>ハイネ
>『密林、解放されてんじゃ ん』
>集会所でのハイネの第一声がこれであった。
>イク
>『アレ、ハイネくんシンく ん。帰ってたの?』
>たいくつそうにテーブルに突っ伏していたイクが、2人を発見して歩み寄る。
>シン
>『イクさん』
>掲示板の前にいた2人のもとに、青いメイド服がトレードマークのイクがくる。今は集会所はがらがらだ。食堂と一体になっているこの集会所であるが、人の姿はほとんどない。
>もう一人の受付嬢であるサクは、数少ない利用者のハンターと何か話している。ハイネ
>『帰ってたって、オレたち がゼノンさんたちとクエ ストに行ってたの知って たのかよ?』
>イク
>『当たり前よ。だいぶ騒ぎ になったんだから』
>騒ぎとは何のことか、シンとハイネは顔を見合わせる。
>3人はテーブルについた。その6人掛けのテーブルの片側の端にイクが座り、その隣にハイネ、その隣にシンが座った。
>集会所の内装は、ゲーム中の集会所を思いっきり広くした感じで、ゲーム中にあるあのテーブルがいっぱい並んだような風景である。イク
>『アンタたち、本当にあの ゾルディックのじいさん の気球に乗ったの?』
>ゾルディックのじいさん、つまりゼノンのことだ。
>シン
>『はい、砂漠やクロノスま で乗せてもらいました』それがどうした、という感じのシンとハイネだが、イクはアゴに手をあてて何かを考え込んでいる。
>ハイネ
>『どういうこと?』
>イク
>『いやね、ゾルディックの じいさんって、運び屋と してはそれなりに有名で しょ。でも、見た目通り 堅物でね。実力のあるハ ンターでも、そういう意 味では気球に乗せないこ とがあるのよ』
>シン、ハイネ
>「確かにゼノンって見た目 怖そうだけど、別に堅物 ってことはないと思うけ どなぁ」
>2人はイクの言葉に違和感を覚えた。実際に会った2人だからこそ、感じる違和感だった。
>しかし、今はイクの話を聞くことにした。
>イク
>『そんなじいさんの気球に 誰かが乗った、って噂が 広まってね。じいさんの 気球に乗る=じいさんに 認められる=凄腕ハンタ ー、みたいなのがあるか ら、みんな気にするのよ 。しかも、それがなんと ルーキーって判明するや いなや、ちょっとした騒 ぎになっちゃったってわ け』
>なるほど、話の筋はわかった。
>とりあえず、ゼノンの気球に乗せてもらったシンとハイネはすごいってことだ。イク
>『そこで、私が個人的に調 べてみたら、そのルーキ ーってのがキミたち問題 児2人組ってわかって、 ちょっとマジで驚いてん のよね~』
>確かに、ゼノンの気球に乗せてもらうことはハンターとして名誉なことである。それはクロノスで出会ったカナリアや、帰還途中の密林奥地で出会ったスティングたちも同じようなことを言っていた。
>さらに、2人はゼノンとの別れ際に『またいつでも来い』と言われたのだ。
>シンとハイネはそれを思い出し、少し胸を張れる気分になった。
>その時、集会所の船着き場のある出入口から2人のハンターが帰ってきた。
>イク
>『ヴァニラ、ケン。今帰り ?』
>イクがその2人のハンターを発見し、手を振る。
>同時にシンとハイネの視線も向けられる。
>ケネス
>『おう』
>ヴァニラ
>『ただいま』
>2人の男女のハンターは手をあげて応答する。
>イク
>『何か収穫あった?』
>ケネス
>『まったく、だ』
>ヴァニラ
>『全然…』
>ケンと呼ばれるハンターは両手を肩の位置まであげ手のひらを上に向けたポーズをとり、ヴァニラと呼ばれるハンターは首を横に振る。2人組のハンターは、そのままイクたちを横切り、集会所を出ていった。
>気のせいかもしれないが、一瞬、ほんの一瞬、ケネスがシンを見て驚いたような表情を見せた…気がした。ハイネ
>『なぁ、イク、今のハンタ ーたちは?』
>ハイネは妙に今の2人のハンターが気になった。何かが、心底で渦巻いているような感覚。それはシンも同じだった。
>イク
>『そうね…、のら猫ってか 、迷い猫ってか…』
>イクが妙な言い回しを考えている。
>サク
>『もう、イクってば、ちゃ んと教えてあげればいい じゃない』
>そう言ってピンクのメイド服のサクが現れた。
>さっきまでサクと話していたハンターたちもいなくなり、この集会所にはシンたちと、別のテーブルで飯を食っているもう一組のハンターたちしかいなくなった。
>サク
>『彼らは、【つがいの猫】 って呼ばれてるブラック リストハンターよ。聞い たことない?』
>サクが丁寧に教えてくれる。
