闇のカードに転生したので主人公を闇堕ちさせたかった(過去形)   作:ウボァー

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劇場版!? 闇のカードなので初代主人公と肩を並べることはないはずだった(過去形)

「今、長く熱い戦いが終わりました! つまり――世界で最も強い召喚者(サモンコーラー)が、頂点が決まりました――!」

 

 一瞬たりとも気の抜けない力の競い合いの果て、ついに決着がついた。構えていた腕をおろし……手のひらに滲んでいた汗にようやく気付く。

 

 スタジアムを埋め尽くす観客による歓声。万雷の拍手。打ち上がる花火。空から降り注ぐ紙吹雪。あらゆるものが祝福する。

 

「ああ……本当にとても良いバトルだった。おめでとう、チャンピオン」

 

 先程まで戦っていた相手が発していたプレッシャーはどこへやら。清々しい顔で笑いかけてくる。

 フィールドの中央で互いに手を差し出し、握る。向けられる無数のカメラがフラッシュを光らせ、それを直視してしまって眩しさに目を細める。

 まずはインタビューをがんばれよ、カッコ悪いとこ見せるんじゃねぇぞ? と離れていくライバルを見送り。これから忙しくなるだろう生活に思いを馳せる。

 

 

 このまま何事もなく終わる――はずだった。

 

 

『強い感情に満ちている。成る程、この時こそが人間達にとって伝説の生まれた瞬間か』

 

 世界が止まった。

 

 モノクロ写真のように色彩が失われ、音が消えていく。

 動いているのは自分だけ。……いや、違う。何者かがわざとらしく足音を立てて歩いてくる。

 

『故に時の流れの中で最もわかりやすく、邪魔が起きないでほしいという人々の願いにより最も侵入が厳しい。……ククッ、ここを崩せさえすれば、過去も未来も全て我が手の中に落ちる』

 

 フィールドの入り口から姿を現したのは、異常な世界に全く動揺せず普通のものとして受け入れている、病的なまでに白い男。

 

「誰だ、お前は」

 

 原因だろうその男に問いかける。ほんの少し口角を上げて男は答えた。

 

『アザト=ホース。お前を倒すために来たものだ』

 

 聞いたことのない名前だった。表舞台に出たことのない強者……にしては、引き起こしている事象が物騒すぎる。

 テロリストじみた行動をして、したいことが自分と戦うことだけとは到底思えない。

 それに、これほどの力を使えるのならカードの実体化も容易いだろう。ここで戦った場合、動かなくなった観客達にも被害が出かねない。

 

「俺と戦いたいのなら別の場所でもいいだろう、なぜこんなことをする!」

 

『この時、この場所だからこそだ! 拒否権など無い。逃げるというのならここにいる人間を皆虚無に呑み込むだけよ。今ここで――戦うのだ!』

 

 迫られる。受けるしかない、だとしても何が真の狙いなのかを把握したい……しかし時間はかけられない。待たせてしまえば、怒りに任せてこの男は暴れ出すだろう。

 

 悩む彼を急かすように、空に亀裂が入った。

 男の仕業……いいや、違う!

 

『逃しはしませんわ!』

 

 令嬢のようなモンスターが切り開いた空から落ちてくる二人の召喚者(サモンコーラー)。男性は戸惑うことなく降りてくるが、女性は恐怖でぴゃああと声を上げている。

 

『まったくもうレイカってば……仲間が増えたことで油断したのですの?』

 

「高度、高度が一番高かった……」

 

 怖かったのかへたりこんでいる女性の召喚者(サモンコーラー)をモンスターが手を貸して立ち上がらせる。

 

『まだ追ってくるか……』

 

 あの男は忌々しく二人を睨みつけている。奴と敵対しているなら、自分の敵ではない。

 

「君たちは?」

 

「あ、は、はい! 千景レイカといいます」

 

「光咲聖也です。聖也で構いません――盤上 シキトさん」

 

 同年代だろう召喚者(サモンコーラー)に敬語を使われるという初めての経験に戸惑うシキト。

 

「ファン……なのか? ついさっき優勝したばっかりなんだけど」

 

