「へえ、ここが遠坂さんの家なの?純和風な感じだけど。」
「いいえ、ここは衛宮君のお家ですよ。吉井くん。」
「へ?けど落ち着ける場所って…」
「ええ、実質この家に居候しているようなものですから。」
「居候!?」
今僕達は『色々と話したいこともあると思いますし放課後皆で落ち着ける場所で話しませんか?』という遠坂さんの提案で町外れの住宅街を訪れていた。
そして案内された場所はなんというか柔らかい雰囲気の和風の家、武家屋敷っていうのかな?だったがなんとそこは遠坂さんの家ではなく同じ転校生の衛宮君の家ということだ。
というか居候って…!
「え!それは遠坂さんって衛宮君と同棲しているってことですか!?」
僕よりも早く姫路さんが思いっきり食い付いている。
同棲…僕ら高校生にはまだ早すぎると思っていた超一大イベントを既に遠坂さんはやっているなんて…!
大人っぽいとは思っていたけどここまで大人だったとは!いや待てよ?同棲ということは同棲相手が必要になる。そしてここは衛宮君の家、ということは
「殺したいほど妬ましい…!」
「そうだねムッツリーニ。Fクラスの調和を乱すハーレム野郎は今すぐにでも粛清しないと。」
「あの…大丈夫ですか?吉井君?土屋君?どこか体調でも…」
「あーほっといてくれ遠坂、定期的に起こるバカの発作だ。すぐに戻る。」
「バカの発作…二人ともとても面白いのですね。あと姫路さん。同棲というのは少し語弊があります。確かにこの家の敷地内に住んでいる、という意味ではその通りなのですが、衛宮君が本家で生活しているのに対して私の部屋はあちらの離れにありますから。ほとんど別のようなものですよ。」
「そうなんですか…色々聞きたかったんですけど残念です…。
遠坂さんの説明に何故か姫路さんが少し落ち込みぎみである。
そうか…同棲じゃないのか。良かったね衛宮君。君の寿命は少し伸びたよ。
「まあとりあえず中に上がりましょう。ここにいても汗をかいてしまいますし、衛宮君も待っていると思いますし。」
「ん、それもそうだなそれじゃあお邪魔します。」
「お邪魔するのじゃ。」
「お邪魔します。」
門をくぐり玄関から廊下へと進んでいく。
廊下長っ! こんな家に住んでいるって衛宮君も実は相当お金持ちなんじゃないだろうか。日々の食費を切り詰めながら生活する僕とはえらい違いだ・・
「うお…まるで旅館見たいだな。ここなら何人でも入れそうだ。」
「ここにはたくさんの同居人がいますから。いつかご紹介できると思います。因みに私達の転入と同時に赴任した英語の藤村先生、あの方もよくこちらにいらっしゃるんですよ。」
「藤村先生?ああ、あの虎柄の。」
「なんというか天真爛漫という文字を人にしたようなお方じゃったのお。」
「僕の回答の解釈を真剣に考えてくれたのはあの人が初めてだよ。」
「全く、アキが屁理屈こねるからそれだけで授業の半分過ぎちゃったじゃないの。」
「いや。あれはただ理屈がわかってなかっただけで…」
とりあえず良い人なのはわかる。
「藤村先生の人格のよさは私も保証できるのですが…まあその話はまた今度にでもしましょう。」
そう言うと遠坂さんは襖の前に立ち止まる。
「衛宮君、いま帰りました。開けてもよろしいでしょうか?」
恐らくその向こうにいるのであろう衛宮君に部屋を開けても良いか確認を取る遠坂さん。
こんなところでも礼儀正しいなあ…僕の家に雄二が遊びに来たり、ムッツリーニの家に行くときにはいちいち部屋に入って良いかなど聞くことなんてまずないのに…
(遠坂か。大丈夫だぞ!)
「わかりました。皆さんもどうぞ。」
奥から衛宮君の声がする。
何やらガチャガチャと音も聞こえるが一体何だろう?
そんなことを考えながら遠坂さんに続いて和室に上がると香ばしい香りが鼻腔を支配する。
これは…中華料理!?
「お帰り遠坂。それに皆もどうぞ。」
「わあ…」
「これはまた」
「…ずいぶんと豪勢」
机に並べられていたのは豪華と呼ぶに相応しい色とりどりの中華料理だった。
そして台所からはピンク色のエプロンをつけた衛宮君が両手に皿を持ちながら僕らを出迎える。
なんというか意外と家庭的なんだな衛宮君って。
見た目は結構しっかりとした身体付き、細マッチョと呼ばれる部類だし体育の時間でも目立っていたからてっきりアウトドア派だと思ってた。
「凄いなこれは。衛宮、これ全部お前が作ったのか?」
「ああ、料理は好きだからな。それに家の住人は基本的に料理できないから自炊できないと色々と不便なんだ。皆遠慮せずに食べてくれ。」
「それじゃあ遠慮なく。」
「頂きます。」
「いただくのじゃ。」
今日は補習があり7限まで授業があったためか皆お腹がすいており衛宮君の言葉に甘えて用意されていた食器に料理を運び口に運ぶ。
「…これは!」
「すっごく美味しいです!」
「プロ並みだなこりゃ…」
お、おいしい…! 僕もそれなりに料理に自信あったけどこれは…!
