北部から遅れること20分、南部のトピアとラリーもBETAの軍勢を攻撃可能距離に捉えた。衛星観測ではその数は約2,000。
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こちらの環境は草原で、まばらに木立が見える。
ラリー≪やるぜ!≫
トピア≪トピアいきまーす!≫
ラリーはガンマを収納すると同時にセレスチャルスターボードを出し、ゼニスを構えて低空を突進していった。
トピアも僅かに遅れてガンマを収納し、ロケットパックを噴かしながら地表へと降下。着地と同時に槍を回転させ周囲の戦車級10体ほどをなぎ払った。槍の回転攻撃は通常の突きに比べると威力が低いが、通常攻撃の威力が11万なのでその半分でも戦車級相手には十分だ。
そうしている間にもラリーはゼニスのジャグリング攻撃で100体近い戦車級をなぎ払っていた。16万弱の威力が中距離で秒間60ヒットするのはやはり雑に強い。
観衆は神器もかくやというゼニスの圧倒的暴力におののいた。
ファム≪やはり強いですねゼニス≫
カミール≪テラリアン最強の剣とクラフトピア由来エンチャントの相乗効果は凄まじいね。特にあの通常攻撃のDPSが突出して強い≫
トピア達が目の前の戦車級を一掃すると、やはりクレーターの中から突撃級が出現した。その数128。
ラリーが正面からゼニスを投げつけると、突撃級は甲殻でそれを弾いた。予想通りではあったが、16万程度の威力ではその頑強な甲殻を貫徹出来ないようだ。見た目はブーメラン状の軌道が貫通しているのだが。
正面からでは効かないことを確認したラリーは、今度は突撃級の頭上にゼニスを投げつけた。投擲されたゼニスは突撃級の頭上から急激に軌道を曲げて柔らかい背中に突き刺さり、次々に突き刺さる剣が突撃級を引き裂いた。あっと言う間になます切りにされた突撃級は生命活動を停止しても急には止まれず、慣性でごろごろと転がっていった。
ラリー≪オラオラオラオラオラオラッ!≫
ラリーはこの要領で居並ぶ突撃級を次々に仕留めていった。
とはいえ突撃級の数は多く、そのまま進まれると1.15倍速セレスチャルスターボードの154km/hでは追いつけないので一部の突撃級がその難を逃れてトピアの方に向かっていった。トピアは聖騎士と同じようにタイムロックの魔法弾を3つ、目の前に置いた。最初に迫ってきた3体の突撃級がタイムロックのトラップに掛かり、予定通りに動きを止めた。更に後続の3体が急に止まれずにその後ろに追突する。合計6体の突撃級が動きを止めたため、トピアは足元をくぐり抜けながらそれらに順にコバルトの薙刀を突き込んでいく。その全てが中華斬舞のファイナルアタック20倍攻撃だ。威力は225万。
トピア≪無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!≫
スコアのマグナムショットほどではないが、それでも甲殻を易々と貫通して突撃級の後ろに突き抜けるほどの衝撃だ。6体の突撃級はそれぞれ一撃で活動を停止した。
さて、クラフトピア世界やラリーの世界のMOBは単純にライフ以上のダメージを与えれば倒せるが、マブラヴ原作のBETAと科学由来兵器との戦いを見れば分かる通り、BETA自体はライフ制ではない。重要器官が無事であれば行動を停止しない可能性があるということだ。ここで面倒なのが突撃級が双頭ということで、つまり片方だけ潰しても行動を停止しない可能性があるのだ。
そこでトピアは心臓に相当するであろう器官を狙った。以前の分子分析機によるBETAの死骸分析でその位置が判明していたのだ。ドラゴンの頭のように重要部位を狙えば肉質判定によるダメージ有効倍率も上がるだろうという目論見もあった。
斯くして心臓を狙ったオーバーキルダメージは一撃で突撃級の心臓を破裂させ、活動停止に追い込んだというわけだ。
なお以前の戦闘で居合斬り480万ダメージで突撃級を縦に真っ二つにしてしまったのは、オーバーキルダメージに相応しいように胴体を中心に加害範囲が拡大した結果だ。ライフ制ではないものを相手にする場合、オーバーキルダメージにはこのように正確に狙わなくても雑に倒せるという利点がある。今回の心臓突きもオーバーキルダメージではあるので、正確に狙わなくてもある程度何とかなるのだ。
