トピア「それで折角集まっていただいたので聖騎士の皆さんに相談なんですけど、私がファーヴニルを狩る間、封印を解いたままにしていただけませんか?」
はじまりの島の大橋の中央、今更ながらトピアは説得を試みた。
聖騎士三人が別々の場所にいてそれぞれ説得するのも移動させてからまとめて説得するのも時間が掛かりそうだからトピアは捕獲という手段に至ったのだが、まとめて揃っているなら話が早い。そもそも捕獲してもリポップすることが判明したので、捕獲も殺害も効率が悪すぎる。もしやるならこちらも3箇所に人員をそれぞれ配置してファーヴニルを討伐するたびに聖騎士を除去しなければならない。
封印を守護する上級聖騎士(北)「いやいや、それは出来ない相談……いや、倒せるならば根本的解決になるのか?」
封印を守護する上級聖騎士(南)「いやその前に既に倒したのなら封印を解いても何も出てこないのではないか?」
封印を守護する上級聖騎士(北)「それを確認するためには一度封印を解いてみる必要があるか……」
封印を守護する上級聖騎士(南)「悩ましいところだな」
封印を守護する上級聖騎士(中央)「淑女よ、一撃でとは言わぬが本当に倒せるのか?」
トピア「ええ、勿論です。見ていて下さい」
トピアはバトルヒムとマナサイフォンをかけ、武具研磨を5回、更に背水の陣、バーサークまで大盤振る舞いした。その状態で橋の中央のファーヴニル出現ポイントを目の前にして立ち止まり、左手で右腰にジークフリートを構えた。
その堂々とした佇まいに強烈な
封印を守護する上級聖騎士(中央)「良かろう。ここに悪竜の討伐者が現れたものと認め、我が名においてかの竜の封印を解除する!
封印を守護する上級聖騎士(北)「封印解除承認!」
封印を守護する上級聖騎士(南)「承認!」
聖騎士達の言葉とともにログにファーヴニルの封印が解除された旨が流れ、橋の中央にファーヴニルが出現した。
それと同時にトピアが一閃。
トピア「一文字流斬岩剣ッ!」
放つのは居合斬りLv6(Max)。
剣が当たった瞬間に出たダメージはわずか1。期待を遙かに下回るダメージ量にこれは再封印の必要が、と聖騎士達が動揺し始めた頃に納刀に入る。
トピア「……この世に斬れぬものは無し」
どこからともなく聞こえる鍔鳴りの音とともに一撃で200万ダメージを叩き込まれたファーヴニルは当然のように息絶えた。
知らなければいつ見ても心臓に悪い演出であった。
封印を守護する上級聖騎士(南)「これは……何という剣の冴え!」
封印を守護する上級聖騎士(北)「まさかあまりの鋭さに斬られたことに気付いていなかったというのか! 恐るべきは一文字流よ」
封印を守護する上級聖騎士(中央)「うむ、やはり我らの目に狂いは無かったようだな」
繰り返すが、ただの演出である。何しろ居合斬りは誰が使ってもこうなるのだから。
しかしこの世界のシームレス方式のスキルでは片手剣で居合斬りを使うことは不可能なので、片手剣使いの彼らには未知の神業にしか見えないのだろう。しかも折角人が見ているのだからとトピアが勝手な流派と技名を名乗ったものだから聖騎士達は大興奮だ。善良な上にかなり素直なようだ。
更なる誤解の原因として、聖騎士達は
トピア「といったところで、倒せるのには納得していただけたでしょうか?」
封印を守護する上級聖騎士(北)「無論である!」
封印を守護する上級聖騎士(南)「我らの心配は無用であったな!」
封印を守護する上級聖騎士(中央)「淑女よ、いや英雄よ! 歴史に残るであろうそなたの名前を教えてはくれまいか!」
トピア「名前ですか? 私はトピア・ポケクラフ。
封印を守護する上級聖騎士(中央)「その名、我が胸に刻んでおこう! 我が名は……我が名は? すまん、我が名は何だったかな?」