予想以上の美味しさに全員が驚く。パリパリの春巻きに、コクの利いた麻婆豆腐、それにしっとりかつ弾力を損なわないゴマ団子…これを一人で作るとは。衛宮君、侮れないな…
「そう言ってくれて嬉しいよ。やっぱり大勢に食べて貰える機会が気合いが入るからな。」
僕達の反応に満面の笑みを浮かべる衛宮君。
やっぱり主夫っぽい。
「うふふ、喜んでもらえてなによりです。ところで衛宮君?そろそろ話を始めたいのですが」
「え?あーそうだったな。うん、それじゃあこの話はまた今度ということで。」
「そうですか…」
「大丈夫、良かったら今度直接教えてあげるよ。ジャンルは何でも良いんだろ?」
「はっはい!よろしくお願いします!」
そこからおよそ数分、衛宮君の料理に舌鼓をうっていると遠坂さんがこうきりだした。
ちなみに姫路さんは衛宮君に料理について色々と聞いていたようだ。
満足そうな顔をしてるけど直接教えるなんて安請け合いして大丈夫だろうか?あの生物兵器を目にしたら料理好きそうな衛宮君なら失神してしまいかねないと思うけど…
「それもそうだな。本題はあくまでも打倒Aクラスのことだ。」
雄二の一言で場の空気が一変する。
そうだ、僕らが今日ここに来たのは料理を食べに来たわけではなくて遠坂さんが学校で言っていた打倒Aクラスについて話し合うためだった。
危ない危ない、完全に頭から抜け落ちてた。
「その通りです。坂本君、貴方はとても冷静な方のようでなによりです。Fクラスは学年の中でも学力的には一人の例外を除いて底辺の人が集まっている、という話でしたがその限りではなさそうで安心しました。」
「それはどうも。で、具体的なことなんだが…」
そこまで言うと雄二の口が止まり襖の方に目をやる。何だろう?何かバタバタと音が聞こえるけど。
「(バタン!)士郎!ご飯が出来ているのに起こしてくれないとは何事ですか!」
そこから数秒もしないうちに大きな音ともに襖が開かれる。
そこには白いワイシャツに青いスカートといった清楚な私服に身を包んだアルトリアさんの姿があった。
「?アルトリアさん?なんでここに?」
「これはどうも明久、それにFクラスの方々も。なぜと言われましても私はここに住んでいるからなのですが…」
はてな?というに風を首をかしげるアルトリアさん。
うん、とっても可愛い。
だがここで一つ疑問が芽生える。
「え?遠坂さんだけじゃなくてアルトリアさんまで衛宮君と同棲してるの?」
「…!(ダバダバダバ)」
「同棲…?私は彼の父親にお世話になったことがありそのご縁でこちらに居候させてもらっているのですか…」
「ですから同棲ではないと」
「え!?いや、なんでさ!そういうわけじゃ…それよりも大丈夫か土屋!?そんでもってセイバー!お前の分はちゃんととってあるって言っただろ!?」
そうだ、そう言うことだ。
こんな美人二人と同棲ともなればムッツリーニの妄想回路が暴走するのも無理はない。
やはりこの男FFF団の誇りを持ってここで消しておくべきか…!
「お前ら…頼むから話を逸らすな…ところで衛宮、セイバーってのは一体なんだ?たしかこいつの名前はアルトリアじゃなかったか?」
片手で頭を抱える雄二の言葉で我に帰る。そうだ、僕達には目的があるんだ。
今は粛清よりもやるべきことがある。
のだがその後の言葉も気にかかる。
確かにその通りだ、セイバーってなんなんだろう?
当の衛宮君とアルトリアさん?は二人揃って『やってもうた・・・』って顔してるし余計に気になる。
「それはだな…ガフッ!」
「はーい、衛宮君。ちょっとこちらに来てくださいますか?」
なにかを喋ろうとした衛宮君だが襟首をひっつかまれて遠坂さんに引き摺られていく。
なんだろう。いま遠坂さんからお仕置きの時の姫路さんや美波のような狂気を感じたような気がする。
(なに考えてるのよ士郎もセイバーも!こんがらがるとめんどくさいって言ったじゃない!)
(いや、それはそうだけど俺のせいじゃ…)
(申し訳ありません。つい美味しそうな匂いにつられてしまいました。)
(はあ…どんどん俗世間に染まっていってるわね騎士王様は…分かったわ。そしたら…でいくから。分かった?)
