Let's愚民life   作:ごすろじ

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久しぶりの小説なので拙いのはご容赦下さい。




 

 

――早く避難しろッ!?また、崩れるぞ!

 

視界一面を飲み込む程の土煙が舞う惨劇の町。

辺り一面には絶え間なく悲鳴が聞こえ、不快な鉄の匂いが充満していた。

 

家屋は人並崩落し火災に見舞われ、破裂した水道管からは水が降り注ぎ人間の平常心を根こそぎ奪い去っていた。

 

日常が崩壊していく…パチパチとあらゆるものを燃やし尽くす音はこの場を地獄と錯覚させる。

悪魔が奏でる拍手喝采、生命が絶え間なく消える瞬間を祝福する最悪の鎮魂歌。

 

世界そのものが揺れ、崩落の音が鳴り響く中一人の少女共の意識が覚醒する。

 

――ゴホッ、ごほ…あれ、私…、まだ生きて…ッ!?

 

痛ッ~~~。

寝起きみたいに鈍った思考が激痛と共に急速に冴えていく。

痛みの原因、恐らく物がぶつかって切れたであろう目元からドクドクと血が流れポタポタと滴り落ちるのがわかる。

同時に視界に映る光景も白黒から徐々に色を取り戻していく。

 

朦朧とした意識を覚醒させる為に咳込みながら何度も深呼吸を繰り返す、落ち着きを取り戻し冷静に辺り一面を見渡し状況を確認する。

 

至る所に散乱する瓦礫にへし折れた木材、そして全身を押しつぶす倒壊した家具。

 

「あぁ…しくじりましたね」

 

町一つを廃町に追い込む大震災。

 

いずれ災害に見舞われると理解していながらも時期までは分からず手をこまねいてしまった結果がこれだ。

 

この前世とよく似て非なる世界に生まれ落ちた瞬間から最低限身構えてはいたが、実際災害に見舞われれば心構えなんて何の意味も無い。

 

重症一歩手前とは…本当に危なかった。

幸い骨は折れておらず肉も潰れていない。

早くこの不快な状況から脱出しよう。

 

「はぁ…はぁ…ふぅ、頑丈な身体で助かりましたねッ!」

 

栄養失調気味の身体を押し潰そうとする木材を蹴り上げ崩壊した家具の残骸からなんとか這い出る。

 

弟を探さなければ…姉として最低限メンタルケアには励んでいたから最悪の結果にはなっていないと思うけど。

 

「人肉とかゲテモノだけは口にしないで下さいよ我が弟よ…」

 

とぼとぼと歩みを進める中、口元を鮮血に染めた弟の顔が脳裏を掠める。

不毛な想像は止めよう、私は頭を振り払い足を前へと進める。

 

「しかし、ふふふ…ノイド、『ノイド・カーティス』…そして『ベルゼア』の災害。

嗚呼…私の未来は明るいですねぇ」

 

悲鳴と怒号が飛び交う町の中で私は場違いにみ笑みを浮かべた。

前世ですら浮かべたことのない心からの満面の笑を。

 

突然ですが私は所謂転生者という奴です。

取り柄のない平凡な前世を魂に焼き付けたままに第二の生を謳歌している美少女『メアリー・カーティス』、それが今生の私。

 

育児放棄の虐待シングルマザーと表情筋の死んだ目つきの悪い弟という最悪の家庭環境に生まれ野良犬が如きワイルドな教育方針の元育ちました。

母親の教育的制裁が下される度に神を呪いましたが、今は寧ろ感謝しています。

 

幸いにもこの身体と脳味噌はとんでもなく優秀なようで、並大抵のことは訓練を必要とせず並以上に熟せました。

端的に言えば天才ですね、お陰で食料調達にも困らず弟の世話を焼く余裕までありました。

 

【暴食の町】

 

この世界を示すゲームの名前。

全2シリーズで構成されたホラーゲームであり私が敬愛する『ロザーナ・アルレイド』が暮らす世界です。

 

