担当ウマ娘をこれでもかと甘やかす(イチャイチャする)話 作:瀧音静
「ごめんねアキュート。せっかく来てくれたのに……」
「気にせんでええよ~。あたしが押し掛けただけだしねぇ」
年末。
トゥインクルシリーズを三年間走り終えたワンダーアキュートは、最優秀ダートウマ娘に選出され。
二人で抱き合って喜んだのも束の間、年末の書類整理に追加される最優秀ダートウマ娘に関する書類仕事。
さらには話題になった事で、様々な仕事の依頼やインタビューなど、今までのどのタイミングよりも忙しくなって。
結果、ワンダーアキュートがわざわざ俺を尋ねてきたのに、こうして書類仕事に追われる始末。
アキュートは、
「終わるまで待ってるよ~」
と言いながらソファに腰かけ、何やら編み物を始めた。
申し訳無さに一杯になるも、アキュートの為に急いで書類を片付けてしまおうと闘魂注入。
そうして書類の山を片付けていると、
「トレーナーさん。すまないけど、ちょっと手を出してくれるかい?」
アキュートに声をかけられ。
こう? とアキュートに向けて手を伸ばすと、俺の手の平にピッタリとアキュートの手が押し付けられて。
俺の手よりも一回り小さいその手は、何かを確認するように動いたかと思うと。
「なる程ねぇ。トレーナーさんの手、おっきいんじゃねぇ」
なんて言って頷きながら、編み物を再開。
なんだったんだろうと思っていると、徐々に形になってきている編み物の正体に気が付いた。
手袋を編んでくれているらしい。
という事は、さっきのは俺の手の大きさを測るための行為だったのだろう。
その事について聞いてみると、
「そうじゃよぉ。まだまだ寒くなりそうだからねぇ」
と、足をパタパタさせながら答えてくれた。
そんなアキュートのプレゼントを楽しみにしつつ、書類仕事を再開。
途中で、
「ほい。お茶じゃよぉ」
と、喉が渇いたタイミングで熱いお茶を淹れてくれたり。
「疲れたら甘いものが一番」
と、作ってきてくれたらしいおはぎをタッパーから出してくれて。
そうしてアキュートの助けを借りながら、何とか早めに書類仕事を終わらせることが出来た。
伸びをしつつ、お待たせ、とアキュートに声をかけると、
「おや、もういいのかい?」
だと。
もうアキュートが来て結構時間が経つよ、と言うと、時計を確認し。
「ありゃま本当じゃねぇ。……トレーナーさんと一緒に居ると、時間が経つのは早いねぇ」
なんて、微笑みながら言ってくる。
そんなアキュートに、何か用事があったのでは? と聞いてみると。
「ほうじゃったほうじゃった。何でも、ウマ娘は三年間走ったらトレーナーさんに甘えてもいいという決まりがあるらしくてねぇ。せっかくだし、甘えさせてもらおうかと思ったんじゃよ」
と、初耳な事を言ってくる。
それ、誰から聞いたの? と尋ねれば、
「オペラオーさんから聞いたんじゃが、もしかして間違いだったかのぉ?」
どうやらテイエムオペラオーからの情報だったらしい。
……もしかすると、本当に俺が知らないだけで、そういう決まりがあるのかもしれない。
というか、三年間トレーニングをし、レースをし、頑張ってくれたアキュートに、何かしてあげたいという気持ちは確かにあるわけで。
だったら、今日一日くらいなら、アキュートの甘えを許容しよう。
そう決意し、アキュートに話すと、
「ほいじゃあ、マッサージをして貰いたくてねぇ」
と、早速注文が。
お安い御用と肩を叩くと、
「今日は腰や足もお願いねぇ」
追加注文も。
かしこまりましたと告げ、いつもより優しく丁寧に肩を叩いていく。
今までは気合を入れる意味で叩くことが多かったけど、こうしてアキュートの身体を労う為に叩くというのも悪くない。
肩だけでなく、首や目の周りなどのツボも刺激して。
ソファにうつ伏せになって貰い、背中や太もも。
ふくらはぎに足の裏まで。
俺が持っている全ての知識を導入し、アキュートの身体をマッサージ。
ゆっくりゆっくり左右に触れる尻尾を微笑ましく観察しながらたっぷりと時間をかけてマッサージしてやると。
「ふぃ~。……んん。あー、身体が軽くなったねぇ」
立ち上がり、大きく伸びをしたアキュートは、軽く飛んだり身体を捻ったり。
マッサージの効果を確かめるように体を動かして、
「これでもう三年は走れそうだねぇ」
なんて冗談めかして言ってくる。
そうなったら、またアキュートからの甘えを聞いてあげないとな。
と笑って返したら、
「その言葉、忘れたらめっ! じゃよ」
と笑って返されてしまった。
なお、三年どころか六年ほどアキュートは走り続けることを、この時の俺は知る由もなかった。
次回予告
すぐ横になる恋愛クソ雑魚ウマ娘に翻弄されたい