【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 29日ぶりですが、3つも評価を戴いてしまいました。ありがとうございます!
 いやまあ1つはマイナス評価だったんですが、つまらなかったなら仕方ないですね。


115. いやあ、やっぱコレだろコレ!

トピア「ラリーさん、ちょっといいですか?」

 

ラリー「お、何だ?」

 

 会議室を出ようとするラリーをトピアが呼び止めた。

 

トピア「聖騎士さん用の片手剣を見繕ってるんですけど、取り回しやすくて手に入りやすい物って何かありますか? 空回りアセン用で」

 

 空回りアセン用ということは攻撃力は低いほど良いということ。そして何故ラリーに頼んだかというと、武器に耐久値限界が無くなおかつレガシーエンチャントが乗るからだ。

 その辺りをすぐに理解したラリーの脳裏に、最適な武器の候補が閃いた。

 

ラリー「その条件なら……丁度いいのがあるぜ? ちょっと待ってな」

 

 にやりと笑みを見せたラリーはコアベース北西にある自分の工房スペースに小走りで行って、すぐに帰ってきた。

 

ラリー「俺のお勧めはこいつだ!」

 

聖騎士「ふむ、剣の柄だけ……?」

 

 ラリーが差し出したのは、一見すると剣の柄だけだった。

 

トピア「これはまさかライト」

 

ラリー「そう、ご存じフェーズブレード(Phaseblade)だぜ! 材料のダイヤモンド(Diamond)メテオライト(Meteorite)ももう量産が始まってるからな」

 

トピア「なるほどそれは丁度良かったですね。聖騎士さん、剣を構えて柄のスイッチを押してみて下さい。くれぐれも覗き込まないように」

 

聖騎士「うむ、承知した。……おおッ!?」

 

 聖騎士が柄のスイッチを押し込むと、柄から白い光の刃が伸びた。

 

トピア「聖騎士に光の剣! 流石分かってますねラリーさん!」

 

ラリー「いやあ、やっぱコレだろコレ!」

 

 光の剣の同好の士がこの見た目装備に使い道があって良かったと談笑しているが、聖騎士の心中はそれどころではなかった。見たこともない武器を当たり前のように作って即手渡されるこの異常な環境。まさにここが人類の砦に違いない。

 聖騎士は人々を守るために自ら望んで神々の戦いに参加する喜びに打ち震えた。

 その様子にトピアとラリーは気付いていなかったが、後ろで見ていたカミールはまたなんかすれちがってるなと無言で眺めていた。

 一方シュミットはカミールの頭の上から自分で作ったことがない武器に興味の目を向けていた。レガシークラフトピア世界にもレーザーセイバーII~IIIという同様の武器はあったのだが、宝箱からドロップするだけで作ることは出来なかったのだ。なおIは何故か存在しない。

 

トピア「じゃあ行きましょうか」

 

聖騎士「どこまでも!」

 

トピア「うん? テンション高いですね。やる気があるのは良いことです」

 

 

 

 会議室を出たトピアはカミール、シュミット、聖騎士を連れて自分の工房に入った。聖騎士が仕事を出来るようにするため、当面使う装備一式を作るのだ。

 さしあたっての問題は聖騎士の基礎ステータスだ。ライフは11,820と圧倒的、攻撃力(ATK)も298と悪くないのだが、何と防御力(DEF)がたったの7しかない。

 そのフルプレートアーマーは飾りかと言いたくなるようなステータス配分だが、装備を全て外したらステータスが激変した。どういうことかとアイテムの詳細を見てみると、以下のようになっていた。

 

・聖騎士の剣:攻撃力(ATK)+64%

・聖騎士の兜:防御力(DEF)-30%、ライフ+900%

・聖騎士の鎧:防御力(DEF)-30%、ライフ+1000%

・聖騎士の盾:防御力(DEF)-30%、ライフ+1000%

※後で判明したが、聖騎士が『盾の半面』Lv4を習得していたため、新型盾全てにつく隠しパラメータである攻撃力(ATK)-20%を打ち消していた

 

 これらを外した聖騎士Lv.60のステータスは、攻撃力(ATK)182、防御力(DEF)69、ライフ394。図鑑やミッション報酬を除いた素の理想郷の建設者(クラフトピアン)Lv.60の攻撃力(ATK)182、防御力(DEF)64、ライフ395と殆ど同じであった。

 

トピア「装備自体にエンチャントみたいな倍率効果が付いてますね。初めて見ましたよこんなの」

 

聖騎士「うむ、いざというときに敵を食い止められるように設計されているようだぞ」

 

