Side by 雄二
【雄二よ。今回はやけに手堅いのじゃな。】
各所で戦闘が開始したという報せが届いてから数分。
さすがにここまで早く事態が動く、ということは考えづらい。
なので現在は実質暇になっているのだがそんなときに突然秀吉がこんなことを言ってきた。
【ん、どういう意味だ秀吉?】
その言葉になにか嫌な悪寒を感じ聞き返す。
全くこいつの言うことはなんというか真実味が強いから困る。もちろんそれに助けられることも多々あるのだが。
【いやのう、いつものお主ならなにをやるにしても完全に相手の裏をついて完膚なきまでに叩きのめすのが信条じゃったとおもうのじゃが…】
【あー確かにそうだな。今までの俺の戦い方見ればそう思うのも仕方ないか。】
秀吉がそう思うのも納得だ。
俺は今までこのFクラス、もしくは一年の時になにか勝負事をする際には頭をフルに回転させた奇策、謀略を使うことで状況を強引に好転させるスタイルをとってきた。
それがいきなり今日のようなスタンダードな戦法をとっているんだ、むしろ不審に思わないほうがおかしいくらいだろう。
だがそれにはきちんとした理由がある。
【秀吉。俺達の戦いで戦力的に五分以上だったことがあるか?】
俺の問いに秀吉は顔を曇らせる。
【…ないのじゃ。】
【だろ?元々奇策なんてのは格下が格上の相手との戦力差を強引にひっくり返すために勝負に出ることを言うんだ。もちろんリスクも大きくなる、一つでも歯車が狂えば更に戦況は悪化し負け一直線になるくらいにな。】
【なるほど…】
【だがそれでも今までそういう手段をとってきたのはそうでもしなきゃ絶対に勝てない、そう踏んだからだ。正直考える度に粗、弱点、裏が出てきて大変だ。それどころかその粗を消しきることなくはったりでみんなを乗せたことも1度や2度じゃない…まあそれでも勝ちきれたからそういうイメージを持つんだろうけどな。】
【なら今回はどうだというのじゃ?それなしで勝てるのか?】
【なにもしなければ勝ちきれる。絶対だ。】
不安そうな秀吉に断言する。そう、今回は絶対に勝たなければならないし普通にやれば負けるわけがない。
【秀吉。一つ覚えておくといい。正攻法、って言うのはいうなれば王道、スタンダードだ、だからこそある意味でいえばつまらない。】
【つまらない?】
【そうだ。そりゃそうなるのが道理だからな、元々確率が高い方に転ぼうが人は驚かないしそこにインパクトはない。だが人の目を引く、気を引くのはインパクトだ。】
【それはそうなのじゃが結局なにが言いたいのじゃ?ワシにはさっぱりなのじゃが?】
【まあ落ちついて聞けよ。例えばドラマやマンガを見てみろ、あれはいかに人の気を引き、目を引くのが勝負だ。となるとそれを生み出すための脚本ってうのは基本的に正攻法とは程遠いものになる。ドラマティックな展開なんて言葉があるだろ?あれが浸透してるのはその方が正攻法よりもはるかにインパクトがでかいからだ。そしてそれを多くの人が目にすることになるんだがそのドラマティックな展開を生み出すにはなにが必要か…そう、ひっくり返されるヤられ役だ。そしてその相手は大抵その対極に位置する相手だ。その方が対比としてやり易いからだ。】
【…!そういうことか!】
【お。さすがは秀吉。分かったか?そうなんだ、そのヤられ役を担うのは大抵正攻法だ。スポーツ系なら人数も多く設備の整った強豪。刑事物なら警視庁、捜査本部。こういった面々がまるで無能かのように描かれる。そういった嗜好のものが様々なメディアや他媒介を通して俺達に伝わった結果に出来るのが奇策こそが本当に勝つために必要な手段であり正攻法というものは愚策であって胡座を掻いているものだっていうイメージだ。】
【そして人はそれを疑わないんだ。周りにはおんなじようなものが溢れてるからな。疑う理由がない。だけどな、作戦を考える立場として俺はそれこそが間違いな場面もあると思う。ローリスクで勝負できる力があるならそのほうが良いに決まってるからな。わざわざ実力があるのにテスト勉強であえてヤマをはるなんてことはしないだろ?】
【まあそうじゃな。要するにワシの不安は…】
【そういったイメージの副産物。それに加えてさんざん俺が奇策で場をひっくり返してるのを間近で見てるからな。正攻法に不安を抱くのは仕方のないことだ。】
まあそれを逆手に俺は色々と策を弄してるんだけどな、納得したような秀吉を横目に今後の戦略を考える。
