【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 感想数10件に到達しました。ありがとうございます!
 [2023/10/07]目的地到達までの時間の計算が間違っていたので修正しました。
 [2023/10/25]盾にセットでつけるエンチャントのうち 永久の エンチャントの性能低下に言及していなかったので修正しました。


105. そうでなかったらキミは余程酷い奴だと思っていたところだよ

 ユグドラシルに帰ったトピアはカミールを工房に帰して一人で改めて出かけることにした。何故かと言えば移動時間が長くなりそうなのでその分無駄な時間を使わせてしまうからだ。任せた仕事が長時間作業になりそうなカミールを無駄に連れ回すのは非効率だ。

 トピアが以前衛星観測で地獄バイオームを探した際、幾つか乾燥地帯らしきものを見つけていた。中でも一番近いのがユグドラシルの北北西400kmほどにある砂漠で、恐らく最初に遭遇した憤怒のドラゴンはここから来たものと思われた。何故最初にそちらに行かなかったかと言えば、単純に移動と探索に時間がかかるからなのだが、よく見るとユグドラシルの北北東のBETA落着地点に新しくポータルが設置されていたため、トピアはそちらから出発することにした。ここからなら200kmもないのでガンマで最大速度を出せば12分程度で目的地に到達出来そうだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 トピアがポータルを出るとそこは例によって壁に囲まれており、出口には扉ではなくアクチュエーターが設置されていた。

 そしてその壁には大きく目立つように注意書きがあった。

 

――BETA還元施設:この先きらめきの池があるため重々注意すること

 

 なるほど、以前の話の通りにBETA還元施設を作り、(マイスター)と関係者以外には簡単には入れないようにした結果のようだった。

 トピアがアクチュエーターを作動させて3つの壁を抜けるとそこには輝く液体を湛えたクレーター湖があった。以前トピアが潰したフェイズ0ハイヴの落着クレーターにきらめき(Shimmer)を注ぎ込んで作ったもののようだ。確かにこのサイズなら大型のBETAでも問題無く入るだろう。そしてクレーター湖はその全体が頑丈な壁に囲まれていた。

 そのクレーター湖の岸から桟橋がかかっており、そこではファムがBETAの死骸を投げ入れては還元素材を回収する繰り返し作業を一心不乱に続けていた。真面目に仕事をしているようで感心である。なお死骸が腐りかかっているのでガスマスク着用だ。マスクを着用していないトピアは接近を躊躇い、やや遠くから声をかけた。

 

トピア「ファムさんお疲れ様です。ポータルルーム以外の出口がどちらか教えてもらってもいいですか?」

 

ファム「あっ、お疲れ様です。それならそこに北出口が」

 

 とファムが答えようとしたところでアクチュエーターが切り替わってそこからスコアが入ってきた。こちらもガスマスク着用だ。回収作業の帰りだろうか。

 丁度目が合ったことでスコアがすぐに気付いた。

 

スコア「おおトピアさん、こんな所に来ていたのか。私に用事かな?」

 

トピア「いえ、ここの北西の砂漠に用があるんですが、ユグドラシルよりこちらの方が近かったので」

 

スコア「む、そうか。ではあのポータルの部屋には中に入る以外にも出口を作った方がいいか?」

 

トピア「丁度施設見学もしようと思ってたので大丈夫ですよ。砂漠にもポータルは設置しますし。こちらの作業は順調ですか?」

 

スコア「そうだな、ファムが頑張ってくれているので夕方までには全ての死骸の還元が終わりそうだよ」

 

トピア「おお、それは何よりです」

 

 思想の危険性から当初は距離を置こうとしたファムだが、きちんと仕事をしてくれているようだ。先ほどの宝石樹園の対応も早くて的確だったことだし、そろそろ関係の改善を試みるべきではなかろうか。

 そう考えたトピアはファムの方に向き直ると、少し言葉を選んでから口を開いた。

 

トピア「ファムさん、正直言うと初対面の印象は最悪に近かったのですが」

 

ファム&スコア「えっ」

 

 言葉を選んだはずだが初手から本音が漏れていた。それだけインパクトがあったのだから仕方ない。だが本題はここからだ。そう、これはあくまで落として上げる褒め方なのだ。

 

トピア「いえ、最後まで聞いて下さい。しかしその印象に反して現在あなたの頑張りに我々は助けられています。あなたの仕事ぶりはアヌビス様にも伝えておきますので、今後とも宜しくお願い致します」

 

 思想がどうであれ、成果を出している以上は評価せねばなるまい。最低限それくらいしなくてはまともに人を使うことなど出来はしないのだ。

 突然匠衆(マイスターズ)の代表にされてしまったが、トピアとしては人を使うのは初めてなので、そういう基本的なところからやっていくことにしたわけだ。

 

ファム「……はい、任せて下さい!」

 

 ファムは少し呆然とした後、表情を引き締め、胸の前で両拳を握りしめて鼻息荒く言い切った。

 大変可愛らしいのだが、そのポーズと台詞が初対面で異教徒狩りなら任せて下さいと言い切った時と全く一緒だったので、トピアは若干の不安を覚えた。

 

 

 

 BETA還元施設を発ったトピアは15分ほどで目的の砂漠に到達した。とはいえ砂漠も広いのでここからボーンドラゴンを何とか探さねばならない。ここで厄介なのはただでさえ目視で探さなくてはいけないのに、寝ている状態ではボーンドラゴンはただの骨に擬態しているということだ。

