……これに関しては、気付いたら隣にいたっていう言葉があってンだと思う。
産まれた病院が一緒だったとか、物心つく前から一緒に遊んでたンだとかで、アイツと一緒にいなかった時期を俺は知らねェ。
…ここまでなら、漫画やらアニメやらに出てくる『ただの幼馴染』で終わったンだろうが、アイツはあろう事か『個性』まで俺と同じだった。
…こう言ったら「あたしが1分だけ先に発現したんだからカツくんの方が『あたしと同じ』なんだよ!!!!」とか言うンだろうが…
ただ、個性の使い勝手に関してはだいぶ違う。
アイツいわく「水素みてェな可燃性ガスを手のひらから出してバクハツさせるぅ…ねえねえ!カツくんの真似!似てたでしょ!ねえ!似てたでしょ!!!!」って……やかましいンじゃクソ。似てねェわ。
違うのは性別と性格だけ、そんな幼馴染、いや、もう一人の自分。
そんな調子だったから、一緒の高校に行くと言い始めるのも必然だったンだと思う。
◇ ◇ ◇
ビバ!ふじゅんいせいこうゆう!!
失礼しました。心の叫びが出てしまいました。
僕の名前は田中 詩音。
普通のサラリーマンでした!いつも漫画アニメラノベゲーム三昧!最近のトレンドはArkでした!
でも、ある1台のヘリコプターが俺の運命を変えました。
ゲームを買った帰りに歩いていたらヘリコプターが降ってきて、晴れてミンチになった僕は異世界に転生しました。
と、言うわけで、もう死んでるので僕の前世の名前なんてどうでもいい。
覚えてくれなくても大丈夫なものだということは言っておこうと思う。
君たちに覚えて欲しいのは、僕、いやあたしが異性の幼馴染として爆豪勝己の隣に収まってしまったということだけ。
いやー…正直やっべぇなこれって最初は思ったんだけどね。
何だこの夢小説はとか思ったんだけどね…
仕方ないじゃん。突然だったし、赤ちゃんだったし、おばさん優しかったし、お母さんも優しかったし、精神年齢が身体相応になるほどバブるとか思わなかったんだよ。
気付いたときにはもう遅かった、っていうのが正しかったんだと思う。
目つきもカツくんと似たような感じのメスガキに育っちゃったし、個性すらもカツくんと同じだし、誰も何も言わないぐらいにはずっと一緒にいちゃったし。
見た目に合わせてメスガキムーヴしちゃうのも仕方ないことだと思うんだよねあたしは。
一人称をあーしにしなかっただけ褒めて欲しいまである。
…ああんもうごめんね。日本語が下手になっちゃってて。
結局あたしが言いたいのはこれまであたしは『男として〜』とか『中身は大人だから〜』とか全く考えずに生きてきたってこと。
で、気付いたら高校受験が迫ってたってワケ。
正直マジで冷や汗止まらなかった。
どうしようどうしようって。
このままあたしがカツくんの隣に居座ったら原作どころか作品として成立するかどうか分からないほどに、壊れてしまうかもしれないって。
だからあたしは頑張った。
どうにかしてカツくんから離れようって、カツくんよりも少し早く起きるの辞めたし、カツくんを家に迎えに行くのもやめたし、カツくん用の弁当を作るのもやめたし、一緒に学校行くのもやめ…ようとしたし、一緒に休み時間過ごすのもやめ…ようとしたし、一緒に帰るのもやめ…ようとしたし、寝る前に電話で話すのも………
なんというか、多分あたしは恋愛の神様に愛されてるんだと思う。
いきなりサラリーマンの自分を思い出したり、二次創作の小説特有の原作を壊さないようにしようって言うこの思考回路でさえも、恋愛成就までの試練なんだって。
そう思わなきゃやってられないんだよ!
