まちがった日常系青春物語集、始めました。   作:ぶーちゃん☆

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新短編集2話目になります!

勝負の2話目なので、私の全力全精力を掛けて執筆させていただきました!(フラグ)





(げぼく)はつらいよ

 

 

 

 わたくし、生まれも育ちも千葉幕張です。葛飾八幡宮で産湯を使い、性は剣豪、名は将軍。

 人呼んで剣豪将軍と発します。

 不思議な(えにし)持ちまして、たった一人の親友のために粉骨砕身、戦に励もうと思っております。

 

 

 チャ〜〜、チャララチャラララ〜♪

 お馴染みのBGMを背に、お馴染みの前口上にて参上した(われ)。もはは! もう一度伝おう。我が名は……

 

 

「あんさぁ、あんた名前なんてったっけ?」

 

「ざ、材木座義輝でっす☆」

 

 我の名、材木座だった!

 

 

 この世に生を受けて(とお)(しち)年、今まさに、今生の別れに瀕しておる。

 何故ならば、我は今、獄炎の女王(クイーン オブ インフェルノ)の名を欲しいままにしている恐ろしい女子(おなご)に生殺与奪の権限を握られているから。

 ……な、なんという圧か。我、これほどの圧を受けるの人生で初めて! マスターさん、圧かけて♡圧かけて♡ などと小粋なジョークでもかまそうものなら、瞬時に地獄の業火に焼かれるであろう(白目)

 

 確かに、以前にも死の淵に立たされたことはあった。そう、あの極寒の女王(クイーン オブ コキュートス)と初めて相見(あいまみ)えた日のこと。

 が、しかし、今にして想えば、あの魔女たちの宴(ワルプルギス)は我にとってまだマシな部類であった事が理解出来るのだ。なぜなら、極寒女王は陽の者ではなかったから!

 どちらかといえば陰。溢れ出る陰のオーラ! 属性は我側にあり! ……いやごめんなさい! 我の妄想の中で人を殺す目で睨まないでください!

 ……うおっほん! それに比べ、獄炎女王は完全なる陽。陽も陽。トップオブ陽キャなのである。

 

 ……やっぱさぁ! 陰キャにとって陽キャって天敵なんだよネェ! なんなのあれ、なんで陰キャってこんなに陽キャに恐怖心抱いてるのん? 前世で死ぬより辛い目に合わされたの? 囚人だった我らの拷問係だったのかな?

 しかもその中でもこの御仁は陽キャのクイーン。我もう昇天寸前!

 

 ふぇぇ……! タースケテー!

 

 なぜそんな、地方の寂れたホテルの部屋の額縁の裏を何気なく覗いてみた時に発見してしまった血文字で書かれた恐怖文字のようなモノローグになってしまう状況下に我が置かれているのか。

 それにはこんな、深く深く、そして語るに永い物語が関係しているのである。

 

 

 ──語らねばなるまいな。

 この涙なしには語ること叶わぬ、悲しくも哀しい物語を……

 

 

× × ×

 

 

 あれはダミープロム案が見事炸裂し、狙い通り廃案となった打ち上げ式であった。

 我らは八幡に騙されてカラオケに連れてこられ、スクールカースト最上位の猛者どもとの宴を余儀なくされた。

 あまりの気まずさに、今にも死にたくなった瞬間を幾つも数え、しかしながら途中参加した葉山殿のおかげで、なかなかに愉しいひとときを過ごせたものよ。

 もうホント葉山きゅんだいちゅきー! 我、隼人きゅんに一生ついていくからぁ♡

 

 そんな愉しき宴も終わり、各々が己の家路へと踵を返し始めた頃。

 我も今晩のオカズもとい今晩の夜のお供もとい今晩の新たな叡智を深める為の書物を所望し、アニメイトを求め千の葉舞い散る都(サウザンドリーフキングダム)を闊歩していた時だった。

 

「ちょっとそこの。話あんだけど」

 

「へぁ!? ……わ、我、な、なにか……き、気……障る……した、……しました……か?」

 

「は? なに言ってっかわかんないし。とりあえずこっちこい」

 

「ヒィ! ……わ、我、今から、ちょっと所用が──

 

「いいから」

 

「はい」

 

 と、後ろから突然声を掛けられたと思ったら、あっという間に近くのマックに連れ去られました。

 

 

× × ×

 

 

 え? もう終わり? 回想短っ! 我の涙なしには語れぬ哀しき物語短っ!