単純な合計点数のみで判断できる戦力としてはこちらが1,5倍程度はあるはずだ。遠坂と姫路が強すぎる。この二人だけで約10人分。
ただこれは単純な点数の話で実際1対1になればなにもできないだろうということを考えれば二人だけで恐らくEクラスの半分を相手にしてもなお負けるかどうかと言われればそう簡単にはいかないだろうと思う。
どうやっても負けるはずがない。
だが万が一の奇跡も起こさせない為にも更に俺は詰める。その為にはあることが必要になるのだが…
【…なにか気になるのか?】
【ああ、まだ時間がかかるとは思うが。】
相変わらずムッツリーニは鋭い。こいつならばもしかすると俺の狙いに気付いているのかもしれない。
【…伝令だ!】
【おお。横溝か、どうした?】
そんなとき横溝が息を切らしてFクラスに飛び込んできた。
あいつは…たしかC班だったか。
一体なんだって言うんだ。まだ全然時間も経っていないが
【Eクラス代表中林が主力メンバーを引き連れてメイン通路のB班ではなくC班のほうに進行!対戦科目が悪いのか相手の一人は強いわ、セイバーさんが機能しないわでヤバイんだ!】
【…!】
【雄二よ!】
【ムッツリーニ、C班の方の教師は誰だ?】
【…ちょっと待て…多分竹中】
【古典か…】
焦ったように秀吉が俺を見る。
だがこれも全て予想の範疇だ。全ては俺の想定の中で進んでいる。
まあここまで動きが早いとは思わなかったからそこだけが誤算と言えば誤算か。
【よし、俺達もでるぞ。】
【いや、救援は求めたけどそこまでは…!坂本?お前やけに落ちついてないか?】
【そうか?そんなことはないさ。】
そうは言ったが実際のところはそうだ。俺は完璧に、この上ないほど落ちついている。
【そうだ秀吉。】
【なんじゃ?】
【見せてやるよ。正攻法の強さってやつをな。それじゃあいくぞ。】
ーーーーー
Side by 士郎
【どうしたんだセイバー?神妙な顔しちゃって】
【…そう言われるとそうかも知れませんね。】
なんだかテンションの低いセイバーを気遣うが随分と歯切れが悪い。
ちゃんと朝飯も食べてきた筈なのに珍しいな。
【体調が悪いなら無理しなくて良いぞ?後は俺がどうにかするから。】
【いえ…そういう訳ではないのです!ただ…】
【ただ?】
【あまりこういう軍を率いるのはあまり気乗りがしないなと。】
【ん?だってセイバーは昔これの何倍も…もしかしてまだ吹っ切れていないのか?】
セイバーはごめんなさい、と頷く。
それにたいしてしょうがないよと肩をポンポンと叩く。
セイバーは自分の生前を後悔している。王として成してきたこと全てに。色々と説得したり自分を責めることではないということは何度も話してきたりしたがそう簡単に割り切れるものではないのだろう。
もちろん軍をまとめて戦う、というのも王様の大事な使命だっただろうからトラウマになってもそれは文句を言われることではない。
【まあそんなに肩肘張らずにいこう。別にこれは本物の戦場じゃない。学生のスポーツみたいなものだからな。】
【そうですね、士郎。】
持ち場へ着いた後もしばらくは待機だった。
元々坂本の話だとここはそんなに優先されるポイントじゃないみたいだからこうなることもあるとは言っていたから予定通りと言えばその通りなのだろうけど。
【…!士郎!】
【来たか!…えっ!】
勘や察知に優れたセイバーが誰よりも早く異変に気付く。
セイバー程ではないが足音からどれくらいの人数がうごいているかくらいは俺にも判断がつく。
5…10…15…なんだと!
【どういうことです!?主力はB班がつるはずでは?】
【わからん!まさか遠坂がしくじったのか!?】
あの凛に限ってそんなことが有り得るのか!?
確かにうっかりをやらかすのが凛という人間だけどそれは本当に勝負どころだけだ。
【おい、どうしたんだ?】
【相手が来たのか?】
徐々に気づき始めたのかFクラスの皆が騒ぎ始める。
こうなったら…やるしかない!
【ああそうだ!恐らく相手のほうが数も多い!だけど諦めるな!俺達はこんなところで負けるわけにはいかないんだ!】
【【おう!】】
【士郎も人を扱うのがうまくなりましたね。】
【そうか?】
活気づくクラスの面々を見てセイバーがなにか複雑そうな顔をしながらそんなことを言ってくる。
なにが言いたいのかはわからないが今はそんなことをしている場合じゃない。とにかくこの場を乗り切る…!
