Crowned Clown   作:飛翔するシカバネ

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9月24日(土)

 

 

夜中に俺は一人でマヨナカテレビの中にいた。

 

霧が今一番濃い場所にいる。

 

すでに何度も来ているお陰でこの世界にも馴染んでいる。

あのクマにも見つからないだろう。

 

流石に久慈川りせの探査は今この時に世界にいなければ無理だ。

クマとの探査の違いがそこにある。

 

俺は崩壊が始まっている白鐘直斗の心象の場所へと来ていた。

 

実は他のシャドウも解決した後にこうやって来ていた。

それは俺の力で再現すること。

マガツイザナミは俺の力に反応して、イザナミから移った力が融合した結果のペルソナ。

俺のペルソナは別でいる。

この世界に初めて入った時にいた自分のシャドウと戦い勝利した際にしっかりと力になった。

それが俺のペルソナ。

 

世界の移動はイザナミによる力。

だが、イザナミによって強化されたとはいえ、車道を操ったりするのは借り物の力じゃない。

 

「ペルソナ………クラウンド・クラウン!」

 

仮面をつけた道化師のようなペルソナが現れる。

頭には王冠を斜めに被っている。

 

創造(クリエイト)

 

そういうと周りのシャドウをかき集め、姿を作り出す。

それは今日の夕方に倒された白鐘直斗のシャドウだった。

 

俺のペルソナは道化師。

そして大衆たちの王。

詰まるところシャドウの王としての側面が俺だ。

 

生徒会長として生徒や街の人の代表であり、負の感情も大いに含む。

この世界で俺はシャドウに襲われず、シャドウは首を垂れる。

 

なぜシャドウを再現しているのか。

それは自分の能力の把握と練習が主な理由だ。

あとは自分が動けない時動かせる手があるのは便利だし、一度暴走した姿があるのでさらに再現しやすいから。山野真由美と小西早紀のはいない。

シャドウがまだ現実から帰って来てないからな。

 

そう言っている間に直斗ができる。

 

シャドウであってもこんなに近くに直斗が……

 

『久しぶり!アキラ!』

 

目の前のシャドウが話しかけてくる。

それに俺は驚く。

なぜなら今まで戻してきたシャドウは再現した直後に喋り出すことはなかった。

今では喋れるようになっているが、作った瞬間は感情がない。

なぜならシャドウが本体に帰っているから。自分を認めたことで内にへと帰るから。

だから俺は他のシャドウを喰わせたりすることで自己の確立を行っている。

クマができるなら、人工的に組み合わせれば作ることもできるだろう……という試みだった。

 

 

それが、今は他のシャドウを食わせる前からしゃべっている。

しかも記憶もある……これはつまり。

 

「直斗は全てを受け入れられなかったのか……?」

 

『せいかーい。流石はアキラ〜僕のたった一人の助手さんだね〜』

 

くるくると回りながら姿が少し変わっていく。

見た目のは年相応のまま。だが、服装はスカートや胸元開き、胸を大きく見せるようなデザイン。あくまでも探偵服というスタンスは変わらないが、余りにも今の直斗と合わない。寧ろゲームクリア後の夏休みの直斗に近いものがある。

元の直斗が苦手としていた女性らしく、露出のある格好だ。

 

シャドウは抑圧された感情の暴走、誇張した姿だ。

だが、分からない。一体何が直斗は受け入れられなかったのか、が。

 

しかし、気が付く。

頭に被った青の帽子に星の飾り。

 

数日前に出会った時にはついていなかったあの時の。

 

『えへへ、気づいた?そうだよ。アキラがくれたんだ。かっこいい流星の飾り。そして可愛い飾り。けど、僕はこれを外しちゃったんだ』

 

シャドウ直斗は説明してくれる。

俺が引っ越した後に周りから可愛いと言われたことで、かっこいいと言われたかった直斗はそれを外したらしい。

そしてそのまま忘れてしまった、と。

 

『僕はね。僕がテレビに入る前にアキラに出会った。本当は昔のこととかいっぱい話したかったけど、今の自分はかっこよくないし、それどころじゃなかったから。そうしている内にまた記憶に蓋をして僕を忘れようとしている……その残滓がここにあった。そのままじゃ僕は消えていくだけだったけど、アキラのお陰でこうやって動けるようになったんだ!やっぱりアキラは親友で恩人で僕の大好きな人だよ〜!!!』

 

「い、今なんてっ……?」

 

『大好きだよ、アキラ。僕は白鐘直斗の封印されている感情。白鐘直斗の()()のシャドウ。かっこいい大人の男になりたい僕の中にいた可愛い女の子になってずっとアキラと一緒にいたかった僕……私だよ!』

 

直斗が俺を好き?

