「……」
「……」
雄二と二人して固まる。
司祭って確かに言ったよね?そしたらこの人が今噂の悩み解決人ってことになるけど見た目はせいぜい僕らと同じくらいにしか見えない。
本当に噂はあっているのだろうか?
「なにをしているのですか?まさか本当に口を利くこともできない虫けらが紛れ込んだと言うのでしょうか…しっし。」
「「誰が虫けらじゃあ!!」」
「あっ、喋れた。」
一体なんなんだこいつ!?
突然捕らわれたランサーさんを救うべく教会に飛び込んだ僕たち。
そんな僕たちを祭壇で待ち受けていたのはこの言峰教会の司祭を名乗るカレン・オルテンシアさんだったんだけど、この人が神職に携わる人間だなんて信じたくない。
「おい、随分な物言いじゃねえか。この教会は本来救うべき対象の一般人に暴言を見舞うのが方針なのか?」
「救うべき対象…?はて?」
「おい明久!こいつもうだめだ!」
珍しい。雄二が完璧にから回っている。
うん…ここまで会話が噛み合わないのはそうそうない。
それにしてもこのカレンさん、本当に大丈夫なのだろうか。
雄二の言ってることは至極まともというか当然のことだと思うんだけど…
「…なんだかある意味幸せそうな顔ですね…フィッシュ(ヒュオッ)」
「えっ?(スカッ)んがああぁぁぁ!!!」
「明久ぁぁ!!」
突然カレンさんの手から赤い布が飛び出てきたかと思うと僕の両足が絡めとられる。そのまま抵抗する間もなく転ばされ引き寄せられ…って痛いしこれどうなってるの!?
そのままぐるぐると巻き込まれて祭壇まで一息に運ばれる。
ようやく止まると目の前にあったのは両膝をついた状態で不思議そうに僕を見つめる女性の顔。
「うん…見れば見るほどやっぱり凄く幸せそう…なバカ面」
「いくらなんでも酷くない!?」
バカって言われるのは慣れてるけど初対面でここまでボロクソなのは流石に記憶にない。
「ーーーー!ーーーー!」
少し離れたエレクトーンからガタガタ音が聞こえる。
おかしい、まるでエレクトーン全体が揺れてるみたいだ。あんな風に揺れるのは地震でもなければ有り得ない。
首を捻って音の出る方を向く。
因みに僕を包む布は足だけではなく上半身まできている。自由に動くのはもう首から上だけだ。
「…ん…あっ・・・」
必死に目を凝らすと普通にしていては見えない位置、エレクトーンの真下に僕と同じように簀巻きにされたランサーさんの姿があった。
「(バカ野郎!何で来ちまったんだよ!俺のことはほっといて早く逃げなきゃいけなかったんだ!)」
もはや口まで覆われて喋ることすら出来ないが彼の目はそう必死に訴えていた。
…本当に申し訳ない。
「あっ…(スタスタ)」」
「ーー!(ガタガタッ)」
「お黙り(スルスルッ…ペチン)」
「(カクンッ)」
「ランサーさんが死んだ!?」
「大丈夫、気絶しただけ。ああ…1000万の札束で絶望の表情を浮かべる顔を叩くこの恍惚感…」
そのサイズはもはや鈍器となにも変わらないと思う。
ランサーさんの気絶した身体をぽいっと放り投げてカレンさんは両手を重ね目をうっとりとさせている。
その姿はまるで恋する乙女か神に祈る聖職者か。
と言うよりもその札束はどこから出したのか、凄い気になる。
「どうかしたのですか?貴方もやってほしいと言うのならばやぶさかではないですが」
「全力でお断りさせていただきます!」
訂正。悪魔でした。
「なんだ、つまらないですね。」
僕を拘束していた布が解かれる。
こんなことどうでも良いんだろうけどあの布は一体どういう仕組みなんだろうか。
「いてて…全く酷い目にあったよ…」
「大丈夫か明久!?」
「ああ、うん。大丈夫。ランサーさんみたいに直接的に何かされたわかじゃないから。」
「そうか…」
うん、転がった時にちょっとぶつけたみたいだけどそれ以上は特に問題なさそうだ。
少なくとも後ろで伸びているランサーさんよりは遥かにましだと断言できる。
「そうですね…貴方はとても面白い。相談くらいなら聞いてもよいでしょう」
「誰が聞くか!おい、帰るぞ!!」
「女難の相…いえ、現実を認めていないだけでしょうか?貴方の見せるは仮面。そんなことをしていて虚しくなりませんか?本当にバカらしい。」
「…んだ…と…?」
背を向けて歩き出そうとしていた雄二がビクッとして振り返る。
その顔に浮かぶのは見たこともない怒気と驚愕といったところだろうか。
僕にはなんのことかさっぱりだけどこの二人の間だときちんと通じているのだろう。
「ケッ!なら相談にのってもらおうか!シスターさんよ。」
「ふふふ…貴方もとっても面白そう。さあ全てをさらけ出しなさい、迷える子羊達よ!貴方達の不幸は私の密となり、その幸運を蹴散らしてあげましょう!」
「「やっぱりどうかしてるだろこいつ!?」」
「?何か悪いこといいました?私?」
ダメだ…!ここまで掴めない人は見たことがない…!