自らの名を名乗ろうとした聖騎士は、思い出せずに首を傾げた姿勢で固まり、同僚に助けを求めた。
雄々しきその名が最後まで判明しないアレかな、とトピアは危うくツッコみそうになった。
封印を守護する上級聖騎士(北)「はて、何だったかな? 我も知らぬ」
封印を守護する上級聖騎士(南)「いや知らぬのではない、我らは使命のために名を捨てたのだ」
封印を守護する上級聖騎士(北)「むっ、その解釈はアリだな! いつになく冴えているではないか同志!」
封印を守護する上級聖騎士(中央)「というわけで我々は使命のために名を捨てた聖騎士である。ウッ!」
結局思い出せずに妙な名乗りになった聖騎士はまた剣を顔の前に掲げていつもの奇声を上げた。
トピア「アッハイ。ところで気になってたんですがそのウッというのは?」
封印を守護する上級聖騎士(中央)「挨拶のかけ声だ」
封印を守護する上級聖騎士(北)「気合が入ること請け合いだぞ」
トピア「あ、そうなんですね」
どうやら酔っ払ってはいなかったようで一安心である。酔っ払ってもいないのに名前を思い出せないというのは却って症状が重いような気もするが。
トピアは女神的存在の雑な仕事のために名前すら設定されていない聖騎士達に同情したが、実際の所名前が設定されていないクラフトピア住民の方が多いので今更気にしても仕方が無い。この点においてはラリーの所の方が幾分ましだ。
トピア「じゃあもうちょっと狩りますのでもう暫くお付き合いお願いします」
封印を守護する上級聖騎士(北)「ふむ?」
トピア「アヌビス神の名において汝の罪を許す」
トピアがおもむろに悲願の罪の薬を飲み干し、インベントリから取り出したアヌビスの免罪符を読み上げると、今倒したばかりのファーヴニルがあっさり復活した。そのあとはいつものオモチツキである。
このはじまりの島のファーヴニルは希少な革、フェルトクロス、アダマン鉱石、コハク、ファーヴニルの逆鱗の最大5つのアイテムをドロップし、それぞれに最大4つのエンチャントがつく。 ファーヴニルの (新型はレアリティ変更)が確定でついてしまうので残りは3枠だが、それでも1回の討伐で12枠ものエンチャントがつくので、集まるペースは存外速い。
斯くしてトピアは効果時間63秒の間でファーヴニルを8回討伐し、必要なエンチャントを全て揃えることに成功した。
その僅か1分ばかりの間に聖騎士達はすっかり目が死んでいた。
ファーヴニル由来エンチャントが一通り付与1回分以上揃ったので、トピアは聖騎士達に礼を告げて帰途についた。
トピア「それではご協力ありがとうございました!」
封印を守護する上級聖騎士(北)「ああ、うむ、達者でな」
封印を守護する上級聖騎士(南)「やはり我々もまだまだということだな。使命も大事だが、せめて一人で悪竜を倒せるくらいにはならねば」
拠点に帰ったトピアはまず工房の隣に新たに設置したばかりの設備でガチャの結果を確認した。すると1つだけ目的の むらのある が出ていた。
ガチャをこれ以上繰り返さなくて良くなったことにトピアは安堵し、この むらのある エンチャントも含めた新しいエンチャント畑を作った。
このエンチャント畑を作る際にトピアはファーヴニル由来エンチャントの性能を確認した。以下の9つだ。
・旧 ファーヴニルの:地上移動速度+10%、与ダメージ+5%、換金額+20%
・新 ファーヴニルの:ライフ+5%、マナ+5%
レアリティが下がっただけでなく全く違うエンチャントになっており、レガシー版のような他に代えがたい特性が無くなっている。新型の方を使う機会は無いだろう。
・旧 焼尽の:アイテムクールダウン+7%、与ダメージ+10%、スキルによるライフ回復倍率-7%、スタミナ自然回復速度-7%、重複不可
