「…ゆ、雄二…」
必死の思いでどこにいるかも分からない友を呼ぶ。四肢はまともに動かず喉はやられ声は自分でもわかるくらいに枯れている。
「…なんだ?」
数秒置いてから返事が返ってくる。良かった。どうやら息はあるみたいだ。ただこちらと変わらず限界近いみたいだけど。
「大丈夫かい?」
「お陰さまでな。ただ今は喋りたくない。体力を何とかして家に帰れる程度には回復させねえと…」
「そうだね…」
僕、吉井明久と悪友坂本雄二、今日は数え切れないほどの臨死体験にまた新たな1ページが刻まれた…
「どう考えても僕達の高校生活はおかしいと思うんだ。…わっやば!」
「なんだ、そんなことか。…へっ!ゴールだ。これで逆転。」
「まだまだ!直ぐにひっくり返してやるさ!」
耐えがたい悪夢(口に出すと恐らくもう一度再現するはめになるから具体的な内容は言わない。)から1日。今日は休日ということで午前中から雄二を家に呼んでゲームをしている。
今日はいつもと嗜好を変えて最新のサッカーゲームを赤字覚悟で買ってきたのだがなかなか面白い。
問題は雄二が上手すぎるということだけど。
「俺に勝とうなんざ10年早いんだよ。… うし。俺の勝ち。ああところでな、俺達の高校生活がおかしいなんて今更だろ?いきなりどうした?」
「いや、そんなに平然と言われても…」
僕としてはおかしいと思い始めたのはつい最近なんだけどどうやら雄二は違うみたいだ。
「むしろお前がこの事実に今気付いたっていうならその鈍感さは筋金入りだな。尊敬に値する。」
「そこまで言う!?」
「当たり前だ。よく考えてみろ、16にして人生の自由を奪われかかっている俺と何度も毒殺されかかるわ、臨死体験を繰り返すお前。こんな高校生探したところでそう見つかりゃしないぞ。」
うう…言われて見ればそうかも知れない…雄二は霧島さんと婚約というむしろ羨ましい境遇だからおいておくとしても僕のような高校生がいるか?と言われればまずいないと断言できる。
「で、結局のところなにが言いたいんだお前は?ゲームを中断してまで言葉を発するなんてお前らしくもない。」
いったい雄二の中で僕はどんなイメージなんだろうか
「バカ」
「心を読んだの!?というかなにさ!そのシンプルイズザベストと言わんばかりの答えは!」
「明久、お前は考えてることが駄々漏れなんだよ…っで。もう一回聞くぞ。一体どうした。」
もう無駄話はいいから早く本題に入れと言わんばかりに雄二は続きを促してくる。
そうだ、話したいことがあったのに頭から吹っ飛びかけていた。
「あのさ雄二」
「だからなんだよ」
「教会に行こう。」
「…は?」
ーーーーーー
「ふーん…言峰教会ねえ…」
「そう。なんだか評判良いみたいだよ。綺麗事じゃなくてズバズバと言ってきて大半が精神崩壊しかけるけど、いざ相談が終わってみるとなんだかスッキリするって。」
「おいっ!本当に大丈夫なのかそれ!?」
昨日死にかけで家に帰る時に聞いた噂話だ。
最近できた言峰教会っていう教会が僕達のイメージするような教会とは全く違うようなやり方で相談に乗ってくれる…と。
その効果は絶大で鬱に悩まされていた人はハイになり、今まで悩み事を持ちよった人全員が教会から出てくる頃にはその悩みなんて「悩みなんてちっぽけなもんだったぜヒャッハー!」って感じになって帰ってきたらしい。
これは気になるし是非とも僕らの悩みも消し飛ばしてほしい。
と言うことで僕と雄二は少し足を伸ばしてその教会がある山へと歩いている。
「まあたまにはこういう自然が多い場所を歩くのもありっちゃありだな…」
「そうだね。休みは大抵僕の家か補修で学校だからこんなのめったにないし…」
休日の半分が補修で潰れる高校生活もどうかと思う。
「かもな…おっもしかしてあそこか?随分と立派な建物だな…」
「場所的にここなんだろうけど…すごいねこれは。」
坂道を登り終えると僕らの視界に今までの景色とは不釣り合いな広場と建物が見える。
なんというか…真っ白だ。
ここまではイメージ通りの教会だ。洋風のなんとも厳かな雰囲気を纏う教会。
その綺麗さに僕と雄二は思わず息をのんだ。
「こんなバカでかい広場いるか普通?…んだよ子供の遊び場になってるじゃねえか。 」
雄二が見る方向には二人で遊ぶ小学生くらいの子供の姿があった。
へえ、ここは公園的な役割も持っているのか。これだけ広々としたスペースがあればそれも納得だけど。
「あっ!バカなお兄ちゃんです!」
僕らの視線に気付いたのかそのうちの一人がこっちを向く。
そうして数秒止まったあとにその子供がこちらへと駆けてくる。
ん…バカなお兄ちゃんて…あれは…!
