ゼノン
>『カナリア、お前はどうす る?なんなら、小僧ども とワシの気球に乗ってい くか?』
>カナリア
>『ん~ん、私はいいや。こ の後、ボアズに寄ってか なきゃならないから』
>ハイネとサーシャが感動的な別れを惜しんでいるころ、ゼノンはカナリアの動向を聞いていた。
>ゼノン
>『ボアズか。あそこは治安 が悪い。気をつけろよ』カナリア
>『心配いらないって。これ でも私、ブラックリスト ハンターですから』
>カナリアが誇らしげに胸を張る。
>そんなカナリアを見てゼノンは皮肉を口走った。
>ゼノン
>『20そこそこでHR9を名 乗るとは…。まったくふ ざけた小娘じゃ』
>その後、ティーズへの帰還組はゼノンの気球に乗り込む。
>時刻は18:00をまわったところだ。このまま順調に帰れば、明日の朝にはティーズに到着できる。
>ただ、今夜は風が強い。道中何事もなければいいが。カナリア
>『イルゥ~』
>カナリアが突然大声をあげた。シン、ハイネ、サーシャは驚いてカナリアに目を向ける。
>そしてカナリアの呼び掛けから数秒、吹き荒れる風と雲を突き破って、空から何かがこの飛空場に向け落下してきた。それは、まるで隕石のように。
>ゼノン
>『ほほぉ~。これまた一段 と成長したのぉ~』
>落下してきた生物は土煙の中から這い出してきて、カナリアの前で頭をさげる。ハイネ
>『こ、これって…、翼竜種 ?』
>銀の鱗と白の毛におおわれたそれは、ハイネのよみ通り、白翼竜グラン・トリィだった。
>シン
>『何、これ?』
>翼竜種、それは飛竜種と違って主に生活圏を空に持つモンスターだ。特徴は大きな翼と、立派なトサカ。
>翼竜種はその一生をほとんど空で過ごし人畜無害なため、ハンターのクエストに翼竜種討伐という内容のものはほとんどない。
>ただこのカナリアのように、自分のパートナーとして翼竜種を従えるハンターもいる(とはいっても翼竜種を従えるハンターは数えるほどしかいない)。
>翼竜種は数種類確認されてる。それはすべて色によって判別される。
>カナリアの翼竜は、白翼竜と言われる種類だ。名前はイルだそうだ。
>ハイネ
>『スゲー、初めてこんな近 くで見た』
>先ほども言ったとおり、翼竜種は一生のほとんどを空で過ごす。人前に出てくることほとんど皆無なのだ。カナリア
>『シャルル、行くよ』
>カナリアのアイルーシャルルが、カナリアの差し出した手をつたってカナリアの肩にのぼる。
>カナリアはそのまま翼竜のイルに飛び乗る。
>ゼノン
>『ワシらも行くぞ』
>ゼノンの気球がゆっくり上昇し始める。
>カナリア
>『イル、ゴー』
>カナリアの掛け声で、イルは『ア゛ア゛』と咆哮をかまして、勢いよく飛び立つ。ものすごい風圧だ。イルが飛び立つと、地面に小さな竜巻のようなものが発生していた。
>ゼノンの気球も大きく揺れた。
>シン、ハイネ
>『おわわぁ』
>ゼノン
>『カナリア、気をつけろ』カナリア
>『ごめ~ん』
>カナリアを乗せたイルは、ゼノンの気球の周りを旋回している。
>カナリア
>『じゃ、もう私たちはいく から~。ケンくんとヴァ ニラによろしくねぇ~』カナリアはそう言い残して、イルとともに暴風吹き荒れる暗雲の彼方に飛び去っていった。
>ゼノン
>『今夜は荒れるな』
>
>
>時を同じくして、ティーズでも動きがあった。
>ゼノンたちが予想したとおり、空模様は徐々に荒れ始め、ここティーズでは小さな嵐に見回れていた。
>そんな中、多くのハンターがクエストに発つのを諦め、この集会所に留まっていた。
>予報によれば、低気圧がティーズを中心とした地域に停滞しているらしく、一晩中嵐が続くらしい。
>受付のサクとイクもその対応に追われていた。
>
>『ひっでぇ雨』
>
>『あ~、びちょびちょ…』
>2人の男女のハンターが、この雨の中、クエストから帰還された。
>ぼやきながら集会所に戻ってきたこの一組のハンターたちに、他のハンターたちからの視線が注目した。
>イク
>『え、アンタたち、もう帰 ってきたの?』
>イクの前に現れた2人のハンター。
>それはあの時、ギルドマスターであるギルバートから緊急セルケト討伐クエストを言い渡されたケネスとヴァニラであった。
>ケネス
>『よっ』
