バカと運命と召喚獣   作:faker00

31 / 35
~僕と外道と壊れる常識~前編

「えーと…ここかな?うわあ…遠坂さんの家ってほんと大きいんだなあ…」

 

僕、吉井明久はとある用事を携えて町外れのどこからどうみても場違いな様子の洋館を訪れていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

『今日お休みの遠坂さんにプリント届けてくれるひと~!吉井明久君希望~!』

 

始まりは藤村先生のこの一言だった。

学校終わりのHR、鉄人が仕切るこの場はFクラスに似合わぬ緊張感に包まれていたのだが、かの虎柄の御方はそんな普遍的な空気すら簡単にぶち壊すエアブレイカーぶりを今日もいかんなく発揮した。

というか今僕の名前呼ばなかった?

 

 

『あー…藤村先生…申し訳ないんだがHR中はもう少し静かに入室してもらえるとありがたい…』

 

『へっ!?あっごめんなさい西村先生!私そんなつもりじゃ(ゴツンッ!)いったあい…』

 

『やれやれ…』

 

さすがの鉄人も藤村先生のペースにはついていけないのか手で顔を抑えながら溜め息をついている。

こんな鉄人はなかなか見れないから面白い。

当の本人は謝ろうとして教壇の角に頭をぶつけたんこぶを作ってクラスに爆笑の渦を巻き起こしていたのだが。

 

 

『もういいです。それで?いったいなんのようですか?』

 

付き合いきれんとばかりに鉄人が続きを促す。

 

『へ?あっそうだそうだ!ちゃんとした用事があったんだよ~』

 

やばい…鉄人のこめかみに大量の血管が…!

 

 

『確か遠坂さんお休みだったよね?それで学校に電話が来たんだけど今日やった英語のプリントを届けてくれませんかって。』

 

そんな爆発寸前の鉄人を横目に藤村先生はマイペースを貫く。

これはもう一種の才能に違いない。

それよりも今の提案、この提案がFクラスに今学期最大級の騒ぎをもたらしている。

 

 

『届けると言うことは遠坂さんの自宅か…!?』

 

『なんだって!』

 

『先生!俺に行かせてくれ!』

 

『お前の鈍足じゃ無理だ!ここは50m6,2の俺に任せろ!』

 

『9,2の間違いだろデブ!』

 

『遠坂さんはイケメンを所望するはず…となると俺の出番だな!』

 

『『『『須川、とりあえず鏡見てこい。』』』』

 

 

まあそうなるよね。プリントを届けるとなれば家にいかなければならない。遠坂さんは普段衛宮君の家にいるが体調を崩したりすると自分の家に帰るんだそうだが… 曰く「色々と設備とかあるからそっちのほうが良い。他の人に迷惑かけるのも嫌いだし」らしい…彼女は家族がいないらしい。

 

当然独り暮らしの可能性が高くなるのだが女の子が一人でいるところにお邪魔する、なんてチャンスはFクラスの男子には縁がないにもほどがあるイベントだ。この程度の争奪戦は当たり前と言えるだろう。

 

 

『こういうのって衛宮君かセイバーさんが行くのが一番良いんじゃないの?』

 

『え?ああ…』

 

近くで鉄人と同じように【あの馬鹿トラ…】と頭を抱えている衛宮君に聞いてみる。

二人なら遠坂さんの家も知っているだろうし何よりも知った仲だ。

どちらかが行けば何もかも丸く収まるんだろうけど…

 

 

『そうしたいのはやまやまなんだが今日は無理なんだ。俺はバイトあるしセイバーは美綴と桜に生徒会への交渉に駆り出されててな。こういう交渉事は遠坂がいればすんなり行くんだろうけど時間かかるだろうからなあ…女の子をあんまり遅くに出歩かせたくない。』

 

それが交渉なのか笑顔の恫喝なのかは気にしたら負けなんだと思う。

確かに最近日が長くなってきたとはいえ夜は暗い。セイバーさんみたいな可愛い女の子を一人で出歩かせるのはちょっと躊躇われる。それにまだ土地勘もないだろうし

 

『悪いな…で、明久。藤ねえがお前の方をジーっと見てるけど?』

 

『え?』

 

顔を挙げると他の喧騒を全く意に介さず僕の顔を眺める藤村先生の顔があった。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

「まあ確かに他の人に比べれば仲が良いとは思うけどさ。」

 

 