ついでを言うと現在捜索中の我が弟であるノイド…『ノイド・カーティス』は第二作の主人公であり、私にこの世界がゲームの舞台かもしれないという希望を与えてくれた恩人でもあります。

 

社畜メンタル極まった私にとっては親のネグレクトなんぞたいした問題ではありませんでしたが、心身共に未成熟の子供である弟にとっては辛すぎる環境だったようで、日々の暮らしの中で瞳からは光を失い、死んだ魚の目と化していきました。

 

そんな何かと悲惨な境遇もあり、なんだかんだ家族の情もあったりで手助けしていたら懐かれたりで…親モドキを努めるまでに至りました。

 

ゲームの流れであれば毎日食パン一枚、監禁、暴力、と虐待によるストレスで、死んだ母親の遺体を喰べてしまい一生のトラウマと化してしまうんですよね…。

 

定期的に私が外でくすねた果物や菓子パンを与えていたので大丈夫だと思うんですが、流石にちょっと心配です。

 

この世界に存在すると最も尊き御方をこの目で見ることが出来る。

弟という存在のお陰でこの事実を見過ごさずぬ済みました。

 

心が踊りこれからの人生が喜色に彩られるのを感じます、この素晴らしきチャンスを気づかせてくれた弟には幸せな人生を送って欲しい。

 

私は恩には恩で答える女。

是が非でもノイドが人肉の味を知る前に探し出さなければならない。

 

「まずそうな肉の焦げる香りですね、まさか喰っていませんよね?」

 

「まるで霧ですね、探すのも一苦労です。それにしても母さんは無事死んでくれたしょうか…児童養護施設に行けなくなるのは困ります」

 

 

視界を遮る土煙を掻き分けながら突き進むと不意に見えてくる特大の血溜まりと女の遺体。

 

その側に佇む小さな人影、あの人を殺せそうな目つきの悪い顔…間違いなく自身の弟に他ならず、背後から声を掛け近寄る。

 

「あぁ…見つけましたよ我が弟――ッノイド!?」

 

しかし次の瞬間弟が女の側にしゃがみ込み一気に全身から冷や汗が吹き出る。

シャツの首根っこを鷲掴み強引に引きはがす。

 

「ど、どうしたの…姉さん?」

 

「ノイド…正直に答えなさい、ナニカ変な物を口にはしていませんね?」

 

「うん…」

 

「ふむ…よろしい、どうやら心配は杞憂だったようですね。心配しましたよノイド」

 

口元、手、衣類に血痕の跡は無し。

安心しました、本当にあの女の肉を喰べてはいないようです。

 

意識が途絶える前に見たまま…ボロボロのシャツ一枚羽織っただけの弟の姿。

日頃の成果が実を結んだことに安堵の溜息が漏れる。

 

「ところで、あの場でなにをしていたんですか」

 

「お母さん、動かない…死んだの?」

 

そう言いながら弟は血溜まりに浮かぶ遺体へと目を向ける。

視線の先には身体の節々がコンクリートで貫かれ、瞳孔が完全に開き絶命した母親だったモノが横たわっていた。

私はソっと弟の両目を掌で覆い視界を遮る。

 

「そうですね…余り見ない方が良いですよ。傷が残ります」

 

「ケガしてない」

 

私の言った意味が理解出来ないのか弟は首を掲げ不思議そうにする。

人間の、それもあれだけ損傷の激しい死体を見れば普通は取り乱して泣き叫ぶものですけど、弟は動揺一つ見せる様子がない。

 

「心に、ですよ。散々いたぶられたんです、死んだ後まで付き合う必要はありません」

 

「?」

 

「ノイト、母さんが死んで悲しいですか?」

 

「……わからない」

 

愛情一つ無かったとはいえ産みの親の死になんの感情も抱かない…ですか。

これは想像以上に精神が摩耗しきっているようですね。

 