突撃級の横から頭二つを串団子にする手も一応あるが、こちらは横以外から狙うと加害範囲に二つとも収まるか怪しいため、一つで済む心臓の方を狙った形だ。
そんな調子で突撃級の数を減らしていくと、今度は要撃級約120体と要塞級5体が出てきた。
まず要撃級にはラリーが向かった。要撃級も全高12mを誇る大型種で名前の通り格闘能力に優れるが、硬いのは前腕だけで、それ以外は大した防御力を持たないし、俊敏さはあるが移動速度は突撃級ほどではない。当然ラリーは腕以外の防御が薄いところにゼニスを投擲し、片っ端から平らげていく。
要撃級の構造で蠍の尻尾の先についている剥き歯ののっぺらぼうの頭のような部分はどうも感覚器官であって神経中枢は入っていないようで、神経中枢は本来の蠍の頭部辺りにある。だがラリーは怒濤の連続攻撃で頭から尻尾まで縦に真っ二つにしていくので心臓相当器官も潰れており、結局頭がどちらであってもあまり関係はなかった。やはり大雑把に強い。
一方トピアはマナサイフォンLv6(Max)をかけるとロケットパックの低空飛行と瞬時の回避アクションで触手と踏みつけをかわしながら一気に懐に飛び込み、衝突寸前で急上昇して要塞級の頭の後ろの死角に着地。3倍中華斬舞の一撃で要塞級を仕留めて回った。要塞級は元々機敏ではない上に対人認識能力が低く、更にフレンドリーファイア禁止アルゴリズムと相手の的が小さすぎることが祟って全く有効な攻撃が出来ないという有様であった。小型BETAなら腹の中の材料からその場で作るということも出来たのだが、今更戦車級以下が増えたところでトピア達の敵ではなかった。
こうしてトピア達も外に出ているBETAを駆逐してクレーターに侵入することになったのだが、問題が一つあった。落着地点が河川に接していたため、既にクレーター湖になっていたのだ。道理で出てくるBETAがなんか濡れていたはずだ。別に生まれたてだからというわけではなかったのだ。
ラリー≪二人とも宇宙の貝殻を装備してたら水中戦でも問題無かったんだがな。俺だけで行くか?≫
トピア≪装備が揃ってても電撃は使えなくなりますけどね。どうしましょうか?≫
宇宙の貝殻は4つのアクセサリを合成したもので、攻撃速度や採掘速度が上がる効果もあるが、中でもネプチューンの貝殻由来の水中適応能力が特徴的だ。半魚人同様に水中呼吸が出来るようになり、移動速度も落ちなくなるのだ。これを装備していれば水中戦で圧倒的なアドバンテージを得るのは間違いない。そして実際ラリー一人だけでも重頭脳級の撃破はそれほど難しくない。BETAの体液まみれの水中に入って水ごとエラ呼吸して本当に大丈夫かという別の問題があるが。
マイン≪S班よく聞け、その川の上流は既にせき止めた。間もなく水の流入が止まり、戦える程度には水位が下がるはずだ≫
出てくるBETAを迎撃しながらなのであまり注視していなかったが、言われてみればさっきよりも水位が下がっている。どうもマインの指示で生産班が既に対策を進めていたようであった。
ファム≪えーはい、川の上流の施工風景がこちらです≫
カミール≪なるほど、簡易的だけど十分せき止められているね。地形を上手く利用している≫
上流の映像によると、川の周囲が盆地になっているところを選んで臨時のダム湖にしたようであった。衛星観測とコアからの探査で地形が把握出来ていたから対応が早かったのだろう。せき止めているのはFICSITの基本的な建材である橙色の壁だ。
水の無くなった川では逃げ遅れた魚がびちびちと跳ねているが、後で美味しくいただくほかないだろう。それらの魚は既に建設ロボットが回収を始めている。幸いというか、避難民がそれなりの数いるので消費には事欠かない。
トピア≪マインさんグッジョブ! 大変助かります≫
ラリー≪じゃあそろそろ行くか≫
暫く迎撃を続けていると着陸ユニットの開口部が水面より上に出てきたので、トピア達は内部への侵入を開始した。
中に入ると床だけでなく壁や天井に張り付いた戦車級までもひっきりなしに襲い掛かってくるが、今更ものの数ではない。
そうして無事に重頭脳級と対面したトピアは、いつものように右掌を上に掲げ、左拳を腰に引きつけキーワードを呟いた。
