>アルスター一族は、五大部族に数えられる名門一族。そして、その名において、ハンターズギルドとある契約が結ばれている。アルスターとして生を受けた者には、その時点をもってハンターの資格を授けるという契約が。つまり、アルスターとして産まれたら、その運命は決まってしまうのだ。アルスターにハンター以外の道はない。これを良いととるか、悪いととるかは当人次第だ。ただ、悪いととったとしても、反論は許されない。そして、男女例外なく、幼い頃よりハンターとしての行を施される。これが、ツバメとチドリが10才でドスランポスを倒せたという事実の真相だ。
>ハイネは、アルスターと同じ五大部族の一つのヴェステンフルスということで、アルスターとギルド間で結ばれているこの契約のことは知っていた。だから驚かなかったのだ。
>シンは驚いていたが、契約の件は公表されているし、正直驚くようなことではない。シンが世間知らずなだけだ。
>ツバメ
>『ん~、疲れた~』
>船着き場でツバメが背伸びする。
>いかだを漕いでいたのはチドリなのに、なんでツバメが『疲れた~』なんだよ?と、言いたくなるのだが、それは愚問だ。
>なぜなら『アルスターだから』。これで筋が通ってしまうのだ。
>以前に説明した通り、アルスター一族は完全無欠の女系一族。いかだを漕ぐのも、男がやるのは当然。地球が太陽の周りを回っているのと同じくらい当たり前なことなのだ。
>ツバメが『早く早く』と急かすから、頑張って漕いで疲れているはずなのに、ツバメに笑顔で対応しているチドリが健気で仕方ない。シンはそんなチドリに同情してしまう。
>ツバメ
>『じゃ、行こっか』
>ツバメがシンとハイネに笑顔を振り撒く。
>シンとしては、チドリを休ませてあげたかったのだが、ツバメはそんなつもりはないようだ。もちろん、チドリにもそんなつもりはない。
>ハイネ
>『はい』
>ツバメのご厚意で、アルスター一族を尋ねることになったシンとハイネ。まぁ、用があるのはハイネで、シンはおまけなのだが。
>一行はティーズの一角にある、アルスター一族の居住区に向かう。
>アルスター一族の居住区は、ティーズ全域の約5%をしめている。
>村を“国”として認識してもらいたい。
>
>
>アルスター一族居住区、屋敷本邸…
>アルスター一族の居住区はティーズの西側に位置しており、一族以外の者は立ち入ることができない。四角形型の居住区に独自の文化を築いており、居住区の中心部に一族の長の住居である屋敷がある。
>ハゲタカ
>『これから、ダイスリー大 臣との面会だ。早く準備 しろ』
>スポーツ刈りにグラサン、右頬に大きな傷痕のパッと見(や)さん風の男がスケジュール張を見ながら言う。セキレイ
>『え~、めんどくせぇよ。 また今度にしといて』
>何かの資料を机の上にばらまいて、そこに突っ伏した女が手をパタパタする。
>ハゲタカ
>『アホなこと言うな。大臣 との面会をそんな簡単に 先延ばしにできるわけな いだろ』
>正論を振りかざすグラサン男に対し、机に突っ伏した女は『う゛う゛~』と唸り声をあげる。
>察しの通り、このだらしない女こそ、アルスター一族現族長、セキレイ・アルスターである。また、このグラサン男は一族の副長を務めるハゲタカ・アルスターだ。
>セキレイ
>『な~、ハゲ~、なんとか しといてよ~』
>ハゲタカ
>『なっ…、セキレイ、そ の呼び方、2人の時なら 構わないが、人前では絶 対やめろよ』
>アルスター一族は、族長を女性が、副長を男性が務める風習になっている。しかしどちらかというと、セキレイはハゲタカを使用人のように扱っている。
>また、ハゲタカは唯一、セキレイにタメ口を聞ける男として、一族内では一目おかれている。
>
>
>クエストクリアの手続きを済ませ、報酬金を受けとった4人は、アルスター一族の居住区の方へ向かって歩いていた。ちょうどシンやハイネやゼノンの家からは逆方向になる。ティーズのこちら側は、シンはあまり来たことがなかった。アルスター一族の影響を受けてか、やたらに女性ゾーンのイメージがあるのだ。男にとっては近寄りがたい、しかし憧れでもある地区だ。ツバメ
>『着いたよ』
>ツバメが一言。