トピア「素のライフが1万だったら結構とんでもないことになってたんですが……まあいいです、とりあえず剣と兜と鎧と盾を別のに交換しましょう」

 

聖騎士「全部ではないか!?」

 

カミール「まあ言うだろうと思ったよ」

 

シュミット≪トピアちゃんならそういう無慈悲なこと言うわよね≫

 

 装備全交換は聖騎士にとってはショックなようだが、カミールとシュミットは大体予想出来ていたようだ。理解度が高い。

 

トピア「これから空回りアセンを組むのに装備の基礎防御力(DEF)が低すぎますし、新型エンチャントしか付けられない武器と盾も問題です。これでは攻撃力(ATK)が足りなくなります」

 

聖騎士「しかし聖騎士の装備一式を捨ててしまうと、もはや聖騎士とも名乗れなくなる気がするのだが……?」

 

カミール「では重ね着で見た目だけ聖騎士装備にするのはどうだ? 装備を変更するたびに見た目が戻ってしまうのが難点だが」

 

トピア「それで行きましょう。装備の性能が変わっただけと思えばいいのです」

 

聖騎士「むう……」

 

 折角聖戦に参加するのに装備の中身が聖騎士とはまるで別のコスプレ聖騎士状態になるのはやはり抵抗があるようで、折角上がったテンションも下がり気味であった。

 

トピア「あと、聖騎士さんは鎧袖一触を会得してるはずですよね? スキルレベルは幾つですか?」

 

聖騎士「確か6の筈だな」

 

トピア「それは素晴らしい。ええと、レガシースキルに比べるとTierが4から5に上がって、最大レベルが3から6になって、最大威力と消費マナは同じで……クールダウンが45秒から60秒に延びてるんですね。よし、これを活かす方向で行きましょう」

 

 トピアはエンチャントシミュレーターで新型の鎧袖一触の性能を確認してスキルセットの方針を決めた。

 

聖騎士「ふむ、我が剣技を活かす事は出来るのだな?」

 

トピア「それを活かさないなんてとんでもない。正直理想郷の建設者(クラフトピアン)の権能を持ってない人の中ではぶっちぎりの最強だと思いますよ聖騎士さん。鍛えれば自力でスキルを習得出来るとはアヌビス様も仰ってましたが、まさかTier5を極めてる人がいるとは思ってませんでしたし」

 

聖騎士「しかし、あの悪竜に一人で立ち向かえない程度なのだぞ?」

 

トピア「それは単純に装備が悪いだけです。そしてそれを改善して一線級の戦力にしようというのが今やっていることです。……よし出来ました。設計方針と一緒に説明しますので、まずは性能を見てみて下さい」

 

聖騎士「何と、もう出来たのか?」

 

トピア「シュミットさんに手伝ってもらいました。わざわざ仕事を中断してエンチャントシミュレーターを使わせてもらってますからね。手早くやらないと」

 

シュミット≪特急仕上げだわよ≫

 

 トピアが提示したのは以下のプランだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

トピア「基本的には空回りアセンで、性能の高い新型装備や一部の新型エンチャント、新型スキルを組み合わせてみました」

 

カミール「さすがは本職だな。攻防ともにバランスがいい」

 

 カミールの装備と比べると防御力(DEF)が若干低く、一撃の攻撃力が高くDPSが低めになっている。

 

聖騎士「装備にスキルを付けられるのか。今の状態より遥かにパワーアップするのは分かるのだが、装備に鎧袖一触が2つもついているのはどういうことなのだ? 元から使える技と言ったはずなのだが……」

 

トピア「これは並列クールダウン法ですね」

 

聖騎士「並列クールダウン法?」

 

トピア「はい。例えば10秒に1回使えるスキルが自前で使えて更に装備に2つ付いていると、クールダウンがそれぞれ独立しているので10秒に3回使えます。3倍ペースですよ」

 

聖騎士「なるほど、我が鎧袖一触を活かすとはそういう意味であったか。納得であるな」

 

トピア「それで、聖騎士さんが使える新型鎧袖一触がクールダウン60秒、装備に付けた旧型鎧袖一触のクールダウンが45秒なので、これをエンチャントとスキルファイターで元の22.5%まで縮めてそれぞれ13.5秒と10.125秒。逆数にして1秒に使える回数にすると0.0741回/秒と0.0988回/秒で、0.0741×1+0.0988×2=0.272回/秒になります。これが右下の基本秒間攻撃の数字ですね」

 

聖騎士「ふむ……?」

 

