>シンと握手を交わしたハゲタカ。
>その一瞬で、あの過去が一気に頭を通り抜けた。まるで雷が頭の中を貫通したかのように。
>シン
>『?』
>ハゲタカ
>『シン…アスカ。まさか、 トキ様の研究所の…っん が』
>ガチな顔をしてマジなことを言おうとしたハゲタカを、セキレイが見事な旋風脚で一蹴する。
>セキレイ
>『つまんないこと言ってん じゃないわよ』
>セキレイは長い髪を宙に舞わせ、スタッと静かに着地した。はだけた胸元の揺れは実にエクセレント。
>一方旋風脚をまともに食らったハゲタカは、激突した壁にめり込んでいた。
>カナリア
>『アハハタカさんにはホ ント容赦ないね、セキレ イちゃん。今回ばかりは 同情するよ』
>カナリアは壁にめり込んでいるハゲタカに両手を合わせて『南無阿弥陀仏』という摩訶不思議な呪文を唱えている。
>シン
>『あの…研究所って、何で すか?』
>セキレイ
>『ん~ん、気にしないで。 バカハゲの戯言だから』少し焦りの見える笑顔でセキレイが答える。
>そういえば、先ほどハゲタカが来る前にも、セキレイがシンの名前を聞いた時、妙な反応をしていた。
>それと、ハゲタカが研究所と呟いた時、『トキ様』と言っていた。調べてみる価値はありそうだ。
>ハゲタカ
>『ててて、やり過ぎだ、セ キレイ』
>セキレイ
>『うっさいわね。アンタが バカなこと言うからでし ょ』
>壁から頭をさすりながら這い出してきたハゲタカに、追い討ちをかけようとしているセキレイを、カナリアがなだめている。
>ハイネはそんな光景を見て、ふと同じような風景を思い出してしまった。
>数年前までは自分も同じような光景の中に混じっていたのだから。
>セキレイ
>『ったく、こんなことで時 間潰してる暇はないのよ 』
>セキレイはハゲタカを踏み潰して、ツンと呟く。いつデレるのかはわからんが。セキレイ
>『あ、そだ。よかったら、 今日泊まってく?』
>ハイネ
>『え?』
>突然セキレイが『いいこと思い付いた』と言わんばかりの表情でこんなことを提案する。
>突然のそれに、戸惑うハイネは無理もない。
>ハゲタカ
>『泊めるったって、部屋は どうするんだ?』
>ハゲタカがセキレイの足の下から問い掛ける。見ててかなり面白い構図だ。
>セキレイ
>『アンタの部屋があるしょ 』
>セキレイが足でグリグリする。
>ハゲタカ
>『あ、いや、それは困る』セキレイ
>『あ~?なんでよ?エロ本 でも隠してんの?ガキじ ゃあるまいし。女の裸な ら、いつもあたしの見て んでしょ』
>ハゲタカ
>『』
>セキレイの爆弾発言に、ハゲタカは飛び上がる。これの事実は明らかではないが、カナリアは『マジドン引き』的な目付きでハゲタカを見ている。もちろん、ハゲタカは必死で冤罪を訴えている。
>シン
>『…クス』
>思わず、笑いがこぼれる。正直、五大部族の族長ともなれば、堅物で近寄り難い存在、そんなイメージがあった。
>しかし、アルスターはそんなイメージをいとも簡単に崩してくれた。何せ、族長と副長と一族の中心であるべきブラックリストハンターでコントをかますような連中だ。族長は客であるシンたちの前でこんなふしだらな格好してるし、副長はよく蹴られたり踏まれたりしてるし。
>ハイネ
>『いいんですか?』
>セキレイ
>『いいのいいの。んじゃ、 そういうことでハゲ、よ ろしく』
>ハゲタカ
>『オレの部屋はやめてほし いが、それでいいなら』顔はいかついのに、なぜかセキレイには下手のハゲタカ。
>この場はセキレイが無理やり押しきる形でおさまった。シンとハイネも、一晩泊めてもらうことになった。ハゲタカ
>『カナリア、たしか小鳥箱 の客室が空いてあろ。2 人をそこに案内してやれ 』
>セキレイ
>『後であたしらも行くわ。 ハイネとは、いろいろと 話さなきゃならないこと があるからな』
>そう言い残して、セキレイとハゲタカは去っていった。2人とも、仮にも族長と副長という身の上だ。何かと忙しいのであろう。
>ハイネは頭を下げて、それを見送る。
>カナリア
>『ハイネくん、そんなにか しこまんないでよ。別に セキレイちゃんは礼儀を 気にするタイプじゃない し、どっちかと言えば、 もっと礼儀を知らないと いけなのはセキレイちゃ んの方なんだから』
