「綺礼!?なんであんたこんなとこにいるのよ!」
こう叫んだのは遠坂さんだった。
その声には今まで聞いたことのない焦りがあった。
こんな遠坂さんは見たことがない。
「なんでか?という問いには答えようがないな、凛。なにせ私は先程話しているからな。それに納得できないというのなら説明の仕様がない。」
「あんたが教育免許なんて持ってるわけ!…あー…やりかねないか…けどまともに教えるなんてしたことないでしょ!」
言峰先生…いや、神父?まあどっちでも良いか。
とにかく言峰はそんな遠坂さんにも全く動じることなく答える。
というよりも困ってる遠坂さんのことを見て心底楽しんでいるように見えるのは気のせいなのかどうなのか…
「…」
「どうしたんだセイバー?」
隣ではセイバーさんが神妙な顔付きをして言峰を眺めている。
衛宮君がおーい、と目の前で手を振るが完璧に固まっている。
「…はっ!な、何でしょうか士郎…?」
「いや、あの言峰?先生を見た瞬間固まったからさ。」
「い、いえ!何でもないです…」
「そうか?」
女性陣がなにかおかしい…基本なにがあっても動じない二人だからこそこの変化は気になる。
「衛宮…だと?」
遠坂さんに向いていた言峰の注目が今度は衛宮君へと向かう。
その目はまさに悪魔。
「ふむ…少年、名をなんという?」
「え?俺ですか?俺は衛宮士郎ですけど…」
「もしや… 君のお父さんは衛宮切嗣、という人物ではないのか?」
「…!親父の事を知ってるんですか!?」
「ああ、知っているとも。そうかそうか…まさか彼に息子がいたとはな。」
キリツグ…?それって衛宮君の従兄弟のことじゃなかったっけ?
そんな疑問が頭を巡るがその疑問は言峰の表情の変化を見て吹っ飛んでいた。
なんだあの笑顔…やばい! 遠坂さんもなかなかの豹変を見せるけどあの人はそれ以上だ!
悪魔のものとも天使のものともつかないそんな笑みを浮かべる言峰先生だが衛宮君は気づく様子がない。
父親のことを知る人がいて余程嬉しいようだ。
「そうかそうか…衛宮士郎。この話はまたゆっくりとさせてもらおう…もう5分たっている。授業を始めなければならない。」
「そうか…残念だ…」
この瞬間この部屋にいる全員が思った。(二人以外)
「「「「(頼む衛宮!もう少し頑張ってくれ!こいつやばい!!)」」」」
第一印象はそこそこだったのに衛宮云々言い出した途端雰囲気が真っ黒になるし、もうどう形容すれば良いのかわからないけどとにかくやばいのだけはわかる。
「そこの凛が言っているように私は教員免許こそ持っているが教えるという経験はほとんどない。なので補助員として教育実習生についてもらっている。…紹介しよう。国立大の教育学部に留学生しているウルク・シュメール・ギルガメッシュだ。長いのでギルガメッシュと呼ぶが良い。」
「言峰!貴様ぁ…!こんなところに俺を引っ張り出すなど覚悟は出来ているのであろうなあ…!」
なんかもっとヤバイのがきてしまった。
「そういうなギルガメッシュ。教会暮らしは飽きたから庶民の生活を覗きたいといったのはお前の方ではないか。」
「それにしてもこれはないだろう!バカか貴様は!」
言峰の紹介で教室に招き入れられたウル…ク、シュメー…わかんないからギルさんで良いか。
言峰の言葉通り日本人とは思えないさらさらの金髪に赤い目、そして男にこのような表現が適切かどうかわからないが人形のような顔立ち。 黙っていれば間違いなく女子生徒から歓声があがりそうな美貌をもつ彼は…ぶちギレていた。
ところでこの人絶対教師やるきないよね!! なんで実習生が教室にジャージでくるのさ!!こんなことしてるの大島先生くらいしかみたことないよ!おまけにクソガキどもとか言っちゃってるし!?
