ラリーが持ってきた
まあトピアとスコアは何となく変形ボタンではと思っていたのだが。
ラリー「よし、ここで実演してみせるぜ」
ラリーがアタッシュケースに付いた青く光る怪しげなボタンを押すと、ケースが開いて明らかに中に入るはずがない機械が展開した。
それはお椀状の受け皿の上に操縦席とペダル、操縦桿を形成し、更にお椀の前から後ろにかけて取っ手状の半円形レールとそのレール上を動く何かのモジュールが出てきて展開完了となった。
聖騎士「おお、これは……」
スコア「メカの展開は良かったが、最終的な形状はバスケットのようだな」
トピア「あと正面が見づらそうですね」
丁度真正面を半円形レールが塞いでいるので、旧ザクのように真正面が見えなくなっているのだ。レールがそれほど太くないのが救いだろうか。
ラリー「いやまあ、俺もそう思わなくはないんだが。兎に角これが展開した状態の
ラリーが
ラリー「……とまあ、こんな感じでな。これで空中を自在に移動しながら8本の光線で同時採掘出来るからペースは上がるはずだぜ」
トピア「おお、これは採掘用と言うだけのことはありますね」
ラリー「ただ使用上の注意点があるからよく聞いてくれ。こいつに乗ってる間は手足が自由にならねえから基本的に戦闘もアイテムの使用も出来ねえ。一旦降りてから迎撃する必要があるのを念頭に置いてくれ」
スコア「なるほど」
ラリー「あとこっからはスコアには既に説明したが、上側が砂の場合は俺が掘っても普通に落ちてきて生き埋めにされるから、自分の真上はなるべく掘るなよ」
聖騎士「うむ」
ラリー「それから地下には
トピア「メカデューサ以外に普通のメデューサもいたんですね」
聖騎士「つまりどう対処すればいいのだろうか?」
ラリー「フフフ、こんなこともあろうかと耐性装備を昨日から用意しておいたんだぜ。それがこの
トピア「あ、昨日夕食後に養殖施設で集め始めてたのはそれですか」
スコア「正確には少し違うな」
ラリー「ああ、
トピア「はー、そんな感じになってるんですね」
ラリー「というわけで、アクセサリを一つ外して
トピア「聖騎士さんの場合は外すのは むらっけのある むらのある 万古の すいすい万能のアミュレットLv1改+99ですね」
聖騎士「ふむ」
新しく加入したばかりの聖騎士には今ひとつ理解出来ていなかったが、とりあえずやるべき手順には頷いていた。
空回りアセンは組み方によっては装備の一部を変更するだけで基礎
スコア「それで、そのドリルユニットの操作方法は? 見た感じコアユニットなどに近いようだが」
操縦インターフェイスは操縦桿2つにペダル2つで、
ラリー「いや実は結構違ってな。左スティックで前後左右移動、右スティックで左右旋回とレーザードリルモジュールのレール上下移動、左ペダルで下移動、右ペダルで上移動になってる。あとは左右のトリガーで半分ずつレーザードリル発射だ」
スコア「似ているのに全く違う操作方法というのが却ってややこしいな」
ラリー「だろ?」
つまりラリーのツインスティック順応が比較的遅い方だったのはこれが原因であった。
ラリー「ただこれ、ここのトグルスイッチで操作方法が変わるらしくてな。俺は使ったことなかったが、大体コアユニットと同じ操作体系になるそうだぞ。トピア試してみるか?」
トピア「やってみましょう」
ラリーに席を譲られたトピアがトグルスイッチで操縦方法を切り替えて
トピア「おお、これは確かにツインスティック操作ですね。この場合ペダルでレーザードリルモジュールの上下移動ですか」
スコア「私達にはこっちの操作方法が良さそうだな。聖騎士卿もこっちで慣れておいた方がいいぞ。後で習うコアユニットと一緒だからな」
聖騎士「承知した。……聖騎士卿か。何だかむず痒いであるな」
スコア「いや貴方の覚悟には感銘を受けたのだ。名を捨ててまで使命に殉じるなどなかなか出来ることではない」
テクス≪然り、まこと騎士の鑑でござる≫
聖騎士「ウッ!?」
今更名前を覚えていないだけとは言えない聖騎士である。
だがこれは聖騎士が忘れっぽいのではなく女神的存在が名前を設定していないのが原因なので、トピアもわざわざネタばらしをする必要性を感じていなかった。
トピア「それで今日はこの穴というか溝の続きを掘っていくわけですね?」
