Crowned Clown   作:飛翔するシカバネ

17 / 18
12月4日(日)

 

直斗は先ほどまで話を聞くために兄貴が座っていた椅子にきちんとした姿勢で座り直す。

 

そうか直斗なら警察関係者の権限で先に面会できるよな。

警察は別に知り合いというのは学校の生徒会長くらいしか把握できていないだろうから、私事ではないと思われているだろうしな。

 

それに病院には生田目に話を聞く用事で来ている。

ついでに話を聞くくらいできるか。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「友人のお見舞いに来てはいけないですか?」

 

「そういうんじゃない。まだ一般開放はしていない。となれば、警察の調査協力の権限を使って入ってきたんだと思ってな。って言っても、警察に話したくらいしか情報はないぜ」

 

「生田目が菜々子ちゃんを連れ去ろうとした際に助けに入った話ですか……」

 

「と言っても後頭部殴られて気絶して、殆ど覚えてないんだがな」

 

情けないと言ったように頭をかき、笑う。

それに対して直斗は切り込みを入れる。

 

「本当に覚えていないんですか?何も」

 

「そうだな。あの時は気分転換で街に出ていたから余計に頭を休ませていたし、それは驚いたんだよ」

 

「確かに行動は短絡でした。どこか物事を俯瞰的に見える癖に感情的に動いてしまう君らしい」

 

「褒め……てはないな。じゃあ何が気になる?」

 

「その後です。気絶した後、君は一度目覚めている。それを忘れていることにしていると僕は思っています。それが信じられるような話ではないから」

 

「………はあ」

 

鋭い目に見つめられ、ドキッとする。

直斗的には友人に対しての目線ではなく、犯人に対するどこまでも暴き出すという究明の眼差し。

そういうところも好きだ。

 

深く、ため息をつく。

そしてまるで観念したかのように話だす。

 

「お前には敵わないな。というか友達相手に嘘をつくのが無理だわ」

 

友達相手に嘘という言葉を選択する。

それは直斗へのメッセージ。

 

「荒唐無稽な話だったし、あんまり覚えてないのも事実なんだ。警察に話しても精神異常で片付けると思ったから自分の証言を強くするためにわざと黙ってた。俺は殴られた後体が半分以上テレビに入っている女の子を追ったんだ。何か以上なことが起きていると思って、手を伸ばしてまるで引きづり込まれるようにテレビの中に落ちた。そして気づいたらあの天国みたいな場所にいた」

 

俺は話し出す。

虚飾が混じった事実を。

 

「息苦しかったし、なんとなく普通の霧に見えなかったから菜々子ちゃんの口にハンカチを当てて、あんまり運動しないように抱えて行動した。文化祭で一緒に行動していたから知り合いの女の子だと分かったし、あっちもテレビに出てたお兄ちゃんの学校の代表って知っていたから話はスムーズだった。名前もその時に聞いた」

 

口元にハンカチは当てていたが、堂島菜々子は既に気絶していた。

そこを尋ねられたとしても忘れたで終わりでいい。

辛いことは無理に思い出す必要はないとか言ってな。

 

「あの場所では化け物がうろついていたが、見つからなかったのか、そもそも襲いかかって来なかったのか無事だった。それにすぐに出ようとしたんだが、暫くすると生田目も入ってきて追いかけっこみたいになった。で一番奥で逃げ場を無くして、守っていた。その時は守るのに必死であまり覚えてない。いくらか時間が経つと人の気配がした。口ぶりから生田目を止めようとしているみたいで、そっちに隙をついて菜々子ちゃんを投げた。それからの記憶はない………こんな感じだな」

 

「………ありがとうございます。これで不信感が少し晴れました」

 

「なんだよ、何か疑ってたのかよ?……まあ嘘は言っていたわけだしな」

 

「そういうわけでは……だけど何かが引っかかっていまして」

 

「なんだ?てっきり決まったと思ったけどな」

 

「決まった?」

 

「おう。てっきり生田目逮捕で全部決まったと……」

 

「違います。それは今違和感があると……ですが、そのセリフ前にもどこかで……」

 

あ、ヤベ。

また直斗見てたせいでポンコツになってた。

 

「長考するのはいいんだが、ここでやるなよ。俺は慣れてるけど、他の人はどうかと思うだろ」

 

「そ、それはそうですね。それにしても元気そうでよかったです」

 

「元病弱で体は鍛えまくったからな。俺に俺はお前の助手だぜ?お前は頭脳労働で、俺は肉体労働。足りないところは補いあってこその相棒だろ?」

 

 

そう笑いながら話す。

薄目で顔を確認すると少し後ろめたい顔をしている。

多分少し話したいことがあるんだろうが、ここで畳かせてもらう。

 

 

「あ、あの実は……」

 

「もうお前には嘘をつかねえよ。隠し事は男同士でもするだろうし、そこは勘弁してくれや。一回離れ離れになったが、俺は親友だと思ってたし、これからも親友だと思ってる。それに………」

 

そう言って懐からペンダントを取り出す。

星のペンダント。

直斗に渡した飾りと対になる。

それを見せる。

 

「子供の時の約束だけどいまだに持ってるんだよ。お前はかっこいい探偵に。俺は隣に立って、お前をサポートするって。お前が活躍してこの前テレビに映るまではあんましメディア露出してないから噂しか知らなかったけど、探偵になるために頑張ってるって聞いてた。だから俺も本当に助手になれるかは分からないけど、恥じぬように頑張ってきた。だから俺が密かに生徒会長とか頑張れてたのはお前のおかげなんだぜ?」

 

捲し立てる。

今は自分が持っていない、しかも外したのが自分が目指すかっこいい大人の男になるために外したもの。

 

「今着けていないのを見るに、大切なものの中に入っているのかもしれないけどな!」

 

そう笑う。

ついこの間まで本当に大切なものの箱に入っていた。

しかし、中には何もない。

パレスができた際に本物はパレスに置かれた。

そしてより、影直斗をより個体とした確立するために。

 

さて、ここいらでお開きにするか。

 

「ははは……うっ!?」

 

「だ、大丈夫!?」

 

「少しはしゃぎすぎたみたいだ。病院ではお静かに……だな。すまないが話はまた今度でもいいか?警察の事情聴取も含めて疲れちまった」

 

「あ、ああ……」

 

 

「少し……眠るわ………」

 

 

少々急すぎるような気もするが、急いで終わらせる。

 

 

「次話すときは……お互いに、星を着けて………な?」

 

そう言って横になる。

 

それを見ると直斗は一礼して部屋を出て行った。

 

 

なんとか切り抜けた。

 

 

明日は兄貴が追い詰められる。

そのあとは兄貴が倒される。

 

そしたら中にいる3人を解放する。

少しだけ細工を施して……

 

そして今年中にケリをつけてもらう。

イザナミにもご退場いただいてな。

 

そうやって何も憂いがなくなったら、最終段階だ。

 

 

 

もう負い目に漬け込まないといけないところにいるのだから。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。