「ま、まあ間違ってはいませんしそういうことでよろしくお願いします!」

 

 ……どこかはぐらかされているような気がしないでもないが、彼らは気にしてほしくないのだろう。秘密は誰にだってある。

 

『ナイア、何故、お前はそこまでして……フン、一人二人増えようともうどうでも良いわ! 全員まとめて相手をしてやろう!』

 

 どうやら彼らはこのアザトという男をずっと追いかけてきたようだ。しかし、どうでもいい……それは真実なのか? 何か違うような気がするが、この戦いに勝たねば明かされないもののひとつだろう。

 

 

 ――四者、それぞれが指揮盤を展開する。

 ――時空を超越した決戦が始まろうとしていた。

 

 

『我の先攻。《他逝苦痛死(たいくつし)の儀》を発動。デッキより《微睡のアザト=ホース》を戦線に配置し、《アザト=ホース》の効果により《虚空の奏者トークン》4体を戦線へ特殊召喚』

 

《微睡のアザト=ホース》

戦力0

 

《虚空の奏者トークン》

戦力1000

 

『ターンエンド。さあ、お前達の番だ』

 

 《微睡のアザト=ホース》――目が閉じられている、とだけしか頭の中に残る情報がない。認識してはならない存在。虚無の具現化。

 

 《虚空の奏者トークン》――弦楽器、管楽器、それぞれ異なる楽器を手に持った4体は不気味な音楽を奏で始める。

 

 《他逝苦痛死(たいくつし)の儀》――何かしらの効果を発揮するために残り続ける儀式カード。不吉な漢字たちが並べられ、その読みが退屈しのぎ……狙いが読めない。

 

「俺のターン! 《原型機竜(アーキドレイク) Y-ARM(ワイアーム)》を召喚! 召喚に成功したことで効果を発動し、デッキから《原型機装(アーキテクノ) Y-BURN FRAME(ワイバーン・フレーム)》を手札に加える。そしてこのカードを発動し《原型機竜(アーキドレイク) Y-ARM(ワイアーム)》に装備する!」

 

原型機竜(アーキドレイク) Y-ARM(ワイアーム)

戦力1000→1500

 

 何度も彼の戦いを支えてきたエースである機械仕掛けの蛇竜は装甲を纏い、飛竜の力を得る。

 

「《原型機装(アーキテクノ)》を装備したことで《Y-ARM(ワイアーム)》の効果が発動! 相手に500のダメージを与える! 先制攻撃だ!」

 

 発射されたミサイルは相手戦線に並ぶモンスター達をすり抜け、アザト本人へ着弾。

 

『無駄なことを』

 

 爆風により巻き上がった煙が晴れる。

 相手の顔色は何も変わらず、また数字に変動はなかった。

 

「ダメージ0!?」

 

『《微睡のアザト=ホース》がいる限り、我にはいかなるダメージも届かない。また、相手が我へとダメージを発生させる行動をしたことにより、《微睡のアザト=ホース》に目覚めカウンターを一つ置く』

 

 眠れる神の目が少し開いた。よくないことをしたのだ、と一目でわかる変化だ。

 

「くっ……すまない、皆」

 

「いや、あんな怪しいモンスターへ触れたくないのは俺も同じだ。……まさかプレイヤーに影響する効果持ちとはな」

 

「でも、ダメージが通らないんじゃどうやって倒せばいいの……?」

 

『《他逝苦痛死(たいくつし)の儀》により、ターンプレイヤーはターン終了時に己の魂の分身と呼べる強い繋がりのモンスターが存在しない時のみ()()する』

 

 告げられたのは特殊敗北条件。削り合いによる決着を否定するカード。

 

『《微睡のアザト=ホース》がいる我へのダメージ。また、戦闘、破壊、除外――あらゆる干渉は目覚めの刺激にしかならん! 目覚めカウンターが1つ増えたことで《虚空の奏者トークン》1体が消滅し、神はその目で今を見る。このターン、《微睡のアザト=ホース》以外のモンスター効果を無効にする!」

 