【アサシン…!】
【久しぶりだな、セイバーとそのマスターよ。】
【そう言えば話すのは結構久しぶりだな。】
数分後、乱戦のなか一人の男が俺達に向かいあう。
その男はかつて凌ぎを削った侍。
【この試召戦争だと代表は出てこないっていうのがセオリーだと聞いたがわざわざそれを破らせたのは貴方だったか…】
【その通りだ。ちと耳よりな情報を手に入れたのでな。やるならこうするのが最良だと進言した次第だ。】
【耳よりな情報…?】
その言葉が妙に引っ掛かった。
【そうだ。Fクラスの吉井明久といったか?彼は少々注意力にかけるな。】
【明久だと…お前まさかあのハンカチに!】
【鋭いな。そうだ気乗りはしなかったが超小型の盗聴機をつけさせてもらった。ハンカチの飾りというかバッチにすり替えてな。】
【…見損なったぞアサシン…!そんな卑怯な手を!】
【何とでも言うがいい!】
【…!】
アサシンの独白にセイバーが憤るがそれに対してアサシンが聖杯戦争時にもなかったような感情の昂りを見せた。
【拙者もようやくあの山門から動く自由を得たのだ!このチャンスを逃したいわけがないだろう!】
あー…こいつも多分なにか可哀想な目にあってるんだな…
本来なら怒るべき場面なのだが何故だか妙に同情してしまった。
【済まないな…それでは勝負といこうか。試獣召喚!】
【試獣召喚!】
【試獣召喚!】
『古典 Fクラス アルトリア&衛宮士郎vsEクラス 佐々木小次郎 25点&183点vs268点』
【なあ!?】
なんだアサシンの点数は!?あいつ自分はただの農民で学はないとかブラフ張りやがって…あのやろう!まあまだそれは良い。もっと問題は・・
【あのお…セイバーさん?】
【申し訳ない…日本語、それも古学はちょっと…】
【ああ…うん、ドンマイ。】
これはヤバイことになりそうだ…
ーーーーー
Side by 明久
「ハア!ハア!」
C班の皆が集まっているところへと急ぐ。
決壊してしまえば雄二たちがやられるほうが追い付くよりも先になるかもしれない。なんとか、間に合わせなければ!
階段へと差し掛かる。ええい!ここが無駄に長いんだよ!
「吉井君!」
「なに?」
イライラしながらもかけ降りようとすると遠坂さんから声がかかる。
「もしも覗いたら…分かってますね?」
「へっ?何を言って…って遠坂さん!?」
階段は十数段、高さとしてはかなりのものだ。
しかし遠坂さんはそんなことなく一息で飛び降りたのだ!
「吉井君!早く!」
「わ、分かってるよ!」
ぴょんぴょんととんでいく遠坂さんの後を追う。
なんだろう…どんどん遠坂さんのイメージが音をたてて崩れていく。
「うわっ!酷いなこれ…」
「残ってるのは衛宮君とあと数人じゃない!?相手は20人はいるわよ!」
必死に走り続けるとようやく乱戦の騒ぎまでたどり着く。
状況は絶望的。 衛宮君がこの間も使っていた盾をつかって皆の分を防いでいるがそこに表示される点数はもう二桁。
いつ壊れてもおかしくない…!
「そこまでよ!アサシン!」
「アサシン…?あっ佐々木君じゃないか!」
一番点数が高い相手の元へ駆け寄るとそこにいたのはあの佐々木君だった。
その召喚獣は侍。とても似合っている。
「面白い真似してくれるじゃない…!よりにもよって私のとこに囮を送り込むなんて「潮時か」なめた真似…え?」
「なんで!?」
だがしかし遠坂さんの姿を認めると佐々木君は召喚獣を引っ込めてしまった!
まだ点数も残っていたのに一体なぜ…
「ちょ…!なにやってんのよ佐々木君!」
それに驚いたのは僕達だけではない。Eクラス代表の中林さんがこちらへ走ってくる。
「潮時だと言ったのだ。中林。お前は状況判断が甘すぎる。Fクラス程度楽勝と踏んで戦力分析を怠った結果がこれだ。姫路さえ抑えればどうにかなると踏み遠坂の存在を知らず一か八かの奇策に走らざるを得なくなった時点でそもそも駄目だったのだ。」
「でも…!」
「まだいけると?今回の戦いは姫路、遠坂の2名が戦場に参加する前に防衛戦を突破し孤立した代表坂本を討ち取れるかどうかというものだったはずだ。だが遠坂が参加した以上仮にここを切り抜けられたとしても坂本を倒す手段はあるまい。私が一番戦える科目の教師がうまく来るという幸運があっても無理だったのだ。これ以上無駄な戦死者をだすこともあるまいて。」
「くっ…!」
「それに見てみろ。あの坂本という男。どうやら全てお見通しだったようだぞ。」
「えっ…なんで…なんであんたがここにいるのよ!」
中林さんが悔しさ全開の叫びを上げる。
その方向を見てみると…
「おー明久。意外と速かったな。」
「雄二!?」
ここにいるはずのない悪友の姿があった。
「罠もなにも読んだ上で正攻法で叩く。これが出来るのが最強なんだよ。」
どうもです!
vsEクラス決着。
全てを読んだ上での正攻法。格上の戦力を持った場合雄二ならこれくらいやるんじゃないかと思いますね~
次回は短編!次は誰メインの短編にしようかなあ・・・この絡みみたいとか言うのも受け付けてますよー!笑
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