『遠坂さんの希望だから、吉井君、予定なかったらよろしく!それじゃあ西村先生、失礼しました!』

 

 

こう言ってビューッと走り去っていった藤村先生によって僕は実質問答無用でこの任務を任されたのだ。

 

 

「えーと…インターホンは…あった。」

 

インターホンを押すとこの洋館には似合わぬピンポーンという電子音が鳴り響く。そして待つこと数秒…

 

 

『はぁーい…何かようですか…』

 

もうとんでもなく不機嫌というかだるそうな遠坂さんの声が聞こえてきた。

 

 

「あ、遠坂さん。吉井だけど。英語のプリントを届けに…」

 

「吉井くん…?あーそう言えばそんなこと頼んだような頼んでないような…鍵あいてるから入って良いわよー。私の部屋は3階にあるから…それじゃ。」

 

そこで音声は途切れた。とりあえず3階にいるらしい。それは良いんだけど…

 

 

「この家3階にいったい何個部屋があるんだろ…」

 

かなり大変な仕事になりそうだ。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

「まあね。こんなもんだろうと思ってたよ。」

 

10?15?20?はたまたそれ以上? 長い廊下とその両側の壁に設置された部屋部屋部屋…うん。こりゃ厳しそうだ。

 

「とおさかさ…!」

 

もう面倒だから遠坂さんを呼ぼうと思ったが思いとどまる。

そう言えば病人に大声は響くって言うもんね…かなり体調悪そうだったしそううのは止めておこう。

 

 

「…一個一個地道に行こうかなあ…」

 

時間はたっぷりある。 のんびりと探していこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…見つからない…というかここは魑魅魍魎の巣なの!?何度か死にかけてる気がするんだけど!? 」

 

数分後、僕の心は限界を向かえていた。

遠坂さんの部屋が見つからないだけ、なら全然良い。

けど問題は部屋ごとにトラップやら何やらが仕掛けられていてその都度大変な目に合っているということで

 

「そうだ!携帯携帯!メールならそこまでうるさくないだろうしより正確な情報を…!」

 

携帯を取り出し電話帳を開く。えーと遠坂遠坂…

 

「…だ、だめだ…!そう言えば遠坂さん携帯持ってないんだったあぁぁぁぁ!!!」

 

思わず携帯を床に投げつける。そうだった!遠坂さんは絶望的に機械に弱いとかなんかで『スマートフォンどころかガラパゴスケータイ…でしたっけ?それも無理』とかなんとかこの間言ってたじゃないか!

 

「…今度教えてあげよう。これじゃあまりにも面倒だし何より大変だ。」

 

というか衛宮君は教えたりしないのだろうか?彼なら真っ先にどうにかしようとすると思うのだけど。

 

 

「しょうがない…一部屋一部屋行くか…」

 

まだ半分もいっていない。遠坂さんの部屋につくまでに何度大変な目に合うか分からないけどとりあえず頑張ろう。

 

 

 

 

「遠坂さーん…いますかー?」

 

そろそろとドアを開ける。よし…今回は仕掛けなしだな。

そんなことにホッとするなんて僕は一体何をしているんだろう。

 

 

「よし…とりあえず入り口に仕掛けはなし…と。…ってなんだろうここは。」

 

 

入り込んだ部屋は今迄とは全く違う様相を見せていた。

 

「…魔女の秘密基地?」

 

何だか色々な実験器具っぽいのとか色々あるし…そう言えば遠坂さんの召喚獣は魔法少女だったし、こういうのが好きなのかもしれない。

それならそれでこんなちょっと暗いのじゃなくてもっとキラキラ~って感じのにすれば良いんじゃないか?と思うけどそこはリアル思考の遠坂さんだ。魔法はそんなにきらびやかなものじゃないというのを体現しているのだろう。

 

 

「まあここにはいないみたいだし人のプライバシーを侵害するのもあれだから退散退散…と。何だろうあれは…」

 

長居は無用と立ち去ろうとするがあるものに気を取られて立ち止まる。

あれは…テレビ?