>【つがいの猫】、もちろんシンやハイネも知っている。基本的にブラックリストハンターは通り名で知られ、すべてのハンターの頂点を行く者として、その全員が有名である。
>【つがいの猫】とは、ケネスとヴァニラを合わせた総称であり、個人名ではない。
>シン
>『【つがいの猫】って、ラ イトボウガンの使い手で すよね?』
>サク
>『うん。【金猫のレイアリ ス】、【銀猫のレウスウ ォール】っていう2人の ブラックリストハンター の総称よ』
>レウスウォール、よろしく
>イク
>『この前、ハイネくんが密 林でセルケトに襲われた だろ。あの後、密林にセ ルケトを討伐しに行った のがコイツらよ』
>すると、ケネスたちと入れ違いに、今度は村に通ずる出入口から別のハンターが集会所に入ってきた。
>集会所の門をくぐる前から何か叫んでいる。
>何事かと、4人は顔を向ける。
>イク
>『ちょっとロアノーク、ア ンタ何の用よ』
>入ってきたハンターは、ロアノークというらしい。
>『うるさい奴』という第一印象を与えるこのハンター、見た目で言えば、がたいはいい。顔や腕に目立つキズもなかなかにいかす。
>ただ、うるさい。
>ロアノーク
>『用も何も、うちの馬鹿弟 子3人はまだ帰ってない のか?』
>ああ、ホントうるさい。
>常人の声帯ではないだろうというぐらい、声のボリュームがデカい。
>イク
>『ああ、もう、うっさい。 何?弟子?スティングた ちのこと?ならまだ帰っ てないわよ』
>大げさに耳をふさいで、イクが言い返す。
>耳をふさいでいるのは、イクだけじゃない。サクを含め、シンやハイネ、そしてもう一組いるハンターたちも耳をふさいでいる。
>ここで言わせてもらう。この男、ロアノーク。中前です。
>ロアノーク
>『ったく、もうすぐ時間だ ってのに何してんだ』
>って、今、スティングって聞こえたような。
>ハイネ
>『スティングって、あのス ティングさん?』
>サク
>『そうそう。2人が初クエ ストに発つ時にいた3人 組の…』
>やはり、イクやロアノークが言うスティングというのは、ハイネやシンが思い浮かべたスティングと同一人物のようだ。
>そういえば、遭難しかけた密林奥地でスティングたちが、師匠がいると言っていた。
>ということは、スティングたちの師匠というのは、このロアノーク?
>ロアノーク
>『何だ、少年たち。オレの 馬鹿弟子どもを知ってい るのか』
>イク
>『声デカいってば』
>やはりこのロアノークという男、スティングたちの師匠らしい。師匠という柄ではなように見えるいが。
>T・M・ロアノーク、通称“ティー”で呼ばれる、これでもブラックリストハンターで、スティングたちの師匠。HR8という階級を持ち、現在は新人育成を心がけている。年齢は不明。シン
>『はい、実は…』
>シンとハイネは、密林奥地でスティングに助けられたことをロアノークに簡潔に聞かせてやった。
>ゼノンといっしょに助けられたこと。一夜をともに過ごしたこと。響狼ヴェルガンデから守ってもらったこと。
>これにはロアノークだけでなく、イクやサクまで驚いていた。
>サク
>『え、ヴェルガンデに襲わ れたんですか』
>イク
>『しつこいぞ~、アイツら 。ヴェルガンデって頭い いから、顔とか匂いとか 覚えられたら、どこまで もストーキングしてくる からな』
>などとイクが、嘘か本当かわからないリアルな脅しをかけてきた。
>ロアノーク
>『アイツら、ヴェルガンデ なんかと?まったく…』ロアノークが頭をかく。
>イク
>『アイツらバカだからね』と、ロアノークも加わり、スティングたちのネタで盛り上る。
>
> 『誰がバカだって?』
>
>と、背後からの声。
>皆、一斉に振り向く。
>ハイネ
>『スティングさん』
>スティング
>『よぉ』
>ロアノーク
>『よぉ、じゃないわ。バカ たれが』
>まぁ、とりあえず、スティング、ステラ、アウル無事帰還。
>
>
>
>ヴァニラ
>『ただいま~』
>ケネス
>『今帰ったぞ~』
>集会所を出たケネスとヴァニラが、自宅と思われる家に帰った。
>ヒメ
>『おかえりなさい。お2人 とも、予定より遅かった ので心配していました』純白のアイルーが2人を迎えてくれた。
>ちょっと待てよ、ヒメってアイルー、確か…。
>ゼノン
>『遅かったな』
>そこに現れたのは、あのゼノンだ。
>ということは…。
>ケネス
>『いろいろあってな』
>ゼノンの屋敷には、ゼノン本人とアイルーたち以外に、まだ誰か住人がいるという話だった。
>つまり、それはケネスとヴァニラだったということだ。