 ちなみに今の物語の(かん)、身体接触一切無し! 腕引っ張られるとか首根っこ掴まれるとか一切無しで有無をも言わせぬあの所業。目ヂカラやばくな〜い?

 も一度ちなみに、カタリやカツアゲの(たぐい)かとも思いきや、女王様、店に入ると颯爽と自分の分の注文と会計だけ済ませて、一人とっとと席に鎮座しました。

 この状況下にありながら、あ、奢らされないんだ! という事態に「やだいい人! 惚れちゃう!」とか思っちゃった我は、家畜根性が訓練されすぎなのであろうか?

 

「は? そんな名前だったっけ」

 

「へ?」

 

 なんか色々と考えさせられてたら、突如閣下からのお叱りが。どうやら我、名乗りをまちがえたみたい。

 

「なんかー、……あれ? なんつったっけ」

 

 そうとてもダルそうに過去の記憶の糸をお手繰りなさる閣下。そんなにダルいんなら、わざわざ我ごときの名前など思い出さなくともよいのでは?

 それにしても、そもそも我、名前まちがえたっけ?

 

「なんかこう……、もう中、みたいな」

 

 我、自作のダンボール工作でキチ系ほのぼのコントなどせぬわァ!

 と必死の形相で突っ込もうかなと考えたのはコンマ一秒くらい。コンマ二秒後にはゲヘヘとへつらった笑みを浮かべ──

 

「わ、我、中二でっす☆」

 

 見事名乗りを上げたった。

 もうね、我ごときは由比ヶ浜殿から授かったあだ名で十分ですわ。

 

「そーそーそれそれ。てか、なんか変な名前じゃね?」

 

「……」

 

 ちゃんと名乗ったのにお前が狂った訂正させたのだろうがァァァ! なんて、全然、ちっとも、これっぽっちも思いませんでした♡ いやマジでマジで。だから睨まないでください。

 

 

× × ×

 

 

 自己紹介もようやく終わり(相手からは一切受けてませんけど!)、ここらでいい加減本題に入らせていただきたいところである。

 陽キャトップの美少女ギャルとのティータイムなぞ、そうそう経験できるものではない。この機会を有意義に過ごさぬなど勿体ない、武士の名折れでは? などとお思いの方もおられよう。

 

 が、ぶっちゃけ恐いから早く帰りたくて仕方ない。

 だってこの人、ギャルはギャルでもヤンキー寄りだし! むしろギャル寄りのヤンキーまである。

 オタクに優しいギャルとかいう昨今のオタ界の風潮、あれなんなんだろうね? オタク、ギャル好きすぎじゃない? そんな都合のいい優しい世界、存在するわけないじゃーん! リアルからすれば、ギャルなんてただただ恐いだけ!

 ほら、今だってそう。自分で呼びつけておいて、カッカッカッと苛立たしげにテーブルを爪でお叩きになる女王様。閣下だけに。

 ……こんな空間、耐えられるわけがなかろうが! えーい、面倒なり! こんな理不尽、ガツンと言ってやらねば気が済まぬ!

 というわけで、この謎時間を早く終わらせて早く帰ろう。一体なぜ(われ)が女王に呼び出されたのか。その理由をとっとと訊いてしまえばよい。そして一刻も早くお家に帰ろう!

 

「……ぁ……ぅ」

 

 ダメだよぅ! 声出ないよう! 三杯目のマックシェイク一気飲みして喉潤したのに、恐怖と緊張で、我、声出ないよぅ!

 

「ん? なんか言った?」

 

「……ぃ、ぃぇ……」

 

「そ?」

 

 おいぃぃ! せっかく閣下が訪ねてきて下さったんだから、ちゃんとお話しようよ我! 話聞き出すチャンスだったでしょ今ぁ!

 ……我もうダメポ。我、このままここで朽ちてゆくんだ。女王閣下に睨まれたまま、このままここで腐ってゆくしか道が無いのだ。

 

 そう思っていた時期が我にもありました。次の瞬間、女王が「はぁぁぁ〜……」と深く深く溜息するまでは。

 

 はい? 溜め息吐きたいのこっちなんですけど? なんで強引に連れてこられて一方的に(だんま)り決め込まれて縮こまっているだけの我が溜め息つかれなきゃなんないのん?

