なんとここにきての新連載です!
新連載と言っても、更新し続けていけるかはモチベ次第なとこがありますが(白目)
というわけで、初めましての方は初めまして!ぶーちゃん☆と申します。
三年ほど筆を置いていたのですが、筆を置いている間に、どうやら俺ガイルSSが虫の息らしいと読者さんから教わりまして、俺ガイルは未だに好きだけどSS減っちゃって読みたいものが見つからないよ〜、という少数精鋭なニッチさんに向けて、じゃあ今こそが書き時だな!と。
そんなわけで、痒いところに手が届く系作者がお贈りするニッチ短編集です。どぞ☆
「わ、びっくりしたー」
「や、やあ、折本さん!」
「お、会長だったんだ、よっすー」
リノリウムの床をきゅきゅっと鳴らし、さて、今日はバイトも休みだし、このあとどしよっかなー? と、ウキウキの放課後の廊下を軽い足取りで歩いていると、不意に見知った顔と遭遇した。角を曲がったところで急に現れたもんだから、まるであたしが通るタイミングを見計らってたかのようで、ちょっとだけビクッとなってしまった。ウケる。
玉縄会長。うちの学校の生徒会長である。
うちの学校では、一年の頃から色んな意味で有名人だったから、あたしも前々から知ってはいたけど、彼と直接知り合ったのは、友達に誘われて有志として手伝いに行った生徒会主催のイベントからだ。
正直その誘い自体はあんまり乗り気じゃなかったんたけど、当時は比企谷と葉山くんの件でちょっと思うところがあったから、ほんの気晴らし程度のつもりで誘いをお請けしたのだ。まさかそのイベントでまた比企谷と再会できて、その上結構楽しい時間を過ごせるとは思わなかった。ホント行ってよかったー。
で、それはそれとして、実のところ、あたしはこの会長の事ぶっちゃけ苦手だった。
意識高い系とか言うんだっけ? スタバとかで此れ見よがしにノーパソかたかたかた、ったーん! とかやってる人達。ああいうの見てよく友達とネタにしたりウケたりしてたから、明らかにそういう系であろう会長のことは、んー、どーだろー、って思ってたとこあんだよね。
でも、比企谷のことがあったから。
つまんないと思ったのって、意外と見る側が悪いのかもって、実はめっちゃ面白くて、めっちゃ変だけど結構いいヤツだった比企谷が教えてくれたから。
だから変な先入観をぽいっとして、意識高い系の生徒会長としてではなく、うちの学校の玉縄会長として、ちゃんと彼自身を見てみようって思えた。
で、ちゃんと見てみた結果、意外と面白い人、と認識することが出来たのだ。あのクリスマスイベントの一件以来、変なカタカナ英語を乱用するの控えてるみたいで、ようやく会話成立するようになったし。
ま、あくまでも現時点では『結構面白いんじゃん?』どまりなんだけどねー。
「なにげに久しぶりじゃない? 総武との合同プロム以来だっけ?」
「え、……い、いや、春休みに折本さんのバイト先のカフェで何度か会ったんだけど……」
「そだっけ? あー、そーいえば何回か接客したかも。あはは、学校で会うの久しぶり過ぎて、そっち忘れてたかもー。ウケる」
「あ、あはは。ぼ、僕あの店のコーヒーの味が好きなんだよね」
「毎度ありがとうございまーす!」
そう言って 、ホールのバイトよろしく、恭しくお辞儀して見せるあたしは、もしかしたらあの店のバイトの
これだけ売上に貢献してるんだし、あれだ、バイトルさんに時給上げてもらおう。
「と、ところで折本さん」
「ん? どったの?」
偶然の遭遇もサクッと終了し、さて、そろそろ街にでも繰り出しますかー、と思っていたところ、会長がちょっと真面目くさった面持ちで、「じゃね」と言い掛けたあたしを呼び止めた。
「……このあと、ちょっと時間、あるかな」
「へ?」
ん? なんだろ。まさかデートのお誘いとか?
んー、ナイナイ。別に会長とはそういう雰囲気になったことないし、今後そういう雰囲気になることも永遠にないし。
じゃあなんだったらこの状況に合致すんのかな、と暫し首を捻ること数秒、ふと、ある可能性を閃いた。
「あ! もしかしてまた生徒会の有志のお誘いとか?」
「へ? あ、ああ、うん、実はそうなんだ」
「やっぱりー」
そう。あたしと会長との間にあるのは、生徒会の会長と有志の手伝いという関係性のみなのである。それ以上もそれ以下もない。
それにしても、正解だったわりには、なんか会長動揺した感じでわたわたしてるんだけど。ウケる。
「あはは、なんかあたし、よく生徒会の手伝いしてるよね。ま、面白いからいーんだけど」
「はは、た、楽しんでもらえて何よりだよ」
「で、今回はなにすんの? てかなんであたし誘われたの? 今まで会長から直接誘われたこと無かったよねー」
「え……!? そ、それは」
「あ、わかった! また総武と合同でなんかしたいとか思ってんだ。総武との……てか比企谷とか由比ヶ浜さんとコネ持ってんの、あたしくらいなもんだもんねー」
「や、やー、実はそうなんだよ。いつも悪いね、折本さんを頼っちゃって」
「いーよいーよ、あたしも比企谷たちとなんかやんの面白くて好きだし」
ほんと、比企谷と一緒にイベントすんのってウケるんだよねー。次は何しでかすか分からないジェットコースター感? あの面白さを、中学んときからちゃんと発掘できてればなぁ。不覚。
にしても、比企谷って名前出したとき、会長が苦っがいコーヒー一気飲みしたかのような顔したけど、なんだろ?
