スコア「それでこっちのBETA還元作業は一通り終わったんだが、ラリーの進捗はどうだ?」
夕食後、そろそろ解散というところでスコアがそう切り出した。スコアは特に体調を崩した様子は無く、満腹度200のボリュームでも丁度良かったらしい。これはスコアだけでなく元々キャプ食いが可能な戦闘班三人ともだ。なお満腹度200は料理そのものの効果で、これにフルエンチャントを乗せた結果、(200+250)×(1+1+0.5+0.25)=1,237.5が最終的な満腹度である。実に暴力的だ。
サティ、テクス、マイン、カミール、ファムの五人は半分ほどでギブアップし、残りをインベントリに仕舞っていた。一方トリオ工場長は酒をがぶ飲みしていたのに全く支障なく食べ切っていた。やはり生物としての基礎力が違う。アヌビス神も食べ切っていたのはやはり神だからだろう。若干無理しているように見えたのは見なかったことにして差し上げたい。シュミットは元々量が少なかった上に妖精なので平然としていた。
そうして食堂がやや混乱しているうちにシュミットはカミールを引き連れて、というか頭の上に乗ってさっさと仕事に戻ってしまったので紹介する機会を逸してしまった。まあ朝の会議で紹介すれば良いだろうとトピアは割り切った。
ラリー「予定通りだぜ。今日中には第2
スコア「そうか。だがあと2箇所あるんだろう? 私も手伝ってもいいか?」
ラリー「うん? だがお前縦に掘るのは苦手だろ?」
スコアの提案にラリーは首を傾げた。ラリーが一人でこの仕事をやっているのはそもそもラリーにしか出来ないからなのだ。
スコア「ああ、だがラリーの掘削手順を見て思ったんだ。ラリーが縦に掘った所を起点にして私が円状に掘っていくなら分業出来るんじゃないかと」
ラリー「ふーむ……言われてみれば出来そうな気もするな。建設と違ってサイズの規格が違っても問題ねえわけだし」
トピア「ということはその理屈で私も参加出来そうですね?」
ラリー「その場合はオーバーハングした部分はスコアが固めることになるな」
トピア「そこなんですけど、つるはしをラリーさんのところのものに変えると壁や天井を固めやすい効果があったりしませんか? そろそろ最上位とは言わなくても上位のつるはしは作れますよね?」
ラリー「んー、
トピア「お願いします。……とはいえ、私はエンチャント素材を集める仕事が残ってるので、明日からの合流になりそうですが」
ラリー「そっちはそっちで重要だからな。頼んだぜ」
スコア「トピアさんのところのエンチャントは効果が絶大だからな」
トピア「任せて下さい。エンチャント素材の収集は今日中に終わらせて、あとはカミールさん達にお願いしているスキルやエンチャントの新旧比較資料が明日の昼か夕方くらいには出来そうですので、次の装備強化はその資料を元に検討することになると思います」
スコア「うむ、楽しみにしていよう」
ファム「あの、私はどうすれば?」
スコアと同時に手が空いたファムが控えめに挙手して質問した。
スコア「ファムは宝石樹園の運営と旅商人からの買い付けに戻ってくれ。あれも重要な仕事だからな」
ラリー「あと手が空いたら俺が作った釣り堀で釣りを頼む。結構重要なアイテムが手に入るはずなんだ」
トピア「確か時間は掛かるけど聖十字の盾の材料が釣れるっていう重要任務ですよね?」
ラリー「そうだな、今設置してある釣り堀のうちメインに指定してあるのは
ラリーの言う釣り堀とは、文字通り釣りをするための人工的な設備なのだが、一見ただの壁で囲った水溜まりだ。ただテラリアンの世界ではどういう環境に水が溜まっているかで釣れる魚も宝箱もがらりと変化するため、それを制御するために環境条件を満たして特定のものを釣るための釣り堀を作るというテクニックがあるのだ。つまり
ファム「分かりました、お任せ下さい!」
自分の仕事が期待されていることを理解したファムは目を輝かせて気合を入れた。スコアはファムの真面目さに微笑みながら頷いた。
ラリー「あー、あとな。正直すまんとは思うんだが、釣りを担当させると必然的に
付け足されたラリーの言葉は何やら歯切れが悪い。
スコア「何か問題があるのか?」
