【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 第5章開幕にして第100話です。何とか毎日続いておりますが実はまだまだ終わりません。困った。


第5章:匠 VS BETA 迎撃編
100. ほんっとうに余計なことしかしませんね、あの女神的存在(クラエル・ザ・グレート)


 トピアとカミールが乗ったガンマはギーザ台地の塔を飛び立ち、まずは軽く島を横断した。

 各所の集落では色々と従来に無い物作りが始まっているようだったが、理想郷の建設者(クラフトピアン)のように建材を空中設置する権能は無いようなので集落が発展するにはそれなりの時間が掛かるだろう。

 また、肝心のハイミスリルらしき鉱石は島内には見当たらなかった。

 

トピア「この辺りには無さそうですね……むしろ新天地に出たら見つかる感じですかね?」

 

カミール「察しがいいな。その通りだ」

 

トピア「じゃあこのまま東の半島に向かいますか……今更なんですけど、この島の名前って知ってます?」

 

カミール「『はじまりの島』だよ。住民にも知られてないけどね」

 

トピア「なるほど、ダンジョンと同じ命名法則でしたか」

 

 安直と言えば安直だが、まあわかりやすくはあった。

 

 

 

 トピア達が湖の東の半島に到達すると、手前から石、砂、銅、鉄、銀、チタン、金、プラチナと存在する鉱石の★の数がレガシー方式で増えていった。そして★×9に該当するダイヤがありそうなエリアにそれはあった。

 

トピア「これがハイミスリル……ミスリルは銀の輝きと言うくらいだからか、銀色なんですね」

 

 つまりぱっと見では銀と見分けが付かないのだが。

 採掘は不死殺しの 危険な ファーヴニルの 炎の悪魔の ダイヤのつるはしで普通に遂行できた。ダイヤもハイミスリルも同じ★×9なのだから当然だ。

 

トピア「ではまず人工岩盤を作るのに必要な数確保するとして……ちょっと気になったんですけど、上書きされたならこの大陸のダイヤほぼ全滅してません?」

 

カミール「気付いたか」

 

トピア「はぁ……」

 

 続出する問題にため息を吐きながら、トピアはまた通信機を会議モードでオンラインにした。

 

トピア「たびたびすみません、トピアです。ハイミスリルを発見しましたが、教化範囲内のダイヤ原石がハイミスリル鉱石で上書きされてしまった模様です。宝石樹園が無事か、付近の人に確認願います」

 

 会議モードで通信を確立したトピアは状況を説明し、端的に用件を伝えた。

 

トリオ≪見つかったと思ったらまたえらいことになっとるの。実際の宝石樹園の状況はどうなんじゃ?≫

 

スコア≪今ファムが行っているはずだな≫

 

ファム≪はい、こちら宝石樹園のファムです。状況確認中です!≫

 

トピア「なら暫く報告を待ちましょうか。あ、ハイミスリル鉱石の見た目は銀色です」

 

 トピアが仮拠点を設置してハイミスリル鉱石を採掘しながら5分ほど待つと、ファムから報告があった。

 

ファム≪宝石樹園の状況確認できました! ダイヤの木から回収された石材にハイミスリルと思われる銀色の鉱石が混ざってます! でもダイヤのどんぐりと収獲済のダイヤは無事なので被害はそれだけです!≫

 

トピア「なるほど、ダイヤとそれ以外で分別してたから石材側に混ざりましたか」

 

スコア≪ともあれ最低限の被害で済んだようだな。確認ありがとう≫

 

トリオ≪まあそのくらいなら許容範囲内じゃな≫

 

サティ≪ヒヤッとしたわね≫

 

トピア「確認ありがとうございました。ファムさんお手数ですが対処お願いします」

 

ファム≪承知しました!≫

 

トピア「以上、連絡終わります」

 

 トピアは通信を終えてため息を吐いた。

 

トピア「焦りましたが、思ったほどの被害は出てないようですね」

 

カミール「ダイヤをあのように使うとはクラエル神も想定していなかったのだろうね」

 

トピア「だとしても新旧レシピが混在しているのに旧素材を丸ごと上書きは不味いですよ……いや、旧レシピが使えることがそもそも想定外なんですかね?」

 

