いやまあ1つはマイナス評価だったんですが、つまらなかったなら仕方ないですね。
トピア「ラリーさん、ちょっといいですか?」
ラリー「お、何だ?」
会議室を出ようとするラリーをトピアが呼び止めた。
トピア「聖騎士さん用の片手剣を見繕ってるんですけど、取り回しやすくて手に入りやすい物って何かありますか? 空回りアセン用で」
空回りアセン用ということは攻撃力は低いほど良いということ。そして何故ラリーに頼んだかというと、武器に耐久値限界が無くなおかつレガシーエンチャントが乗るからだ。
その辺りをすぐに理解したラリーの脳裏に、最適な武器の候補が閃いた。
ラリー「その条件なら……丁度いいのがあるぜ? ちょっと待ってな」
にやりと笑みを見せたラリーはコアベース北西にある自分の工房スペースに小走りで行って、すぐに帰ってきた。
ラリー「俺のお勧めはこいつだ!」
聖騎士「ふむ、剣の柄だけ……?」
ラリーが差し出したのは、一見すると剣の柄だけだった。
トピア「これはまさかライト」
ラリー「そう、ご存じ
トピア「なるほどそれは丁度良かったですね。聖騎士さん、剣を構えて柄のスイッチを押してみて下さい。くれぐれも覗き込まないように」
聖騎士「うむ、承知した。……おおッ!?」
聖騎士が柄のスイッチを押し込むと、柄から白い光の刃が伸びた。
トピア「聖騎士に光の剣! 流石分かってますねラリーさん!」
ラリー「いやあ、やっぱコレだろコレ!」
光の剣の同好の士がこの見た目装備に使い道があって良かったと談笑しているが、聖騎士の心中はそれどころではなかった。見たこともない武器を当たり前のように作って即手渡されるこの異常な環境。まさにここが人類の砦に違いない。
聖騎士は人々を守るために自ら望んで神々の戦いに参加する喜びに打ち震えた。
その様子にトピアとラリーは気付いていなかったが、後ろで見ていたカミールはまたなんかすれちがってるなと無言で眺めていた。
一方シュミットはカミールの頭の上から自分で作ったことがない武器に興味の目を向けていた。レガシークラフトピア世界にもレーザーセイバーII~IIIという同様の武器はあったのだが、宝箱からドロップするだけで作ることは出来なかったのだ。なおIは何故か存在しない。
トピア「じゃあ行きましょうか」
聖騎士「どこまでも!」
トピア「うん? テンション高いですね。やる気があるのは良いことです」
会議室を出たトピアはカミール、シュミット、聖騎士を連れて自分の工房に入った。聖騎士が仕事を出来るようにするため、当面使う装備一式を作るのだ。
さしあたっての問題は聖騎士の基礎ステータスだ。ライフは11,820と圧倒的、
そのフルプレートアーマーは飾りかと言いたくなるようなステータス配分だが、装備を全て外したらステータスが激変した。どういうことかとアイテムの詳細を見てみると、以下のようになっていた。
・聖騎士の剣:
・聖騎士の兜:
・聖騎士の鎧:
・聖騎士の盾:
※後で判明したが、聖騎士が『盾の半面』Lv4を習得していたため、新型盾全てにつく隠しパラメータである
これらを外した聖騎士Lv.60のステータスは、
トピア「装備自体にエンチャントみたいな倍率効果が付いてますね。初めて見ましたよこんなの」
聖騎士「うむ、いざというときに敵を食い止められるように設計されているようだぞ」
トピア「素のライフが1万だったら結構とんでもないことになってたんですが……まあいいです、とりあえず剣と兜と鎧と盾を別のに交換しましょう」
聖騎士「全部ではないか!?」
カミール「まあ言うだろうと思ったよ」
シュミット≪トピアちゃんならそういう無慈悲なこと言うわよね≫
装備全交換は聖騎士にとってはショックなようだが、カミールとシュミットは大体予想出来ていたようだ。理解度が高い。
トピア「これから空回りアセンを組むのに装備の基礎
聖騎士「しかし聖騎士の装備一式を捨ててしまうと、もはや聖騎士とも名乗れなくなる気がするのだが……?」
カミール「では重ね着で見た目だけ聖騎士装備にするのはどうだ? 装備を変更するたびに見た目が戻ってしまうのが難点だが」
トピア「それで行きましょう。装備の性能が変わっただけと思えばいいのです」
聖騎士「むう……」
折角聖戦に参加するのに装備の中身が聖騎士とはまるで別のコスプレ聖騎士状態になるのはやはり抵抗があるようで、折角上がったテンションも下がり気味であった。
トピア「あと、聖騎士さんは鎧袖一触を会得してるはずですよね? スキルレベルは幾つですか?」
聖騎士「確か6の筈だな」
トピア「それは素晴らしい。ええと、レガシースキルに比べるとTierが4から5に上がって、最大レベルが3から6になって、最大威力と消費マナは同じで……クールダウンが45秒から60秒に延びてるんですね。よし、これを活かす方向で行きましょう」
トピアはエンチャントシミュレーターで新型の鎧袖一触の性能を確認してスキルセットの方針を決めた。
聖騎士「ふむ、我が剣技を活かす事は出来るのだな?」
