「マリーを曇らせてぇなぁ俺もなぁ」
1人執務室で呟く。コユキの仕込みはまだ時間がかかるそうだし、今は少し手間をかけたくない。体もしんどいしな
「久しぶりにこの薬使うかぁ。ドッキリを伝える子いないけど大丈夫だよな...?」
ショッキングピンクな仮死薬を眺めながら、先生は下準備を始めた。
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ここは懺悔室。迷える子羊達が自身の罪を私たちシスターを通じて神に告解し、魂を浄化する場所。まだまだ未熟なシスターではありますが、人々をちゃんと導けるように一生懸命祈っているところです。
「おおシスター...私の罪を聞いて貰えるでしょうか」
また1人、罪を告解しにきた人がいらっしゃったようです。箱の前に裾を正して座り、両手を顔の前で握り、目を瞑る。
「ええ。私から神へとそのままお伝え致します。私どもシスターはここで聞いた告解を他言せず、ただ貴方の魂の汚れをを浄化するために存在しています」
「そうですか...実は...私は大変な罪を犯してしまったのです...」
懺悔している人は、少し言いづらそうにモゴモゴと口を動かし、言葉を紡ぎ始める
「私は生徒を導く立場であるのにも関わらず、私は、...私はっ...生徒の泣き顔を見てしまいたい...と思ってしまっています」
生徒...?導く...?
「そしてついつい...その欲求を抑えきれず、私は...とある生徒にドッキリを仕掛けました。勿論、勿論ですよ?私は、傷つける気持ちは毛頭ございませんし、ただ、ただ目に入れても痛くない程に可愛い生徒の泣き顔が見たいだけだったのです」
木の格子越しに見える懺悔をしている人の顔が見るからに曇っていく。
「しかし...その生徒はとても傷付いてしまったようで、トラウマで夜も寝られなくなってしまったのです。当然、私は、そんな事をしてしまったのですから、その子のメンタルをケアしました。当然です。当たり前です。先生ですから。勿論、この程度で許されるとは思っていませんが...」
先生...やはり先生なのですね...
「私はっ...そんな...1人の生徒にトラウマを植え付けて尚、この衝動を抑えきれそうにないのです。頭から離れないのです。彼女のあの愛しい顔が、声が、体の震えや声の震えまでも、私を縛っているのです」
少し先生が黙り...ゆっくりと口を開く。その仕草はまるで本物の罪人のようで
「シスター...私は....どうしたらいいのでしょうか...」
私はその問いにシスターとして返せそうになかった
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先生の懺悔が終わり、箱から出ていく先生を遠目で見つめる。その姿は悲壮と、絶望に満ちているように感じた。私は、突き放してしまったのだ。シスターとしてではなく、生徒として、先生が生徒にしてしまった、しでかしてしまった事を聞いて自分事のように捉え、その感情を先生にぶつけてしまった。
「先生...」
先生が大聖堂から出ていく。少ししてから鳴り響く心臓の音に耐えきれず私は、心配になったのか、或いは保身なのかもしれないが、先生の後を追う。シャーレに入り、給湯室を横目に小走りで執務室へと向かう。
「先生!」
そう、執務室へ入る。そこで見てしまった。見つけてしまった。先ほどまで懺悔をしていた、生きていた先生が縄で首を吊っているところを。
「ひっ...先生!?」
体がすくみ、足が震える。しかしそれでも先生の体を縄から下ろし、床に寝かせる。
「心臓が...動いてない...」
床に寝かした先生は顔が真っ青になっていて、間違いなく生命活動を終えていた。
「なんで...!どうして」
後少し追いかけるのが早ければ、先生の懺悔をシスターとして受け入れていれば、この結果は無かったのかもしれない。しかし現実は無情である。何度ifのことを考えようと、手から伝わるのは先生の冷たくなっていく体温のみである。
「そうだ。早く救護を呼ばないと」
そう、机の上に目を向け、電話を探す。いつもは大量の書類で埋まっていて机の木目が見えないほどなのだが、今日は何故か何もなく、ただ真ん中にぽつねんと置かれている三つ折りの紙があるだけ。何も気にしなくて良い、他にするべきことがある。そう思っていた。しかし三つ折りの紙に書かれていた『遺書』という文字に目が引かれる。手持ちのスマホで助けを呼べばいいものを、その『遺書』に手を伸ばしてしまう。
「...」
無言で紙を開き、内容を見る。マリーはそうは思っていなかったかもしれないが、私は救いを求めていたのだ。神に手を伸ばす信徒のように、ミルクを欲しがる赤子のように、先生が死んだのは私のせいではないと知りたかった、そのような甘い
『この文章を見ている頃には私は死んでいるのだろう。私は、どうしようもなくバカな人間だった。私の行っている悪事を、誰かになら、誰か1人になら分かって貰えると思っていた。ユウカもノアもコユキもミドリもモモイもアリスもユズも、トキもアスナもネルもカリンもアカネもアコもイオリもヒナも、シスターであるマリーでさえ、誰1人として、分かってくれなかった。私は、私が忌み嫌っていた最低な大人そのものであったようだった。』
血の気が引いて行くのを感じる。最後の、先生の手を、払ってしまったのは私だった。あの時、私が私ではなくシスターマリーであったのなら、未熟なシスターではなく、一人前のシスターであったのなら、結果は変わっていたのかもしれない。ありもしない空想を並べ、目の前にある現実から目をそらす。
「私こそが...一番の罪人だったのですね。」
腰のパイエティーに手を伸ばし、目を瞑り、祈りを捧げながら引き金を引く...
.....
....
...
..
.
弾が発射されない。パイエティーを持っている手を見てみると、何かが私の手を掴んで、引き金を引くのを阻止しているようだった。
「...リー...!!本...に...!!ごめ...!!」
ゆっくりとその手を、その人物を認識していく。
「...リー!!本当...本...に!!ごめん!!」
その人物は、先ほどまで倒れていた先生であった
「マリー!!本当に、本当に!!ごめん!!」
ゆっくりと言葉を反芻し飲み込む。先生が話している言葉を理解すると、自然に声が漏れる
「せん...せぇ?」
「そうだよ!先生だ。本当にごめん...!」
「どうして...生きて...」
「そこは後で説明する!いくらでも埋め合わせをする!だからその銃から手を離して!」
そう言われ自分が強く銃を握りしめていることに気づく。トリガーを引かせないように突っ込まれていた先生の指が赤くなっていた
「あっ...ごめ...なさ...」
急いで銃を捨て、先生の手を握る。暖かい。ゴツゴツとした大きい大人の手だ
「せん...せぇ...よかった...生きてて...」
つーっと涙の雫が私の目から零れていく。先生は何か伝えようとしているようだ。意識が遠退いていく。
「せんせぇ...起きたら...」
意識がプツンと落ちていく。先生の顔は、それはそれは酷いものだった。
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当然、マリーの目が覚めたら説教をされた。少しして解放されて、また普段の日常に戻っていく。マリーは、この日からシスター修行を頑張っているようだった。文字通り...死に物狂いで
祝!10000UA+100お気に入り!私のへけを詰め込んだ作品でこれだけ皆さんが読んでくださることに最大限の感謝を。
小説の形式
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先生+ドッキリされる子の視点
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コユキ視点
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どちらでも!(私の書きやすい方)