ゆゆゆいとかではめぶにぼ、ふうにぼ、ゆうにぼに押し退けられた感有りますが、
夏凛にとって、頑なになっている頃でも年下という理由で面倒を見ることのできた樹、
樹にとって、意外とカリスマ性のある姉に後輩なのに対等の目線で食って掛かる夏凛、
というのは互いに特別な存在に見えているのでは、と思っています。
「さて、ちょっと寄り道しちゃったから、手早く準備するわよ!」
家に帰ってくるとお姉ちゃんが力強く宣言する。無駄話で盛り上がってしまったのは30分くらいだけど、東郷さんが園子さんを連れてくるまでにパーティの準備を済ませなければ締まらない。残りの三人のうち、友奈さんがお姉ちゃんのアシスタントで私と夏凛さんは部屋の飾り付け担当だ。
まず買ってきた物を、食材、おやつ、ジュース、色紙などに分類し、食材とジュースは台所、おやつはダイニング、色紙など飾り付けの材料は私と夏凛さんでリビングに運ぶ。
「まずは何から始めましょうか、夏凛さん」
「そうね、『乃木園子歓迎会』の色画用紙を作りましょうか。これだけは無しって訳にはいかないものね」
夏凛さんが音頭を取って、準備に取り掛かる。この手のパーティー的なことは今までも勇者部の活動で経験が有るので、二人とも割と作業は慣れたもの。最低限の打ち合わせで二人ともどんどん手を動かして、お祭り気分の盛り上がりそうな部屋を作り上げていく。
「なんか、自分ちがパーティー会場って変な気分です。日常と非日常の境ってこんなでしょうか?」
「その気分は判るわ。そして忘れないように。あんた達は覚悟の無い私の部屋を非日常に叩き込んだのよ」
そう言えばそうだ。夏凛さんの歓迎会の時は無理やり押し掛けて、その性格上突き離そうにもできない夏凛さんがあたふたする間に、お部屋をパーティー仕様に作り替えたのだった。
「でも、あの時はあれが正解だったと思いますよ。きっとああやって無理やり踏み込んでなければ、微妙な関係のまま何となく過ごしちゃったでしょうし…」
「そうね、あの後の総攻撃を乗り切れたのは、勇者部が一つに
「夏凛さん、聞いて良いですか?」
「ん、何?」
「どうしてその、完成型勇者とか、私一人で大丈夫とか、最初の頃あんなに必死になってたんですか?」
「あれ?兄貴と両親の話、した事無かったっけ?」
「え~っと…優秀な
「ん。まぁ、そうね…こっちはまだ誰にも話してないか。私が勇者のお役目のための訓練を受けていた話はしたわよね」
「はい」
「それ、私一人じゃなかったのよ」
「え?勇者候補はもっと居たって事、ですか?」
「そう。勇者適性の持ち主は結構居るわ。その中でも大赦の名家出身で、園子たちが小学生の時にバーテックスを退けた後、正式な訓練を受けた娘は私以外にも居たの。その中で私は実力でも多分適正値もトップクラスだったと思うけど、同じくらいのライバルみたいなのが居たのよね」
びっくりな話だ。そう言えば最初の時お姉ちゃんが「あたし達が当たりだった」って言ってたし、勇者候補は思った以上に居るのだろう。それでも夏凛さんがどれほど勇者であることに
「それで、実は最後に模擬戦をした時、負けたのは私だったのよ。だけど勇者には私が選ばれた。それが凄く苦しくてね。だからもう、勇者として
そう言うとなんだか困ったような顔で夏凛さんは笑った。そっか。私もこんな弱っちい人間が何で選ばれたんだろうって思ったことは何度もあったけど、夏凛さんももっと違う次元だけど、自分が相応しくないかもしれないって悩んでたんだ。
「あの…その、私は勇者として夏凛さんに出会えたこと、とても嬉しいです」
だから今更かもしれないけど、この素敵な女性と出会えて幸せだって事を、言葉にした。夏凛さんの求める言葉じゃなかったかもしれないけど、夏凛さんはハサミを机に置くと空いた右手でそっと私の頭を
そんな風にちょっと夏凛さんの昔話に触れてしんみりしていると、友奈さんが今日の第一陣の大皿を持ってリビングに現れた。作業を中断して仲良ししている私達を見て、友奈さんはびっくりして声をあげる。
「なになに?二人とも何か素敵なことが有ったの?」
「え、や、これは、違うわよ!そんなんじゃない!」
「え~?そんなんって何?全然わかんないよ~」
「わかんなくていいの!さっさと残りも運んで来なさい!」
からかっているのか、
友奈さんを台所へ押し戻していく夏凛さんを見ながら、私はそっと微笑んで作業の続きに取り掛かった。
リビングのどこを見ても何かの飾りが見えるくらいに頑張った後、なぜか
「お姉ちゃん、飾り付け終わったよ~」
「おお、サンキュ。疲れたでしょ。テレビでも見てのんびりしてて」
「何言ってるの、お姉ちゃん。私も料理手伝うよ」
「え、ええ~…そうねぇ…何してもらおうかしら…」
台所にはお姉ちゃんと友奈さん共作のパーティー料理が並んでいるが、まだまだ食材は残っている。これを園子さんたちが来るまでに、仕上げてしまわなければ。ところがお姉ちゃんの様子が何だかおかしい。ちゃんと私を真っ直ぐ見ずに、斜め上の辺りに視線が泳いでいるし、いつも勇者部でテキパキと指示を出している姿からは想像もできないほど、私や夏凛さんに何をさせるのかが出て来ない。
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「いやぁ、そのぉ…なんていうか…ねぇ?」
「どうしたんですか、風先輩。お刺身の
いつまでも言葉が出て来ないお姉ちゃんを見て、友奈さんが助け船を出してくれる。成程、お刺身を一口サイズに切れば良いんだ。そう思ってマグロのをパックから取り出す。
「あ~、ちょっと待って!」
「お姉ちゃん、本当にどうしたの?東郷さんや園子さんが来る前に全部やっちゃわないと」
「あ!ねぇ風、ピザ取らない?あたしと樹で取りに行くわよ。確か近所のお店、配達じゃなくて取りに行くと一枚サービスしてくれるんじゃなかった?」
「そ、それよ!夏凛ナイス!こんな時でもないとピザなんてなかなか取らないし。電話しておくから二人で行ってきて!」
「ほら、樹。付いてらっしゃい」
せっかく包丁まで握ったのに、夏凛さんの提案でピザを受け取りに行くことになった。まぁそれはそれで構わない。確かにピザなんて久しぶりだ。それこそ夏凛さんの歓迎祝い以来かも知れない。軽く髪やスカートが乱れてないか確認すると、夏凛さんに続いて玄関でスニーカーを履いた。
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