【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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125. これよりBETA迎撃戦の生中継を開始します

 トピア達がBETAの迎撃に赴いている頃、カミールは会場整備と案内をしていた。何の会場かと言えば、BETA迎撃戦の中継会場である。

 何故こんなものを設営しているのかというと、避難誘導は終わったのだが、一体何から避難したのか、戦況はどうなっているのかという問い合わせが避難民から殺到して面倒になったので、いっそBETAの脅威の周知をかねて戦闘そのものを中継してしまうのはどうかという話になったのだ。発案はファムで、この世界の住民がBETAのことをよく知らないままであることに危機感を覚えたとのことだった。そして上手く周知することが出来れば人手も確保出来るという寸法だ。(マイスター)達には無い発想で、一理ある上にコアベースに残った人員だけで用意出来て戦闘準備の邪魔にはならないので採用となった。

 避難民の行動に関しては、いきなり集められて見知らぬ地下基地に詰め込まれたのだから不安になるのも無理は無い。その不満を紛らわせるのと仕事の報酬の印象づけをかねてフルエンチャント料理を振る舞ったためか、過激な行動に出る様な者はいなかったが。ただしこれはどこで手に入るのかという商人スミス13人からの問い合わせが激化してこれはこれで鬱陶しかった。

 

 

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 ちなみに通信設備はマインが戦況を見て戦闘指揮をするために用意したものを流用しているので、これだけのために一から整えたわけではない。また、中継会場そのものも食堂兼会議室の表側に2m×2mのFICSIT製デジタルサイネージを4つ、スピーカーを2つ、演説台を1つ設置してそれを庭やその外から見られるようにするだけで、それ以上の凝ったことはしていない。観客席を人数分置く十分なスペースも無いので基本立ち見だ。何しろ観客は避難民が83人、聖騎士が2人、ラリーの所の住民が19人、ケイヴリングの商人が3人。総勢107人にも上るのだ。などと考えている間に旅商人(Traveling Merchant)がやって来て108人になった。

 ファムが忙しそうなので代わりにカミールが旅商人(Traveling Merchant)の応対をして商品ラインナップを見てみると、何と待望のパルスボウ(Pulse Bow)を仕入れていた。5体まで貫通するという噂の高性能弓だ。勿論この機を逃す手は無いので10張ほど買っておいた。若干多すぎるかもしれないが足りないよりはよっぽど良いだろう。

 

 観客の一番後ろの両端には聖騎士二人の姿が見える。フルエンチャント装備の聖騎士は既に戦場へと赴いたが、ファーヴニルの封印をしていた三人の聖騎士のうち二人は避難民を護衛してここへ来ている。残り一人はどうしたのかと言えば、全員持ち場を離れるとファーヴニルの封印が解けてしまうので持ち場に残ったのだそうだ。曰く、更なる脅威が迫っているときだからこそファーヴニルを自由にするわけにはいかないとのことで、その職務への忠実さにはアヌビス神も唸るほどである。

 

 ラリーの所の住民19人の中にはドレスを着て小さな王冠を頭に乗せた桃色の髪の王女(Princess)様もいつの間にか混ざっている。ラリーから加入報告を受けていないので問い合わせたところ、ラリーもまだ加入を認識しておらず、本人に聞くとどうも人が一杯いて楽しそうだからという理由でここに来たらしい。まあ確かにある種のお祭り騒ぎではあるのだが、自由だ。

 ともあれ、その王女(Princess)様は人当たりが良いことで有名らしく、実際我が儘一つも言わず、躊躇無く庭に座り込み目を輝かせてディスプレイの映像を見ている。

 ちなみにラリーからは王女(Princess)を特別扱いしなくて良いが、危害を加えようとする者には容赦をするなと仰せつかっている。同じ味方判定でも忌み嫌われる釣り人(Angler)との扱いの差が激しい。これが人徳というものだろう。

 

 観客から見て一番右側、つまり一番西側のディスプレイには衛星観測映像にBETA着陸ユニットの現在位置と落着予想エリアが表示されており、落着の瞬間に近づくにつれ落着予想エリアが縮小、それにつれてトピア達の位置も徐々に移動していた。ただし南側は落着予想が人里に近いため、そちら側の担当であるトピアとラリーは念のためはじまりの島に近い側に布陣していた。既に避難済とは言え、生活環境を破壊されないに越したことはない。

 なお殆どの避難民には惑星が球体であるという知識が無いので、映し出されているものが何なのか良く分かっていない。

 右から二番目には北側の映像、三番目には南側の映像が映っていた。どうもトリオ工場長が作ったドローンが追随して撮影しているようで、今のところガンマのコックピット内部からの映像となっている。ドローンがガンマの移動速度についていけないからだ。