 

 我、無性に腹が立ったね。なにせ、顔に掛かりそうな程に深く吐き出された美少女ギャルの息を、肺が一杯になるくらい余すとこなく吸い込んだからね。

 ふむ、美少女の吐く息は、なぜにこうも甘いのか。

 

「……あんさ」

 

「ヒィッ……! は、はい」

 

 ビクぅっと震え、ピシッと背筋を伸ばす我。

 あ、危ういところであった! 怒りに我を忘れ、危うくまるで変態紳士のような行為に及ぶところであった。(手遅れです。完全にただの変態でしたありがとうございました)

 

 不意に掛けられた女王からの御言葉。思いのほか永く待たされたこの状況に対する解がようやく語られるのかと、注意深く窺い身を固くして待っておると──

 

 

「……ちょっと、聞きたいことあんだよね」

 

 先程までの威風堂々どこへやら。そう弱々しく口にした女王……いやさ三浦殿は、頬をほんのり朱に染めて、気まずそうに我を見ておりました。

 どうやらずっと黙ってたのも深い溜め息吐いたのも、イライラしてたんじゃなくて緊張してただけみたい。

 

「なっ! なんでござろうか!?」

 

 我、一気にドキドキしたね。

 え? これワンチャン? オタクに優しい……どころかオタクの不器用な優しさが密かに気になってるギャルが実在した!? なんと我、いつの間にかトップオブトップのハート射抜いてた!? とか思っちゃったりなんかして、ついつい気が大きくなったよね。

 

「チッ……、あんさ、どーでもいいんだけど、その人を小馬鹿にしたふざけた喋り方、どうにかなんないわけ?」

 

「ぶひぃ……!」

 

 どうやら違ったみたい! 夢打ち砕かれるの早っ!

 すみません(われ)調子に乗りかけちゃいました!

 

「あー、ごめん、こっちが勝手に呼んだわけだし、今は……まぁ、我慢するし」

 

 びっくりするくらいビクンビクンしている我を見て、不承不承な様子で気怠そうに髪を掻き上げながらも、我の口調を容認してくださるらしい三浦殿。

 圧倒的上位の立場にありながら、自身の誤った行いを反省し、下自民(しもじみん)ごときにきちんと謝罪・譲歩できる陽キャトップギャル。

 やだイケメン! 我を主人公とした女王がヒロインの甘酸っぱいラブコメ要素は皆無だったけど、むしろ我がヒロインになっちゃいそうまである。

 

「フハハ! そうであるか! あい分かった! では拙者、遠慮せずそなたと相見(あいまみ)えようぞ!」

 

「……チッ」

 

「すみません! 極力普通に喋ります!」

 

 嘘じゃーん! 全然我慢してないじゃーん!

 ふ、ふむ、やはり調子に乗るはこの場において愚策というものよ(白目)

 

 

 

 …………さて、張り詰めていたこの場の空気を弛めるこのコント寸劇も、そろそろこの辺で良かろうか。クハハ! 三浦殿の緊張を和らげる為の我の敢えての道化ぶり、愉しんでいただけただろうか?(涙目)

 それでは、本題に入らせていただくとしようぞ。

 

「し、して、三浦殿は何用にて我を……あ、ごめんなさい、三浦さんはどうして僕を呼んだのでしょうか?」

 

 未だ、些か道化ぶりを隠しきれぬ我にギロリと視線を突き立てる女王。我の心臓には、その妖しく研ぎ澄まされた妖刀村正のような爪が突き立てられてるけどね!

 

「……あー、うん、まぁ、ね……?」

 

 なにやら言い淀む女王閣下。普段言いたいことをはっきり言い過ぎて、触れるもの皆傷つけまくり、触れてない者でさえ巻き添えで惨殺されると評判のこの女王にしては、とても珍しき光景である。何万回ガチャれば、こんなレアを引き当てることが出来るのであろうか。

 しかし次の瞬間、意を決した女王の口から、ついに漏れ出るのである。あまりにも意外すぎる、我が戦友にして宿敵である(きゃつ)めの名が!

 

「……中二ってさ、ヒキオと仲いいっぽいじゃん? だからちょっと、ヒキオのこと訊こうかと……」

 

 

× × ×

 

 

 ……ハッ!?

 我、いま一瞬気を失ってた! 危うく脳裏に【続く】の文字が躍りかけてた! このやりきれない想いを後編の自分に丸投げするとこだった!

 ……成る程、そうかそうか。フフ、フハハ、フハハハハ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………ぅおのれぃ八幡んんん!! 貴様ッ、またしても自分だけ美味しい思いするつもりかァァァ!?

