>密林の洞窟にはたくさんの抜け道が存在し、それらはすべて“大空洞”と呼ばれる最深部の巨大な空間に繋がっている。
>その大空洞までの抜け道は、今でも完全には把握されておらず、新ルートが続々と発見されている。その中には、飛竜種等が休息時に使う休息ポイントもいくつか存在する。
>ハイネ
>『…』
>以前、そのポイントで針蟲セルケトに遭遇したハイネは、異常に警戒心が強くなっている。
>シン
>『…』
>ハイネの警戒心は隣を歩いているシンをもその対象としてとらえているようで、シンとしてはちょっと…、って感じだ。
>シン
>『そんなに気になんの?』ハイネ
>『いや、こうでもしてない と、もし「後ろから!」 とか、「上から!」とか なった時に、こう…』
>これは少し焦っているだけだ。決してビビっているわけではない。ハイネの思いは確かにシンに伝わった。シンは少しにやけながら横目で『ふ~ん』とか言ってあげたりした。それに対して、あわてたリアクションをとってくれるハイネは『ノリがいい』と言うのだろうが、やはり男同士なら何か華がない。
>シン
>『でも、そんなに神経張り 詰めてると、すぐにバテ ちまうぞ?』
>ハイネ
>『ん…うん…』
>洞窟というものに対し、軽いトラウマができてしまったのかもしれない。ハイネ自身も薄々それに気づき、早期の打開策が必要だと考える。ハンターにとって洞窟がダメというのは、破滅的な弱点になるからだ。
>ハイネ
>『【つがいの猫】だっけ? オレの見たセルケトを討 伐したのって?』
>シン
>『みたいだな』
>ハイネ
>『レベルの差を痛感させら れるね。あんなバケモノ 狩るなんてさ』
>何だかハイネのテンションが低い。それは洞窟の中だからというわけだけではない。
>シン
>『そりゃまぁ、あの人たち ブラックリストハンター なんだろ。当然なんじゃ ないのか?』
>ハイネ
>『お前だって見ただろ。ア イツら、オレたちとほと んど年変わらねぇよ』
>一度だけ、両者は顔を合わせたことがあった。
>【つがいの猫】は2人のハンターの総称だが、その2人ともがどう見ても20前後の若者だった。
>つまり、17のシンはともかく、19のハイネは本当に同年代かもしれないのだ。
>シン
>『オレたちだって、いつか はブラックリストハンタ ーにまで登り詰めてやる さ』
>ハイネ
>『ああ、一族の誇りを守る ためにも、絶対“刀衆” になってやる』
>改めての決意表明とともにガッツポーズ。
>ハイネの出身である、今は亡きヴェステンフルス一族。かつては狩人の五大部族の一つとしてその名を連ねた名門中の名門。
>ハイネはその最後の誇りとして、この運命を生き抜く所存だ。
>ハイネ
>『そう言や、お前も何か“ 目的”があるとかなんと か言ってたよな?ちょう どいい機会だし、教えろ よ』
>シン
>『あの時、断るって言った ろう』
>唐突に、ハイネが数分前の会話を思い出す。
>ハイネ
>『なんでだよ。前に隠し事 はなしだって言ったじゃ んか』
>そんな約束もした。
>忘れていたわけでもないし、破るつもりもない。
>ただ…。
>シン
>『オヤジのことなんだよ。 今はこれぐらいしか言え ない…』
>シンの父親は、キラ・ヤマト。伝説に語られるハンターで、幾多の武勇伝を残している英雄だ。ハイネもそれは以前聞いたし、キラ・ヤマトのことはもちろん知っている。
>ただ、キラ・ヤマトには、英雄と呼ばれる傍ら、何かと黒い噂もささやかれる人物であったのも事実だ。それもハイネは知っている。お互いに家族、一族の問題を抱える者同士として、ハイネはそれ以上の追及はしなかった。
>
>数十分、モンスターに襲われることもなく、道に迷うこともなく歩き続け、ようやくたどり着いた。