ラリー「いや、奴がどれそれを釣ってこいと出した条件を達成すると手に入るアイテム自体は有益なんだ。無限バケツシリーズとかその逆のスポンジシリーズとか、釣りがよりやりやすくなる装備とか、
トピア「それも結構重要なのでは?」
ラリー「だが奴は条件を出す相手をパシリや下僕扱いして理不尽な物言いをするから兎に角ストレスが溜まるんだ。俺も必要なものを全部集めるまで我慢するのには相当苦労したぜ」
ラリーはそれを思い出すだけでも憤懣やるかたない様子で眉をしかめていた。
スコア「マインの尊大な物言いも笑って流すラリーがそこまで言うほどの奴か……」
ラリー「いや、あいつは慣れてきたらなんか逆に面白くなってきてな」
トピア「お気づきになりましたか」
ブロンティストの面白さを共有出来る相手を見つけてトピアは嬉しそうに頷いた。
トピア「それはともかく、これは相当な難物の予感がしますね。……ファムさん、仕事は重要ですけど我慢出来ないことがあったら遠慮無く言ってくれていいですからね」
スコア「そうだぞ。無理は良くない」
ラリー「勿論俺もフォローくらいはするからな。あと、まだ釣り堀の種類が揃ってねえから釣り堀で釣れねえ魚は無理して釣らなくていい」
ファム「はい、分かりました!」
ラリーが大きく頷くと、ファムは足早に担当の職場に戻っていった。
ラリー「んでトピアにも頼みたいことがあってな。
トピア「ええ、どんなのでしょう?」
ラリー「石化対策装備の材料をドロップする
トピア「それだと大鍋でも対処出来ない可能性が高いですね」
スコア「なら増やす側はトピアさんのを使うとして、処理側はうちのタレットを使ってみるか? 1発150程度のダメージが入るぞ」
トピア「種MOBを攻撃したりしませんか?」
スコア「射角が狭いから距離を離しすぎなければ大丈夫だ」
ラリー「何とかなりそうだな。実際に作って試してみようぜ」
トピア達はコアベースの畜産場の一角にいつもの4並列交配所と緑モノ鍋をやや高めに設置し、その下にタレットによる処理施設を設置した。ガラクサイトのタレットはコア由来の発電機で動力をまかなえる上に弾丸の補給も必要ないので非常に手軽であった。
この施設を実際に稼働させてみると増えた
ラリー「よし行けそうだな。こいつが地下探索で一番重要な耐性装備の材料をドロップするからな。すまんが同じ施設をあと3つくらい作ってくれるか?」
トピア「分かりました」
ラリー「んでスコアは……実際にドロップ品が出るまで時間かかるしどーすっかな」
トピア「ドロップ率が問題ならこれを使ってはどうでしょう?」
トピアは悲願の罪の薬を差しだした。ドロップ率10倍のやばいおくすりだ。時短効果は劇的である。
ラリー「その手があったな。すぐ必要なのはスコアの分だけだし、1本だけ使うか」
スコア「助かる」
ラリー達の用事を終えたトピアは、エンチャント素材の収集に出かけた。
さしあたって必要になりそうな強力なエンチャントのうち、ボーンドラゴンとフルールのものは集め終わっている。そこでトピアはヘルレジストポーションを飲み、確保の目処が付いている地獄のボスを求めてポータルで
・旧 戦神を宿した:
トピアは既に何度もこの
トピアはポータルを出てからジェットパックで上昇して周囲を見渡し、三番目に近い『島のダンジョン』に突入した。一番目がボスのいない『試練』ダンジョンで、二番目がボスは居るものの中の道が長い『放棄された鉱山』ダンジョンだったからだ。
地獄と言っても『島のダンジョン』の構造は全く変わらず、基本的に一本道でザコMOBを蹴散らしてボスルームに突入するだけだ。
出現したのはタイラントスネークLv.57だった。青紫の鱗に覆われ毒牙を生やした、巨大な毒蛇だ。
地獄バイオームではザコMOBに対しライフ5.3倍、
とはいえ目の前にいるのはボスの中でも2番目にライフが少なく、レベルも57しかないタイラントスネークだ。ライフが2倍になった程度では近づきながらフロストマインLv.6をぶっ放すだけでノックアウト出来てしまうのは必然であった。
1体倒せるのは当然で、ここからが本番だ。トピアはアヌビスの免罪符を取り出し、オモチツキの準備に取りかかった。