「ま、まあいいや…そしたらカレン司祭さん」
「カレンで良いです。 」
「じゃあカレン。僕の悩みなんだけど…」
「バカにつける薬はないと言いますし改善は難しいかと…じゃあそこのツンツン頭の方」
「ちょっと待ってよ!?」
「煩いですね…えいっ(シュルシュル…パサッ)」
「▲◎◎○◇■!!!(ブシャアッ!!)」
「ちょっ!なんて格好してんだ!?」
「ファッションです。ふう…これだから思春期の性欲まみれの駄犬は…こんなもので欲情しているようでは話になりませんね。大方同世代の女性との間にトラブルでも起こしているのでしょう。」
「くっ…なんて高度な尋問テクニックなんだ…!(ボタボタ) 」
「おい、決め顔で言ってもお前がどうしようもない変態だと言う事実にはなんの変化もないぞ。」
し、しょうがないじゃないか!まさかあのシスター特有の鉄壁のユニフォームが履いてない衣装に変貌するなんて想定外も良いところだ。
「それで、これで十分でしょうか?貴方の相談なんて聞いてる暇があるならこの激甘ショートケーキを食べる時間のほうが優先したいのですが。」
「話聞くって言ったのはカレンのほうだと思うんだけど。」
先程の鼻血による貧血も伴って僕の頭痛はもう軽く限界突破しかかっている。
「では手短に話しなさい。言っておきますが幸せそうな匂いがした瞬間に即その口を塞ぎますからね。」
「なんという理不尽。まあいいや…最近クラスの女の子に辺り構わず暴力を振るわれたり、食事で死にかけたり、女装趣味の変態だと思われたりしているんです。」
「冷やかしなら帰って頂きたいのですが。」
「本当なんですよ!」
クウッ!流石にこの破天荒履いてないシスターでも僕のライフスタイルは未知の領域みたいだ。
「ふむ…その絶望の表情、とても良いです。どうやら気が触れたというわけではなさそうですね。 本当ならばこのまま放っておいて楽しむのもまた一興なのですがはてさてどうしましょうか…?」
「お願いします。助けてください。」
間違えた。完全に判断間違えた。この人僕のこと救う気欠片もないよね!?
むしろドン底に叩き落としたいですっていう空気満載というか…
多分極度のSなんだと思う。今なんかほらっ、すっごいいい表情してるし。
「大丈夫ですか? 顔色が優れないようですが…せっかくですしこのケーキでも食べて落ち着いて下さい。」
「あっ…はい。頂きます…」
全く空気を読む気もなくカレンがケーキ(食べ掛け)をいくつか差し出してくる。
もう何がなんだか分からないけれどとりあえずこの手をつけてないやつを頂こう。
「うーん…モグモグ、甘いクリームに上質そうなイチゴ、ふんわりしたスポンジからしみだす真っ赤な…激辛麻婆!!!」
口が!!口の中が焼けるー!!!なんだこれ!?豆腐の食感がしたから麻婆ってわかったけどなかったらただダイレクトにタバスコかなにか飲んでるようなもんだよこれ!!
