意識を取り戻す。
さて、どれくらい寝ていたかな?
病院の病室でナースコールを押し、人を呼ぶ。
そして日にちを確認する。
もう11月も終わりか。
この分だと面会可能となるのは12月のいつかになるか……
その前に事情聴取がある。
一般の面会開放の前に警察から話を聞かれる。
担当になっていたのは足立刑事と他何人かの警察だ。
「何があったか話せる?」
「受験勉強の気分転換で散歩をしていました。そしたら雨にも濡れていないのに大汗をかいて濡れている運送業の儀とがいて……気分が悪くなっていたら大変だと思って近寄って行ったら、玄関から出てきた少女の口に布を当てて、荷台に押し込もうとしてました。それを止めようと思って掴み合ったら頭にひどい鈍痛がして……気がついたら病院で寝ていて………」
「ありがとう。他には何か思い出せるかな?」
「特に……でも何かあったような気も………」
そう言って額を拭ったような仕草をして手を下ろす。
降ろした手はちょきのゆびをピッタリとつけている。
「とりあえず、君らはこれ上に伝えて。僕はもう少し思い出せそうかもしれないから」
それを見て、足立は他の警察に指示を出す。
ここに何人も残す必要もない。
納得したのか他の警察はそのまま部屋を出ていく。
そして足音が遠ざかると、椅子の背もたれを前にして足立が座る。
「で、子供の時の何か理由つけて人を遠ざける時の仕草をしたのは何?あと何してんの?迷惑かけないとか言ってなかったっけ?」
「迷惑かけないためになるべく会わないようにするって話をしたのに、兄貴と会う必要があったからな。多少無理してもな」
「それだけのために怪我したのか?よくやるな〜全く心配したよ。弟が病院に搬送されたって聞いてね」
「俺らのことが兄弟なのは誰も知らないだろ」
「比喩だよ。んで、本題は?」
「兄貴ってさ……山野真由美と女子高生殺しの犯人だろ」
「………何言ってんの?」
その言葉を吐いた時トーンが変わる。
まるで自分が犯人だと伝えるかの如く。
「他の人だとまだバレてないかもって取り繕うだろうけど、流石に兄弟で嘘はバレるからな。すぐにそういう反応してくれて助かるよ」
「どこで気づいた?」
「違和感は事件後にあった最後の時。山野真由美とか兄貴のタイプだろ。それが死んだっていうのに一切話題にしなかった。まるで話を遠ざけるみたいに」
「そこなら兄弟以外には気づかれないか……」
「二つめはあの自称特捜隊のリーダーに脅迫状が届いた時」
「あ?」
「こんな街で知らない奴が別の家に近づいたらすぐにバレる。それが今までバレなかった。運送業もそうだが、さらに疑われないのは警察だ。だから警察は怪しい候補にまず上がった。そこでピンポイントで何かやってる特捜隊に脅迫状を送れた」
「確かに何かやってるけど、子供の遊びだろ?」
「生田目は最初の二人の時のアリバイが固い。誘拐は繰り返していたみたいだけど、殺人に至ってない。そこの狂気性も薄い」
「僕が狂気性があるって?」
「あるだろ。兄貴も俺も。……話を戻すけどよ、あの時は山野真由美も不倫騒ぎでなかなか近づけない。旅館に泊まっていたらしいが、旅館関係者の方も下手なお客と鉢合わせることはしないだろ。なら、そこも信用がある人間だ。女子高生も事情聴取という名目なら近づける」
「………」
「脅迫状の文面もおかしくなる。生田目が犯人なら『コレイジョウタスケルナ』はおかしくなる。もう一つの脅迫状も犯人なら『入れて、殺す』が正しい。堂島宅に近づけて、内部事情に詳しく、信用のある立場におり、山野真由美や小西早紀と接点がある。この条件に合うのは兄貴しかいない」
「そうだとして、手口がない。殺すところまで引き離したり、ましてや殺害するなんてさ」
「旅館のロビー」
「!?」
「事情聴取の部屋にはテレビがある。あとは入れて落とすだけ。兄貴ってために爪が甘いから……絶対入れたとかいうなよ」
「なんだよその言い草は……そんなんじゃまるで」
「告げ口する気がないみたい、だろ。ねえよ、一ミリも。何があっても俺は兄貴の弟だ。あのクソみたいな両親の元生かしてくれた恩人で、一緒に生きたいわば共犯者だろ」
「共犯者?……全くいつの間にこんな悪くなったんだよ……」
「兄貴の教育のおかげだよ」
「勝手に成長しただろ」
「だから勝手におせっかいで動くだけだよ。兄貴は普段通り動けばいい。何かあっ他時に少しでもマシな方に勝手にするだけだから」
「何?それいうだけにこんなに怪我したわけ?犯人当てとか頭良くなったように見えたけど、頭は悪いまま?」
「他にも狙いはあるさ。そっちこそスピーカーみたいなキャラロールしてるけど、その癖で不味いこと口走ってないよな?あの探偵王子変なところ気掛かりになって、まじで変なところからバレるぞ……」
「何も不味いことは言ってないさ。基本内部情報バラす以外は周りの意見に同調しているようにしてるからな」
「ならいいけど……兄貴まじでそれは治ってなかったんだから」
「はいはい、気をつけるよー。で、それ以外は?」
「さっきの警察の説明で言ってなかったのはあとはテレビに入る力があるってことくらいか。なんで目覚めたかは知らん。兄貴が目覚めたから俺も目覚めたのかもな」
「そんなジョジョみたいにか?」
「あれまじで意味わからんよな。完全に敵に塩送ってるじゃん。DIOだって頑張って目覚めたのにそんなファミリープランみたいな感じで」
「それは確かにw」
兄貴と久しぶりに楽しく話せた。
その後兄貴は特に何も情報はなかったと上に報告しに行く。
そして俺は俺で取材に応じて名声を高める。
後輩たちも駆けつけてくるだろう。
その時に特捜隊のメンバーにも会うことになるかもしれないが、当たり障りのない会話で終わらせよう。
もしもこっちに深くきた時はとっておきの噂話で撹乱させてもらう。
だが、5日には兄貴が逃げ込む。
きっと俺に構っている時間はない。
できれば撹乱とか面倒なことをやる前に他の面会で終わってはくれないかな〜
そう思っていた俺の部屋のドアが叩かれる
「はい、どうぞ」
「失礼します」
そう言って一人入ってくる。
それは青い装いに身を包んだ、探偵……白鐘直斗だった。
「えっ?」
「君に聞きたいことがあるんだ。警察だけじゃ話切れなかったであろう話を」
それは流石に予想できなかったな………