トピア≪蒸着≫
これに伴いトピアの装備品が一斉に変更される。
左手に 不安定な 秘宝を抱く 悉く欲する 万古の デーモンサイスの魔導書。
右手に 不安定な 不朽の 永久の 悠久の 頑丈な 聖十字の盾改+99。
頭部に 不安定な 万古の 守護神を宿した 空回りな クラシカルウィッチハット赤(新)改+99。
服は 不安定な 万古の マッド・ 空回りな バルダーアーマー黒改+99。
背中に 不安定な 万古の マッド・ 空回りな ロケットパック改+99。
補助ツールに 不安定な 万古の マッド・ ファーヴニルの 鉄の護符改+99。
フックに 不安定な 万古の 伝説の ファーヴニルの リスのフック改+99。
光源に 不安定な 万古の マッド・ ファーヴニルの オーブランタン改+99。
鞄に 不安定な 万古の マッド・ ファーヴニルの 頑丈な オクタリンのかばん改+99。
アクセサリ1に 不安定な 万古の マッド・ ファーヴニルの 頑丈な モルファのリング改+99。
アクセサリ2に 不安定な 万古の マッド・ ファーヴニルの 頑丈な モルファのリング改+99。
アクセサリ3に 不安定な 万古の 伝説の ファーヴニルの 頑丈な モルファのリング改+99。
アクセサリ4に 不安定な 万古の 不退転の ファーヴニルの 頑丈な モルファのリング改+99。
トピア≪円環魔導士の装Mk.5改-≫
円環魔導士の装Mk.5改-。全身の装備にレジェンダリ32、エピック20、スキル10を付与したトンデモフルエンチャント装備だ。
蒸着前と比べるとエンチャントが別物なので性能はガラッと変わっているのだが、見た目は槍が魔導書に変わっただけだ。なので観衆からするとトピアが何をしたのかはすぐに理解出来なかった。
これを見たサティは以前の機動軽槍兵の装Mk.3でも同じような光景を見たなと少し懐かしんだ。
この見た目の変化の少なさからくるわかりにくさを考慮したファムがすぐさまカミールに話を振った。
ファム≪カミールさん、あれ見た目はあんまり変わってないですけど全く別の装備ですよね?≫
カミール≪そうだね、私も使っている通りバルダーアーマーは非常に防御力が高いので色んな装備セットで採用されているけど、同じに見えても物理特化エンチャントを付けた装備から魔法特化エンチャントを付けた装備に切り替えたところだ。……始まるぞ≫
トピアはマナサイフォンLv6(Max)を唱えるとロケットパックで戦車級の群を一気に飛び越し、まだ大きく育っていない重頭脳級の台座の上に着地した。
トピア≪ラリーさん、周りからの襲撃は全て対処しますから構わず重頭脳級を叩いて下さい≫
ラリー≪任せたぜ!≫
ラリーがトピアの隣に着地し、位置を固定して重頭脳級への攻撃を開始。それと同時にトピアは腰を捻って軽快にバオウステップを踏みつつボールライトニングの連打を始めた。以前にもやった通り、周囲から襲い掛かる戦車級や闘士級を片っ端から消し炭にしつつ重頭脳級にもダメージを与える位置取りだ。しかも威力は前回の10倍以上、630万DPSだ。ラリーの通常攻撃947万DPSと合わせて合計1577万DPSの無慈悲な攻撃が生まれたての重頭脳級を襲う。いや相手の防御力を計算に入れると実際はもう少し下がるが、それでも耐えきれるようなものではない。
ラリー≪どうしたどうしたァ!≫
トピア≪ハハハ貧弱、貧弱ゥ!≫
カミール≪距離を詰めて攻防一体のボールライトニング連打、合理的だな≫
ファム≪なんかトピアさんの台詞が悪役みたいなんですけど、あんな感じの人でしたっけ?≫
カミール≪戦闘する際にテンションを上げるとあんな感じになるようだぞ≫
大概の相手を一撃で屠るフルエンチャント装備とはいえ、それは攻撃力の話であって、自分がBETAの攻撃を受けても大丈夫な保証は無い。そんな体が竦むような雑念を振り払うためにも、トピアはテンションを上げてE&Eする。そうなると絶望的な戦いに挑む勇者ロールよりも圧倒的格上ロールの方が楽しいので必然的にこうなってしまうのだ。そんなわけで今回はタイムロックとも相性の良い悪のカリスマさんロールである。
重頭脳級は攻撃開始からわずか5秒で沈黙した。南部迎撃戦も完勝であった。