【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

112 / 387
112. 我々が倒され、封印が解かれれば、世界は火の海になってしまうアチャアーッ!?

 始まりの島、ヤーデン草原の北の橋。その中央にいかにもファーヴニルが出現しますよという円形フィールドがある。レガシーワールドのビッグブリッヂの島でも、円形ではなく長方形という違いはあるがファーヴニル出現フィールドは橋の中央の広くなった所だったなとトピアは思い返した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 トピアはこの橋の周辺をガンマで飛び回って三人の聖騎士を探した。幸いこれはすぐに見つかった。以前発見した橋の北側に一人、橋の中央に一人、そして橋の南側に一人いた。兎に角この三人をこの場から退去させなければファーヴニルが出現してくれないが、流石に真面目に仕事をしているだけの聖騎士を容赦なく葬るのは気が引ける。いや実際にやろうと思えば出来るのだが、折角現地民と友好関係を築いているのにここで突然謂れの無い殺戮をするのは不味いのではないかという判断だ。

 なのでトピアはとりあえず聖騎士達をモンスタープリズムで捕獲することにした。

 

トピア「貴方に恨みはありませんが」

 

封印を守護する上級聖騎士(北)「ウッ! やめよ、淑女よやめるのだ! 我々が倒され、封印が解かれれば、世界は火の海になってしまうアチャアーッ!?」

 

 聖騎士Lv.60のライフはおよそ1万。ヒルデブラントで一突きすると死んでしまうのでトピアはペンギン同様に聖騎士も一発殴ってクリティカル4,800ほどのダメージを与えてから慎重を期してたいまつで火を付けてみた。哀れ、世界の前に聖騎士自身が火だるまになってしまった。トピアはここから5、6回ほど炙る必要があると考えていたのだが、しかしどうしたことか、クリティカル1,200ほどのダメージが入って一気にライフの半分を割った。

 

トピア「はて、これは状態異常の仕様が……いや、片手たいまつの性能が変わっている……?」

 

 炎上デバフのスリップダメージは従来通り5ずつしか減っていない。問題は火を付けた瞬間に通常ダメージが入ったことだ。トピアはペンギンの時と何が違ったのかを考えた。

 まず一つには相手がシームレス仕様であったこと。だが炎上ダメージの最初に通常ダメージが入るようになったのは炎上ダメージの仕様変更のせいではなさそうに思える。

 となれば考えられるのはもう一つ、今回使ったのが新型レシピの片手たいまつであることだ。新型レシピには耐久限界が無いので、何度も火を付ける必要がありそうな聖騎士相手には便利と見て一度工房に戻った際に新型の片手たいまつを作って持ってきたのだ。

 

 それはともかく、ライフが半分を割ったからには捕獲のチャンスだ。トピアは早速モンスタープリズムを投げつけたが、このターゲットはモンスタープリズムに入らないというエラーが出た。ライフ半分未満で100%通るはずの一次抽選に通らなかったのだ。

 捕獲可能MOBリストに聖騎士は入っていたはずなのに何故、とトピアは一瞬考えた後、たいまつ同様に使ったモンスタープリズムが新型であるせいではないかと思い至った。新型の★×1モンスタープリズムの方がコストが安いのでたいまつと一緒に補充用の新型モンスタープリズムを作ってきていたのだ。

 そこで次に投げつけるのをレガシーの★×6モンスタープリズムにしてみた。するとあっさり一次抽選を通り、3回の試行で二次抽選を通過して聖騎士の捕獲に成功した。やはり★の数が減っただけあって新型は性能が低下しているのだろうか。

 

封印を守護する上級聖騎士(北)「ウッ! 封印を破ろうとする者が現れるとは……あとの2人よ、あとは頼ん……だ……」

 

 捕獲の可否はモンスタープリズムの新旧によることがほぼ確定したので、次はたいまつの方の検証だ。トピアは次の聖騎士を旧片手たいまつと新片手たいまつの両方で炙ってみることにした。検証のために人を火で炙ると書くと非常に人聞きが悪いが、殺さず捕獲するためとはいえ実際そうしているのだから言い逃れのしようがない。

