的なものがでかすぎるもの。」
「それ絶対に正解だから続きをお願いします。」
流石は遠坂さん、いとも簡単に答えにたどり着いていたみたいだ。
「なにか不穏な事を考えてる輩がいそうだけどとりあえず放っておいて続けるかね。ランナーは特に何もないから普通に障害物競争をしてくれればいいさ。問題はディフェンダーさ。まず前提としてディフェンダーは障害物を無視してもいい、その代わりゴールもできない。」
「遠坂、合ってたなら解説頼む。」
「まだわかってないの……まあいいわ。要するにこれはシンプルにチーム戦なのよ。妨害ありって言ってもそんな障害物を抜けながら攻めたり、守ったり複数の動作こなせる人はほとんどいないわ。ミスしたら一気に遅れをとることになるしそのミスする可能性も障害物に邪魔されたり利用されたりで跳ね上がるもの。そうなれば結局普通の障害物競争になるわ。だって小細工なしで抜けたほうが速いもの。」
「けどそれじゃつまらないって学園長先生は踏んだんでしょうね。そのためのディフェンダー。ディフェンダーとは言ってるけど実質兼任アタッカーね。こっちの働きが重要になるの。いい?障害物は無視していい、けどゴールできない。ならやることは一つじゃない?」
「……!他チームの妨害ってことか!」
「そういうことよ。」
「それは分かったけど一体なにが性格悪いになるんだ?ただ戦略的になっただけだと思うんだが」
「それはまあ……もう少し聞いてれば分かるわ。」
「そしてこの2人はチーム、運命共同体さ。要するに片方が死ねばもう片方も死ぬ。けどそれじゃ不公平だろう?大抵の場合どっちかは自分に非がなくても補習行きになるんだからね。だから1つ救済措置を上げようと思ってね。」
学園長の唇がつり上がる。
うわあ……あれを受験案内のパンフレットに載せたりでもしたら入学志願者一気に減りそうだ。
「サレンダーシステムを採用するよ。ヤバいと思ったらサレンダーを宣告すればそこでその選手はドロップ。補習はなしでレースから抜けられる。その代わり残ったもう一人が元はランナーだろうがディフェンダーだろうが関係なくランナーとしてレースを続けることになる。もちろん。連続サレンダーは許されない。まあ自分のことばかり考えるともう一人がつらい目にあうってことさ。」
「……」
「どう?衛宮君、理解できた?」
「ああ、最高に理解できた。」
「本当にクソみたいな性格してるねあのババアは。」
人間の皮を被った悪魔ならさっきの表情も頷けるというものだ。
「このルールをどれだけ活かせるかが色んな意味で鍵になるだろうねえ……ああ、そうだね。けどアタシだって悪魔じゃない。これだけのリスクを背負った競技なんだ、報酬はちゃんと弾むよ。そうさねえ……たかだが2人のことだ。アタシに出来る範囲、のことになるけど優勝チーム2人はなんでも1つ願いを叶えてやろうじゃないか。」
その言葉にあたり一面から歓声が上がる。
学園長の出来る範囲、といってもあのババア、実はかなりの資産家兼権力者なのだ。大抵の願い事なら叶えかねないというのはみんなよくわかっている。
「周りを蹴落とした末に一つの願いを叶える……か。」
「なーに?また色々と考えてるの?」
「ああ、これじゃまるで」
「聖杯戦争みたいだなって?」
「むっ…まあそうだけど。」
「安心しなさい。少なくともこれはただのお遊びよ。なんの関係もないから。」
「…?なにこそこそしてるの2人とも?」
「「なんでもない(わ)」」
綺麗に声を揃えてくる。
実はこの2人もうつき合ってるんじゃないか噂があるんだよなあ……FFF団もつかみ切れてないみたいだけど。
それにしても願いを何でも1つとは学園長も随分と思い切ったものだ。
今までの、僕だったら恨みつらみも兼ねてギリギリまでむちゃなお願いをしただろうし同じような事を考えてる人もいないわけじゃないと思うのに。
「願い事一つか……」
「なんだ?あんまりむちゃくちゃなことだったら俺お前に協力するのやめるかもしれないぞ?」
願い事、という言葉に反応したのか衛宮君が真剣な表情で問いかけてくる。
優しい衛宮君のことだ。いくら学園長でも人を困らせるような願い事なら受け入れられない、ということだろう。
