>ヴェステンフルス一族、またの名を鳳凰の一族と呼ばれた彼らは、図抜けた身体能力と灼眼を有し、あらゆる戦闘に長けた部族であった。
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>※灼眼というのは、以前に話した“火の目”のことである。鳳凰の一族と呼ばれた彼らは、感情が高まるとその瞳が火色に変化し、その瞬間、個々に独特の能力(スキル)を得るのだ。
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>しかし、3年前、砂漠奥地に居住していた彼らの集落に、“クモ”という盗賊団が攻め込んだ。そして女子供一人残らず皆殺しにした。もちろん一族の戦士も戦った。
>しかし、“クモ”は全員がブラックリストハンターで構成されている超一流の猛者集団。
>いかにヴェステンフルス一族であっても太刀打ちすらできなかった。
>地獄の夜が終わり、ある少年だけが再び朝日を見た。そして生き残りが自分だけだと知った。
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>ハイネ
>『その少年ってのが、オレ ってわけよ』
>ここは気球の中。
>今は砂漠を飛び立ち、ハイネの一族が眠る一族の墓に向かっているところである。
>その間にハイネが、ヴェステンフルス一族の滅亡について少し語ってくれた。
>ハイネ
>『夜が明けて気づいたこと がもう一つあんだ』
>シン
>『…』
>シンはじっと聞いている。ゼノンは空を見上げ、アイルーのココは鉄の棒にぶらさがりながら泣いている。ハイネ
>『同志の瞳が一つ残らず奪 われてた』
>シン
>『…』
>ハイネ
>『その時、一瞬で悟ったよ 。連中の目的は“火の目 ”だったってことにな』紅く染まった“火の目”は世界七大宝玉の一つに数えられ、一対で300万zはくだらない値打ちになる。
>ハイネ
>『その後、一族と親交のあ った美食ハンターのシド と出会って、いろいろと 世話を焼いてくれたんだ 』
>当時、ヴェステンフルス一族はその実力もあって数多くある狩人一族の中でもかなり名の通った一族であった。
>ゆえに、盗賊団ごときに滅ぼされたということで、世に大きな衝撃を与えた。
>この事件によって、当時発足したての“クモ”は、世に大きく名を知らしめることとなった。
>シン
>『幻影旅団…通称“クモ” 。一体何なんだ?』
>“クモ”という名は通称で、正確には“幻影旅団”という。
>あの事件は“鳳凰の一族”と呼ばれたヴェステンフルス一族が、“クモ”と呼ばれる幻影旅団に滅ぼされたということで───
> “クモに喰われた鳳凰”と、後にそう呼ばれるようになった。
>シン
>『ちょっと聞きにくいんだ けど…、やっぱりハイネ も復讐とか考えてる?』ハイネ
>『さぁ、どうだろうな。今 となっては、そんなこと 考えてないって言えるけ ど、やつらを目の前にし たらどうなるか…』
>さっきも言ったとおり、クモはメンバー全員がブラックリストハンターだ。
>彼らに復讐の念を抱く者は星の数ほどいるが、それがかなわないのが現状だ。
>そのメンバーの中には、以前シンが密林で遭遇した死神ラウ・ル・クルーゼも含まれていると言われている。
>ゼノン
>『火の目の小僧、もうそろ そろだぞ』
>ゼノンの一言で、ハイネは気球の下を見る。
>そこは今までのようなだだっ広い砂地ではなく、岩が入り組んだ迷路のような場所だった。
>ここもれっきとした砂漠。砂漠奥地だ。
>ゼノン
>『確か、ヴェステンフルス の墓は立ち入り禁止だっ たはずだが』
>あの事件が起きて以来、ギルドクロノス支部によって立ち入りが禁止されているのだ。
>ハイネ
>『今回だけは勘弁してもら います』
>気球は広場になっているところに着陸する。
>この辺りもハイネの脳裏にはしっかりと記憶されている場所だ。
>ハイネ
>『あっちの小道を抜けたら すぐだ』
>ハイネたちは気球から降りて、辺りを見回す。
>ゼノン
>『小僧、これを持っていけ 』
>そう言って歩きだそうとしていたハイネに、ゼノンがペットボトルのようなものにいけた青い花を渡した。ハイネ
>『こ、これオアシス草じゃ ないですか。どうしたん ですか、これ?』
>ゼノン
>『いいから、持っていけ』オアシス草、砂漠全域に数えるほどしかないオアシスの限られた場所にしか生息しない貴重な植物だ。市場にもほとんど出回らない幻のアイテム。
>ハイネ
>『あ、ありがとうございま す』
>ハイネが供えようと思っていたサボテンの花なんかとは比べ物にならない。
>ハイネはその青い花を大切に受け取る。
>シン
>『じゃ、行きましょう』
>ハイネが先んじて歩きだし、シンがそれに続く。
>しかし、シンの呼び掛けにも応じず、ゼノンは気球のカゴから出ようとはしない。
>ハイネ
>『どうしたんスか?』
>ゼノン
>『…』
>ハイネとシンは振り返ってゼノンに問う。
>ゼノンは2人から目を反らし、視線をココに向けた。ゼノン
>『この辺りには狂暴なモン スターが多く生息してい る。なので気球を見てい ないといかん。ワシはこ こで祈りをささげること にする』
>ゼノンはそう呟いて、『ワシの代わりにコイツを連れていってくれ』と言ってココを投げた。
>ココ
>『ニャ?』
>ゼノン
>『神聖な場所だ。無礼をは たらくなよ』
>その後、シンとハイネはゼノンにも来てもらうよう説得してみたが、ゼノンは首を縦には振らなかった。
>結局、シン、ハイネ、ココで参拝することになった。シン
>『この先?』
>先ほど、ゼノンが言っていたとおり、ヴェステンフルス一族の元居住区は現在立ち入りが禁止されている。シンたちはその柵と注意書の書かれた看板の前まで来ていた。
>ハイネ
>『そうだ』
>3人は金網をよじのぼって、それを乗り越えた。
>シン
>『ここが…』
>なんとも、金網を越えてからは、岩石の迷宮から古代の遺跡へと景色が一変した。
>木造や石造りの家々が建ち並び、たくさんの石像もうかがい知れる。ただ、目につく物はことごとく破壊されている。
>そういった観点から、この集落は事件が起きた当時のままだということが推測できた。
>ココ
>『ここがオレンジのお兄ち ゃんの村ニャ?』
>ハイネ
>『ああ…。ひでぇモンだろ ?』
>ハイネがこの風景を目にしたのは2度目。最初は、ハイネが生き残った事件後の朝。2度目が今回だ。
>何一つ変わってない。
>当然と言えば当然なのだが、ハイネは妙に腹の辺りが熱くなった。
>変わっていると言えば、一つだけ。
>亡きヴェステンフルス一族を弔うため、ギルドによって集落の中心に慰霊碑が建てられた。
>亡くなった一族の人の骨は皆ここに納められている。シン
>『ハイネ、あれ(慰霊碑)が …』
>ハイネ
>『そ。慰霊碑だけど、オレ にとっちゃ墓も同然だ』近くで見るとそれなりに大きい慰霊碑。
>ハイネはゼノンからもらったオアシス草と、さっき採ったサボテンの花を供えた。
>あえて自分で手に入れたサボテンの花を供えたということは、『オレはハンターになりました』ということを報告したかったのかもしれない。
>そうして、ハイネ、シン、ついでにココは、慰霊碑の前で静かに黙祷をささげた。
>同じ頃、気球の上ではゼノンもヴェステンフルス一族に冥福を祈っていた。