>城のように、居住区の周りを掘りが囲んでいる。まるで、外世界から隔離しているかのように。
>そして、正門と思われるところには掘りに石橋が架けられている。もちろん、門番付きで。
>ウズラ
>『おう、今帰りか?ツバメ 、チドリ』
>スズメ
>『あれ?お客さん?』
>石橋を渡ると、そこには巨大な門が。そしてその両わきには門番と思われる少年少女が2人。
>ツバメ
>『まぁね。セキレイ姉様に 伝えてくれる?』
>ウズラ
>『え、セキレイ様に?それ は無理じゃねぇか?』
>門番少年は顔をしかめる。セキレイは五大部族であるアルスターの頭主だ。先ほど話していたように、大臣と面会するような身分である。
>そんなセキレイを突然訪ねてきても、門前払いされるのは至極当たり前のことだろう。
>ツバメ
>『そこを何とかなんないの ?』
>チドリ
>『セキレイ様、これから何 か予定あるの?』
>スズメ
>『元老院のダイスリー議員 と会談だって』
>門番少女の一言で、場の空気がドンドンマイナスの方向へ向かっている。
>ハイネとしても残念だが、いきなり来て無理を言うわけにもいかない。
>今回は諦めて、次回また出直そうと思い、それを告げようとした時───
>カナリア
>『あたしが取り合ったげる よ』
>頭上から救いの声がした。一同はその声の出所を見上げる。
>ツバメ
>『カナリア姉さん』
>ハイネ、シン
>『カナリアさん』
>一同の目線の先には、いつしかのポニーテールが。
>覚えているだろうか。以前、砂漠で助けられ、その後クロノスで再会を果たした赤毛のポニーテールの女ハンター、カナリア・アルスターだ。
>カナリア
>『やっぽー。てか、何かよ く会うね、あたしたち 』
>門の柱の上に座っているカナリアが笑顔でピースサイン()を送っている。
>そう、このカナリアもれっきとしたアルスター一族のハンターなのだ。
>カナリア
>『いつかは来ると思ってた けど、こんなに早くたど り着くとはね。ささ、入 って』
>カナリアがシンとハイネの前に飛び降りてきて、2人を門の内に招く。
>そんな光景をアルスター一族の4人は、ただ愕然と見ていた。
>ウズラ
>『いいのか?』
>ツバメ
>『カナリア姉さんが言って んだから、いいんでしょ ?』
>チドリ
>『というか、シンさんとハ イネさんって、カナリア 姉さんと知り合いなんだ ?』
>スズメ
>『その前に、あの2人って 誰なの?』
>
>カナリアに案内され、セキレイの住居である屋敷に向かう。
>アルスター一族の居住区は、ティーズの町並みとは明らかに異質だった。
>中心に大通り、それと平行または垂直に交わるように細い道が交差している。まるで碁盤のように。
>ティーズという大きな村の中にあるにも関わらず、ここは頑なにその文化を守っているのだ。
>中央の大通りを通っているだけで、そのことがわかるような気がする。
>カナリア
>『ちょっと待っててね。今 呼んでくるから』
>屋敷に通された2人は、その玄関で待たされた。
>そこは凄まじく、純の和であった。美しい日本庭園には、錦鯉はねる池と鹿威し。松の木や石畳はもちろんのこと、灯籠に灯るロウソクはそれだけで雰囲気をかもちだしている。
>通された屋敷の玄関も、桧の造りだと一瞬でわかるほどの木の香り。高級感あるれるそれには、腰をかけるのもためらわれる。
>そんなところに放置プレイされた2人は、ガチガチに緊張している。
>カナリア
>『2人とも~、入って~』奥からカナリアが顔を出して、2人に手招きをする。2人は恐る恐るあがらせてもらう。『この桧の床は、オレの足で踏んでもよいのだろうか?』などと思ったりもした。
>カナリアに屋敷の中を案内される。
>そして、庭の縁側に差し掛かった時だった。その縁側に腰かけて、左手の人差し指に小鳥を留まらせている女がいた。
>シン
>「お~、美人~」
>思わず見とれてしまったシン。
>美人に小鳥というのは、反則である。
>カナリア
>『ほい、セキレイちゃん。 連れて来たよ』
>と、カナリアがその小鳥の女に投げ掛ける。
>その女は手に小鳥を留まらせたまま、ゆっくり振り向く。
>そう、こいつがさっきのセキレイだ。