 

封印を守護する上級聖騎士(中央)「ウッ! 封印はもう1つしか残されていない……今からでも思いとどまるんだ……」

 

 結果として、仮説の通り旧片手たいまつはスリップダメージのみ、新片手たいまつはスリップダメージに加えて最初に通常ダメージが入る仕様になっていた。どちらも★×1片手たいまつで見た目も同じなので非常に紛らわしい。耐久限界の差が無ければ全く見分けが付かなくなるところだ。新型片手たいまつの初撃は素手攻撃の1/4程度のダメージなので、技威力は2.5といったところだろう。これはこれで手加減の手段として便利だが、旧型たいまつのようにLv.1相手に使うと死んでしまうので注意が必要だ。

 それはともかくトピアは当初の予定通りに三人目の聖騎士もたいまつで炙って捕獲することにした。

 

封印を守護する上級聖騎士(南)「ウッ! 何用かな淑女よ。火を人に近づけるのは危ないヌワワワワーッ! ここまでか……。せめて、あの竜を起こさないでく……れ……」

 

 斯くしてトピアは聖騎士達を死なせずにこの場から退去させることに成功した。台詞を聞いているとどう考えてもトピアの方が悪いことをしているのだが、これは犠牲を出さずに事を済ませる為には仕方の無いことなのだ。そもそもこうしないとファーヴニルと戦えないようにしたあの女神的存在が悪い。

 

 全ての聖騎士を捕獲したと同時にログにファーヴニルの封印が解かれた旨のメッセージが入った。見ればやはり橋の中央にファーヴニルが出現していた。接近して確認してみると正しくは昂り爆ぜるファーヴニルLv.60だ。

 

 今回の目的はファーヴニル由来エンチャント一通りだ。ファーヴニル由来エンチャントは強力なものが揃っており、 ファーヴニルの焼尽の昂り爆ぜる秘宝を抱く悉く欲する灰燼に帰す は既に量産開始しているが、残りの 天の火を降らす富に呪われし幕無し猛撃の は持ち込み装備に付けていなかったので改めて狩りに来たのだ。

 

 トピアは周囲のリザードマンやゴブリンアーチャーを槍で蹴散らした後、双撃決闘者の装(フォーム・デュアル・デュエリスト)Mk.3を蒸着、悲願の罪の薬を飲んでファーヴニルに密着すると、居合斬りLv6を放った。27万ほどのダメージが入ってファーヴニルは横たわったまま息絶えた。

 まずファーヴニルLv.60のライフは島Lv0で15万、島Lv7で24万ほどになる。これを上回っているのだから一撃で倒せるのは計算通りだ。居合斬りにしてはダメージが低いのは、ファーヴニルは寝そべっている状態では本来の1/3から1/4程度のダメージしか入らないという事情による。しかしダメージが入らないわけではないので、これを考慮の上で居合斬りの威力で押し切ったというわけだ。

 

 それはそれとして困ったことが起きた。ファーヴニルが消えると同時に全く同じ位置に聖騎士(中央)がリポップしたのだ。何が困るって、これでは免罪符を使ってもファーヴニルを再召喚出来ないではないか。

 

封印を守護する上級聖騎士(中央)「ハッ、君は! いかん、いかんぞ、今からでも思いとどまるんだ! 奴を解き放ってはいけない!」

 

 しかも記憶は連続しているらしく、聖騎士は火を付けられて捕獲されるという酷い目に遭ったにもかかわらずその原因のトピアを説得しようとしたのだ。いい人過ぎて困るとはどういうことだ。

 困ったトピアはとりあえず討伐証明としてファーヴニルの逆鱗を手渡してみた。

 

封印を守護する上級聖騎士(中央)「ウッ! こ、これはファーヴニルの逆鱗!? まさか倒したとでも言うのか!?」

 