そんなわけない。

そんな運命はなかった。

俺の行動如きじゃ世界は変わらない。

だから楔を打つように少しずつ少しずつ変えて……

 

頭の中で考えがぐるぐるする。

何もまともに考えられない。

嬉しさと困惑でどうにかなりそうだ。

 

『あの時君に出会わなかったら僕は出てこなかった。過去の記憶として無くなってた。まるで今が初恋のように振る舞うことだろうね?そしてこの恋を知らないことにする。だって知ってしまったらアキラへの裏切りになってしまうと思ってたから』

 

「裏切り?飾りを外したことか?」

 

『違うよ。元は自分がなりたかったものもあるけど、アキラに自分が男と思われてて、それでアキラとは友達でいたかったからだよ。僕が女の子だと分かったら今の関係が壊れちゃうって。かっこよくないないなら僕はアキラの友達でいられないってね』

 

「お、俺のせいで……」

 

『違うよ?これは僕が背負っている運命だよ。こうなるように大筋は変わっていない。なんだったら君がもっと僕の元にいたら僕は生まれず、シャドウも生まれなかった。君という相棒を持って世界の難事件を解決して平成のホームズとワトソンくんになってたんだよ。だから………』

 

『アキラは悪くない。アキラのお陰だよ。アキラのお陰でこんな気持ちになれた』

 

それを言われるだけで救われる。

俺がこの世界で生きているのは兄貴のお陰。

 

そしてこの世界の希望は直斗だった。

 

 

はじめに見た時、その見た目から白鐘直斗だと分かった。

 

これ以上原作に関わっても世界はかわらにと思っていたから離れていたのに、俺は見た時に前世でも感じたことのない気持ちに襲われた。

それは恋。

 

一目惚れした。

 

その後事件が起き、一緒に協力して事件を解決した。

その時をきっかけにして、一緒に遊んだ。

その間もずっと好きだった。

そのことを言えば関係が壊れるかもと思って話せなかった。

だって直斗はかっこいい大人の男になりたいと思っていたから。

 

きっと告白しようとすれば邪魔は入っていたのだろう。

それでも前世の記憶が邪魔をして、告白できずに別れた。

 

しかし引っ越した先が八十稲葉だったことで、ここで生きていればいつかまた再会できると思った。

だから努力した。

後を追いかけるのではなく、隣に入れるように。

 

だけど、この場所に来て手に入れたのは心の闇や黒幕の力。

 

これじゃあ敵として、ワトソンではなく、モリアーティで終わってしまう。

 

そうならないように努力した。

人に好かれて、人を助けて。

それに合わせてペルソナの力も強くなった。

 

不特定多数の代表として。

 

直斗が救われて、事件が解決したらみんなを解放して、HEROへの恋が抱かれる前に告白する。

そうして上手くいけば付き合えるし、上手くいかなければこの世界のルールに従って普通に生きると。

そう思っていたのに。

 

 

 

 

でも、これは?

 

 

 

 

ご褒美?いや違う。

 

 

これは計画の変更の必要性だ。

 

 

 

「切り離したってことは自分を認めた上で、拒絶した。暴走しないのは忘れた記憶で感情の元がないからだ」

 

つまり目の前にいる直斗はどちらかというと久保美津雄のシャドウに近い。

あれは空っぽゆえに消えていった。

しかしこっちはある。あるがままに無い。

だからこれが戻ることは現状無い。

 

「俺の気持ちは今は全く響かないということか」

 

だったら計画を変更だ。

 

もっと意識してもらう。

 

その上でダメなら……この世界のルールに従う必要もない。

 

「覚悟が足りなかった。でもようやく心が定まった。俺は……」

 

シャドウである直斗を抱える。

抱える際に女の子みたいな声を上げる。

 

そしてトンネルを作り、自分の()()()を作り、進んでいく。

一番奥でシャドウ直斗を降ろす。

そして玉座に座り込む。

 

 

「俺は俺の欲望を優先する」

 

その目は黄金色に染まり、自分の中にいた認めたはずのシャドウと真に一体化した感触があった。

 

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