「あらごめんなさい。私ドMだから虐められてる感が出せるようにこういう嗜好の物を混ぜてるの。今日の設定はいつもはハブってる私を何故か虐めのリーダー格が友達の集まりに呼ぶんだけどそれは罠で、私のケーキだけ激辛にして苦しむ私を笑って、私は不覚にもそれに感じちゃうって設定です。どう?感じますか?」
「なにその無駄に凝った設定!?それにドMとか言ってるけどやってることと表情はもろSだから!それ振る舞う側に回ったらもうM名乗っちゃダメだと思うんだ!」
僕はもうここから生きて出れないかもしれない…
ーーーーー
「いやあ…ここまで疲れる1日はもうないかも知れないね…」
「全くだ…あのくそシスターめ…あんなんが聖職者なんて世も末だぜ。」
「雄二はまだ良いじゃないか、とりあえずきちんとした相談にはなってたんだから。」
すでに日はくれ夕焼けが辺りを照らしている。
そんななかをフラフラと歩く僕らは周りから白い目で見られていたに違いない。
「はあ?…まあそう見えたかも知れんがありゃ楽しんでるだけだぞ実際…解決策を提示してるふりしてそれ以外の道をネチネチと塞いで自分が面白そうな方向へ誘導する…どうやったらあんな性格の人間が育つのか疑問しかわかねえよ。」
「ふうん。」
結局あの後もほとんどまともに取り合っては貰えなかったけど去り際に彼女が残した一言だけは僕の頭に深く焼き付いていた。
「貴方はなぜ自分がこんな目に合うのかわからない、だから知りたいのだ、変えたいのだ、と言っていましたがそれを知ること、変えることだけが本当に幸せなのでしょうか? 世の中には知ってしまえばそのままではいられない。壊れてしまうものもあるのですよ。まあ貴方が過去に戻りたいと苦しむ姿が見れるのならそれも面白そうなので私としては一向に構いませんが。」
「知ることで壊れるものもある…か。」
「あん?なんか言ったか?」
「何でもないよ!」
僕がこの1日で得たものなんてほぼないに等しいだろう。けどこの言葉だけ、それだけは何故か覚えておかないといけない気がした。
ーーーーー
「随分と優しいじゃねえか。」
「なんのことでしょう?私はただ面白いと思ったことをしただけですが。」
「けっ…よく言うぜ。」
夜も深まり教会を照らすのは月明かりのみ。今日もまた1日が終わる。
その場に佇むは青い槍兵と白き聖女。
「まあいいわ…お前の心情にどんなに変化があろうが俺には関係のねえことだ。」
「もとよりそのつもりです。それとも私のやることに駄犬ごときが口を挟むつもりですか?」
「おーおー怖い怖い。そんなつもりは毛ほどもねえよ。それじゃあな。」
「あ…逃げましたか。まあ良いです。仕置きは明日の楽しみにでもとって起きましょう。」
場に残るは一人。誰もいないのを確認して彼女は呟いた。
「吉井明久…彼なら出来るかもしれない。私の終わらない夜を…」
どうもです!おかしい・・・このカレン、本編とCPとなぜかリズが混ざったようなキャラになってもうた・・・
まあ良いか(適当)…すいません。嘘です。カレンさん難しいです。
でも久々に振り回される明久をかけて満足です。
次回は本編へ。そろそろ学校のイベントやらAクラスの連中やら色々出したいなあ・・・次の内容考えなくては。あ、○○編みたいとかあったらそれを参考に書く可能性あるので希望あったら感想欄にでもお願いします。もちろん合唱祭やら球技大会等本編にないイベントも可です!むしろそっちのが書いてみたい。やっぱり本編の内容に引っ張られるところはあるので。
それではまた!感想、投票評価、お気に入り登録よろしくお願いします!
特にバーに色付けてみたいので継続して読んでくださってる方よろしかったら投票評価よろしくお願いします~それではまた!