トピア「Exactly(そのとおりでございます)

 

封印を守護する上級聖騎士(中央)「集合ーッ!!」

 

 中央の聖騎士があらん限りの大声で号令をかけると、北と南の聖騎士も橋の中央に集まってきた。

 

封印を守護する上級聖騎士(北)「ウッ! 熱っ、あつ……熱くない……? 中央の、封印はどうなった?」

 

封印を守護する上級聖騎士(南)「ウッ! そうだ封印だ! あっ、君は!」

 

 特に最後に捕獲した南の聖騎士がダッシュで駆け寄ってきてトピアの手を取った。

 

封印を守護する上級聖騎士(南)「良かった、無事だったのか! 怪我は無いか!?」

 

トピア「アッハイ」

 

 しかもトピアがファーヴニルの封印を解いた張本人と分かっていながら怪我を心配してくれていた。聖騎士達がいい人過ぎて居心地の悪さにトピアは気分が悪くなった。

 

封印を守護する上級聖騎士(中央)「同志諸君、これを見てくれ。ファーヴニルの逆鱗だ」

 

封印を守護する上級聖騎士(北)「逆鱗だと? これを剥がされてあの竜が無事なわけはないな」

 

封印を守護する上級聖騎士(南)「一体あの悪しき竜はどこへ行ったんだ? まさか同志が倒したのか?」

 

封印を守護する上級聖騎士(中央)「我にも良く分からぬが倒されたようだ。淑女よ、何か知らないか?」

 

トピア「普通に居合斬りで一撃でしたよ。我がジークフリートに斬れぬものはありません」

 

 トピアは左手に持った 昂り爆ぜる 灰燼に帰す 炎の悪魔の ファーヴニルの ジークフリート改+99と右手に持った処刑人の黒幕たる 炎の悪魔の ファーヴニルの 早口な ジークフリート改+99を見せながら正直に答えた。

 ちなみにこれもヒルデブラント同様にファーヴニルの逆鱗を素材に使った武器だが、北欧の伝承において悪竜ファーヴニルを倒した英雄の名前が何を隠そうこのジークフリートだ。悪竜殺しの英雄の剣が2本もあって悪竜一匹を倒せぬはずもなし。

 聖騎士達はトピアの言葉に暫し固まった後、半信半疑の態度となった。

 

封印を守護する上級聖騎士(北)「いやいやそんなまさか……いや本当なのか?」

 

封印を守護する上級聖騎士(南)「だがこの淑女は我々をあっさり捕獲したのだ、全くの嘘というわけでもあるまい。それにあの2つの銘剣を見てみろ。とんでもない業物だぞ」

 

封印を守護する上級聖騎士(中央)「そう言えば何故捕獲されたはずなのに我らはここにいるのだ? 君が解放してくれたのか?」

 

トピア「いえ、ファーヴニルを倒したら復活しましたよ。捕獲済のプリズムはここにあります」

 

 トピアは聖騎士達が入ったモンスタープリズムを出して聖騎士達に見せた。

 

封印を守護する上級聖騎士(中央)「つまり我々はまた増えてしまったようだな」

 

封印を守護する上級聖騎士(北)「囚われの身になっても無意識に封印の任に戻ってくるとは、まさに我々の信念の賜物と言えよう」

 

封印を守護する上級聖騎士(南)「然り、然り」

 

 どうやらスミス達同様に聖騎士達も自身が複数存在することに慣れているようであった。大らかすぎる。そもそも便宜上北の、中央の、南の聖騎士と呼んでいるが、実際頭の上に表示されている名前には全く差違が無いし、インベントリ内でも捕獲済モンスタープリズムが同じ枠に入ってしまうので、彼らは元々同一人物なのかもしれない。一体どういうコンセプトの世界観なんだとトピアは内心頭を抱えたが、面倒な説明をしなくて良いのならばそれはそれでヨシとした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。