教室に入ってから生徒である僕らには目もくれず言峰に抗議の声を上げるギルさんの姿を見てみんなが思っただろう。
そう……もう良いからとっとと帰れよ、と。
「英雄王!?なぜ貴方がここにいる!!」
その時立ち上がったのはセイバーさんだ。
いつもの落ち着いた雰囲気は微塵もなく消え去り逼迫している様に見える。とうよりもその目から放たれているのはまじりっけ無しの殺気。
実はセイバーさんの周り3mに空白が出来ていることからもどれだけ怖いのかお分かりいただけれると思う。
「…その声は…!ほう…まさか貴様がこんなところにいるとはお前がいるとは思わなかったぞ…セイバー」
「質問に答えろ!…あとそんな目で見るな!気持ち悪い!」
その声に気づいたギルさんは今までの不機嫌はどこにいったのか?笑みを浮かべてセイバーさんを見る。
それにしてもセイバーさんの対応が見たこともないほど手厳しい。僕がセイバーさんにあんなにはっきりと気持ち悪い!、なんて言われた日にはその後1週間は枕を涙で濡らし続ける自信がある。
…英雄王ってなんだろう。僕はあんなのが英雄なら助けてもらいたくない。
「いやいや…会うのは10年ぶりになるのか…お前のその大層な生きざまとやらを笑い飛ばしてからもうそこまでたつと!我は今でも酒の肴にするのいうのに…クハハ…いや、すまんな。思い出し笑いがとまらんわ!」
「貴様…!」
アッハッハ!と上機嫌そうな高笑いをあげるギルさんをセイバーさんはもう頭に怒りマークが3つくらい見えそうなぐらいの怒気を身体全体から発散して睨み付けている。
握り締められた手の中でシャーペンが折れるのはまだ良い。けどそこそこ大きめの消しゴムがど真ん中で折れてポーンと真上に飛んだのはどういうことか。
…彼女の握力がゴリラ並みだなんて事実だとしても僕は信じない。そういうのはみなみが…
「アキ?知ってる?ゴリラって縄張り争いのためなら虐殺もいとわないんだって…!」
「ギブギブ!!!ゴリラは適切に関節を外した上で腰椎をへし折りにかかるなんて頭脳プレーはしないよ!!」
最近心の声が至るところで読まれる、これはプライバシーの侵害とは言わないのだろうか…?
「うむ…怒る貴様もやはり美しい…!してセイバーよ?10年前に我がお前に下した決定を覚えているか? 」
「10年前…?なんのことだ?」
僕が美波に折檻されている間もギルさんのストーカートークは延々と続いていたらしい。
だがどうやらそれも架橋に迫っているようで「約束」なんて意味深な言葉が出てきた。
今までの流れを見るにろくなことじゃないのは明白なのにこの言葉一つで何故か顔を輝かせている姫路さんはもうだめなのかも知れない。
「照れおって…ほんとに初いやつよのお、お前は。よし、ならばもう一度だけ言ってやる…」
一旦言葉を区切って溜めを作るギルさん。
何だろう、嫌な予感がする…
そんな僕の不安が届くことなどもちろんなく
「我の10年前の決定はな…お前を…」
ギルさんは
「我の妻にするといったのだ!!!そろそろ覚悟を決めたらどうだ?セイバーよ!」
とんでもないことを言ってのけた。
「こ、これってプロポーズですか!?」
「そうね瑞希!これが…初めてみた!」
「待って美波!姫路さん!ここまで相手のこと考えてないプロポーズなんてまずないから!」
これで成就したら僕のセイバーさんに対する評価はガタ落ちも良いところだ。
「…」
セイバーさんはもう俯いてここからでも分かるくらい震えている。
そしてその顔を周りを凍りつかせるような貼り付いた笑顔で上げて何か言おうとしたその時
「ん?ちょっと待てよ?セイバーさん今16だから10年前にプロポーズってことは…。…!この人ロリコンじゃないか!しかも洋モノロリコンとか!モノホンだ!」
誰かがとんでもないことを口走った。
『ロリコンだと!!』
『10年前…確かにそうだ!6才の女の子にマジプロポーズなんてロリコンしかありえない!変態だ!』
『やったな中澤!同士がいたぞ!』
『お。おう…ギルさんマジすげえ!』
中澤君は後でクラスの風紀の為にセイバーさんに消してもらおう。
その一言がきっかけとなり教室は上へ下への大騒ぎだ。セイバーさんも毒気を抜かれたようにポカーンとしてしまっている。
「はあ!?何がロリコンだ!セイバーはそんなものではない!ヤツは10年前から年を…「フィッシュ」グッ!」
クラス中から響き渡るロリコンコールの中、美貌を歪ませ憤怒の声を上げていたギルさんだったが突然現れた布によって拘束される。
あれ…?確かあれってカレンさんのじゃ…
「そこまでだギルガメッシュ。俗世間はまだお前には早すぎたようだ。少し仕置きが必要だな…」
「ーーーーーー!」
この笑顔をつい最近何処かで見たことがあると思うんだけど僕の頭の中の番人が必死に止めている。
ここは彼の意思を尊重して無理はしないことにしよう。
「それでは授業を始める…のだが予定を変更しよう。皆準備を終えたら調理室にくるように…今日は…調理実習を行う。」
ーーーーーー
「ねえ遠坂さん。」
「なに?吉井君」
「遠坂さんってあの言峰さんのこと知ってるの?」
調理室にゾロゾロと歩いていく廊下の途中で遠坂さんに声をかける。
よくよく考えてみればこの騒ぎの発端は遠坂さんが言峰を知っていたのが始まりだ。それに言峰も遠坂さんのことを凛、とよんでいたしそれなりに交流があるんだと思う。