トピアが言う通り、この現場には既に境界線上にそれなりの深さの溝が掘られていた。溝の内側には赤い草木や茨が繁茂しており、溝の外側は普通の環境になっていた。下の方を覗き込んでみると恐らく鉄の構造補強ブロックも配置されている。昨日夜から作業が始まっているのである程度は進んでいるようだ。
ラリー「おう、この溝に沿って大陸中央側に向かって斜め円筒形に
トピア「割り振りはどうします?」
ラリー「西側から掘り始めて、時計回りに1周ずつ境界を掘っていく。俺、スコア、トピア、聖騎士の順に出発して、一つ前に出発した奴の一段下を掘り進む形だ」
何故西側からかと言うと、ジャングルに設置した仮拠点から東に向かって白の森の西の端に仮拠点を設置していたためである。
トピア「概ね大根の皮を剥くような感じですね?」
ラリー「それでOKだ。じゃあ渡しておいた
聖騎士「承知した」
トピア「あと掘削で結構音が出ると思うのでスコアさんは昨日の作業報告を先にして下さい。私も暫くマイクをOFFにします」
スコア≪分かった。昨日の活動は主にBETAの死骸の資源還元だな。ファムに手伝ってもらって、現状ある分は全て資源化を完了したぞ。黒鉛の在庫が大分だぶついてしまったが、G元素が工場長の研究に役立ったようで何よりだ≫
トリオ≪うむ、あれは助かったぞい。次回は自動で回収出来るように建設ロボットにルーチンを組んでおくからの≫
基本的にものを運ぶのは物流ロボットの担当なので言い間違いのようにも聞こえるが、物流ロボットが運ぶのはチェストとチェストの間であり、伐採と障害物の回収は建築準備の整地と見なされ、建設ロボットの担当なのでこれで合っている。
マイン≪黒鉛が余っているのなら我の方で使わせてもらおう≫
テクス≪それならすぐに使い切れそうでござるな≫
マインの方でもあらゆる用途で使うわけではないのだが、
スコア≪それが終わってまだ時間があったのでラリーの方の汚染地域隔離作業を手伝いに行った。というわけでラリー報告頼む≫
ラリー≪おう、はえーな。俺の方は大体第2
スコア≪ということはモディファイアの付与が可能になったのか?≫
ラリー≪そうだ。だが付与がランダムだからかなり金が掛かるぞ。自動農園のリンゴを持ち出して資金にするといい≫
トピア「これで装備が最終仕様に近づきますね」
ラリー≪あと
サティ≪確か外部インベントリの最後の1種類だったわね≫
ラリー≪住民の人数が増えたことで自動的に
テクス≪海賊? それは本当に仲間なのでござるか?≫
ラリー≪まあ加入とは別に
マイン≪やっぱり敵ではないか!?≫
ラリー≪あー、言い方が悪かったか? 入居した
トピア「でも海賊なんですよね?」
スコア≪現役の海賊ではなあ≫
ラリー≪んん? 入居した
どうも話が噛み合わない。ラリー達の敵味方判定は他の
サイボーグのゼータ≪
スチームパンカーのホープ≪あの船長さんは『海の上では出来る人』って感じなんだけどねえ?≫
トピア「今のフォロー的な発言で逆に問題が増えたんですけど、サイボーグさん達は信用して大丈夫なんですか? 海賊さんとオトモダチなんですよね?」
マイン≪貴様何故現役海賊の友を重要な仕事に推したのだ?≫
ラリー≪いや、それを言い始めると誰とでも仲がいい
テクス≪実際やっと仕事が進み始めた今抜けられると困るのでござるが、信用が怪しいとなると話は別でござるよ?≫
サティ≪どうも壊れた通信機を売却したあたりから話が噛み合わないのだけれど、ラリーには何か確実な敵味方判別手段があるの?≫
ラリー≪あるぜ? テラリアンにはフレンドリーファイア防止能力があるからな。俺が
サティ≪えっ≫
トピア「思ったよりハードかつ明確な判別手段ですね……?」
敵と判定されたらまず生き残ってはいないということだ。明確である。
判定方法がやや魔女裁判じみてはいるが、確実ならば文句は無い。
トリオ≪まあええわ、とりあえずその海賊は重要区画に入れるんじゃないぞ≫
ラリー≪分かったぜ。それと折角釣りをやってくれる人員が入ったんで、釣り堀を整備して
テクス≪……その釣り人は釣ってくれないんでござるか?≫
ラリー≪名前に反してあいつは釣ってこいと命令するだけの奴だ。報酬はまあ美味しいんだが、態度が最悪でな。どうだファム、問題無くやってるか?≫
ファム≪うっ……大丈夫です、頑張れます!≫
それは誰が聞いても大分無理しているのが分かる返答であった。