>そうは言っても、ハイネにとってセキレイは雲の上の存在の人間だ。まぁ、確かにセキレイには礼儀を、特に服装をなんとかしてもらいたいのは事実だが。
>その後、2人はカナリアに連れられ今夜の宿に案内された。
>
>ハゲタカ
>『まったく、お前はいつも 思いつきで行動しすぎだ 。せめてオレには、先ん じて伝えてくれ』
>シンとハイネと別れたセキレイとハゲタカは、屋敷の廊下を歩いていた。
>後ろでハゲタカが正論な説教をくどくどとほざいている。セキレイはジト目になって、『面白くない』というような顔をしている。
>セキレイ
>『ねぇ、タカ』
>ハゲタカ
>『ん、なんだ?今回はハゲ じゃないのか?』
>ハゲタカの呼び方がいつもとは違う。口調も、やはりいつもとは違う。
>セキレイ
>『あの2人には…、やっぱ り本当のこと、話すべき かな?』
>先を行くセキレイがそんなことを口にした。ハゲタカの前を歩いているため、その表情は確認できなかったが、何かその口調にははがゆさを感じた。
>ハゲタカ
>『いや、オレたちに、そん な資格はない。彼らに、 真実を伝えるには…』
>ハゲタカも語尾を濁らす。ただ、言葉をなくしたハゲタカであったが、セキレイが言う『本当のこと』をシンやハイネに話すということについては、己の意見を述べた。自分たちにはその資格がないと。
>セキレイ
>『…だよね』
>
>シン
>『お~、広~』
>ハゲタカが言っていた小鳥箱という客室に連れられたシンとハイネ。
>広くてきれいで明るくて。まるで旅館の客室のような部屋だ。
>宿泊料金とかとられないよな…。
>ハイネ
>『ホント広いな。オレらの 個室より広いんじゃない か?』
>もちろん広い。
>シンとハイネの個室は、ギルドから与えられたものなので、例えるなら寮である。まぁ、HRがあがり、収入がそこそこになってきたら、それなりのところに引っ越しすることはできる。カナリア
>『ちょっと待っててね~。 浴衣とってくるよ。くつ ろいでて』
>カナリアがそう言い残して部屋から出ていった。
>アルスターの居住区、その町並みを歩いてみて、シンとハイネが共通して思ったことが一つある。
>それは“純の和”。
>建物の造りから、一族の皆さんが着用している衣服まで。
>セキレイも着物姿だったし、カナリアは浴衣姿だった。ハゲタカも袴みたいなのを履いていた。
>これは明らかに、ティーズの文化とは異質だ。もちろん、シンやハイネにとっても。でも、嫌ということでもない。なぜか、心が落ち着かされる、そんな感じだった。
>
>
>
>??A
>『目標確認。エリア53。さ っさと来てくれ』
>即席スキル“以心伝心”を使って、仲間への支援要請を求める。
>ここは火山…ではない。確かに、ドロドロの溶岩がそこら中に流れ、大気の異常な温度。
>火山は火山なのだが、ここは普通の火山でも、火山奥地でもない。もっとヤバいところ。
>『53ね。わかったわ』
>『了解。すぐ向かいます』『53?めっちゃ遠いって』『オレ、もうそろそろ着く わ』
>頭に直接響く声。
>即席スキル“以心伝心”は、複数のハンターでクエストに挑むとき、各個の位置情報を知るため、一定区間内で通信しあえる即席のスキルのことである。即席のため、クエストが終了するとその効果はなくなる。また、このスキルを使えるのは、上位ハンター以上。
>ケネス
>『よぅ』
>支援要請を求めたハンターの前に、銀猫が現れた。
>??A
>『早かったな』
>ケネス
>『もうちょいで着くって言 ったろ?』
>岩影に隠れて、合流した2人。
>ケネス
>『あれか、デカいな。軽く 見積もっても2500は越え てるだろ』
>2人の目線の先には、溶岩の流れの中にできた中州の中央に黒い飛竜種が。まだこちらには気づいていないようだ。
>ケネス
>『女ども来るの待ってたら 逃げられるぞ』
>??A
>『オレらで先制するってこ とか。上等だ』
>2人は互いに自分の武器に手をかけ、岩影から飛び出す。
>飛竜もその気配に気づく。??A
>『ヴァニラちゃんたち来る 前に倒せたら、格好つく よな』
>ケネス
>『無理言うなよ』
>飛竜はこちらを向いて、その巨大な口から破壊的な咆哮を放つ。
>咆哮の後、黒轟竜ティガレックス亜種は2人に迫る。