 ただでさえ毎日毎日あのいかがわしい部室で美少女たちとイチャコラしとる上に最近ではそのハーレムに生徒会長殿まで加えたくせに、さらには誰もが畏れ誰もが憧れる獄炎さんまで手籠にするつもりかァァァ!?

 ……ねぇねぇ神様ズルすぎなーい? なんで八幡ばっかりー? 我にも美人声優さん紹介してよお! 美人Vtuberさんても可。

 

「……で、では三浦殿は、……は、八幡を好いておる、と……?」

 

 血涙と脳汁をドバドバ流しながらも、我は苦痛を伴いつつなんとかそう問うてみた……!

 だってもうバカらしくなってきちゃったんだもーん! やってらんなくなってきたんだもーん! はいはい我踏み台踏み台! 早くかーえろ!

 

 そう半ばやさぐれた心境で女王にお伺いを立ててみたのだが──

 

 

「……ひぃぃぃぃぃ〜っ!」

 

 女王閣下、本日最大級の殺意を込めに込めて、我を威殺しにきてました!

 

「は? なんであーしがヒキオなんか好きになんなきゃならないわけ……? 寝言は寝て言えし。なんなら、あーしが永遠に寝かしてあげっけど……?」

 

「ずびばぜん!!」

 

 我、全身の穴という穴から汁出たね。特になんの汁が一番出たかって? 言わせんな恥ずかしい。

 

 

 というわけで、汁は未だ出っぱなしではあるものの、一番懸念していた事態(八幡ハーレム拡大!)にはならずに済んだようである。ふぅ、安心。

 であるならば、一体全体どういうことであろうか。別に八幡を好いているわけでもない女王が所望する、八幡の情報とは……

 

「……で、では、三浦殿は、なぜに八幡のことが訊きたい、と……?」

 

 だから我訊いてみたね。また不機嫌そうにカッカッカッとテーブルに風穴開け始めた閣下に。

 あまりに怒りを顕にした彼女に、正直また失禁してしまいそうである。汁の種類言っちゃった。

 しかしこのままでは埒が明かん。もう早く解放して!

 

「……あんさ」

 

 すると三浦殿、またもやモジモジと身を捩りだしたではないか。

 ふぅむ、八幡とのラブコメでは無かったのに、この恋する乙女っぷり。どゆこと?

 

 そして彼女はようやく重い口を開くのだ。さんざんキレてさんざん照れて、そしてブチ切れてテレッテレになった末に、突然のこんな告白を。

 

「……隼人って、超優しいじゃん」

 

「……はひ?」

 

「ホント、超優しくて超女心わかってて超カッコよくて……、めっちゃ素敵……」

 

 いやいやいや! なんで? なんでここにきて突然葉山殿の惚気話!?

 ちょっと閣下? 両手を頬に添えてイヤイヤしてる場合じゃないんだが? ただの色ボケに付き合わされてるのかな? 今までの時間が無駄すぎて、ことと次第によっちゃ、さすがの我も泣くよ?

 

 あまりの意味不明な事態に困惑を隠せない我。もう困惑が追いつかないよ……

 この支離滅裂っぷり。これは下手したらメンヘラの気まぐれに巻き込まれただけなのでは? と不安になりかけた時であった。不意に、三浦殿の表情がガラリと変化したのだ。

 

「……でもさ」

 

 つい今しがたまで、熱っぽく艶っぽく、恋する乙女そのままに頬を染め上げておった彼女。

 しかし、今はもうその陰すらないではないか。いま彼女の顔に浮かんでいるのは悲哀。恋破れた乙女のような、深い哀しみに暮れた一人の少女。

 

「み、三浦殿……?」

 

 これはアカン。これは本格的に重度のメンヘラか。

 そうウンザリしかけた時、しかしこのあと彼女の口から語られる意外とも言える想いの丈に、我は柄にもなく、強く胸打たれることとなるのだ。

 

「……そういうの、隼人のほんの一部でしかなくてさ、ホントの隼人は、あんな風にただいい人なだけじゃなくって、もっと性格悪くて、もっと人間味溢れてて、もっともっと面倒くさい人のはずなんだよね。……あーしだってバカじゃないから、隼人があーしに自分を見せてくれてない事くらい分かる。隼人があーしに見せてくれるのは、いつもいい人の部分だけ。それってつまり、あーしには全然心開いてくれてないってことなわけ……」

 

「……ふむ」

 