「で、なにすんの?」
「あ、あー、……えーっと」
あれ? なんでそこで言葉が詰まるんだろ。合同でなにかやりたいって意思を相手に働きかけるつもりなんだから、ある程度の草案くらいは決まってるかと思ってたんだけど。
んー? と訝しげに会長の顔を窺うあたし。すると会長、ハッとしてポンッと手を叩いた。
「そ、そう! 新入生歓迎会……! 新入生歓迎会の話を役員達と進めていたんだった」
「なにそのいま思い出した感、ウケる! あと新入生歓迎会を他校と合同でやるって発想が意味わか過ぎてウケるんだけど! もー、ほんと会長って面白いよねー」
思わず腹を抱えて爆笑しそうになってしまった。
やっぱ先入観だけで人を見ちゃいけないんだなー。だって、つまらなそうな意識高い系の人、ってイメージでしかなかった会長が、実はこんなに面白い人だったのだから。
もし『つまらないと思うのは見てる側も悪いのかも』という、ちょっと考えればすぐ解るような簡単なことに気づかせてもらえてなかったら、これからの人生、たくさん損しちゃってたかも。
うん、やっぱり比企谷には感謝してもしきれないなー!
そんなことを考えながら、比企谷の面倒臭そうな顔を思い浮かべるあたしの笑顔は、より一層輝くのだった。
※※※※※
そんな輝くような笑顔を見て、僕は心臓の高鳴りを抑えることが出来ないでいた。
本当は、ただお茶に誘いたかっただけ。そのためにあそこで待ち伏……待機していただけの今日。まさか生徒会の仕事の誘いと勘違いされてしまうなんて……。流石に肝を冷やしてしまったよ。
でもあんな穢れを知らない真っ直ぐな笑顔を向けられてしまったら、取り敢えずそういう事にしておくということに、決してまちがいはないはずだ。
ビジネスパートナーとしての仲をこれまで以上に築いていけば、デートに行くくらいまだまだチャンスはあるのだから。
正直、比企谷という名前が折本さんの口から出てきたときは不快な気持ちを覚えたものだが、この輝くような笑顔を見てしまった途端、そんな穢れた気持ちは、何処か遠くの空の彼方へと羽ばたいて行ってしまったよ。
あぁ、やはりいい。折本さんはいい。
本当は総武高校に通いたかった。僕のタレントを存分に発揮できるはずの、あの県内有数の進学校に。
でも、ほんの僅かに足らなかったんだ。偏差値が。
いや、それでも受験すれば合格していた未来だってあっただろう。むしろその確率のほうが高かったはずだ。
それでも第一志望を海浜にしたのは、一重に万が一落ちてしまうのが我慢ならなかったから。仕方なく滑り止めに進学する、という状況を受け容れなくてはならないのが耐えられそうもなかったから。
だから僕は、海浜に決めたのだ。
──校風に惹かれたから海浜を選んだ。
そういうロジックさえ存在していれば、総武を受験しなかったエクスキューズが成り立つからに他ならない。
しかし、それでもやはり何処かに後悔はあった。受験しておけば良かった、と。故に総武に対して必要以上の対抗意識を燃やしていた若かりし時代もあった。
でも今は、海浜にして本当に良かったと思う。この学校は、僕にこのような素敵なミューズをもたらしてくれたのだから。
折本さんは、我が校でも指折りの人気を誇る女性。ルックスは言うまでもなくスペシャル。誰にでも分け隔てなく接するサンフラワーのような性格もマーベラスである。
当然、彼女を狙う不埒な男たちは数多い。しかし僕は、そんな烏合の衆たちとは一線を画している。
なぜなら、ルックスもタレントもカリスマ性も、僕も海浜においてスペシャルな存在だから。そして、校内でも彼女と特に親しい異性でもある。
ビジネスパートナーとして何度も僕に協力してくれた彼女。優秀な僕への好感度もすこぶる高いはず。彼女の僕への興味を、ひしひしと肌で感じるほどに。
中学時代のクラスメイトらしいが、妙に仲が良い気がする。
一見パッとしない彼だが、そこは総武に合格し、さらには総武の生徒会活動に携わるだけのことはある。流石に僕には及ばないが、ああ見えて、なかなか仕事が出来る男なのである。
折本さん程の女性が彼に靡くとは到底思えないが、彼が彼女に一方的に言い寄ってくる可能性も否定出来ない。その際、彼女はどんなアンサーを出すだろうか? 答えは彼女の胸の内のみ。
だから仕事の誘いと勘違いされただけならまだ良かったのだが、また総武高校との合同イベントという話になってしまったというのは、僕にとってマイナスと言わざるを得ない。まさか折本さんは、やはり彼と一緒に仕事がしたいのだろうか?
