「で、君は花丸欲しいの?」
足立さんが家に来ている。
今は菜々子の宿題の手伝いをしているところだった。
菜々子が本を音読し、保護者に読んだ印をつけてもらう。
おじさんが帰りが遅いので、代わりに足立さんがつけてくれた。
そして足立さんは自分にも尋ねてくる。
「ありません」
「可愛くないねー……君本当に菜々子ちゃんのいとこ?君ってまだ高校2年生でしょ?何かあったら大人に頼るんだよ?別にぼくってわけじゃないけど……」
足立さんから心配する気持ちを感じる。
また一つ足立さんと仲良くなれた気がする。
「あ、でも僕以外の大人に頼れない時は僕でもいいから。そういう仕方ない状況ってあるからねー」
「そうなの?」
菜々子が無邪気に質問している。
「うん。堂島がいない時は勿論、こっちの話を聞いてくれない人や逆に傷つけようとする人だっている。そういう大人に頼ると碌でも無いことになる。そういう時は僕に頼ってくれればいい!」
「少し頼りない……」
「ほんと可愛く無いね、きみ。まだ無愛想だった弟の方が可愛かったよ」
「足立さん、弟いるの!?」
「あれ、言ってなかったけ?10歳も年が離れてるけど、一応いるよ。両親が殆ど世話しないから僕が勉強の合間に見てあげてさ。手はかからないけど、慕ってくれて可愛かったな〜僕と兄弟なんて思えないほどにね」
どこか昔を懐かしむように感じる。
「兄だったのか」
「そうだよ。でも僕が15歳の頃に両親が離婚しちゃって、離れ離れになってそれからは会えなかったんだよね。全くこういうことされちゃうと結婚は人生の墓場って現実味が上がるよね〜」
「りこんって?」
「えーと、なんていえばいいかな……パパとママがお互いを好きじゃなくなっちゃうってことかな?それでお互いにそれぞれ子供がついていくから離れ離れになっちゃうってこと」
「好きになって結婚したのに?」
「人生長いからね。生きていれば色々あって、好きじゃなくなることもあるってことさ。そんな一途に何十年も好きでいられないってことさ。そりゃいる人もいるとは思うけどね」
「足立さんは結婚しないの?」
「しないよ〜もししてもすぐじゃない。僕はもう少し一人を楽しむよ。……それにしても菜々子が結婚か〜そうすると堂島さんがお義父さん。そりゃ無理だな」
「聞き捨てならない」
「えー?だって無理でしょー」
「菜々子だって靴下に穴が空いている人は嫌だもん!」
「空いてませんー」
「こないだ空いてた!」
そう言って少しばかり言い合いをしている。
3人で楽しい時間を過ごした。
また足立のことを深く知ることができた。
菜々子が眠たくなり、寝室に寝かすと足立も帰るようだった。
「正直仮眠したいところだけど、あんまり長くいてもね?家帰ってちゃんと寝るよ」
「お疲れ様です」
「そういえばさっき話してた弟だけど、つい最近再会したんだよね。偶然母方の実家がこっちにあるみたいで」
「母親には再会しなかったのか?」
「離婚した後は何年か一緒にいたみたいだけど、結局邪魔に思ったのか祖母に預けて消えたらしいよ。今は祖母も施設に入って、一人暮らししているらしいし」
「一緒に暮らさないのか?」
「僕の家は無理だし、一応兄弟だけど他人だからね。それに今年で高校三年生で卒業だから。来年には家を引き払って、東京の大学に進学するんだって。だからたまに話すことはあっても一緒に住むとかは無いかなー」
「どんな人?」
「どんなって……僕にそっくりだよ。見た目はいいけど、中身は大体おんなじ。ほどほどに生きてるって感じ」
「足立さんが二人……」
「あ、離婚してるから苗字違うからね。あと弟も今受験の年だから僕の弟です〜って絡みに行かないでね。まあ、君のことだからどっかでフラッと会うかもしれないけど、僕から教えたりはしないから」
それじゃあね。
そういい、足立さんは帰っていった。
雨はすっかり止み、霧が出始めている。
今日はマヨナカテレビを見る日だ。
0時になり、マヨナカテレビをみる。
しかし、マヨナカテレビには誰も映らなかった。
「お、お前誰だよ!近づいてくんじゃねえ!」
「安心しろ。俺はこれ以上お前に近づかない。殺したいならさっさと持っていくんだな」
そう言って気絶している男性を地面に転がす。
「お、お前なんのつもりだよ!俺に何させてえんだよ!!」
「何もしないならそれでいい。お前がやりたいようにすればいい」
そう言って俺は霧の中へと消えていく。
残された男は転がる男性に目をやる。
「そ、そうだ!やるぞ。あいつが誰とか関係ないね!俺は連続殺人犯なんだ!!!」
男は笑いながら、男性を掴み、引きづりながらとあるマンションの屋上へと向かう。
他の二件とは違い、おざなりな模倣行為を行なって。
次の日
八十神高等学校の教師、諸岡金四郎の遺体が上がった。