カミール「その可能性は高いね」

 

 

 

 トピア達はポータルが起動するまでハイミスリル鉱石を採掘すると、鉱石以外の必要資材と隆起剤を調達しにユグドラシルに帰還した。

 

 工房の改良型作業台でトピアは早速ハイミスリルの人工岩盤を作成した。材料はハイミスリル鉱石×20、鉄のインゴット×12、粘土×10。幸いハイミスリルの人工岩盤は作業台の対応範囲内だったので万能岩盤製造機から作り始める必要は無かった。

 クラフトピアのレシピにおいて新旧とも粘土はわざわざ飲み水と砂から作るレシピになっており、飲み水の製造には結構な時間が掛かるため、本来は結構作るのが面倒なのだが、工房にはラリーにシンク(Sink)を設置してもらっているので全く問題は無い。

 ただまあ、ラリーが地中から採掘してきた粘土の在庫も潤沢にあるのでそもそも新しく粘土を作る必要も無かった。現在の設備なら必要に応じて簡単に作ることが出来るというだけの話である。

 

 製造したハイミスリルの人工岩盤と隆起剤を持って、トピアはキープしておいた空き鉱脈に赴いた。空き鉱脈とは、今回のように自由に人工岩盤を設置する前提で空けておく枯渇鉱脈のことである。

 トピアは空き鉱脈にハイミスリルの人工岩盤を設置した。手順としては次に隆起剤をぶっかけるところなのだが、違和感を感じたトピアは試しにそのままつるはしを振り下ろしてみた。すると、ハイミスリル、そして不純物の石、砂、水晶、硫黄、原油といったものがドロップした。

 

トピア「……これ隆起剤かけなくても岩盤として完成してますね。説明が間違ってます」

 

カミール「そのようだね」

 

 ハイミスリルの人口岩盤の説明には「枯れた岩盤上に設置し、隆起剤を投与することで再びハイミスリルの採掘が可能になるようだ」と書いてあるのだが、どうも隆起剤を使う必要は無さそうなのだ。道理で改良型作業台の製造品目リストに隆起剤が無いはずだ。

 とりあえずトピアはハイミスリルの人工岩盤を掘り尽くして24,000個程のハイミスリル鉱石を獲得し、一部を次回分の人工岩盤に、殆どを新型の熟練の炉に入れてインゴットにした。

 予想はしていたが鉱石からインゴットへの変換率がアダマンタイト同様の1/5であり、大分効率が悪かった。つまりインゴットにすると約4,800個になり、大分嵩が減ってしまうが、まあ当面使う分には足りるだろう。

 幾つかの設備で要求される★×8アダマンタイトのインゴットもついでに同じ手順で約4,800個生産しておいた。勿論予備の人工岩盤も作ってある。人工岩盤の製造では材料にインゴットではなく鉱石が要求されるため、全部インゴットにしてしまうとまた採掘しに行かなければならないからだ。

 それぞれの鉱脈から一緒に出てきた不純物は、硫黄や原油はともかく、水晶が沢山出ても使い道が無い気がするが、サティが石英として使うかもしれないのでトピアは一旦倉庫に収納しておいた。

 

 十分な量を確保したハイミスリルのインゴットを使ってトピアはワールドLv8の新設備を作り、使い勝手を試していった。

 

 

 まずは『万能岩盤製造機』。これはリストから製造品目を選ぶ通常のクラフトUIではなく、鉱石素材を選ぶことでそれに必要な資材が自動算出される設備となっていた。そのためあらゆる鉱石の人工岩盤を製造可能だが、比較検証のために既に存在する鉄鉱石の人工岩盤を作ろうとしてみたところ従来の10倍の資材を要求されたので、通常のレシピに存在する人工岩盤はそちらで作った方がよいというものであった。

 初期コストの鉱石200個が若干重いとは言え、普通に使っても24,000個のリターンがある上に実際には半永久採掘に使用するので殆ど誤差である。

 唯一の懸念点はシームレス仕様の鉱石同様に純度が低いのではないかというところであった。そこでトピアは純度の違いによってレガシーでは★×8、はじまりの島では★×7となっているプラチナ鉱石に着目し、検証として万能岩盤製造機でレガシーの★×8プラチナ鉱石を使って人工岩盤を作ってみた。結果としてその人工岩盤からはレガシーの★×8プラチナ鉱石そのものが採掘出来たので懸念は解消された。