 最後に四番目、つまり一番左には防衛準備をしている生産班の様子が映っていた。見ていると油脈一つ分の176並列26.4GW希釈燃料発電所をあっという間に建設し、発電所に複数あるフロアのうち高さ32mのフロアにレーザータレットMk.3を、8mのフロアに巡航ミサイルタレットMk.1を設置していた。これは地平線までの距離が高さ33.3mでレーザーの射程20km、高さ8.4mでミサイルの射程10kmになるためである。

 タレットのターゲットの優先度は当然光線(レーザー)属種が最上位になっており、仮に他のターゲットを攻撃中でも光線(レーザー)属種が地平線から現れた瞬間に攻撃を開始して消し炭にする予定となっている。殺意が高い。

 レーザータレットMk.3の全力射撃時の消費電力は1台あたり3.84MWなので発電所一つの電力でレーザータレットを6,875台まで稼働させられる計算になるが、周囲の防衛だけならそこまでの台数は並べられないし過剰でもあるので、ほどほどの台数を並べてあとは前線用の予備電力としている。そもそも発電所を含めて加速ドームで2.5倍速稼働させればタレットのDPSも2.5倍になるので、そういう意味でもやはり数千台も並べる必要が無いのだ。

 また、こうして発電所に配備されたタレットは使い終わった後は置きっぱなしになる予定だという。再び着陸ユニットで攻めてきた場合に改めて発電所の防備を固めずに済むようにするのと、そもそも一度設置したものを回収して持っていく方が工場で新しく生産したものを持っていくよりも手間が掛かるからだ。生産予定台数が二千万台なのだから、今回設置する数くらいはもう誤差なのだ。コアベースの東から南側、忘却の遺跡エリアに作られたダイヤの宝石樹園もレーザータレットの生産量に応じて細かく増築を繰り返している。

 

 

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 宝石樹園の中にゴームの周回路、トピアが山手線と呼んでいるものがそのまま残っているが、以前のようにゴームが勝手に復活するとまたこの道が均されて土に戻ってしまうので、どこが危険なのか分かるようにそのまま残しているらしい。

 この山手線はゴームが一周するだけでスライムの地面まみれになってしまい、以前トピアが足を滑らせたように歩きにくくなる上に無尽蔵にスライムが湧くのが鬱陶しいのだが、忘却の遺跡エリアに関しては建設ロボットがスライムの地面を撤去済なので安全だ。

 

 落着まであと数分というところで演説台の上にファムが立ち、ぺこりとお辞儀をした。可愛らしいファーコートを着たその姿に声援が飛んだが、よく見ると左手にデーモンサイス(Demon Scythe)の魔導書を持ち、背中には聖十字の盾(Ankh Shield)を背負っており、いつでも戦闘を始められるフル装備だ。しかも出撃前のトピアが防具の精錬強化の許可を出しており、更にモディファイアも付けたので、カミール共々現在のコアベース内では突出した強さとなっている。これは万が一BETAが本拠地を狙ってきた場合に戦えるようにとの配慮だ。

 

 

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 実は高級装備と防具精錬強化以外にも少し手が加わっている。

 カミール用装備のMk.1改とファム用装備のMk.1を設計した後に改めて色々検討したところ、効果が強い代わりに副作用がある 旧 昂り爆ぜる + 旧 焼尽の + 旧 早食いの ×2 よりも効果がやや弱く副作用が全く無い 新 昂り爆ぜる + 新 焼尽の + 新 千古の ×2 の方が火力が出る上にヒール効果減衰もなくなることが判明したのでこれに差し替えている。また、 新 守護神を宿した がレガシーよりも大分パワーアップしていたのでこれを導入し、攻撃力を増すとともに貴重な防御力(DEF)+10%効果を得ている。最終防御力(DEF)は1,200を突破、シームレス表記ならば12,000超えである。

 

 結果として二人ともマナサイフォンからのボールライトニングの威力が200万DPSに達したので、タイムロックで止めてからならばもしかすると突撃(デストロイヤー)級も仕留められるかもしれない。電撃耐性がどのくらいあるのかによるが。

 装備の性能はカミールの方が少し上だが、ここまで強化すると実はそれほど差が無いので、多少の防御力(DEF)の差ににこだわらずに自分も帽子とファーコートにしておくべきだったかとカミールは少し後悔した。フルプレートメイルはあくまで戦闘用であって日常生活にも事務仕事にも向かないのだ。

 

ファム「これよりBETA迎撃戦の生中継を開始します。まずはアヌビス様から開始のお言葉がありますのでご静聴願います」

 

 右手にマイクを持ったファムがそれだけ告げると壇上から下がり、入れ替わりにアヌビス神が壇上に立った。

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