トピア「それを活かさないなんてとんでもない。正直
聖騎士「しかし、あの悪竜に一人で立ち向かえない程度なのだぞ?」
トピア「それは単純に装備が悪いだけです。そしてそれを改善して一線級の戦力にしようというのが今やっていることです。……よし出来ました。設計方針と一緒に説明しますので、まずは性能を見てみて下さい」
聖騎士「何と、もう出来たのか?」
トピア「シュミットさんに手伝ってもらいました。わざわざ仕事を中断してエンチャントシミュレーターを使わせてもらってますからね。手早くやらないと」
シュミット≪特急仕上げだわよ≫
トピアが提示したのは以下のプランだ。
トピア「基本的には空回りアセンで、性能の高い新型装備や一部の新型エンチャント、新型スキルを組み合わせてみました」
カミール「さすがは本職だな。攻防ともにバランスがいい」
カミールの装備と比べると
聖騎士「装備にスキルを付けられるのか。今の状態より遥かにパワーアップするのは分かるのだが、装備に鎧袖一触が2つもついているのはどういうことなのだ? 元から使える技と言ったはずなのだが……」
トピア「これは並列クールダウン法ですね」
聖騎士「並列クールダウン法?」
トピア「はい。例えば10秒に1回使えるスキルが自前で使えて更に装備に2つ付いていると、クールダウンがそれぞれ独立しているので10秒に3回使えます。3倍ペースですよ」
聖騎士「なるほど、我が鎧袖一触を活かすとはそういう意味であったか。納得であるな」
トピア「それで、聖騎士さんが使える新型鎧袖一触がクールダウン60秒、装備に付けた旧型鎧袖一触のクールダウンが45秒なので、これをエンチャントとスキルファイターで元の22.5%まで縮めてそれぞれ13.5秒と10.125秒。逆数にして1秒に使える回数にすると0.0741回/秒と0.0988回/秒で、0.0741×1+0.0988×2=0.272回/秒になります。これが右下の基本秒間攻撃の数字ですね」
聖騎士「ふむ……?」
聖騎士は22.5%のあたりから計算について行けていない様子であった。数日前までのはじまりの島の文明レベルでは算術が発達しているはずがないので仕方ない。
トピア「要するに装備の機能と並列を駆使すれば4秒に1回くらい使えるということです」
聖騎士「ふむ、それはすごいな。それでこの居合斬りというのは?」
トピア「『居合斬り』はファーヴニルを一撃で倒したあの技ですが、これの攻撃力を最大限引き出すためには装備全体を
聖騎士「……一文字流斬岩剣ではなかったのか?」
トピア「それは
聖騎士「そういうものか……つまり1つの装備で戦っていくのなら汎用性を確保すべきなのでこうなったということだな?」
トピア「
聖騎士「
トピア「ええ、
聖騎士「……むう、折角戦場に立っても足手まといでは騎士の名折れ、その上で鍛えた剣技は使えるのであれば今までの鍛錬も無駄ではない、か」
トピア「どうしてもと言うのであれば、鎧と兜は元の装備に戻してもいいですが」
最も問題なのは新型エンチャントしか乗らない剣と盾なので、
聖騎士「いや、配慮は有難いが全てこのプランでやっていただきたい!」
トピア「分かりました! では私がエンチャントを付けていきますので、聖騎士さんは隣の新型の熟練工の精錬所……ボックス2つの方で、私がエンチャントを付け終わった装備から精錬を始めて下さい。カミールさんとシュミットさんは昨日の続きをお願いします」
幸い全ての装備が★9以下なので量産可能な精錬石だけで精錬を行うことが出来る。量産開始から半日以上の時間が経っているため、精錬石の在庫も潤沢だ。
カミール「分かった」
シュミット≪張り切っちゃうだわよ≫
聖騎士「この設備で……? いや、何となく使い方が分かるな?」
トピア「教化の影響ですね……っと、もうプランテラの討伐が終わったようですね。さすがラリーさん仕事が早い」
トピアの眼前にはいつものミッション達成通知が出ていた。
外敵駆除
Clear
Get!
EXP +2,000
レベル上限解放 +1
カミール「おや、ワタシにも通知が出るようになったぞ?」
トピア「ああ、
カミール「あまりその方面は望んでいないんだがな」
シュミット≪カミールちゃんは頭脳労働担当だものね≫
トピア「分かってますよ」
そんな雑談をしながらトピアがエンチャント付与を続けていると更に通知が来た。
外敵駆除
Clear
Get!
EXP +2,000
レベル上限解放 +1
カミール「立て続けに来たな」
トピア「お、ついでにゴーレムも行きましたか。そう言えば同じ地下ジャングルにいると言ってましたっけ」
ゴーレム討伐の影響は何だったか、と記憶をひねり出しながらエンチャント付与を終えてもう一台の熟練工の精錬所で精錬作業を始めたところで中断から30分となり、通信会議が再開となった。
なおスキル付与はラッシュ銀貨が足りないので後回しだが、聖騎士が戦力化出来ればラッシュ銀貨稼ぎも捗るだろう。