 

 

「何でだろう…早く部屋から出ないといけないのに…まるでテレビに吸い込まれていくような…」

 

足が自然に動いていく…このままじゃ…僕の身体なのに僕のじゃないみたいな…

 

「一体どうなって…ってうわあ!!!」

 

 

僕の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

「…きろ…起きろ…」

 

「んー…まだ眠いってば…」

 

「起きろって言ってるだろこのバカ明久!!」

 

「いってええ!!…あれ?雄二?」

 

「なに寝ぼけてやがんだ。ほらさっさと起きろ、また鉄人にどやされるぞ。」

 

 

目が覚めると僕は学校にいた。

 

「あれ?僕は確か遠坂さんの家に届け物に行ってる途中だったはず…」

 

「私がどうかしたの?」

 

「遠坂さん!?熱はもう大丈夫なの!?」

 

「熱…?私は熱なんて出してないわよ?むしろ吉井君の方が怖いわよ。いきなりそんなことを言い出して。」

 

不思議そうな顔をしてそう言うと遠坂さんは歩き去っていく。

もしかして今までのは全部夢だったのだろうか?

それにしては随分リアルでその上どこからか分かりづらい夢だったけどな…

 

周りを見渡すが皆いつも通りだ。

雄二が、秀吉が、姫路さんが、美波が、セイバーさんが、衛宮君が、遠坂さんが、ムッツリーニ…は撮影中なのかいないけど。

とにかく皆が揃っている。なにも間違ってなどいない。

 

 

「…それでは出席を取る。」

 

「葛木先生!?鉄人は!?」

 

「…西村先生は急病のためお休みだ。それなので私が代わりに出席をとる。」

 

『『『なんだと!?』』 』

 

あの鉄人が休み、それも急病だって!!??これは夢か何かじゃないだろうか!?

 

 

「秀吉」

 

「なんじゃ?」

 

「頬っぺたつねってくれない?」

 

「お主は…ほれ。満足か?」

 

「…痛い!とうことはこれは夢じゃない!」

 

最高だ!!

 

 

「…静かに。それなので今日は1日臨時教員の方に皆の面倒を見てもらう。それではお入りください。 」

 

葛木先生が外の誰かへと声をかける。

それと同時にコツコツという重厚な靴の音を響かせてその男は教室へと現れた。

 

「ありがとう葛木教諭。後は私に任せて自分の仕事に戻ると良い。」

 

「うむ。それでは後は頼みます。」

 

慇懃なしゃべり方と何か重い声色。

葛木先生がいなくなると場は完全にその男の空気に変わる。

 

 

「それでは皆よ。知っている人もいるがまずは自己紹介といこうか。私の名は言峰綺礼(ことみねきれい)、見てわかると思うが本職は神父だ。今日は1日君達の面倒を見ることになった。」

 

 

そうして黒い悪魔は訪れた。

 

 

 

 

ーーーーー

 

『入るぞ、凛。』

 

『アーチャー…?』

 

『ほれ、スープだ。飲むと良い。』

 

『ん…ありがとう…』

 

『全く…普段もそれくらいしおらしくしていてくれれば言うことなしなのだがな。』

 

『余計なお世話よ…ところで吉井君見なかった…?』

 

『吉井明久か?いや…見ていないが。ここに来ているのか?』

 

『うん…英語のプリントを届けにね』

 

『凛…まさかとは思うがこの部屋の正確な情報位置を教えていない、なんてことはないだろうな…?』

 

『やめてよアーチャー、そんなことするわけ…ってアー!!』

 

『ば、バカ者!ここは魔術師の工房だぞ!?一般人が動き回れば危険どころではない…!』

 

『ヤバ…!ボーッとしてた…つい士郎と同じ感覚で…』

 

『ええい!このうっかりが!私が探しに行くから凛はここで待っていろ!…救命措置の準備をしてな…』

 

『ま、待ってアーチャー!私も行く!』

 

 

 




どうもです!

短編の方がアイデアが湧くのか書くのが早い作者です。

皆様にまずはご報告を。
閲覧数10000突破&お気に入り登録100突破ありがとうございます!かきはじめて僅か1か月でここまで行くとは… 後一昨日?しれっと日刊ランキング5位までいってたのも重ねてお礼申し上げます。
今後ともよろしくお願いします。
本当に先のことになるでしょうができることなら将来的に閲覧数30000、お気に入り250、評価バーオレンジ(投票者10以上)みたいな作品になれば良いなあ…なんて思う作者。

さてさて戻りますと凛さまのうっかりで何か異常事態に巻き込まれた明久。その運命や如何に!

作者の自己満以外の何物でもない目標ですが協力してやるぜ!って方がいらっしゃったら是非よろしくお願いします。意外と数字や感想の言葉が作者の力になってますから!(じゃなきゃこんな高速で更新できない。特にバーに色ついた時は嬉しかった。)

それではまた!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。