 もはや有用性に疑いは無いのでトピアは自分の工房に1つ設置したもののほか、持ち運び用に1台、他の(マイスター)達と助手の分も1台ずつ用意した。

 

 

 次に『エンチャント抽出機』。間違いなく有用なのだが、これが一番頭の痛い問題だった。

 この装置は期待通りにあらゆる物品からエンチャントを抽出してエンチャントの欠片もしくはエンチャントスクロールとして保存することが出来た。このエンチャントの欠片は通常のインベントリとは別タブに新たにストックするスペースが設けられた。ただ、エンチャントのレアリティによって抽出効率に大きな差があり、完成版エンチャントテーブルではコモン以外は1つの素材から抽出した欠片で付与1回が出来ないという制約があった。

 

レジェンダリ:エンチャント素材1個 → エンチャントの欠片1個 (= エンチャントスクロール1枚) → エンチャント付与1/10回分

エピック:エンチャント素材1個 → エンチャントの欠片2個 (= エンチャントスクロール1枚) → エンチャント付与2/10回分

レア:エンチャント素材1個 → エンチャントの欠片5個 (= エンチャントスクロール1枚) → エンチャント付与5/10回分

アンコモン:エンチャント素材1個 → エンチャントの欠片7個 (= エンチャントスクロール1枚) → エンチャント付与7/10回分

コモン:エンチャント素材1個 → エンチャントの欠片10個 (= エンチャントスクロール1枚) → エンチャント付与10/10回分

 

 つまり新型の完成版エンチャントテーブルではエンチャント付与1回に使うのは基本的にエンチャントの欠片10個ということであり、単純にエンチャントスクロール1枚=エンチャント付与1回分となっていたレガシー方式の未完成エンチャントテーブルとは根本的に仕様が異なる。

 これを1回の付与に必要なエンチャントスクロールの枚数に換算すると、10を欠片抽出数で割って切り上げて、レジェンダリで10枚、エピックで5枚、レアアンコモンは2枚、コモンは1枚となる。これが新型エンチャントテーブルで高レアエンチャントほど大量のエンチャントスクロールを要求されるからくりだったのだ。

 

 エンチャントの欠片は小麦畑にエンチャント付与して無限に生産されるエンチャント小麦からエンチャントの欠片を抽出するというサイクルで幾らでも増やせるからまだいいのだが、それにはまず小麦畑にエンチャント付与する必要があるため、元手として最低限付与1回分のエンチャント素材が必要になる。レジェンダリなら10個だ。

 なおこの小麦畑も実は新旧で仕様が異なり、レガシーと見た目が全く同じ新型小麦畑はエンチャントを付与してもエンチャント小麦を生み出さないようになっていた。これは間違いなく小麦畑を利用したエンチャント増殖法を防ぐためだろう。レガシー仕様の 小麦畑が従来通り機能しなかったらどうなっていたことかと肝が冷えるところだ。

 とりあえず在庫が残り少ない 盗賊頭の危険な を始めとして、主要なエンチャントはすぐに増産しておくべきだろう。

 

 また、この抽出機が悪いわけではないのだが、エンチャントの効果自体が同じ名前で新旧2種類存在するという問題もあった。

 一例を挙げると

 

・旧 伝説の:地上移動速度+10%、空中移動速度+5%、攻撃速度+30%、攻撃力(ATK)+50、(消耗品限定:ライフ回復250、マナ回復250、満腹度回復250)

・新 伝説の:地上移動速度+8%、空中移動速度+3%、攻撃速度+5%、攻撃力(ATK)+75、(消耗品限定:ライフ回復100、マナ回復100)

 

 のようになっていた。性能を確認出来たエンチャントは手持ちにあるものだけだが、伝説の に限らず大半のエンチャントの効果が変わっていた。レアリティが低いものは強化・弱体化が半々くらいなのだが、エピック以上では強化されたものはごく一部で殆どが弱体化という惨状になっていた。