「バカなお兄ちゃん!なんで挨拶してくれないですか!」
「ゴフッ!は、葉月ちゃん!なんでこんなところにいるの!?」
挨拶をしなかったからかいつもの1,5倍増し位の勢いで見慣れたツインテールの女の子が僕の鳩尾目掛けて飛び込んでくる。
グフウ…ダメだ!呼吸が出来ない!!
「ん?葉月、最近は皆とよくここで遊んでるですよ?バカなお兄ちゃん?」
僕の問いにグリグリと鳩尾を抉っていた少女の頭が上がりキョトンとした表情でそう返してくる。
島田葉月ちゃん、美波の妹で確か今10才だったかな?
小学生の活発な女の子だ。
「…お友達ですか?葉月ちゃん。」
「あっ!ギルくん!そうです!バカなお兄ちゃんです!」
「あはは…その紹介の仕方はやめてほしいかな…」
僕がまたもや生死の境をさ迷っているうちに葉月ちゃんと一緒に遊んでいた子供もこちらへと歩いてきていた。
外国人…かな?
染めたとは思えない綺麗な金髪に赤みがかった目。 顔立ちはとても整っていて将来はFFF団の嫉妬の標的になりそうなルックスの持ち主だ。ギルくんって呼ばれていたし日本人じゃないだろう。
とりあえず誤解される前にきちんと自己紹介を…
「バカなお兄ちゃん…ああ、吉井明久さんですか!どうもこんにちは。ご紹介に預かりましたギルガメシュです。ギルと呼んでください。」
「なんで通じてるの!?」
手をぽんっと叩いたあとギル君が礼儀正しく挨拶をしてくる。
うんうん、良くできた子みたいって問題はそこじゃない。
「明久、良かったじゃないか。お前のバカさは遂に學校を飛び越えて地域にも認知された。県制覇、ゆくゆくは全国も夢じゃないなこりゃ」
「全然嬉しくないからね!?」
もしもそんなことになったら僕は自ら命を絶つことになると思う。
「ふふふ、本当に面白いんですね吉井さんは。セイバーさんが一目置くのも納得ですね。」
「ん?なんだセイバーを知ってるのか、坊主。」
「はい、お兄さん。僕も彼女達と一緒の所から来ましたから。」
「へえ、そうなのか。因みに俺の名前は坂本雄二だ。呼び方はなんでも良い。」
「それじゃあ坂本さんで。これからよろしくお願いします。」
「おう。」
なんだろう。この敗北感は。
雄二とギル君のやりとりになにかモヤモヤするものを感じる。
「それでバカなお兄ちゃんはなんでこんなとこにいるですか?」
「ちょっとここの教会に用があってね。」
「へえ~」
「ちょっと待ってください。用ってもしかして相談ですか?」
葉月ちゃんに説明しているとギル君が僕の腕を掴んでそう聞いてきた。その表情は真剣そのもの。
「そのつもりだけどどうかしたの?」
「いや、やめといた方が良いというかなんというか…絶対あの性悪の餌食ですし…なんでもないです。」
「???」
なんだろう。ギル君の様子がおかしい。
「い、いえ!本当になんでもないですから!何か聞きたいことがあったらあっちの花壇の手入れをしてるお兄さんに聞けば良いと思いますよ!それじゃあ僕はこれで!行こうか、葉月ちゃん。」
「そうですね。それじゃあバイバイ!バカなお兄ちゃん!」
「うん、またね。葉月ちゃん。」
去っていく二人を見送る。一体僕はこの短時間で何回バカと言われたんだろうか。
「それじゃあどうする?雄二」
「そうだなあ…花壇にいるお兄さんとやらに会ってみるとするか。あのギルってガキは適当言うタイプじゃなさそうだしまあ良いだろ。」
「そうだね。」
花壇花壇…ああ、教会の建物の横になにかスペースがある。
恐らくあそこに花壇があるのだろう。
「雄二、あっち。」
「そうみたいだな。よし、行ってみるか。」
広場から教会へと一直線に続く道を外れ草地へと入る。
そんなに深くはないけれど少し伸びた草が足をくすぐる。
「ん?なんだ、お前ら?」
「あれ…貴方は…」
「知ってるのか?」
僕の読みは当たりそこは花壇だった。
そこに咲く花は色とりどり綺麗に咲き誇りこの教会の建物に実に合うものになっていた。
これだけ綺麗な花を育てられる人はきっと良い人なんだろうなあ…なんてことを思っていると建物の中から人が現れた。
おかしいな…この人どっかで見たような…
「おお!よく見たら衛宮のボウズの家にいた!いやあ!こないだは世話になったなあ!」
僕が思い出す前に相手のほうが気づいたみたいだ。
そうだ、思い出した! 前に衛宮君の家で食事会(死者数名)したときに運悪く魚を届けにきて姫路さんの料理を無警戒で食べるなんて悪夢を見た人!