・新 焼尽の:与ダメージ+10%、重複不可
副作用が全部消滅しており、プラス効果もそのままなのでレアリティが下がったにもかかわらず強化されている。今後は可能なら新型を使うべきだろう。
・旧 昂り爆ぜる:アイテムクールダウン+15%、与ダメージ+20%、スキルによるライフ回復倍率-15%、スタミナ自然回復速度-15%、重複不可
・新 昂り爆ぜる:与ダメージ+15%、重複不可
こちらもレアリティが下がっている。副作用が全部消滅して使いやすくなったのはいいのだが、新 焼尽の と違って肝心の与ダメージ増強効果がやや低下しており、甲乙付けがたいところだ。
・旧 秘宝を抱く:攻撃速度-5%、魔法クリティカル率+25%、マナ+450、重複不可、武器専用
・新 秘宝を抱く:マナ+450、重複不可、武器専用
攻撃速度低下は無くなったが同時に魔法クリティカル率+25%というかなりでかいプラス効果が消失している。レガシーエンチャント中心で魔法クリティカル率が余っているのなら新型の相性が良く、逆に新型エンチャント中心なら旧型の方が相性が良いという痛し痒しの性能だ。
・旧 悉く欲する:
・新 悉く欲する:マナの50%
満腹度消費が悪化しなくなったのは良いのだが、
・旧 灰燼に帰す:
・新 灰燼に帰す:近接スキル与ダメージ+25%、重複不可、武器専用
元々高レベルの攻撃力増強効果が付いていたのだが、近接スキル与ダメージに特化してしまった。
与ダメージ補正は装甲貫徹力に寄与しないので対BETA性能は低下したとも言える。
・旧 天の火を降らす:物理クリティカル率+20%、ライフ+500、マナ消費-15%、重複不可、武器専用
・新 天の火を降らす:物理与ダメージ上昇+25%、重複不可、武器専用
全く別の効果に変わってしまったが、物理クリティカル率+20%に加えライフ+500という唯一無二の効果が無くなったので実質弱体化と言える。
・旧 富に呪われし:
・新 富に呪われし:、魔法クリティカルダメージ+25%、重複不可、武器専用
副作用の
・旧 幕無し猛撃の:攻撃速度+5%、スキルクールダウン-5%、ライフの20%
・新 幕無し猛撃の:与ダメージ上昇+25%、重複不可、武器専用
全く別の効果になり、武器専用であることを除き新 昂り爆ぜる の上位互換になった。しかしライフの20%
まとめると新 焼尽の が明確に性能強化、新 富に呪われし が空回りアセン限定で性能強化となっているが、その他は全く別の性能になったりデメリットと相殺してマイルドになったり、やや性能低下したり、或いは単に価値をなくしたりしている。
注目は6種類もある武器専用エンチャントだ。武器専用エンチャントの殆どがファーヴニル由来で、他にあるのはタイラントスネークの 丸飲みする くらいのものだが、これは影響が少ない上に新旧で全く性能が変わっていなかった。
・新旧 丸飲みする:最大満腹度+10%、満腹度消費+10%、武器専用、スキル『暴食』Lv1
ファーヴニル由来とタイラントスネーク由来で併せて7つの武器専用エンチャントが存在するわけだが、一揃えの装備で双剣という例外を除いて所持する武器が一つである以上は新旧どちらかに統一しなければならない。ここで明確に強化された新 焼尽の が武器専用ではなく、旧 富に呪われし のデメリットも大したものではないので、新型エンチャントしか付けられない新型武器の採用機会は非常に限られると言える。
トピアは一定の結論を得たことで本日の業務を完了と見なし、あとは風呂に入って寝ることにした。
寝る直前になって、そう言えばカミールが以前見たという遺跡は結局ファーヴニルを復活させても倒しても再出現しなかったなと思い出した。