(ああ)
(了解です。)
なにやら隅っこで会議をしたあと3人が帰ってくる。
その顔に先程までのなにかはない。そうだ、気のせいだ。
「えーと、彼女なのですが実はイギリスではフェンシングでかなりの実績を持っていまして。その地方ではセイバー(騎士)、の称号を持ち、尊敬の意を込めてそう呼ばれていたのです。」
「フェンシングってなに?」
「明久君、フェンシングって言うのは中世ヨーロッパの剣術が元になっていて今ではオリンピックの種目になるほど歴史がある競技なんですよ。」
「へえ~」
姫路さんが説明してくれる。そうかそんな競技があったとは知らなかった。
「ええ、それで士郎もそう呼んでいたのですが…どうやら私には本名よりもそちらで呼ばれるほうが好ましいようです。」
「自分の名前よりもか、よほど好きなんだな。」
「ええ、私は自分の剣になによりも誇りを持っている。これは誰にも譲れないものです。」
胸に手を当てアルトリアさんはそう告げる。
その姿はとても凛々しく彼女の言った誇り、を感じさせた。
(素晴らしいのじゃ…わしも演劇にあれくらい清澄な誇りを持つほどのめり込めれば…)
そう感じたのは僕だけではないらしく秀吉なんかは目を輝かせてアルトリアさんを見ていた。
「そうか、ならこれからはセイバーでいこう。良いな、セイバー?」
「はい、異存はありません。坂本。」
「それで、今度こそ本題なんだけれどセイバーは御覧の通り根っからの英国人、英語は得意中の得意。Aクラスなんて銘打っても結局のところ日本の、しかもたかが学生。セイバー以上なんてそうはいないわ。」
「ふむ、それはそうだな。確かにイギリス英語と日本の高等教育で用いられるアメリカ英語は差異がありそこが面倒だが基本的なリーディング、ヒアリングは楽勝だろ。」
「そういう事よ、さすがにちょっと古典、漢文は怪しいけれど現代文もそれなりに解けますし、数学辺りも問題ないのが強みね。」
「それなりにバランスはとれている、ってことか。」
「はい。ただ科学や生物と言った科目はなんとも…」
「あそこら辺は知識以前に日本語理解が大分難しいからな…まあしょうがないだろ。」
やっぱり住んでいた、っていう経験は大きいんだろうなあ・・・そう言えば英語の授業中のセイバーさんはどこかつまらなそうな顔をしていた気がするけどあれは簡単すぎたからなのだろう。
それでいて他の科目もできるということはかなりFクラスにとって強みだ。基本的には一点特化すらできない集団だから。
「けど、なんでそれならFなんだ?」
「英語だけがずば抜けてAクラスの最上位、他の科目はC~国語のFクラスレベルまでばらついていますから。まずこの1年は無理なく日本に対応出来るようにFクラスに、と学園長からは伝えられています。」
「まあ納得できる理由だな。衛宮のほうは?」
「俺はだいたい満遍なくなんでも。ただセイバーが心配だから頼んでいれてもらった。点数は…大体Bの下位とかCの上位が多いみたいだ。」
「それで私が学校で言った通り。どうでしょう、充分に他クラスの補強をみても勝負できる環境にあると思いますが?」
「…」
自信ありげに告げる遠坂さんに雄二が考え込む。
勝ち目がない、と思っていたのが随分揺らいでいるみたいだ。
「そうだな、やる価値はあるかも知れん。」
しばらくの沈黙のあと雄二の口から出たのは肯定の答えだった。
「それじゃあ雄二!」
「焦るな明久。それでもやはりAクラスは厳しいと言わざるを得ない。というわけで幾つか順序を踏ませてもらう。」
「順序って?」
「お前が想像しているようないきなりAクラスに殴り込み、なんてことはしないってことだ。それでも良いならやるが…どうだ、遠坂?」
???どういうことだろう。試召戦争は1体1の対戦だ。
順序もなにもないはずなのに。
そんなの遠坂さんも乗るわけ
「私も同感よ。坂本君。やっぱり貴方は頭が良さそう…気が合いそうね。」
って乗るんだ!?
けれどその疑問はその後二人の説明によって消えることになった。
「そんな風に上手いこと進むの?」
「ああ、間違いなくな。」
「やはり人間、優先順位というものがありますから。この学校のシステム上呑まないところはないと思いますよ。」
ハハハ…流石は元神童と学年トップクラスだ。こんな作戦を同時に思い付くなんて…!
「よし、皆意見はないな?…それじゃあまずは手始めに」
「Eクラスを倒すわよ!!」
「「「おー!!」」」
とりあえずセイバーさんと士郎の学力の説明&色々とやりたいことへの布石と言ったところでしょうか?
早速遠坂さんの化けの皮が剥がれ始めているような気がしないでもない。
とりあえず次回更新は関係ない短編更新になります。
題名は「僕と衛宮君と料理の方程式」です!
短編一発目は我等が主人公衛宮君です。こう御期待!
基本的に短編は明久+バカテスキャラに誰かFateキャラ一人にスポットを当て進める予定です。そろそろバカテストも考えるかな。
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