「それに比べてさ、隼人って、ヒキオにだけは思いっきり嫌な顔すんの。嫌味だって凄い言うし、呆れたり嘲けたり。さっきの打ち上げんときだってそうだったじゃん。ヒキオと二人で話してるときの隼人、めっちゃ自然に色んな顔見せてた。いつも窮屈そうなのに、なんか自分を曝け出せてるってカンジで、めっちゃ楽そうだった」

 

「……三浦殿」

 

「……だからさ、あーし思ったわけ。ホントは今までもそんな風に思ってたけど、さっきのカラオケルームでハッキリした。あーしは、隼人にああいう顔してほしい。ヒキオに見せるみたいな、嫌な顔とか呆れた顔とか意地悪な顔とか、そういうのをあーしにも見せてほしい。いつも窮屈そうにいい人やってる隼人の気持ちの拠り所になってあげたい。でもあーしには、どうしたら隼人があんなに気を許してくれるのか分かんないから、だから少しでもヒキオのこと聞こうとと思ってるわけ。だって、ヒキオのこと知らなきゃ、隼人のことも分かんないままっしょ?」

 

 この告白を始めた当初、彼女の表情には陰が差しておった。正直、このまま陰鬱な雰囲気のままなのかと諦めにも似た心境であったのは否めない。

 が、しかし、話していく内に、彼女の顔は次第に陽を取り戻していった。未だ若干の悔しさは残しているものの、しかしながらこの勝ち気な微笑みはどうだ。ヒキオなんぞには絶対に負けてられぬとばかりの勇猛さ。

 やはりこの御仁は、どこまでいっても陽の者なのだ。喩え一時(いっとき)陰に暮れようとも、彼女の陽は決して陰りはしないのだ。

 

 そんな彼女を、我は不覚にも可愛いと思ってしまった。見目麗しくはあるが、ただ恐いだけかと思っておった獄炎の女王。だが、そんな無敵の彼女にもこんな一面があるのだ、と。

 弱さ、迷い、悩み。

 そんな、我々とさして変わらぬ脆い部分があるのだと知った今では、この勝ち気な笑みも、とても可愛らしく見えてしまった。

 

 ……我は、大きな誤解をしておった。

 陽キャの恋愛沙汰なんぞ、大した想いもない、軽く薄っぺらなものかとばかり思っていた。

 しかしそれは偏見からくるただの誤解であった。

 あるではないか! 陽キャの中にも、かような猛き魂の叫びというものが!

 

 

 ──だから我は、そんな彼女の力になろうと思えたのである。

 彼女の力になれるよう、彼女の勇ましさの一助になれるよう、とってもイイ笑顔で、彼女に向けてサムズアップをブチかましてやったのだ!

 

「なるほど! あいわかった! つまり三浦殿は八幡のようになって、葉山殿から蔑まれた目を向けられて興奮したいガハァッ!?」

 

 化粧ポーチ投げられた! ちょっとそれなに入ってんの!? いま顔面になんかゴツゴツした硬くて重いものが食い込んだよ!?

 

「ま、待って待って待ってくださいお願いしますぅ! わ、わわわ我、ただちょっと場を和ませようと小粋なジョークを」

 

「うっさい死ね」

 

「ゴハァァ!?」

 

 ちょ、トレイを振りかぶるのやめてくださいお願いします! マックの優しさで、確かに角は鋭角じゃないけども!

 

 

× × ×

 

 

 獰猛な猛獣をあやすこと幾ばくか。ようやく怒りをお鎮めになってくださった閣下。すでに我ボッコボコだけど!

 それから我は、彼女に語って聞かせたのだ。我が知りうる限りの、彼女がまだ知らぬ比企谷八幡という人物の人となりを。

 

 ときに笑い(我が)、ときに驚き(我が)、ときに興奮の坩堝(るつぼ)に叩き落され(我が)、気がつけば我のテーブルの上にはマックシェイクの空カップが八本ほど散らばっておった。バニラ、チョコ、ストロベリー。色々な味を楽しめる美味極まりないシェイクなる魅惑の媚薬。でも結局最後にはなぜかバニラに戻っちゃうんだよね! なんなんだろうね、あの現象。

 我は、皆が一度は通ること請け合いの、あの謎現象に名を授けようと思う。それは…………、おっと! 気がつけば話が逸れに逸れとるではないか! あまり自分の世界に没入してしまうと、女王様に火星に代わって折檻されてしまいそうなので、閑話はここら辺にしておこう。だからやめて! そんなに睨まないで!

