随分と時間が進んだ。
特に何もないからだ。
その間はいつもの日課を済ませたり、シャドウとの戦いを中で見たりしていた。
それを見る度に小西早紀は成長し、山野真由美はチラリと見るだけで、ストイックな生活を送っている。
山野真由美の願いでここにも本が増えた。
家庭料理などの料理本や経理の本。
どうやら生田目との結婚を考えているのだろう。
俺とは特に会話していない。
ちょっとした興味で話を聞いた程度で何も。
ここにきて落ち着いて考えたのか、落ちた時のヒステリックさは無い。
小西早紀が成長している姿を見て、感化でもされたのか。
生田目の状態を知らないとはいえ良い傾向だな……
まるでどっかの研究者だな。
今日の放課後は街を出歩いている。
先生に見つかったら、気分転換だとでもいえばいい。
気分転換ではある。勉強の気分転換ではなく、今までの人生で色褪せた世界からの気分転換。
街を歩く。
いつからいるか。
それは知らない。
ただゲームではこの日から見かけただけ。
だから街を出歩けば会えると思った。
そしてそれは的中した。
街で聞き込みをしている青の服を着て、クールな顔をしている。
都会では有名な探偵王子、白鐘直斗。
それが目の先にいた。
手を上げ話しかけようとする。
しかし、考え事をしているのか横を通り過ぎていった。
「相変わらずだな……考え事していると少し周りが見えなくなる」
危ないほどじゃないが、少し気になる。
でも、今話してもあしらわれるかもしれ無い。
再会するなら劇的に、だ。
そう考え、自分を律し、その場を離れる。
離れる時に携帯で一枚だけ後ろから写真を撮る。
こちらに気づかず、推理している姿。
テレビや新聞記事に時たま映っていたが、実際に見ると感動すら覚える。
携帯の写真を確認する。
「やっぱり可愛いな………直斗」
そう口から声が漏れる。
満足した俺は帰路へと着く。
良い気分転換になった。
これでまた頑張れる。
焦がれるほどに待ち望んだこの年を。
主人公も節目の年だったが、俺もまた今年が節目の年になる。
今年でダメならもうこの世界に未練もなくなる。つまりは終わりだ。
ダメにならないように全力は尽くす。
でも、もしもダメなら………
これ以上考えるのはよそう……
次の予定日まで疑われぬように生活を続けよう。
直斗なら関係なくても俺に辿り着くかもしれない。
一度緩んだ緊張の糸を硬く結び直す。
さて、次の予定日は………
7月9日か。
モロキン……もとい諸岡金四郎が殺される日。
事件の模倣犯が現れる日。
これを起こすことで少しだけ俺の知る歴史から歪みが出るかもしれないが、それでも俺の求めるエンドに限りなく知覚するには必要なことだ。
誰も死なないハッピーエンドのために。