>2人の前には、陥没した天井から差し込んだ光によってなされた、幻想的な空間が広がっていた。ここが密林の洞窟の中心にして最深部、“大空洞”である。
>シン
>『ヒュ~、ひろっ』
>ハイネ
>『まるでホールだな』
>大空洞、その言葉に偽りなし。クソデカい空間だ。こちらから向こう側が見えない。
>段差入り乱れ、洞窟なのに崖が存在し、その下からは水の流れる音が聞こえる。また岩の割れ目や抜け穴がそこら中に見られ、すべての洞窟は大空洞に繋がっている、ということもうなづける。
>シン
>『スゲーな』
>ハイネ
>『天井たけぇ~』
>陥没した天井は、地底の底からでも空を拝むことができる。これは大自然のハンターに対する配慮か何かだろうか。
>周りを見回せば、キノコや採掘ポイント、虫の茂み、果ては釣りなんかもできる。残念ながら、今回はそれらの特殊なアイテムを持ってきていないので、採取ぐらいしかできない。
>それと発見がもう一つ。
>シン
>『あれって人?』
>ハイネ
>『ハンターだ』
>シンの指差す先には、同業者の姿が二つ。
>崖の割れ目の前で、ピッケルを振り回している男の子と女の子。どうやら採掘をしているようだ。
>ツバメ
>『ふぅ~、2個か~。チド リ~、そっち何個採れた ~?』
>ピッケルを杖代わりにして地面につけ、額の汗をぬぐいながら、少女が少し離れた場所にいる少年に問い掛けた。
>チドリ
>『4つ採れたよ』
>ピッケルで作業中だった少年が手を止めて答える。
>ハイネ
>『や~や~、どうもどうも 』
>ハイネが2人に接触。何のお構いも無しに行動に出たハイネは、度胸が据わっていると言うのだろうか。
>そう言えば、初めてシンとハイネが出会った時も、ハイネは見ず知らずのシンに声をかけていた。
>ハイネって何気にスゲー、シンはハイネの後ろでそう思っていた。
>ツバメ
>『ん?誰、アンタたち?』赤毛のストレートの少女が振り返る。
>ハイネ
>『ハイネ・ヴェステンフル スっていいます』
>シン
>『オレはシン・アスカとい います。オレたち、今年 からの新人で、えっと、 何なさってたんですか? 』
>ハイネの後ろからシンが駆け寄ってきて、一応の自己紹介。
>その後の質問は、ピッケルを持っている相手にするには限りなく愚問なように思えるが。
>ツバメ
>『見てわかんない?採掘よ 。さ・い・く・つ』
>やはり愚問だった。まぁ、ピッケル片手に虫取する人はいないだろうな。
>ハイネ
>『何採ってたんですか?』ハイネが続けざまに問い掛けた。
>チドリ
>『マカライト鉱だよ』
>すると、その返答はシンやハイネの頭上から聞こえてきた。と、思った瞬間、2人の前に、少年が飛び降りてきた。
>ハッと驚いてしりもちを付きそうになる。
>その少年の手には、野球ボールほどの青い石が4つ、両手の手のひらいっぱいに乗っていた。
>シン
>『マカライト鉱石?』
>チドリ
>『うん。キミたちルーキー なんだね。ボクはチドリ ・アルスター。よろしく ね。彼女はツバメ・アル スター』
>ツバメ
>『オッス』
>ツバメという少女が笑顔で返事する。
>赤毛のストレートに鳥の羽の髪飾りが施されたこの少女はツバメ・アルスター。ツバメと同じく赤い髪の、まだその面影に幼さが残る物静かなこの少年はチドリ・アルスター。
>ハイネ
>『アルスター?』
>ふと、彼らのファミリーネームに疑問を抱く。
>それは2人とも同じ名字、というのではなく、ハイネが感じたものはもっと別のものだった。
>ツバメ
>『やっぱ気づいた?』
>ハイネ
>『じゃやっぱり、2人とも アルスター一族?』
>チドリ
>『はい』
>アルスター一族。
>この一族について、あることを思い出してもらいたい。それを踏まえた上で、次回を読んでいただきたい。