 

 我の興奮とは対極的に、三浦殿はただ黙って訊いておった。

 しかしながら、話が文化祭の顛末やマラソン大会の顛末、そしてそれらに対しての我なりの考察を語っているときなどは、大層興味深げにしておったわ。フッ、大方(おおかた)我の話術の巧みさに惚れ惚れしておったのだろう♪デュフ。

 

『ホント、思ってたより遥かにバカなんだね、ヒキオって』

 

 これは、我が芸術的話術が完結した時の閣下の御言葉である。呆れ混じりの微苦笑でそう語った彼女は、でもま、参考になったわ、あんがと。ま、頭おかしすぎてあーしには真似できそうもないけどねー、と、微苦笑に美苦笑を重ねておった。

 しかしその晴れやかな表情が如実に語っておったわ。ありがと♡材木座くんって頼りになるね♡と。

 

 

 

「じゃ。今日はあんがとね。あーしはあーしらしく、ヒキオとは違うやり方で隼人と向き合ってみっし」

 

 そして遂に岐れの刻。我らは今、マックの前にてそれぞれの帰路につこうとしている。

 あれだけ嫌々だった我も、いざ岐れとなると、些か感傷に浸ってしまうというものよ。今ではこうして三浦殿に対して情を抱いているというのだから。なんていうか、もう親友? 戦友? 我らズッ友! そんな感じ!

 

 だから我は問うてみることにしたのだ。ずっと気になっておった、この疑問を。

 

「して三浦殿、今更ではあるが、なぜに我に白羽の矢が立ったのであるか? 八幡のことを聞きたくば……悩みを語りたいのであれば……、別に仲の良い由比ヶ浜殿でも良かったのではござらんかな?」

 

 そう訊ねた 我は、まるで悟りでも開いたかのような、とても穏やかな笑みを浮かべておった。なぜなら、その答えはもう解っておるからだ。

 我、頼りがいがあったのだろ? 我、温かさが滲み出ておったのだろ? 我、安心感が漂ってたのであろ? これ、頼りになる友人枠確保しとけばワンチャンあんじゃね?

 

「……あー、それね」

 

 はたして彼女は解を()ふ。

 彼女特有の勝ち気さを通り越した獰猛なる満面の笑みで。

 

「だって中二ならこのこと脳内から完全に消去してくれるっしょ? てか覚えたままでいられるほど勇気無くない? え? 消えるよね? あーし手伝った方がいい?」

 

「げはっ!」

 

「それに中二相手なら、ハズい悩みとか語っちゃってもそこらへんの壁にでも話してるみたいなもんだし、気軽じゃん?」

 

「ごふっ!」

 

 血反吐を撒き散らす我を捨て置いて、悪戯な笑顔を見せた閣下はカッカッカッとローファーを鳴らして去ってゆく。我に向けたその背中は、このこと誰かに漏らしたら殺すから、と、雄弁に語っておったわ!

 

「カ、カンラカンラ……! 愉快愉快……!」

 

 我は笑う(涙目)

 大いに笑う(涙目)

 今まで小馬鹿にしていた陽キャの、今まで知り得なかった意外な一面を垣間見ることが出来たのだから(涙目)

 

「……フハハ、陽キャギャルも、まだまだ捨てたものではないのぅ」

 

 今ならば解る。八幡がことあるごとに「あーしさん、ああ見えてすげぇいい人だぞ」と語っていたことが。

 成る程、いい人である。格好良い人である。そして、なかなかに可愛い人である。

 

 次第に小さくなってゆく大きな背中。夜の(とばり)の中にあってなお煌びやかに(なび)金色(こんじき)の巻き髪を眩しげに眺めつつ、我は彼女とは真逆の方向へ向け、悠然と歩を進めるのだ。今宵のこの猛る興奮を、決して忘れぬ為に!

 

 

 

 

 

「よし! 今まで敬遠してた金髪ギャルモノ同人誌買いに行こっと!」

 

 

 ──フハハハハ! 待っておれ獄炎の女王よ! 今宵、我が城の寝床でまた逢おうぞ! 妖しく黒光(くろびか)る我が名刀義輝の錆にしてくれるわ!!

 

 

 

おしまい






こいつ最低だな。



というわけでありがとうございました☆
大事な2話目でこの体たらく。客呼ぶ気あんの?


今回もしょうもない内容ではありましたが、最後まで読んでいただきましてありがとうございました!
次回はまだ内容もなにも思いついておりませんが、なんか思いついたら適当に執筆してみます。適当すぎる…

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