……あまり気乗りはしないが、ここはやはり確かめておいた方が無難だろう。
「そ、それにしても、折本さんは彼と本当に仲が良いよね。中学の時からずっと仲が良かったのかい……?」
「へ? あー、実は比企谷とは中学んとき……」
「え」
「あ、やっぱなんでもないやー」
……ま、まさかまさかのカウンターだった。なんでそこで言い淀むんだい!?
少しだけ気まずそうにはにかむ僕のミューズ。ま、まさか……、実は、元彼とかいう、そういう肩書き、が……?
……い、いや、仮にそうだとしても。そうだとしても!
べ、別にいいじゃないか。元は元。今ではないのだから。
これから、僕が彼女の今になればいいだけの話さ。
「それよりさ、合同で新歓ってなにやんの? 想像つかなすぎて、由比ヶ浜さんにLINEする前に一応概要くらいは知っときたいんだけど」
「へ? あ、あぁ」
折本さんと彼の過去を想像して葛藤していると、彼女から不意に不味い質問が投げ掛けられてきた。
元々そんな予定ないため、どう言ったものか。
「そ、それはだね、たたき台の段階過ぎて、まだ外部に伝えられるレベルのものではないんだよね……」
「あはは、外部って! こっちから一緒にやろうってお願いするのに、外部ってなくない?」
「そ、そうだよね」
これは困った。たとえこの場限りの一案であろうとも、今すぐに思いつくものではない。なぜなら、高校生が学校行事として他校と合同の新入生歓迎会なんて、常識的に考えて有り得ない発案だからだ。
「……あー、と。……あっ」
しかし、そこは捨てる神あれば拾う神あり。僕はそこで、神の啓示を受けてしまった。
今すぐには考えつかない。しかし、僕ほどの人材ならば、多少の時間を要すればフラッシュアイデアが浮かぶはず。
ならばこの状況を上手く利用して、案を思い浮かぶまでの間を、折本さんとの楽しい時間にしてしまえばいいんだ! そもそも、当初の目的がまさにそれであったのだから。
「え、えーと、この場で説明するのは中々に手間取りそうだから、もし良かったらこのあとカフェでお茶でもしながら──」
「そっかー。ま、内容わかんなくたって、とりあえず話だけでも通しとけばいーよね! 話詰めるのは追々ってことで、一応由比ヶ浜さんに連絡しとくねー! じゃあいつ話し合い出来るか決まったらまた報告するよ、じゃねっ」
そう言って 、彼女は颯爽と去って行ってしまった。
あまりにも見事な去りっぷりに、膝から崩れ落ちるより先に、相変わらずなんて格好良い女性なんだ! と、より一層惚れ直してしまう僕だった。
……だ、大丈夫! 深い信頼があるからこそ、折本さんは僕を信じて連絡を取り付けてくれるのだから。
だから僕は彼女のさらなる信頼を勝ち取れるよう、この無茶なイベントに向けて、最高のアイデアを提供しよう!
比企谷くん、彼女の興味の対象はあくまでも僕一人。君には負けないよ!
そしていつか──いや、そう遠くない未来、君のアグリーを……!
※※※※※
あの忙しない毎日の再来へ期待に胸を膨らませつつ、由比ヶ浜さんへのメッセ内容を考える。なんて連絡しよっかなー。てか比企谷と直接メッセした方が早いんだけど! あいついい加減SNS始めればいーのに。
そんなことを考えながら、思わずスキップ。どうやら、我ながら結構楽しみらしい。
せっかく会長がまたこんな機会を作ってくれたんだし、受験前の最後の青春、思っきり楽しんでやんなきゃね!
ありがと、会長。
にしても会長、なんか言い掛けてたみたいだけど、なんだったのかなー?
──ま、あたしには関係ないことだし、仕事以外の会長には今んとこ全然興味ないし、ま、いっかー♪
おしまい
読んで下さりありがとうございました!
連載第1話目だというのに、客寄せ感ゼロなこのキャラチョイス。ニッチを攻めすぎでは…?1話目にして誰が玉縄読みたいねん、というね。
前々から折玉の全力すれ違ったままSSを書いてみたかったんてすけど、恋する乙女〜で書くような内容じゃなかったので笑
にしても玉縄さんて、原作からしてなかなか重度のストーカーになりそうで恐いですよね☆
そして、鈍感で解ってないのか全部解っててバッサリ切り捨ててんのかよく分からない、いろはすとは違うベクトルの小悪魔感な折本も良き♪小悪党感しか無いさがみん、少しは見習え?
初回からこんなんなので、今後無事に新作を更新できたとしても、どんな酷いラインナップになるかはご想像にお任せします☆
こんな酷い短編集でもよろしければ、また次回更新の際、お目通しいただけましたら幸いです!