ラリー≪大分やられてんな。あいつは要求と報酬以外は全部無視していいぞ。それでも辛ければ依頼達成30回で一旦打ち切って普通の釣りだけしてくれ。固定報酬は30回目までだからな≫
ファム≪わかりました……≫
サティ≪ちょっと待って、一日でこれだけ疲弊するってどんな相手なの?≫
トピア「ファムさん、手順通り録画しました?」
ファム≪はい≫
ファムが録画しておいた映像を再生すると、通信ディスプレイに少年の顔が映った。
サティ≪あら、男の子?≫
釣り人スタイルで帽子を被った少年という少々予想を外した姿に
釣り人のボビー≪ボクはサカナが欲しい人。キミはサカナを釣ってくる人。質問は?≫
釣り人のボビー≪おいおい! キミには苦労させられるよ。できないなんて言わないよね!≫
釣り人のボビー≪ねえ!キミは本当に今までで一番有能なパシり……釣り名人だよ!≫
釣り人のボビー≪ボビーにはキミが必要なんだ! この世界公認のパシリとして!≫
釣り人のボビー≪ボクは7もの驚くほど凄いサカナを持っている!? キミがパシリとして、少しは役に立ってるってことだね!≫
釣り人のボビー≪うわー! キミには8回くらい手を焼かされたよ! 毎回のクールなサカナがなければ腹が立っていたところさ!≫
釣り人のボビー≪ワオ! ボクの期待に応えて生き延びたんだね! さっすがー。じゃ、それをこっちによこして、行っていいよ≫
釣り人のボビー≪終わった? なら、偉大なるボビーサマはキミをクビにする!≫
マイン≪おい、こいつバラバラに引き裂いていいか?≫
マインの発言はストレートすぎたが、苛立ちを端的に現していた。
普段のマインの発言も大概傲慢だが、
サティ≪それは言い過ぎにしても、可愛げの欠片も無いわね≫
テクス≪でござるなあ≫
トリオ≪しかしこれで味方判定なのか?≫
ラリー≪こいつなあ、発言はひでえし悪戯もするんだが、ギリギリ敵判定されねえラインを絶妙に突いてくるんだよ。
スコア≪タチが悪すぎる。親の顔が見たいレベルの性格の悪さだな≫
ラリー≪あー、すまん、それは言わねえでやってくれ。あいつ親がいねえらしいんだ≫
スコア≪それはその……扱いづらいな≫
ラリー≪だから一層ストレスが溜まるんだよ≫
通信会議を気まずさが支配した。親がいるのであればどんな育て方をしたんだという話にもなるのだが、いないのであればまともに育てられていないからこうなったという配慮すべき事情が成立してしまう。かといってこの性格では安易に甘やかせば調子に乗るのが目に見えているわけで、扱いづらいにも程がある。
しかしトピアがその空気をぶった切った。
トピア「ん? つまり私は何を言っても構わないわけですね?」
サティ≪トピア?≫
トピア「だって私も親の顔なんて知りませんからね!」
突然の爆弾発言であったが、トピアは笑顔で平然と言い切った。
ラリー≪……似たような境遇でも性格が大分違うな?≫
性格が悪いわけではないがトピアの方も色々おかしいため、ラリーはそれを「違う」と表現した。
スコア≪流石はトピアさんだな≫
サティ≪貴女苦労したのね……≫
トピア「いえ、大体師匠のお陰です。
テクス≪相変わらずの大活躍ぶりでござるな師匠殿は≫
師匠に出会う前のトピアは人間不信全盛期だったので、案外それほどの差は無かったかもしれない。つまりすごいのは師匠なのだとトピアは益々尊敬の念を高めた。
トピア「それであの人を舐めきったお子様の対処に困ったら私に相談していただくとして、ファムさん、コバルトの盾ってもう釣れました?」
ファム≪いえそれが、監獄の木箱というのは50個くらい釣れたんですが、今のところ一つも≫
スコア≪運が悪かったのか?≫
ラリー≪あーいや、説明が足りてなかったな。その
スコア≪つまり全部解錠すれば7つ前後手に入ることになるな。十分な成果だ≫
ラリー≪あと1/7で一緒に出てくる
トピア「お、ゼニスの材料ですか。それは見逃せませんね」
ラリー≪とは言ってもあと14種類の剣が必要だから先は長えぞ。困ったことに
トピア「他はともかく
ラリー≪俺の報告はそんなところだな。じゃあ気合入れて隔離作業すんぞー≫
トピア「はい、ありがとうございました。他に何か報告や質問はありますか? ……無いですね。本日の会議終了です。お疲れ様でした」
トピア達は本腰を入れて隔離作業に勤しんだ。