ええっと名前はたしか…
「そっちのガタイの良い兄ちゃんは初めてだな。俺はランサーってんだ。このちびには命を救われた間柄でな。」
「命…?あー、了解した。そいつの蘇生技術は半端じゃないからな。」
頭を捕まれてわしゃわしゃとされる。
うーん…悪い人じゃないんだろうけどこれはあまり気持ちの良いものじゃないな。
ランサーさんの説明にどうやら雄二も納得したようだ。
命云々なんて会話、シチュエーションはかなり限定されてくる。
「それで今日は一体どうしたんだ?まさか男二人で花を見に来た訳でもあるまいし。」
僕の頭を離してんー?という風に問いかけてくる。
そりゃそうだ。こんなむさいやつと二人で花を見に来るなんてあるわけがない。
「当たり前だ。なにが寂しくてこんなやつと一緒に花を見に来なきゃいけないんだ。死んでもごめんだ。」
どうやら僕達二人は気が合うようだ。
「んだとこら雄二!雄二みたいなのがいると花の綺麗さも霞んじゃうよ!」
「ああ!?やんのかボケ!今日だっていきなり教会に行こうとか誘ってきたのはお前のほうだろ?俺がいなきゃバカすぎて一人で外にすら出れないバカかが!」
「もっぺん言ってみろ!」
「ハッハッハ、元気で良いねえ…命が惜しかったら二人とも早く帰りな。(ヒュオッ)」
「おわあ!?」
「うおっ!」
僕らの様子を楽しそうに見ていたランサーさんの声に殺意がこもる。
それに気づいた瞬間僕らの間を赤い槍が通過していた。
「えっ!えっ?なに!?」
「おい…こいつやべえぞ明久…!」
二人ならんでランサーさんに向かい合う。
彼の手に握られる槍はまさしく本物。あたればしゃれにならない…!」
「あんた一体なんのつもりだ!殺す気か!?」
「けッ、中途半端に度胸があるときたか。こういう奴等が一番厄介なんだよ。」
ランサーさんから殺気は消えたがめんどくさいという雰囲気を全開に出している。
一体いつからこんなギリギリの戦場になったんだろうか。
「ボウズども、悪いことは言わないから早く帰んな。今なら気付かれてねえだろうしまだ間に合う…どんな噂を聞いてきたのか知らんがそれはすべて「フィッシュ」ヌオオオ!!」
「「はい?」」
えっ?なにがどうしたの!?ランサーさんがいきなり真っ赤な布にぐるぐる巻きにされて建物の中に引きずり込まれたぞ!?
「雄二!」
「ああ!最後の感じあいつは俺達に何か警告しようとしていた。放っておく訳にはいかねえ!」
教会の正面に廻る。あれ…ここってこんなに禍々しい雰囲気だったっけ?
「ひびってんな!いくぞ!」
雄二が思いっきり力を開けて扉を開く。
ランサーさんは…
「あら?お客さんですか?」
「…!」
ランサーさんはいない。
代わりに目の前にいたのは。
「口も開けないのですか?まあ良いでしょう…私の名前はカレン・オルテンシア。ここの司祭を勤めております。」
どうもです!
今回はサイレスさんのリクエストからカレン編の短篇です!
ようやくギルも出せてちょっと安心笑
それでは感想、投票、お気に入り登録じゃんじゃん待ってます!特に投票お待ちしてまーす! 少しでもこの小説面白いなと思ったら是非! それではまた!