 特にレガシーで定番になっていたエンチャントの効果は強すぎると見なされたのか、伝説の の他にも 盗賊頭の危険な といった強力なエンチャントが軒並み劇的に弱体化してエンチャント設計を根本的に練り直すレベルになっていた。

 

・旧 盗賊頭の:地上移動速度+5%、攻撃速度+5%、攻撃力(ATK)+25、攻撃力(ATK)+10%、物理クリティカルダメージ+5%

・新 盗賊頭の:地上移動速度+5%、攻撃速度+5%

 

 盗賊頭の は攻撃力関係のパラメータが全部切り捨てられた。これは酷い。

 

・旧 危険な攻撃力(ATK)+15、攻撃力(ATK)+10%、物理クリティカルダメージ+15%、物理クリティカル率+10%、防御力(DEF)-5

・新 危険な攻撃力(ATK)+30、攻撃力(ATK)+3%、物理クリティカルダメージ+2%、物理クリティカル率+2%、防御力(DEF)-50(10倍表記)

 

 危険な は基礎攻撃力(ATK)が増える代わりに他のパラメータが軒並みフレーバー程度まで削られた。特に物理クリティカル率が稼げなくなったのが痛い。

 

 勿論従来と同程度かやや強化されたエンチャントもあるのだが、新型エンチャント全体のパラメータ傾向として物理・魔法両面で攻撃力(ATK)割合上昇率、クリティカルダメージ上昇率、クリティカル発生率、攻撃速度上昇率が軒並み下げられているため、攻撃面においてどうしてもレガシーのエンチャントには太刀打ちできないようになっていた。

 新型レシピの武器は性能が高めなのでエンチャントの効果を下げてバランスを取ったのだろうか? だとしてもやりすぎだと思うのだが。

 

 エンチャント素材の存在法則としては、まずはじまりの島で出てくるアイテムには新型エンチャントがついており、それ以外ではレガシーエンチャントがついていた……というのが教化発動前の状態だったのだが、教化によってはじまりの島の外の埋蔵ダイヤ原石が全てハイミスリルに上書きされたのと同時に、同範囲内ではドロップアイテムにつくエンチャントも全部新型に切り替わってしまった。

 

トピア「ほんっとうに余計なことしかしませんね、あの女神的存在(クラエル・ザ・グレート)は」

 

カミール「ふむ、今なら分かるぞ、その呼び名に敬意の欠片も籠もっていないことが」

 

トピア「お気づきになりましたか」

 

 しかし丁寧すぎて煽り力の高い軍師のような言葉からも分かる通り、トピアの態度にはまだ余裕があった。エンチャント素材の切り替えは全く余計なことではあるのだが、実は影響はそれほど大きくなかったのだ。

 というのも、まずエンチャント素材からエンチャントの欠片として抽出した時点で元がどちらであれ全て新型エンチャントに変換されてしまう。ではレガシーエンチャントはもうスクロールの在庫分しか付与出来ないのかと言えば、そうでもない。付与対象によってエンチャントのタイプが変異して定着してしまうからだ。

 どういうことかと言えば、エンチャントをレガシーレシピのクラフトピアアイテムに付与するとレガシーエンチャントとして定着し、逆に新型レシピのクラフトピアアイテムに付与すると新型エンチャントとして定着したのだ。そしてクラフトピア産以外のアイテムに付与するとレガシーエンチャントとして定着した。つまりクラフトピア産の新型レシピアイテムだけが特別な判定になっているらしかった。

 

 新型エンチャントの性能が概ね低く、なおかつ武器性能ではラリーやスコアが持ってくるものの方が高いため、新型レシピアイテムを使う必然性が益々薄まり、もはやどうやってレガシーエンチャントのまま使うかばかりを研究することになったのだった。

 これからBETAと戦うのに少しでも戦力が必要なのだから、残念ながら当然の反応である。




 なお実際のゲームではレガシー小麦畑を持ち込んでもエンチャント増殖は出来ません。
 同じく実際のゲーム上ではシームレスワールドでレガシーからの持ち込みアイテムにエンチャントを付けると再ログイン後にレガシーエンチャントに変異しますが、この世界では再ログインが出来ないので即レガシー化するようになりました。
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