担当ウマ娘をこれでもかと甘やかす(イチャイチャする)話   作:瀧音静

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エアシャカール

 トゥインクルシリーズで最も大事とされる三年を、無事に走り終えてくれた俺の担当ウマ娘『エアシャカール』。

 それに対するお礼として、何かした方がいいのだろうが、特に何も思い浮かばない。

 何か無いかと考えていると、ふと、こんな噂を耳にした。

 

『トゥインクルシリーズを走り終えた後、担当ウマ娘がなんでも甘えていい日を設けるのがトレーナーの常識』

 

 そんな噂は耳にしたことはないが、恐らく事実なのだろう。

 俺はエアシャカールが初めての担当であるし、そんな新人トレーナーがあんなにも上手くいった育成を行えるはずがない。

 きっと周囲はそう思っていたはず。

 ならば、この噂をわざわざ俺に教えなくても問題ないと先輩トレーナー達も思ったのだろう。

 しかし、そうとなれば話は早い。

 エアシャカールに直接この事を伝え、彼女のして欲しい事をしてあげればいいだけなのだから。

 

 

「いらねェ」

 

 早速練習を終えたエアシャカールに伝えてみると、たった一言で断られた。

 何故? と尋ねると、

 

「ンなもん貰って何になンだ?」

 

 だそうで。

 いや、して欲しい事とか無いの? と問えば、

 

「ねェ」

 

 とこれまたにべにもなく断られてしまう。

 がっくりと肩を落とし、トレーナー室へ戻るも。

 そうだ! だったらシャカールに気付かれないように、俺が色々と勝手にしてしまえばいい。

 それこそバレンタインの時のチョコの様に、普段使いするものを少しづつ良い物へグレードアップさせていけば。

 シャカールは知らない内に甘やかされている事になるのではないか。

 思い立ったら即行動という事で、俺は足早に買い出しへと出かけるのだった。

 

 

 シャカールがトレーニングを終え、戻ってきた。

 お疲れ様と言ってタオルを渡す。

 

「おう」

 

 受け取ったシャカールは、そのまま流れる汗をタオルで拭き。

 一瞬止まるが、そのまま汗を拭き終わり。

 

「次のメニューは?」

 

 次の練習メニューについて尋ねてきた。

 彼女の持つ『Parcae』や、自分でも練習メニューを組むことは出来るのだろうが、最近では俺の意見を参考にトレーニングを行ってくれる。

 何もするなと言われていた最初とは大違いだ。

 次の練習メニューを伝えると、すぐに、

 

「行ってくる」

 

 と練習へ。

 その時に投げられたタオルを受け取って。

 どうやら気が付いてないようだ。このまま続けるとしよう。

 

 

 今日のトレーニングを終え、そのデータを『Parcae』に打ち込んでいくシャカール。

 普段ならそろそろチョコやラムネを欲する頃合いだが……。

 

「ン……」

 

 どうやら当たったらしい。

 彼女の手の先へ、買って来たチョコを送り出すと。

 

「おー……」

 

 手探りでチョコを掴み、そのまま口へ。

 ガリガリと歯でチョコが砕かれ、削れる音がしばらく響き。

 またも一瞬ピクリと眉を上げるが、特に何も言って来ないまま過ぎていく。

 そうしてその日は分かれ、残すは明日の半日のみ。

 今のところ順調なようだし、このまま気付かれずに甘やかせ作戦の成功を祈るとしよう。

 

 

(とか、浅エこと思ってンだろうなァ)

 

 寮への帰り道、エアシャカールは今日の事を思い出しながら担当の考えを読んでいた。

 

(大体、初見ならまだしも、チョコは二回目だしタオルだって明らかに肌触りが違ェ)

 

 そう、タオルという毎日何度も使用する物の肌触りが良くなっていれば気が付くのは当然であるし、チョコレートも経験済み。

 であるならば、エアシャカールが気が付かないはずが無いのである。

 

(まァ、あいつにしては良く考えてやがンな)

 

 これで他のウマ娘たちが要求している、お弁当を作った、だの、尻尾の手入れをして貰った、だのを提案してきていれば恐らく蹴飛ばしていた事だろう。

 そういった意味では、あからさまであるが、今の普段使いするものをグレードアップするというのはエアシャカールにとっても丁度いい。

 

(ただ、どうせこのまますンなり行くとは思えねェ)

 

 しかし、あのトレーナーが今のままで良しとしないであろう事をエアシャカールは知っている。

 だからせめて、

 

(オレがキレるような事だけはするンじャねェぞ)

 

 彼が虎の尾を踏まない事を祈るのだった。

 

 

 なお、エアシャカールの祈りは通じなかった。

 普段通りに練習をこなし、水分補給の為にボトルを受け取り飲み始めて――。

 一口目で噴き出した。

 

「げほっ! げほっ!」

「大丈夫か!?」

 

 原因は自分であるというのに、エアシャカールの事を案じて声をかけたトレーナーへ。

 

「なンでこんな味の濃いスポドリにしやがッた!!?」

 

 おおよそ普段の二倍ほど濃いスポーツドリンク入りのボトルをトレーナーに投げながら叫ぶ。

 

「濃い方がいいと思って……」

「考えろよ! 分かるだろ!?」

 

 昨日までの塩梅が丁度良かっただけに、今日一発目のコレが余計に腹立たしく感じる。

 とはいえ、

 

「あー……もういい」

「何が?」

「昨日の事だよ」

 

 エアシャカールは知っている。

 嫌というほど、知っている。

 このトレーナーが、心底諦めないという事を。

 

「甘えさせンだろ?」

 

 だったらもう諦めて折れてやり、トレーナーが納得するまで甘えてしまって、普段の日常に戻った方が賢明だと結論付けた。

 

(なにより、いつまでこンな事されるか分かったもんじャねェしな)

 

 こういったタイプは、ある程度自分のしたい事をすれば大人しくなるはずなのだ。

 だから、そうさせる為に、エアシャカールは覚悟を決めた。

 

「最近眼精疲労が溜まってる自覚がある。マッサージしろ」

「シャカール……」

「出来ねェ、なんて言わねェよな?」

 

 とトレーナーの方を見れば、感極まって泣いてるような気がするが、

 

(無視だ無視)

 

 視界に入れない事で反応しないことにした。

 その後、トレーナー室で、蒸しタオルを用いたリラクゼーションや、眼精疲労に効くツボの指圧。

 眼精疲労からくる肩凝りの為の肩揉みや、結局腰や足のマッサージまでもを許したことは、シャカールとそのトレーナー二人だけの秘密である。




 エアシャカールはこれ位の甘さが丁度いい。


 次回予告
 多分公式でイチャイチャしすぎて公式を越えられる気がしない漆黒の摩天楼
 可能な限り砂糖マシマシ、シロップとはちみつ有り有りで執筆予定。


 (作者がモルモットだし漆黒の摩天楼もお気に入りなのは想像に難くないよね?)
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