「いやあ、今日もいい天気だね。遠坂さん。」
「よ、吉井くん?爽やかな朝、見たいな顔してますけど、その顔も制服もボロッボロでおまけに左腕があらぬ方向へ曲がってますよ…?」
「え、ああこれ?確かに結構痛いけど大丈夫だよ。だって…」
「だって?」
「きっちり…復讐は果たしたから!」
「はいっ?」
本当にありがとう遠坂さん。
「ねえ、木下君」
「なんじゃ?」
君の召喚獣にあのバカが見とれていたという事実を捏造することで無事僕がEクラスに受けた損害以上の罰を与えることが出来た。
「吉井君がなんだかおかしいのだけれど…」
「…雄二がおらんな。まあいつものことじゃろ。」
全く、僕を信頼してるとかなんとか言って人柱に捧げるなんてするからだ。
「はあ…(吉井君ってやっぱり…バカ?)」
だっていうのにこの清々しい気持ちに入り込む一抹の不安はなんだろう。
ーーーーー
【…おい翔子、事情を説明しろ。そんでもって椅子の後ろで組んである俺の手にかけられてる手錠を外せ。】
【…雄二。】
【なんだ?俺は事情を説明しろと…(プスッ)グワアア!!目があ!!】
【…人だけじゃなく召喚獣にまで色目を使う悪い目はこれ?】
【ヌオオオ…! ちょ、ちょっと待て!言ってる意味が…!】
【…雄二が凛の召喚獣に見とれていたと聞いた…例えなんであろうと浮気は許さない…!】
【凛?…遠坂か!?いや話がわからないぞ!?なんで遠坂の召喚獣に見とれなきゃいけないんだ!あんなデフォルメに欲情するなんて明久くらいだ!】
【…魔法少女】
【!?】
【…雄二が魔法少女のDVDのセットを買ったと電話でお義母さんに聞いた…雄二がそういうのに興味があることは明白。】
【違う!あれはお袋が俺が頼んだ魔法瓶と注文を間違えて…!】
【…言い訳無用(バチバチ!)】
【やだっ!やめろ!…ウアアアアア!!!】
ーーーーー
「おはよー、あれ?坂本はどうしたんだ?この時間にいないなんて珍しい。」
「おはよう衛宮君。寝坊じゃないかな?」
「そうか?さっきあいつの声が聞こえたような気がしたんだけど…」
「どんな?」
「なんというか…絶叫?」
「あはは、空耳に決まってるよ!朝から絶叫だなんてさ。」
「それもそうだな。」
納得したのか衛宮君は席に戻っていく。
さて、雄二が来るのはいつ頃になるかな…
地獄の苦しみを味わっているであろう友の姿を思い浮かべながら窓の外を眺めた。
ーーーーーー
「明久…てめえ後で覚えとけよ…!」
「服まで取られてるのは申し訳なく思ってるよ…」
数十分後、帰ってきた雄二は何故かトランクス以外衣服を剥ぎ取られていた。
曰く霧島さんに「…雄二は魔法少女の変身シーンが好きだから」という理由で自分もその格好にさせられたらしい。誓って僕はそこまではやっていないし言っていない。
「まあ今日は体育があったお陰でジャージがあるだけまだましか…これでなかったら目も当てられん。」
「まさに文字通りだね。」
現在はその言葉の通りジャージに身を包んでいる。初夏の気温にたいしてはあまり良い策とは言えず汗が滲んでいるがまあこれは仕方ない。
さすがにパンツのみで1日の学生生活を過ごすのは無理がある。
「で、こんな遠回しな復讐をしてくるっていうことはちゃんと宣戦布告は出来たんだろうな?」
「ばっちりだよ。ボコボコにされたけどね。転校生の佐々木君?あの人が助けてくれなかったら今頃どうなっていたことやら…」
「佐々木小次郎か。名前の通り転入そうそう剣道部のエースを奪ったらしいな。」
「そうそう、そんな感じの名前!」
なんというか周りが涼しくなるような雅な空気を纏っていたのをよく覚えている。
見覚えがないなとは思っていたけど衛宮君やセイバーさんと同じ転入生組だったのか。
「戦争開始は何時だ?」
「10時40分。」
「なるほど、2限目からか…よし!みんな聞いてくれ!」
『なんだパンイチ変態野郎』
『俺達の眠りを妨げるとは良い度胸してるじゃないか。』
『木下、遠坂、姫路の3トップを目に焼き付けているんだ。邪魔をするな。』
雄二が教壇から注目を求めるが反応は散々たるものである。さすがはFクラスと言ったところか…ところで横溝君、余計なことを言うもんじゃない。君の後ろに死神が「ああああ!!!痛い痛い痛い!!!」どうやら間に合わなかったようだ。合掌。
「やかましいわ。今日行われるEクラスとの試召戦争の件何だが…」