「ちょっとした腐れ縁よ…まあ兄弟子ね。あんなのがそうだなんて信じたくないけど。」
「兄弟子?一体なんの…?」
「八極拳」
「八極拳!?」
本格的な武道じゃないか!? そんなの全くイメージになかったのに言われてみると妙に納得するのは何故かわからない。
「そ、今時護身術は必須だからね。ほら、私今でこそ衛宮家にいるけど本当なら一人暮らしでしょ?やっぱり女の子の一人暮らしは怖いじゃない。」
ヒュッという音と共に正拳突き?みたいなことをする遠坂さん。
素人目にもなかなか腰が入っているように見えるのが凄い。
「す、すごいね…ところでさ、あの人って料理できるの?」
このままだと変な暴力性を引き出しちゃいそうだから話題を変えよう。
命を狙ってくる狂戦士は美波だけで十分だ。
「それは大丈夫よ。あいつはあんな見た目して器用になんでもこなすから。私の中華料理もあいつあってのものよ。」
そういう遠坂さんの表情はどこか柔らかい。
憎まれ口を叩いているけど何だかんだ兄弟子として信用してるんだな…
きな臭い印象しかなかった言峰の人間らしい一面が見れた気がしてなんだかホッとした。
ーーーーーー
「…」
「…」
「どうした?作る前にまず味を知ることが大事だ。食べるが良い。」
何もかも間違いだったみたいです。
調理実習をするということで調理室に向かったFクラスを待っていたのは、何処からあらわれたのか分からない中国人の料理人。 サウナのごとき温度とかした地獄。そして真っ赤ななにか。
「遠坂さん…?」
「ごめん吉井君。あいつの麻婆豆腐愛が異常だったの忘れてた…多分瑞希の料理と破壊力タメはるわ。威力にするとA++ってところかしら…」
僕の知ってる大抵の威力最高がAなんだけど。
+、の意味が倍とかならオーバーギルどころの騒ぎじゃない。
「そうか。そこまで恐ろしいと言うのならまずは安心させねばなるまい…おいギルガメッシュ」
「や、やめろ!もうあんなもの2度と食べてたまるか!」
あんなに傲慢全開だったギルさんがビビりきってるところを見てもその威力が伺える。
「照れるな照れるな。この世の全ての悪(笑)を飲み干す英雄(笑)王なんだろう?お前は。」
「こ、これとそれとは話が違うぞ!やめ!その赤いのを近づけ、貴様…よもやそこまで我に恨みでも…ガッ!」
嬉々として言峰は赤い何か(決して麻婆豆腐ではない。)をまるでスポーツドリンクを飲むかのように並々とギルさんの口に注ぎ込む。
その光景は今までぼくらが受けてきた鬼の補修、さまざまな折檻などは比べ物にならない地獄。
「ほう…もう限界か?」
「…」
食べたら全身真っ赤になって気を失う料理だなんて僕は絶対に認めない…!
「逃げるぞみんな!もう付き合ってられねえ!」
「えっ!?ちょっとみんな待って!」
しまった!出遅れた!
身の危険を察知したか雄二の号令で皆が逃走を始める。
ちくしょう…!前にいたせいか上手く抜け出せない……!
「逃がすと思うか?」
「え…?」
扉まであと数m、僕を襲ったのは逃れのない絶望。
「ふむ…残りはお前だけか。全く足りないがその分は全てお前が担うと良い。」
「なんで!?皆はどこに…いやだあぁぁぁ!!!!」
気がつけば誰もいなかった。僕は顎を掴まれ口を開けられその悪夢を外道の表情を浮かべ……た 神、父に口のなかにそそぎこまれイシキハトギレタ…
ーーーーーー
「赤いのはいやだあぁぁぁ!!!!」
「ちょっ!どうしたの吉井君!?」
「……あれ?」
目を開けると目の前にいたのは驚いた顔をしているパジャマの遠坂さんだった。
「遠坂さん……?パジャマ?学校とあの神父は?」
「…?なにいってるのよ。吉井君は私に英語のプリントを届けに来て途中で迷ってたのを私が見つけたんじゃない。」
そう言えばそんなだったような…
「このプリントね。届けてくれてありがとう。もう遅いし帰っても大丈夫よ。」
ヒラヒラとプリントを振る。まあさっきのは何もかも夢だったということだろう。
目的も果たしたし早めに帰ったほうが良いのかもしれない。
「わかった。それじゃあまた学校で。」
そう言って無駄にリアルな悪夢の記憶で身体を震わせながら家路を急いだ。
ーーーーーー
「凛」
「……何よ」
「いや、あの吉井明久は不幸だと思っただけだ。」
「そうね。よりにもよって私がゼルリッチのアゾット剣のミニチュアを作ろうとして失敗したときにターミナルになったテレビに呑まれるなんて。」
「もう容認はせんぞ。いくらあれに学術的価値があろうとも廃棄すべきだ。よりにもよって言峰が生きてる時間軸で我々がいるなんて矛盾した世界、並の人間では耐えられん。次は死人が出る。」
「そうね……テレビ越しに見てもブルッとくる存在感だったし…明日宝石1,2個使ってでも壊すわ。」
「手伝うか?」
「いい。今の貴方の魔力はないも同然なんだから…最後までとっておきなさい。」
「…マスターの指示なら従おう。」
どうもです!
なぜギル様無双になったのか。言峰がCP仕様になったのか。
もう悩んでも仕方ないか(切り替え)
ということでウィンチェスター事件が全ての原因でした。
言峰の悪夢はいつまで残ることやら…
次回は本編!そろそろ動くかな…?
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それではまた!