「くっ……《超級貴金属(ウルトラレアメタル)》を発動して召喚権を増やし《原型機精(アーキフェアリー) V-VIAN(ヴィヴィアン)》を召喚。手札から《原型機装(アーキテクノ) V-CTORY EXCALIBUR(ヴィクトリー・エクスカリバー)》を装備する。カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 今はその効果が使えないが、湖の乙女妖精が抱き抱える聖剣は相手ターンにも他モンスターへ受け渡すことができる。モンスターによる戦闘を軸にした戦い方を組み立てるシキトだが、今は補助へと回るようだ。

 

「アザト、確認したい。《他逝苦痛死(たいくつし)の儀》……だったか、繋がりを持つモンスターが複数いる場合はどうなる」

 

『どれか1体でも残っていればデュエルは続行可能だ。クク、魂の繋がったモンスターが倒れる苦痛に耐えられれば、の話になるがな』

 

()()()()()。なら、出し惜しみをする必要はないな――俺のターン! 《追憶の死闘》を発動し、デッキから【闇黒忌士】2体――《傷無(きずな)の闇黒忌士》と《血息(けっそく)の闇黒忌士》を墓地へ送る!」

 

「これは……【闇】のカード!?」

 

「キタキタ! 聖也さんの最強コンボ!」

 

 レイカは指揮盤をぺしぺし叩いてデッキの中にいる《ナイア》へ見るようにと急かす。

 

「墓地に送られた《傷無(きずな)の闇黒忌士》と《血息(けっそく)の闇黒忌士》の効果発動! 《傷無(きずな)》によりデッキから《輝亡(きぼう)の闇黒忌士》を特殊召喚し、《血息(けっそく)》でデッキから【闇黒忌士】を手札に加える。召喚に成功した《輝亡(きぼう)の闇黒忌士》の効果でデッキから《光輝と暗黒の掌握》を発動!」

 

「【闇】……いや、これは、【光】か……?」

 

 これまで【闇】を敵としてきたシキトが戸惑うのも無理はない。相反するはずの二つは、聖也の手によってさらなる高みへと導かれていく。

 

「《光輝と暗黒の掌握》の効果によりこのターン、【光輝士】と【闇黒忌士】は同じものとして扱われる。《輝亡(きぼう)の闇黒忌士》を墓地に送りデッキから【闇黒忌士】――ではなく、《光輝士団長 ヘブンス》を特殊召喚!」

 

《光輝士団長 ヘブンス》

戦力2500

 

「《光輝士団長 ヘブンス》の効果! 手札から【光輝士】を呼ぶが……《光輝と暗黒の掌握》により俺は【闇黒忌士】、《罪斬(さいき)の闇黒忌士 アイエス》を特殊召喚!」

 

罪斬(さいき)の闇黒忌士 アイエス》

戦力2500

 

 光が闇を呼び、闇が光を際立たせる。聖也が幾度となく繰り返してきた戦法だ。

 

「《罪斬(さいき)の闇黒忌士 アイエス》の効果! 手札を任意の枚数墓地に送り、ターン終了時まで戦力を墓地に送った枚数×500アップする。俺は手札4枚全てを墓地へ!」

 

罪斬(さいき)の闇黒忌士 アイエス》

戦力2500→4500

 

「墓地に送られた《ダークマター》を除外して効果発動。墓地から【闇】を手札に加える」

 

 並び立つ光と闇の騎士、そして――。

 

「手札がこのモンスターのみのため、《死統龍 ヘルシャーロイデ》を特殊召喚――!」

 

 


 

 

 ……というわけで出番が来ました闇堕ちドラゴンです。

 

 まさか主人公勢揃いの中で闇のつよつよカードが肩を並べられるとは思いもしませんでした。

 というか展開ルートに初めましての人がいたなぁ。劇場版で新規が増えたってことだろうか。そして初動のヤツ、効果で2枚墓地に送るって強すぎるよ。他のテーマにもよこせって人たくさん出てきそう。これが主人公特権ってヤツか……。

 

 ぶんぶん回ったデッキにより召喚されたのはいつものモンスター達。

 いきなり進化系を出さなかったのは前回戦った時に使われた《始源深界 カオス=トゥルース》を警戒してだろう。全力を見せていない相手に対して切り札を残しておきたいのはよくわかる。

 というかアレ、まだ効果残してそうな気がするんだよな……見えたカードの種類が戦術支援じゃなくて戦場カードだったから。つまり毎ターン【虚無】以外全破壊の可能性がめちゃ高い。これだから劇場版ボスはさぁ!