 それからトピアはガンマで捜索を続け、飛びかかってきた1体の憤怒のドラゴンLv.91を返り討ちにしてその近くに仮拠点を設置、ドラゴンの骨というハズレを5回引いてから本命の万古のボーンドラゴンLv.94を漸く引き当てた。

 トピアはバフをかけてから悲願の罪の薬を飲んでボールライトニングを複数設置した。雷撃が始まると、立ち上がったボーンドラゴンは咆哮を上げずに骨を飛ばしてきた。トピアはこれを軽く回避し、次のボールライトニングを設置した。2段目の雷撃がヒットし、ボーンドラゴンが崩れ落ちた。バラバラになったボーンドラゴンはすぐに消えたが、通常のドロップアイテムとは別に 不退転の エンチャントがついた黒曜石が落ちていた。部位破壊による特殊ドロップだ。

 やはりあの始まりの島以外のMOBはレガシー仕様が通じるようだと確信したトピアは、アヌビスの免罪符を使ってボーンドラゴンを再召喚した。今度は万古のボーンドラゴンLv.91だった。レベルが変動したということはこれもレガシー仕様だ。トピアは繰り返しボーンドラゴンを討伐し、4回目の再召喚で千古のボーンドラゴンLv.89を引き当てた。そのドロップアイテムには 悠久の千古の といった目当てのエンチャントがついていた。

 これでボーンドラゴンのエンチャントが必要分一通り揃ったわけだが、教化の影響でドロップ素材についているエンチャントの内容が新型の方になっており、新型の性能も一通り判明した。そのままの性能のものもあったが、 不朽の防御力(DEF)依存攻撃力上昇性能が従来の150%から100%に低下、永久の は100%から80%に低下、代わりに 悠久の が50%から70%に引き上げられていた。これらは盾以外につけることが出来ないエンチャントなので、一つの盾に一緒につけて差し引き50%の性能低下になる。しかも 不朽の についていた貴重な防御力(DEF)10%上昇効果が消滅しており、つまり新型の盾は使えないことがこれでほぼ確定した。

 ドロップするエンチャントが確定している相手を繰り返し討伐する場合はエンチャントの欠片10個分を獲得するのにかかる労力はさほどでもないので、稼ぎにくいエンチャントポイントを節約するためにトピアはボーンドラゴンの討伐を繰り返した。

 

 エンチャント素材集め終了後、トピアはボーンドラゴン出現地点から若干離れた所に仮拠点を設置した。何故かと言えばボーンドラゴンの範囲攻撃で建物を破壊される可能性が結構あるからだ。また、ドラゴンがユグドラシルまで飛んできたようにボーンドラゴンが時間で復活して動き回り仮拠点を破壊する可能性も無いとは言えないため、出現地点には念のため結界の旗を設置した。

 

 一連の作業を終えたトピアは魔法の鏡(Magic Mirror)を使ってコアベースの自室に戻り、そこからポータルでユグドラシルに帰還した。

 

 

 

トピア「只今戻りました。ボーンドラゴンのエンチャント揃いましたよ」

 

カミール「おお、無事見つけたか。こちらの進捗はスキル全体の1割半と言ったところだ」

 

トピア「は? まだ開始から1時間半程度ですよね?」

 

 早速エンチャント畑を作りに行こうとしたトピアは振り返って疑問の声を上げた。

 そこにはいつものカミールと、エンチャントシミュレーターと……手乗りサイズの二頭身の小人のようなものがいた。

 黄色い安全ヘルメットに青い長袖半ズボン。白目の無い縦長の瞳。はて、どこかで見たような気がするが……。

 トピアがそれを食い入るように見つめていると、カミールが紹介を始めた。

 

カミール「うむ、それもこれもこの頼れる妖精さんのお陰さ。今回も大いに助けてもらっているよ」

 

トピア「妖精……サン??」

 

カミール「ワタシがエンチャントシミュレーターの扱い方が分からずに困っていたときに助けてくれたのもこの妖精さんなんだよ。そうでなかったらキミは余程酷い奴だと思っていたところだよ」

 

 カミールの言葉に合わせて二頭身の妖精がしきりに頷いていた。

 

トピア「うん? 扱い方がよくわからない? ……ああ! それただの手落ちです。大変申し訳ない」

 

カミール「えっ」

 

 トピアが勢いよく頭を下げたことにカミールは困惑した。

 

トピア「いや今のカミールさんはクラフトピアの道具に関してほぼ全知なので教える必要が無いかなと思ってまして。でもそれ理想郷の建設者(クラフトピアン)が勝手に作ったMOD由来アイテムだから教化でインストールされた知識には無かったんですね」

 

カミール「そういうことだったのかい……」

 

トピア「で、こちらの妖精さんは一体どちらからお越しに?」

 

カミール「え、キミが言ってたんじゃないか」

 

トピア「んん?」

 

カミール「()()()()()()()()()()()()()()()()()()って。だから本当に困ったときには助けてくれたんだと」

 

 その言葉がトピアの頭に浸透するのに数秒を要した。

 

トピア「……ああ、言いましたね! っていうか、本当にいたんですか熟練の鍛冶屋の中の妖精さん!? 私初めて見ましたよ!?」

 

 驚きを露わにするトピアに対し、二頭身の妖精は何やら満足げな顔をしていた。デフォルメされたシンプルな顔の割に表情が分かりやすい。

 

カミール「いや、言葉をそのまんま返すようだけどキミにも知らないことがあるものなんだね」

 

 レガシークラフトピア世界由来の設備にもまだまだ未知の領域があるようだった。




 妖精さんの見た目はほぼ鎮守府工廠勤め仕様です。クラフトピア原作ゲームの説明文の元ネタがそれなので。
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