ナニを察知したのかは知らないけれど、あたしが離れようと決心した次の日からカツくんは、まるで鏡のように『あたしがしてきたこと』をあたしにやり始めたのだ。
迎えに来るわ弁当もってくるわ学校に一緒に行くことになるわ休み時間も……
これを聞いている転生者諸君は許して欲しい。こんな甘ったるいこと爆豪勝己がやるわけねえだろ!って思うじゃん。
あたしだって驚いてんだよ!押してダメなら引いてみろっていう恋愛テクがあるんだが、ここまでハマるとか分かるわけない。
ていうか行動起こす前に封殺されてんのよ。
いままでこんなこと無かったじゃん。
なんだよこれ。
ただ、態度自体はいつもと同じでぶっきらぼうではあるがいくらくっつこうと突き放すことは無い、と言ったような…
って、やってることが前とほとんど変わらねぇ!
このままじゃヘドロ事件が始まるだろうが!
あ、緑谷出久とカツくんの関係性は原作とほとんど変わらない。
私がいても、これから生まれるであろう緑谷出久とカツくんのドラマのための布石は消えないらしい。
これを見てホッとしたのは言うまでもない。
ただまあ可哀想ではあるから、この前さりげなく止めようとしたんだけどそのせいで余計ヒートアップした。許せ緑谷。
お前どんだけあたしのこと好きなんだよ!
◇◇◇
とまあこんな辺で、あたしの物語の概要はわかって貰えると思う。
めちゃくちゃ甘い人生を送ってきたあたしはこれからどうすればいいのだろう。というのがココ最近よく考えている事だ。
あのままメスガキムーヴをし続けられればどれほど良かったか。
幸いと言えばいいのか、あたしは勉強を頑張っている方だった。
さすがに前世よりかは知識の欠落があるけれど、それはこれからの勉強で補填できるため、まだ許容範囲内だ。
ただ少し愉快なのが、リソースが女子力に相当量割かれている事で…
…俺ってほんとにカツくんのこと好きなんだな…
…ゴホン。総括としては、あたしは努力家であることが分かる。
中学生にしては知識量が多く、明らかに前世の自分よりも頭が回るのがわかった。
なぜ高校生の範囲を既に齧っているんだこの子は。
そして、この世界において1番大事なのが…
「おい」
「ふむむ……個性が……」
「おい!」
「わぁあ!!ってカツくん?どうしたの?」
「帰るぞ。裂散」
「おお、もうそんな時間か。あいりょーかい!」
「ちっ…やっぱ気づいてなかったか」
カツくんの視線を追うとそこは
ババババッと荷物をまとめていく。
…む、こころなしかカツくんの距離がいつもと違うな。
少し近めな気が……てか黒板が見えない。連絡が書いてあったらどうするんだ。
「カツくん黒板見えない」
「見る必要ねェだろ」
「見る必要あるもん!連絡があったらどうすんの!」
「もう消されとるわ」
「えええ!!!や、や、やばみだよカツくん!!」
カツくんの肩を机越しで掴んで無理やり体を引っ張りあげる。当然の帰結として視界は開けるのだが、今回は珍しいものが視界に映った。
「ああ!!ミドリくんションポリしてるじゃん!!カツくんなにかしたでしょ!」
窓の縁に手をかけてぷるぷると震えている地味目の少年がそこにいた。
交友関係柄、接する機会の多い緑谷出久、いやミドリくんのその様子は、やはりよく見知っていたもので…
「あ゛ぁ゛?!なんもやっとらんわ!」
「もう!どしたのミドリくん!!思い詰めた顔して窓の外見つめてどうし……飛び降りはダメだよ!ミドリくん!!!ワンチャンダイブなんて考えないで!!ってあれ?窓の外……ワンチャンダイブ……将来のための……あれれ……って黒板消えてるぅぅぅぅ!!!!!!ね、ね、ねえねえねえ!カツくん!この際ミドリくんでもいい!!黒板には何が」
「………」
ミドリくんに話の矛先が向けた途端、あたしを超える速度でカツくんはあたしの荷物をまとめ、仕舞いにはあたしの襟首を掴んで教室を出ようとする。
「とっとと行くぞ。クソナードに聞くことなんか1ミリもねェ」
「ちょ、まガヅぐん゛、あ、歩けるよ゛…し、しまっ、締まってるよ!!」
おいおい、不機嫌かな?爆豪少年。
嫉妬がものすごいぞ!首しまってます!思春期パワーなの?!
と、まあ爆豪勝己を甘やかし、そして甘やかされながら生きてきたメスガキこと
せめて大筋は守りたいかな…
見切り発車なんで書きだめ出来たら適当に放流します