 聖騎士は22.5%のあたりから計算について行けていない様子であった。数日前までのはじまりの島の文明レベルでは算術が発達しているはずがないので仕方ない。

 

トピア「要するに装備の機能と並列を駆使すれば4秒に1回くらい使えるということです」

 

聖騎士「ふむ、それはすごいな。それでこの居合斬りというのは?」

 

トピア「『居合斬り』はファーヴニルを一撃で倒したあの技ですが、これの攻撃力を最大限引き出すためには装備全体を攻撃力(ATK)に偏らせないといけない上に、単体にしか当たらない攻撃なので集団戦に向いていません。私は瞬時に装備を切り替えることが出来るのでどうとでも出来ますが、その切り替えのための装置が1つしかありません。そこで代わりに使えるのが聖騎士さんも会得している『鎧袖一触』です。こちらは普通のスキルですのでステータスを偏らせる必要もありません」

 

聖騎士「……一文字流斬岩剣ではなかったのか?」

 

トピア「それは防御力(DEF)が0になるまで攻撃力(ATK)バフをかけた状態の一撃を私が勝手にそう呼んでいるだけです。そういう意味でもあれはあまりお勧め出来ません」

 

聖騎士「そういうものか……つまり1つの装備で戦っていくのなら汎用性を確保すべきなのでこうなったということだな?」

 

トピア「Exactly(そのとおりでございます)。そしてこの装備の防具を限界まで精錬強化するとこうなります」

 

 

【挿絵表示】

 

 

聖騎士「防御力(DEF)だけでなく攻撃力(ATK)もこんなに上がるのか……!?」

 

トピア「ええ、防御力(DEF)依存空回りアセンとはそういうものですので、元の装備では攻撃力(ATK)が足りなくなると言ったのです」

 

聖騎士「……むう、折角戦場に立っても足手まといでは騎士の名折れ、その上で鍛えた剣技は使えるのであれば今までの鍛錬も無駄ではない、か」

 

トピア「どうしてもと言うのであれば、鎧と兜は元の装備に戻してもいいですが」

 

 最も問題なのは新型エンチャントしか乗らない剣と盾なので、防御力(DEF)を割合で下げる代わりにライフを増強する鎧と兜はまあ妥協出来る。

 

聖騎士「いや、配慮は有難いが全てこのプランでやっていただきたい!」

 

トピア「分かりました! では私がエンチャントを付けていきますので、聖騎士さんは隣の新型の熟練工の精錬所……ボックス2つの方で、私がエンチャントを付け終わった装備から精錬を始めて下さい。カミールさんとシュミットさんは昨日の続きをお願いします」

 

 幸い全ての装備が★9以下なので量産可能な精錬石だけで精錬を行うことが出来る。量産開始から半日以上の時間が経っているため、精錬石の在庫も潤沢だ。

 

カミール「分かった」

 

シュミット≪張り切っちゃうだわよ≫

 

聖騎士「この設備で……? いや、何となく使い方が分かるな?」

 

トピア「教化の影響ですね……っと、もうプランテラの討伐が終わったようですね。さすがラリーさん仕事が早い」

 

 トピアの眼前にはいつものミッション達成通知が出ていた。

 

外敵駆除

プランテラ(Plantera)を1体倒す

Clear

Get!

EXP +2,000

レベル上限解放 +1

 

カミール「おや、ワタシにも通知が出るようになったぞ?」

 

トピア「ああ、理想郷の建設者(クラフトピアン)に準じる権能の効果がここにも出ましたか。カミールさんも鍛えれば強くなりそうですね」

 

カミール「あまりその方面は望んでいないんだがな」

 

シュミット≪カミールちゃんは頭脳労働担当だものね≫

 

トピア「分かってますよ」

 

 そんな雑談をしながらトピアがエンチャント付与を続けていると更に通知が来た。

 

外敵駆除

ゴーレム(Golem)を1体倒す

Clear

Get!

EXP +2,000

レベル上限解放 +1

 

カミール「立て続けに来たな」

 

トピア「お、ついでにゴーレムも行きましたか。そう言えば同じ地下ジャングルにいると言ってましたっけ」

 

 ゴーレム討伐の影響は何だったか、と記憶をひねり出しながらエンチャント付与を終えてもう一台の熟練工の精錬所で精錬作業を始めたところで中断から30分となり、通信会議が再開となった。

 なおスキル付与はラッシュ銀貨が足りないので後回しだが、聖騎士が戦力化出来ればラッシュ銀貨稼ぎも捗るだろう。

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