しかし…まぁ、それも悪いことでは無いでしょう。

弟にとってこの町で過ごした記憶なんて覚えておく価値も無い悪夢そのもの。

 

いずれふとした瞬間思い出すこともあるでしょうが、誰しもそういったものは大なり小なり抱えているものです、必要以上に心配する必要は無いのかもしれません。

 

生に苦を覚える程強烈で鮮明な体験は回避できたことですし、これが弟にとっての最善であると願いましょう。

 

「ふふ…人間どうでも良いことには感情が動かないものです。切替えが大事です、弟よ。これまでの事、今日の出来事は積極的に忘れて新しい人生を共に歩もうじゃありませんか」

 

「姉さん…なに言ってるのわからない」

 

怪訝そうな顔で此方見上げてくる弟の顔を私はじっと見つめ微笑む。

 

「目コワイ」

 

弟よ…私の慈愛を言葉のナイフで滅多刺しにして楽しいかい。

こんな美少女に向かって目が怖いだなんて…一度教育が必要みたいですね。

 

「ひえ…っ」

 

ふっふっ…少し怒気が漏れてしまったみたいですね、そう怖がらないで下さい。

私も少~し気にしてるんです、貴方にはまず教育よりも先にデリカシーという概念を叩き込んで差し上げましょう。

 

そんな他愛ないやり取りを続けていると遠方からサイレンの近づく音が聞こえてきました。

そして上空からはヘリのプロペラが音が聞こえてくる。

 

気を失っていたせいか震災から随分と時間が経っていたようです。

そうして続々と消防、救命隊が町に雪崩込み手際よく震災の被害に対処をしていきます。

 

「どうやら救助隊が到着したみたいですね、もう此処に戻ることも無いでしょう。

さぁ、ノイド…行きましょうか」

 

 

 

「……」

 

私の声に弟は母親をじっと見つめたまま無言で動かない。

しかし、数秒ほど見つめた後、弟は私の掌を握り歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

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――――――――――――

 

――――――――

 

――――

 

 

 

 

 

 

―数年後

 

 

 

 

 

「おいノイド!良い所に来た、肝試ししにいこうーぜ!」

 

「――ッ!?テメエもじゃ頭!いきなり飛びかかってくんな!行きたきゃ他の奴と行け」

 

「いや…それがなぁ…他の奴らはなぁ…うん、なんか忙しそうだし」

 

「とかいって単純に断られたとかのオチじゃねーだろうな?」

 

「なんで分かったんだよっ!?」

 

「はぁ~~…うざ」

 

テンションの高い癖っ毛の青年とウンザリした目付きの悪い黒髪青年の会話が廊下に響き渡る。

 

口調こそ粗暴なものの本気で嫌がっている素振りは見えず、彼らなりのコミニケーションなのだと見て取れる。

 

「なんだよノイドびびってんのか?」

 

「もじゃ公の阿呆さ加減に恐れ慄いてるだけだ」

 

「酷ッ!そんなこと言うなよ親友。ほら此処から近いし丁度良い肝試しスポットなんだって」

 

「はぁ…興味無いって言ってるだろうが――!?」

 

癖っ毛の青年が懐からスマホを取り出し目付きの悪い青年へと向ける。

どうでも良さげに青年が空返事を返そうとするも、スマホの画面を見た瞬間一瞬呼吸が止まった。

 

『話題の心霊スポット ゴーストタウン ベルゼア』

 

ドクン…ドクン…

 

青年は心臓の鼓動がドンドン早くなっていくのを感じ取る。

しかしそれも徐々に落ち着きを取り戻していく。

 

「おい、どうしたんだよノイド?なんか顔色悪ないか?」

 

「そこ…俺の生まれ故郷だよ、馬鹿が」

 

「え゛っ!?すまん、なんかすまん!!」

 

癖っ毛の青年が物凄い勢いで頭を下げ謝罪をする。

 