「いや、そんなんじゃないよ。そうだね……衛宮君にだけは話しておこうか……」
彼にだけは話しておくべきだろう。
お互いの信頼関係が大事になりそうだし。なによりもやましいことなんて何にもないのだから。
「最後になるけど障害物もただの障害物だと思わないことだね。それじゃあ解散。10分後に競技を始めるからそれまでに校庭の中心を空けるように。」
「……本当か明久?」
「うん、まあいろいろとやりたいことはあるけど今の僕にはこれが一番のことだから。」
「お前がそう言うならそうなんだろうけど……分かった。それならなんの疑いもなく一緒に闘える。」
「ありがとう衛宮君、他の人ならまず信じてくれないだろうから。」
僕の願い事を聞いた衛宮君は驚いた顔をしたが結局信じてくれたみたいだった。
いや、まあそうなるのが普通だと思う。
信じてくれただけ衛宮君の人の良さが伺える。
「それじゃあ行こうか。因みに衛宮君の願い事ってなに?」
「うーん……そうだなあ……新しい調理器具でも貰うかな。最近一緒に買い物にいくとセイバーがよくみてるんだよ。劇的においしく!とかそういうのに弱いみたいでせっかくだから喜ばせてやろうかなって。」
「本当に衛宮君は衛宮君だね。」
まさかとは思ったけど衛宮君の願いは本当にらしかった。
それにしてもとにかく今回ばかりは学園長に感謝だ。正に渡りに船というやつだ。
よし……せっかくだからいっちょ気合い入れていきますか!!
ーーーーー
「……(そわそわ)」
「どうしたの瑞希?」
「お願い事が叶うと言うので……普通わくわくしませんか?」
「あー……わくわくしてたのね。さっきから顔が真っ赤になったりアワアワし始めたり忙しそうだったからわからなかったわ。」
「そ、そんなことないです!」
いったそばからアワアワし始める瑞希は本当に可愛いと思う。しかもわかりやすい。
本当にこの好意に気付いていないとか吉井君はバカ、もしくは唐変木としかいいようがない。
……これはどっかの誰かさんにも言えることでもあるけど。
とにかく瑞希にはつい肩入れしてしまいたくなってしまうような魅力があるのだ。三枝さんあたりも近いものがある。
「それで、そのお願い事ってなんなの?……まあ大体分かるけど。」
「あう……やっぱりわかっちゃいますか?」
「だって瑞希、分かりやすいもの。」
「うう……じ、じゃあ遠坂さんはどうなんですか!え、衛宮君とイチャイチャしたいとか色々あるんじゃないですか!?」
窮鼠猫をかむとは正にこのこと。
再び顔を真っ赤にさせながら予想外のカウンターが放たれる。
けど……あんまり効果はないのよねー実際。
「ないわ。だってそんなことしなくてもアイツは私にメロメロだし。それに何より私、願いは自分で叶える主義なの。」
私の主義と今回の報酬はかけ離れてすぎている。
「はうっ……!自信たっぷりで羨ましいです……」
「まあね。それに瑞希?あなた質問で自分の答え言っちゃってるわよ?秘密ごと作りたいならそういうところからうまくならないと。」
「はい……ところであの、遠坂さんは私のお願い事応援してくれますか?」
「ええ、応援してるわよ。私も覚えがないわけじゃないし。まっ、何事も時と場合によるけどほぼ100%、万が一がなければ。」
「……!それじゃあ頑張りましょうね!」
私の答えに瑞希は満面の笑みを浮かべて駆けていく。
もちろん私の答えに嘘はないし応援もしている、だけど……
「その万が一を簡単に踏み抜いてくるのが士郎であり、吉井君なのよね……」
今のうちに言い訳を考えておいたほうがいいかもしれない、と瑞希の後ろを歩きながら私はため息をついた。
どうもです!
凛ちゃん成分が足りないんだよコノヤロー!
と言うことで最後がちょっと長めになりました(笑)
さてさて最初は普通に召喚獣バトルするつもりでしたが障害物競争へ脳内プロットがいつのまにか変更になってることに気づきびっくりしている作者です。
まあ書きやすければいっか!と言うことで次回から久し振りに両主人公が活躍します!多分!(笑)
それではまた!
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投票とかもう半年くらいされてないんでよろしかったらお願いします(笑)