『は?』
『試召戦争だ?』
『3ヵ月出来ないんじゃないのか?』
「お前ら…少しは学校の情報仕入れたりしないのか?」
『『『我らが仕入れるのはムッツリ商会の写真と男女の禁忌を侵すものの情報のみ』』』
「…どうやらお前達のことを過大評価していたようだ。」
なんてこった。どうやら僕達以外は試召戦争の存在すら知らなかったみたいだ。
3日くらい前に説明会をやった記憶があるのだが僕の思い違いだろうか。
「よし、それじゃあもう一度説明してやる。お前ら今の状態に文句はないのか?寒い教室、ボロい設備、女子は片手で数えられる程度。ここで一体どう高校生活を送る?」
『文句大有りじゃボケエ!!!』
おかしい、このシーン間違いなく見たことがある。
「そうだろう?だが俺達にはこれを抜け出す術がある。それは?」
『試験召喚獣戦争!略して試召戦争!』
「その通りだ!前回はダメだったが今度こそAクラスを叩き俺達は理想の設備と高校生活を手に入れる!」
『然り!然り!』
「その為にもまずはEクラスを潰しその足掛かりにする!異論のあるやつはいないな?」
『然り!然り!』
「それならまず俺の話を聞け!絶対に勝たせてやる!」
ウオオオ、と沸き上がるFクラスの皆に今回の流れを説明していく。
雄二のこういう人身掌握技術と言うかリーダーシップは素直に凄いと思うら。
だからこそ昔は「神童」なんて呼ばれていたんだろうけど。
因みに今回の作戦は一言でいうと、力押し、である。
成績最低のFクラスでは本来あり得ない戦いかただが姫路さん、遠坂さんと明らかにいるはずのない人材が揃っている今のFクラスなら可能だ。
クラスの大部分を姫路さん率いるA班、遠坂さん率いるB班、衛宮君、セイバーさん率いるC班の3つに分けて各方向から押し潰すように制圧する。
なるべく力の差を見せつけて勝てるのがベストだ、とのことだ。その方が他クラスへの牽制にもなり後々やり易いらしい。
因みに僕は遠坂さんと同じB班、一番戦力を整えやすい新校舎と旧校舎の間を繋ぐ渡り廊下を突破する、もしくは相手に元の想定以上の戦力を出させるのが僕らの役割だ。行けるならそのまま突破して代表を討ち取れば良いしダメで裏手から一度新校舎の3階まで上がりそこから急襲する手筈になっている姫路さんのA班、もしくはC班が突くことになっている。別に僕らが決めなければならないということはない。
「…それじゃあこれで説明は終わりだ。質問はないな?」
『問題ねえ!』
『やってやるぜ!』
『遠坂さんに良いとこ見せるぜフォー!!』
何だかんだで皆気合いが入っているようだしEクラスは部活に精を出している生徒が多いことからFクラス程ではないとはいえあまり成績が良くない。
なんとかなるはずだ。
ーーーーー
「済まぬが吉井明久という人物はいるか?今朝ウチのクラスに忘れ物をしていったのだが…」
開戦まであと30分と迫った10時過ぎにクラスに来訪者が訪れた。
ん?この声聞き覚えがあるような…
「ああ、ここにいたか。ほれ、ハンカチをクラスに落としていたのでな、届けに来た次第だ。」
「わざわざありがとう小次郎君。良かったあ落としたのはわかったけどどこに落としたかまでは分からなかったからさ。」
やってきたのは今朝方命を救われたEクラスの転入生、佐々木小次郎君だった。
スラッとした長身にまるで女子かと思わせるような後ろで束ねた長い髪、なんというか、和、といった感じの人だ。
「例を言われるほどのものではない。大分汚れてしまっているしな。まあ自業自得の側面もあるとは思うが…」
「あはは…」
やっぱり下位クラスから宣戦布告されるのは屈辱的な面があるのだろう。自分よりも成績が下の相手に勝てる、と嘗められているわけなのだから。
それを考えればよりにもよって観察処分者の僕にそんなことをされれば怒るのも少しはしょうがないかなと…
「まさか初対面の相手を筋肉ゴリラ呼ばわりするとは恐れいった。中林もあれはあれで可愛いげのある女なのだぞ?」
「なんてことをするんだ明久、お前最低だな。」
「黙れ雄二!その情報を僕に吹き込んだのは雄二じゃないか!!」
「アキ…」
「明久君。それはいくらなんでもひどいです…」
「待って!二人とも僕の話を聞いて! 」
ラグビー部の主将でベンチプレス100キロ上げる化け物って聞いてたんだからびびってもしょうがないじゃないか!