 

 ちょっと遠くの横を見る。そこにいるのはメカメカしいファンタジーなモンスター。これぞ初代主人公が使うテーマ――【原型機(アーキ)】。

 召喚するとサーチ効果が使える。装備する。更なる効果を発揮する。これを繰り返して堅実に戦うデッキである。

 

 モンスターの名前の付け方だが、アルファベット1文字の後にハイフン入れて、としている。読み方もアルファベット準拠にしてしまったので使える有名どころファンタジーモンスターが……少ない! アニメ制作陣よ、なんでこれでいけると思った。来週の自分がなんとかするでしょで乗り切ったのか?

 まあ、結局うまくいかなかったのかアルファベット26文字は全て埋まらないままでアニメは終わっている。かなしいね。新規による拡張性があるとも言い換えられる。

 

 ……とかそんなこと考えてたらターンエンドしてたわ。次回作主人公ちゃんがどう動くのかを見守る。

 

「えと、私のターン! 《シャンタクシー!》を召喚。そして手札を1枚捨てて《シャンタクシー!》の効果を発動します! 《千貌原戦姫(ラフ・プリンセス) ナイア》を手札に! ――フィールドの《シャンタクシー!》を墓地に送って《千貌原戦姫(ラフ・プリンセス) ナイア》を特殊召喚!」

 

 巨大な怪鳥が姫を乗せて到着。かぷり、とカードを運賃として回収しどこかへ飛び去った。

 

千貌原戦姫(ラフ・プリンセス) ナイア》

戦力2100

 

「《ナイア》の効果でデッキから《解身変除(クレンジング) 這い寄るコットン》をセットします。残る手札のカード3枚伏せてターンエンド、です」

 

 …………あ、展開それで終わりなの?

 嘘ぉ、うちの主人公と比べて展開がめっちゃおとなしすぎでは……? 展開の高速化をやり過ぎて次回作は控えめになったの……? 仕方ねぇわそりゃ。

 

『私のターン、ドロー。――発動せよ、《始源深界 カオス=トゥルース》!』

 

 出たな全体破壊! 今のうちの主人公には墓地除外で効果破壊の身代わりにできるやつがあるから大丈夫だけど、他の皆は!?

 

「させない! 戦術支援、《トラペゾパトロン》発動! デッキの《化身変粧(メイクアップ) ピュアスキン》を除外してその効果をコピーする!」

 

 たくさんの面を持つ黒い宝石がぴかっと光り、その中に映し出されるのは1枚のカード。

 

「これにより《千貌原戦姫(ラフ・プリンセス) ナイア》は《白の千貌幻戦姫(ホワイト・クイーン) ナイアルーラ》へと変身する!」

 

 宝石から取り出したコスメを使い、黒いお嬢様はお肌のお手入れを開始。色と衣装が変化し、純白のローブと背後に光る透明な天使の翼が出現する。

 

白の千貌幻戦姫(ホワイト・クイーン) ナイアルーラ》

戦力2500

 

「そして《白の千貌幻戦姫(ホワイト・クイーン) ナイアルーラ》がいる限り、フィールドのモンスター全てに【虚無】が付与される! これで《始源深界 カオス=トゥルース》による破壊はされない!」

 

 属性変更でそれぞれが効果破壊への対策をしなくて良くなったのはいいけど……【虚無】属性持ちってことは何か劇場版ボスと関係があるのだろうか?

 

『ふふふ……驚きの美白にして差し上げますわ……!』

 

 何、お化粧してくれるの? それが属性変更の演出?

 いやーそんなドラゴンにおめかしって鱗の艶出しぐらいで十分なのですがそのファンデーションで何をするつもりですかやめ――たすけてぇー!!

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