目付きの悪い青年の過去について知っていることは少ないが、両親はおらず児童養護院育ち、おまけに生まれ故郷が震災でゴーストタウンと化していれば色々と察することは出来る。

 

「なに対しての謝罪だよ。餓鬼の頃の記憶なんてろくに覚えてる訳ねーよ」

 

「すまーーんッ!ノイドすまーーーーんッッ!!」

 

「うるせぇわ!この腐れもじゃ公が!これ以上謝んなら口を縫い付けんぞ!!」

 

「そ、そうか…いや分かった。もう何も言わん」

 

「はぁ~~…ったく。もう心の整理もついてるし気にすんな」

 

「ノイドがそう言ってくれて一安心だぜ、一瞬本気で親友との関係が終わるかと思ったからな!」

 

「テメェ…言っといてなんだが切り替え早すぎだろ」

 

「うん?ってことはノイドの姉さんも…?この話題は振らないようにしなきゃだな」

 

「姉さんはそもそも気にもしてないから安心しろ。余計な気を使うだけ無駄だ」

 

「ふーん。ま、そういうことならいつも通りノイドの近況報告だけにしとくか」

 

「は?今なんつったモジャ公!俺の近況報告だと!?聞いてねーぞ、コラツ!!」

 

「最近ますます口が悪くなっています。モジャ公なんて呼んできます。目の隈がほとんど無くなりました」

 

「糞がッ…なにスマホに打ち込んでやがる――くッ、おいアル、マジで止めろ、姉さんが怒ると洒落にならねぇ。この年になってまで説教されたくねーぞ。それに下手なホラーより姉さんの方がよっぽど怖い」

 

「そんな大袈裟な…な訳でもないか。メアリーさん普段優しそうな目してるのに開いた時マジで怖いからなー。あれは人を何人か殺ってる目だわ、間違いない。」

 

「分かってるなら姉さんを怒らせるんじゃねーッ!あの目で淡々と説教される身にもなりやがれッ!」

 

「わ、わかった!わかったから落ち着けって!それとなーくで報告しておくから!」

 

「ったく…!あの姉さんが職場から一時的にも離れるとは思わねーが、余計な事すんじゃねーぞ」

 

「そういやメアリーさんって住み込みで働いてて、見るからにワーカーホリックだけど大丈夫なのか?」

 

「あぁ…いけすかねぇ糞アマの世話係だが、あれは寧ろ引き離した方が危険だ」

 

「?…まぁでも裕福層の町だし給料も破格みたいだし俺達が心配する必要も無いか。なんて言ったけ確か町一番の金持ちのアーノルド…いや、アーチボルトだったか?」

 

「アしか合ってねーぞモジャ頭が!!」

 

――国一番の裕福層が暮らす町グラトリージェ、その町一番の金持ち一家のアルレイド家、そこの執事をやってるよ。

 

 




メアリー・カーティス
年齢18歳
身長175cm
体重65kg
趣味▶ロザーナの観察。
  ▶(ロザーナの為だけの)自己研鑽。
  ▶ロザーナに愚民と呼ばれること。

ノイド・カーティスの姉であり転生者。
超我儘お嬢様であるロザーナ・アルレイドの盲目的な信者であり無自覚のド変態。
天才肌であり長い習得期間を経ずとも一定水準以上の結果を残せる万能の人。
ロザーナに向ける偏愛以外は割りと普通の感性の持ち主、ただしロザーナが関わると実の弟するドン引きの犯罪スレスレの変態とかす。
容姿は全体的に整っており普通に美少女。
来る日に向けて日々肉体を鍛え上げているので身体はなかなかの筋肉質。
顔は人形のように整っておりお淑やかな糸目美人、しかし親の遺伝を色濃く受け継いだのか少しでも目を開けば狂気的な黒い瞳が垣間見える。
震災時の外傷が目元に残っている。

容姿▶
【挿絵表示】
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