担当ウマ娘をこれでもかと甘やかす(イチャイチャする)話 作:瀧音静
トゥインクルシリーズで最も大事とされる三年を、無事に走り終えてくれた俺の担当ウマ娘『トウカイテイオー』。
そこで、三年間頑張ったご褒美として、また、感謝の気持ちとして。
目一杯テイオーのわがままを聞いてあげることにした。
もちろん今までの三年間もある程度は許容してきたし、自分で言うのもなんだが結構テイオーには甘いと思う。
けど、今回のソレは今までのソレとは違う。
言ってしまえば、テイオーの要求を全て飲む覚悟だ。
というわけで早速その事をテイオー本人に伝えてみると、
「えー! 本当にー!? じゃあねじゃあねー」
と太陽のような眩しい笑顔を俺に向け、犬かと思うほどに尻尾を振り回し。
しばらく悩んだ末、
「そうだ! じゃあトレーナー、お弁当作って欲しいな!」
だそうで。
なんだその位ならいつでも作るのに、と思ったが、
「もちろん今日は特別に甘えていいんでしょー? だったら中身も豪華なものがいいなっ!」
と釘を刺されてしまった。
まぁ、仕方ない。とりあえず材料を買いに行かなくちゃな。
テイオーに材料を買ってくることを告げると、
「じゃあボクは自主練してるねー!」
そう言って元気に走って行ってしまった。
お昼にはトレーナー室に来るようその背中に叫んだが、果たして聞こえていたのかどうか……。
*
「あ、マックイーン! 聞いて聞いてー!」
「あら、テイオーさん? 随分とご機嫌ですわね」
自主練の為に競技場へ行く途中、マックイーンを見つけたテイオーは、トレーナーと別れたテンションのまま話しかけた。
話しかけられたマックイーンも、最初は戸惑うも、いつもの事だという感じで気にしていなかったのだが。
「実はねー、トレーナーが三年間頑張ったご褒美に、今日一日なんでも甘えていいぞって言ってくれたんだ―!」
その言葉を聞いて、マックイーンがピクリと反応。
と言っても、ほんの一瞬、小さな反応だったため、テイオーはそれに気が付かず。
「だからねー、今トレーナーにお弁当作って貰ってるんだー!」
喋りたいことを喋った挙句、
「じゃあボクは自主練してくるからー!」
と勝手にどこかへ行く始末。
残されたマックイーンだが、
「何でも……甘えていい日……」
テイオーから聞いた三年間頑張ったご褒美を口にし、ギュッと拳を握った。
*
ふぅ。こんなもんか。
豪華なお弁当って言われてもあんまり思いつかなかったし、エビフライとハンバーグが入っとけば大丈夫だろ。
テイオーだし。
さて、弁当が出来たのはいいが、肝心のテイオーがまだトレーナー室に来ない。
もうしばらく待って、来ないようであれば探しに行くかとソファに腰を下ろした時、何やら忙しない足音が聞こえてくる。
「トレーナー! お待たせ!!」
勢いよく扉を開け、テイオーがトレーナ室へと入って来た。
元気なのはいいがもう少しゆっくりな。
そのうち扉壊れるぞ。
「ボクもうお腹ペコペコだよー! お弁当出来てるよね!?」
もちろんだとも。
さぁ、召し上がれ。
とお弁当を渡すも、受け取りはすれど開こうとせず。
どうかしたのかと心配すると、
「ねぇトレーナー。今日の甘やかしって、お弁当作って終わりじゃないよね?」
俺の顔を見ながらそんな事を言ってきて。
もちろんだ、と。今日一日なら何回でも甘えていいぞ、と告げれば、
「じゃあトレーナーの膝の上でお弁当食べたいな! いいでしょ?」
だとさ。
膝を揃え、どうぞと叩くと、
「いえーい!」
とハイテンションに膝に着席。
そのままご機嫌にお弁当を開き、中の具材を隅から隅まで確認し。
「はい! トレーナー」
俺に入れておいたフォークを渡してくる。
またもや頭に疑問符を浮かべると、
「あーん」
どうやら食べさせろとの事らしい。
全くわがままだな、と小さく笑うと、
「今日は甘える日ダモンニ!」
と返されてしまった。
しょうがないなぁとフォークでハンバーグを一口サイズに押し切り、突き刺して。
「あーん」
大きく口を開けて待つテイオーの元へ。
「あむ! ……んー! ハンバーグ柔らかーい!! 肉汁も凄くジューシー!!」
と、感想を伝えてくれる。
こりゃあ食べさせがいがあるなと笑い、次は? と尋ねると、
「ご飯!」
だそうで。
そのままテイオーの言いなりに、言われるがままテイオーの口へと運び続け。
「あー、美味しかった!! ご馳走様!」
ちゃんと手を合わせてご馳走さまと。
お粗末様でしたと返し、空になった弁当を脇に置いて。
次は何をするかと尋ねると、
「んー……どうしようかなー?」
足をパタパタさせ、尻尾を左右に振りながら、俺に何をさせようか思案中。
そして、
「そうだ! じゃあねじゃあねー」
と一瞬だけ目を逸らし、言おうかどうか迷っている素振りを見せ。
「頭撫でてー」
こちらに頭を突き出しながら要求。
そんな事ならと、突き出された頭に手を添えて。
三年間お疲れ様、と。テイオーを担当出来て本当に良かった、と。
頭を撫でながら本心を口にする。
怪我をしても決して挫けずに、俺を信じてトレーニングを頑張ってくれたこと。
レースでも俺の作戦通り、指示通りに動き、時にはそれ以上の事をしてくれたこと。
そして何より、今こうして無事に俺の前に居てくれること。
今までも口にしてはいたものの、改めて三年間振り返った時に、自然と込み上げてきた言葉を口にしながら、ゆっくり、優しく。
耳の間を往復し、耳の付け根をくすぐりながら手を滑らせ。
しばらく続けていると、テイオーの身体が段々俺の身体にもたれかかってきて。
耳を澄ますと、静かに寝息を立てていた。
お弁当食べたし、眠くなっちゃったか、と苦笑し、テイオーを起こさないよう気を付けながら体勢を変え。
俺もしっかりソファに寄りかかり、テイオーの目が覚めるまでの間、ずっと頭を撫で続けた。
……ちなみに、ガッツリ四時間ほど昼寝をしたテイオーは、目を覚ますなり、
「折角の一日だったのに無駄にしたー!」
と騒いだので。
寝ていた分、明日も甘える日でいいよと告げると、途端に元気になり、
「明日は何してもらおっかなー!」
なんて言いながら、耳と尻尾を揺らして寮へと戻っていった。
もしかしたら、甘やかしすぎなのかもしれないが、たまにはこれくらいしても罰は当たらないだろうと、『帝王』の後ろ姿を見送るのだった。
*
なお、後日に、「トゥインクルシリーズを三年間走り終えるとトレーナーからご褒美を貰える」という噂が学園中に広まり。
至る所でトレーナーが頭を抱えていたりするのだが、それはまた別の話。
次回予告
2000年、菊花賞。
7㎝での惜敗を経て、リベンジを誓ったその馬は、見事その雪辱を果たす。
黒き馬体を反射させ、ゴール板を先頭で横切ったその馬を人々は持て囃す。
速さと、強さを併せ持つ。次に見据えるは、覇王への挑戦。
『エアシャカール』
2012年JRAコマーシャル The winnerシリーズをイメージしてください()