実際のところ女子テニス部の主将で活発そうな女の子だったけどさ!
「まあ良い。こちらの方からフォローを入れておこう。流石にあれでは今後の人間関係に支障が生じる。」
「小次郎君…!」
なんて良い人なのだろう。
目の前のバカで不細工な野郎とは格が違う。
「それでは失礼する。ああ、吉井君」
「なに?」
「(会議を行う時はもう少し声を潜めた方が良い。どこに間蝶が潜んでいるか分からんぞ。)」
「?」
「では今度こそ。次にまみえるときには戦場で。」
そう言うと今度こそ小次郎君は去っていった。
かん…ちょう…?ってなんだろう?さすがにあのカンチョーじゃないだろうし…
「おい明久なにやってんだ!そろそろ配置につくぞ!」
「分かってる!」
まあ今は良いか。この戦いが終わってから姫路さんにでも聞いてみよう。
ーーーーー
「…10時40分!いくぞお前達!開戦だあ!!」
『ウオオオ!!!』
「それじゃあ秀吉、ムッツリーニ、雄二を頼むよ。」
「任せるのじゃ。」
「…任せろ。」
代表である雄二は居場所を公開する義務があり撃ち取られたらそこで戦争が終結するということもありFクラスに護衛を残しとどまることになっている。
今回その護衛を勤めるのはFクラスにしては学力のバランスが良い秀吉と召喚獣操作に長けるムッツリーニが選ばれている。
この二人なら問題ないだろう。
「それじゃあ吉井君、行きましょう。」
「よろしくね遠坂さん」
彼らと分かれ遠坂さんとともに廊下を歩く。
こうして見ると遠坂さんってほんとにきれいだなあ…正統派の美少女って感じだ。
これで成績もよくて、礼儀正しくて、優しいときた。姫路さんの話では運動神経も良いらしいしこういう人を完璧と呼ぶのだろう。
「吉井君?私の顔になにかついてますか?」
「あっ、いや何でもないよ!」
「そうですか?」
危ない危ない。思わずみとれていたようだ。
Fクラスの女子は人数こそ少ないけどクオリティは高いな。
姫路さん、美波、秀吉、更に遠坂さん、良い目の保養だ。
「あっそうだ吉井君。」
「ん?なに遠坂さん?」
突然遠坂さんが立ち止まりまじまじと、僕の顔を眺めてくる。
うわっ顔が近い近いって!
「んー?やっぱり外からは分からないのねー」
「なにがさ?」
「皆が言ってたのよ。吉井君は観察処分者だから一味違うって。」
最悪だー!!!よりにもよってそこを一番最初についてくるとは!!
どうする!?下手に説明すれば僕の好感度は一気にどん底だ!それだけはなんとかして避けないと…
「いや、それは、その…!」
「…?」
まじまじと遠坂さんは僕の顔を眺めてくる。クッ!そんな目で見ないで!
「この戦争が終わったら!そしたら教えるから今は勘弁を!」
「ふっ…あははは!」
「??何で笑うの?」
僕の言葉に遠坂さんが心底おかしそうに笑い始めた。
え?なんで?そんなおかしなこと言ったかな?
「この戦争が終わったらって!それ映画とかなら死亡フラグも良いところよ? 」
アハハハと笑い続ける。
そうか、確かにそうかもしれない。これが映画なら僕は死亡間違いなしだ。
「あー確かにね。」
「ウフフ、死んじゃだめですだからね?私達は勝たなきゃならないんですから。」
ビシッとおでこに人差し指を突き付けられる。
後ろから恨みのこもった視線が投げつけられるがむしだ。今はそんなことどうでもよい。
「そうだね。ちゃんと生きて戻るよ。」
「よろしい。…そろそろ相手もお見えになったみたいですよ。」
遠坂さんの視線の先にはEクラスの人垣が見える。
そっか、もう渡り廊下か。そろそろ気合いを入れないと。
「それじゃあ皆さん…行きますよ!」
『オオオ!!!』
遠坂さんの号令でFクラスの皆が駆け出す。
さあ、闘いの幕開けだ!
どうもです!
本来ならEクラス戦終わらす予定でしたが視点変化多いかもなので分けました!
さてさて珍しく正攻法雄二の策、その正否はいかに。
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