>ヴァニラ
>『ただいま』
>銀髪テンパのケネスと、金髪サイドテールのヴァニラ。互いにライトボウガンを扱うガンナーハンターだ。彼らは針蟲セルケトを討伐しに行っていた。セルケトといえば討伐に平均的数字でおよそ2週間かかる。しかし今回、ケネスとヴァニラがかけた所要時間はたった1週間たらず。
>イク
>『ホント、毎度のことなが らアンタたちには驚かさ せれるわ』
>イクがあきれたような物言いで呟く。
>ケネス
>『だろ~』
>ヴァニラ
>『調子にのってんじゃない っての。あのセルケトま だ子供だったじゃない。 1週間かかったのが遅い くらいよ』
>イク
>『まぁまぁ、とりあえずク エストはクリアしたみた いだし。このクエストは 書類上、ギルドの直接契 約ってことになってるか らここ(受付)では報酬金 は渡せないのよ』
>せわしく働いていたイクが手を休めて、話し込む。
>周りのハンターたちはこの3人に視線を向けている。一般ハンターA
>『おい、あの金髪の女。レ イアリスじゃねぇか?』一般ハンターB
>『レイアリス?あの【金猫 のレイアリス】か?』
>一般ハンターC
>『つーことは、隣の銀髪の 男は【銀猫のレウスウォ ール】?』
>一般ハンターD
>『【つがいの猫】、こんな とこ何してんだ?』
>周囲のハンターたちはケネスとヴァニラの存在に、驚いたような、不思議なというような反応を示している。
>ヴァニラ
>『とりあえず、セルケトは 狩り終えたから。密林へ の立ち入りも再開しても ってもオッケーよ』
>ヴァニラのフルネームは、ヴァニラ・U・レイアリスという。通称【金猫のレイアリス】と呼ばれる。
>ちなみにケネスのフルネームは、ケネス・L・レウスウォール。通称【銀猫のレウスウォール】。
>2人ともHR8のブラックリストハンターだ。
>そして金猫銀髪のヴァニラとケネスを総称して、【つがいの猫】という。
>ケネスとヴァニラは場所を変え、ギルドマスターのギルバートの部屋へ移動した。
>ギルバート
>『早かったな。さすがはお 前らだ』
>白に近い黄色の髪をオールバックにしたギルバートが、偉そうに席に座り、机を挟んだ向こう側にいるケネスとヴァニラを称える。
>ゼノンとはまた違った感じの『ジジィ』だ。
>ケネス
>『ハイハイ、お褒めいただ き光栄にございます。報 酬はきっちり用意してあ んだろうな?』
>礼儀正しい対応の後に、本音がこぼれた。
>これでもギルバートは、ハンターズギルドの総帥、ギルドマスターなのだ。そのギルバートにこんな口を聞けるのは、ハンター多しといえどケネスを含め数人くらいであろう。
>ヴァニラ
>『報酬金をもらう前に、ク エストの内容にあった状 況報告をさせてもらうわ ね』
>相方ヴァニラはとりあえず、クエストのクリア条件にあった状況報告を始める。ヴァニラ
>『証言通り、セルケトはい たわ。まだ子供だったか ら、討伐にはそう時間は かからなかった』
>ケネス
>『狩ったセルケトの腹をひ らいて胃袋の中を見たん だが、食われたハンター どもの防具が見つかった よ。これでルーキーが行 方不明になっている原因 も明らかになったわけだ 』
>状況報告終了。
>2人の話を聞いてギルバートは考え込む。
>ケネスとしては、報酬金が気になるところだ。なぜなら、緊急クエストだったため具体的な金額が提示されていないからだ。
>ギルバート
>『わかった、ご苦労だった な。約束の報酬金30万z だ』
>ほぉ、30万zか。悪くない。一般的に、セルケトを討伐するクエストの報酬金は20万zほど。
>今回は“緊急クエスト”だったので、30万zでいいところだ。
>ケネス
>『今回は奮発したんだな。 ありがたく頂戴すんぜ』ヴァニラ
>『…』
>ケネスが札束を受け取り、ヴァニラは無言で一礼し部屋を出ようとするケネスに続く。
>ギルバート
>『待て』
>ケネスが部屋を出ようとドアに手をかけた瞬間、たった二文字の『待て』という言葉を、ゆっくり、重く、威厳あり気に言った。
>ケネス
>『なんだよ?』
>ケネスの問いにギルバートが答えるまで10秒の沈黙が流れた。
>その間の空気の重さは絶大なものだった。
>ギルバート
>『単刀直入に言う。クルー ゼが現れた』