>吹雪のやむ気配はまったくなかった。
>雪山初めてのハイネも、ポッケ村育ちのシンもそう思っていた。
>この状況下で洞窟に入るというのは、ある意味得策かもしれない。
>ハイネ
>『洞窟の中は温かいな』
>氷の洞窟、そう呼ぶにふさわしいような雪山のいりくんだ洞窟。
>吹雪を遮断できるので直接風を受けることもなく、体感温度は比較的高く感じられた。それでも気温は0°を下回っている。
>ハイネ
>『アレ?ここどこだ?』
>ハイネは地図を見ながらオロオロしている。
>支給品で渡された地図にも、雪山の洞窟の鮮明な地形は書かれていない。
>なぜなら、常に氷の変形等によって形を変えているからである。
>シン
>『おい、ハイネ。こっち』シンがアゴで道を示す。その手に地図はない。
>そう言えば、支給品の地図もとっていなかったな。
>ハイネ
>『あ、ああ…』
>それを不思議に思いながらも、シンの示す道に歩を進めた。
>ハイネ
>『シン、ホントにこの道で あってんの?』
>まぁ、地図を持ってないやつに道案内されては、当然の疑問だわな。
>シン
>『ん、あってるけど?なん で?』
>あたりまえじゃん的なノリで返されてしまった。
>ハイネ
>『いや、だってシン、地図 持ってないじゃん。なん で道わかんの?』
>シン
>『あ~、それはな…』
>前を歩いていたシンはハイネに向き直る。
>シン
>『全部ここに入ってるから 』
>シンが人差し指で自分の頭を指す。
>ハイネは『え?』という顔をしている。
>“雪山”というのは、シヴァ山脈という山脈をまとめた総称だ。
>正直、クエストの際、支給品で地図を渡されるので、フィールドの地形を覚えようなんてことはしないし、普通は不可能だ。さらに雪山といえば、常に地形を変えるフィールド。
>シンはその雪山の地形が頭に入っているという。極めてキテレツだ。
>それに驚きを見せたハイネの反応は極めて普通だ。
>ハイネ
>『おいおい、頭に入ってる って、この雪山の、シヴ ァ山脈の全部か?』
>シン
>『いや、全部ってことはな いけど、この辺りは昔、 父さんとよく来てたから な。一通りはわかるよ』そういえば、シンはポッケ村出身だったな。改めて思い知らされたハイネだった。
>ハイネ
>『父さんとよく来てたって 、シンのオヤジさんもハ ンター?』
>氷の洞窟を進みながら、ハイネがたずねる。
>シン
>『え、いや、ええ~っと、 ま、まぁな…』
>とてつもなく挙動不審だ。ここで思い出してもらいたい。
>シンの父は、言わずと知れたあの伝説に語られるハンター、“白銀の竜王”である。
>しかし、偉大な父を持つ子はそれに悩む、というのも世の摂理。
>シンがまだポッケ村にいたころ、よく父と比較された。
>別に父が嫌いなわけではない。息子として誇りに思うし、一人のハンターとして尊敬もしている。
>しかし、比べられるのはあまりいい気はしない。特に、そのことについて特別扱いされることは本当に嫌だった。
>だからこそ、ハンターとなってからは、自分のことを知らないティーズに行こうと思ったのだ。すべてゼロから始めるために。
>なので、たとえハイネと言えど、そのことだけは話したくなかった。
>ハイネ
>『?』
>シン
>『ハハハ…』
>笑ってごまかす。
>明らかにあやしいが、ハイネはそれ以上の追及はしなかった。それがハイネの優しさなのか、ただの単細胞なのかはわからないが。
>シン
>『そういえば、ハイネって …』
>唐突にあることが頭に浮かんだ。
>ハイネ
>『ああ、ヴェステンフルス 。今は亡き鳳凰の一族。 オレはその末裔さ♪』
>ハイネ・ヴェステンフルス。
>鳳凰の一族と言われたヴェステンフルス一族は、すでに滅んでいる。
>その唯一の生き残りがハイネだ。
>シン
>『あ、ごめん。余計なこと を…』
>ハイネ
>『気にすんな気にすんな。 オレは気にしてねぇから 』
>あくまで明るくふるうハイネ。
>ハイネ
>『まぁ、一つ言うとすれば 、あんま隠し事はなしな 。分かち合ってこその仲 間(ダチ)だ』
>シンの父親のことを察してか、ハイネが言う。
>シン
>『…ああ』
>うなづいてみたものの、やはりまだ父親のことは言えなかった。
>ハイネ
>『よし、それならOK。オ レにもバンバン質問して いいぞ』
>この性格、モテるだろうな、とシンは内心笑った。
>シン
>『じゃあさ、彼女いる?』ハイネ
>『え゛…』
>シン
>『どんな子?』
>ハイネ
>『いや、まだいるって言っ てねぇし』
>シンの質問に、汗だくになりながら最善の返答をするべく脳ミソをフル回転させるハイネ。
>そうしてシンの質問攻撃に、ハイネの精神的体力ゲージが限りなくゼロに近づいたころ、シンが目指していた場所に到着した。
>ハイネ
>『ハァ~…』
>思わずため息が。
>シン
>『やっぱいたな』
>そこは大きく開けた空間。ハイネ
>『ああ、余計なものまでい るけどな』
>眼前に広がる氷の空間には2種類の生物が。
>一方は、現在捜索中のガウシカ。数は8匹。
>もう一方は、雪山唯一の鳥竜種、ギアノスだ。数は3頭。
>8匹のガウシカを狩れば、おそらくガウシカの角はすべてそろうだろう。
>問題はギアノスだ。
>残りのホットドリンクの持続時間は1時間をきっている。
>シンはあえて時間のかかるこの場所に来たのだ。ここなら間違いなくガウシカがいると確信があったから。ハイネ
>『さ~て、選択肢は2つ。 その1、ギアノスを無視 ってガウシカだけを手早 く狩る。その2、ガウシ カもギアノスもまとめて すべて狩る。さぁ~、ど っち?』
>シン
>『どっち?って、考えるま でもないっしょ?』
>ハイネ自身、シンがどっちの選択肢を選ぶのかわかってた上で聞いていた。
>シン
>『ハイネも中途半端なこと はキライな方だろ』
>ハイネ
>『やっぱオレ、シンとなら うまくやれそ♪』
>選択肢その2が採用された。
>シン
>『全部狩ってやる』
>勢いに乗り、今回のクエスト最後の戦闘が始まった。
>追跡者
>『元気ねぇ~、あの2人。 でもちょっと元気すぎる かな?ムダな動きとかも 目立つし』
>シンたちがいる空間の高台に腰をおろして、眼下で戦いを繰り広げている2人を見下ろす。
>その追跡者のポーチには、すでに10本のガウシカの角が入っていたりする