【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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129. 一気に4つ来ましたか

 トピア達がBETAに一通りとどめを刺してからコアベースに帰還すると、そこはお祭り騒ぎであった。立っている者達は酒を手にしており、下を見れば道ばたに寝ている者までいる。

 事情を知る者を探してトピアが視線を巡らせるも、その前にトピアの方が見つけられてしまい、英雄達の帰還だなどと群衆が一層盛り上がり始めた。収拾が付きそうにない。

 BETA迎撃戦を実況中継するという話は聞いていたが、すると戦勝記念パーティーか何かだろうか。まだ連中の勢力を毛ほども削っていないのに盛り上がりすぎではなかろうかとトピアはラリーと顔を見合わせた。後片付けで合流して一緒に帰ってきたサティとテクスも苦笑している。

 そこに群衆を掻き分けてカミールが現れた。

 

カミール「ほらどいたどいたー。ちょっと通してくれたまえよ」

 

トピア「あ、カミールさん。只今帰りました」

 

カミール「お帰り。無事で何よりだよ」

 

トピア「ドーモ。それでこれは一体どういう状況なんです?」

 

カミール「ああ、先に帰ってきた工場長が仕事納めに堂々と一杯やり始めてな。大勢に注目されながら一人で飲むのは性に合わんとかで、酒を振る舞って急遽戦勝記念祭のようになってしまったんだ」

 

ラリー「するってえと道ばたに倒れてるのは?」

 

カミール「無謀にも工場長に飲み比べを挑んだ連中さ」

 

サティ「それはああもなるわね」

 

テクス「ドワーフに酒勝負は蛮勇が過ぎるでござるなあ」

 

 カミールの先導で群衆を抜けていくと、食堂前の庭では工場長が酒盛りをしており、他にも戦績自慢に花を咲かせているマインや聖騎士、愛想笑いしながら顔色を悪くしているスコアとその隣の満更でもなさそうなファムがそれぞれ民衆に囲まれていた。スコアが顔色を悪くしているのは飲み過ぎだろうか? よく分からないがそういうことにしておこうとトピアは思索を打ち切った。

 

トピア「そうだカミールさん、勧誘ってどうなりました?」

 

カミール「上手くいったぞ。というより、上手くいきすぎて困っている」

 

サティ「加入希望者はどのくらいいたの?」

 

カミール「84人だ」

 

テクス「……避難民の数より多くないでござるか?」

 

カミール「避難民全員に王女を加えた数だな。どうも大半は食事の美味さと拠点の安全性に釣られたようだぞ」

 

トピア「不満を抑えるためにやり過ぎて餌付けしてしまいましたか」

 

 トピアはあまりじっくり集落を観察していなかったが、そもそも大半の住民は碌に仕事をしている様子が無かった上に、住居を持たない者も少なくなかったのだ。ならばこうなっても仕方が無いだろう。

 

サティ「その人数だともう一部屋に複数詰め込まないと足りないわよね?」

 

 現在の地価集合住宅は28部屋×4フロアで112部屋、住民は匠7人、助手3人、神1柱、ラリーの所の住民が22人、はじまりの島からの避難民が82人の合計115人だ。1階まで詰めても3人ほど溢れる。ラリーの関係者が臨時を合わせてまだ4人増えるらしいので7部屋ほど足りない。

 

カミール「だから困っているんだよ」

 

ラリー「なるほどな」

 

カミール「あとこれだけ人数が増えると、まとめ役をどうするかという問題もある」

 

トピア「それもありますね。まあはじまりの島の住民のとりまとめはファムさんにお願いするとして、ラリーさん関連の住民もそろそろまとめ役が必要ですか?」

 

ラリー「まあそこは王女(Princess)に頼むのが妥当だろ。一番人望があるしな。よーし仕事納めに5階を建設するか」

 

トピア「やりますかー」

 

 1階にあまり知らない相手を入れたくないトピアとしては急いでやるべき仕事であった。幸い施工のための人員はほぼ揃っている。

 

サティ「私も手伝うわ」

 

テクス「それがしも電気関係をやるでござるかな」

 

カミール「そうしてくれると助かる。ワタシもトピアの手伝いなら出来るだろう」

 

 トピア達は地下集合住宅の5階を増設してから寝ることになった。

 なおその間アヌビス神ははじまりの島出身の住民達にトイレの使い方を説法していた。他の誰が言うよりも手っ取り早いからだが、アヌビス神は神の威厳の使い道がこれでいいのだろうかと困惑した。

 

 

 

 翌日、トピアがこの世界に来てから7日目の朝。食堂兼会議室には(マイスター)七人と相談役のアヌビス神、助手のカミール、妖精のシュミット、聖騎士、サイボーグ(Cyborg)のゼータ、スチームパンカー(Steampunker)のホープ、住民まとめ役のファムと王女(Princess)モモが席に着いていた。総勢15名である。

 

トピア「本日の会議を始めます。まずは昨日の迎撃戦お疲れ様でした。皆さんの力で2箇所同時の襲撃も被害無く退けられたことを嬉しく思います」

 

 冒頭の挨拶でトピアが恭しく頭を下げると、それに対してマインが腕を組んだまま答えた。

 

マイン「まあ我がいるのだから当然だ」

 

 実際つつがなく指揮をこなしていたのでその技量に間違いは無いのだが、相変わらず謙虚さの欠片も見当たらないマインである。

 

トピア「快勝と美味しい食事が効き過ぎて勧誘が大成功してしまい、一気に人数が増えたため、本日からファムさんが助手ではなくはじまりの島から来た住民のまとめ役になります。いわゆる管理職ですね。住民の方々にはこれまでファムさんがこなしてきた仕事を中心に手分けしてやってもらうことになります」

 

ファム「誠心誠意務めさせていただきます」

 

 ファムが一旦席を立って神妙な表情でぺこりと頭を下げた。

 

スコア「ファムなら大丈夫だろう。真面目に仕事をしているし意思伝達に問題も無い」

 

サティ「そうね」

 

アヌビス神「X(うむ)」

 

 自分が連れてきたファムの評価が当初の想定以上に高まっていることにアヌビス神も満足げである。

 

トピア「そしてラリーさんの方の住民のまとめ役は、昨日加入したばかりですが全ての住民に人望があるモモ王女にやってもらうことになりました。モモ王女殿下、まずは自己紹介をお願いします」

 

 トピアに促されてモモ王女が席を立ち、まずは軽く一礼してから喋り始めた。

 

モモ王女「皆様初めまして、モモですわ。旅商人(Traveling Merchant)から噂を伺っておりましたが、皆様には我が国の民を保護して下さって大変感謝しておりますわ。そして昨晩は皆様の戦いに大変心が熱くなりましたの! 我が忠臣であるラリー様は勿論、皆様大変勇敢で素敵でしたわ! そしてこの戦いが人々のためとあらば、王族たるこの私が尽力しないわけにはいきません。このお役目、誠心誠意務めさせていただきますわ」

 

 挨拶の後、綺麗にカーテシーを決めたモモ王女に拍手が送られた。なるほど人望がありそうな人柄が垣間見える。

 ちなみにどこの王国の姫様なのか、それはどこにあるのかというのをラリーに事前に尋ねたのだが、名前はテラリア王国で、大陸内に他の国家が存在しないため領土は豪快に大陸全土。ただこの世界はクラフトピア世界と融合しているので範囲がどうなっているかは分からないとのことだった。

 しかしラリーはこの世界の出身ではない。昨日顔を合わせたばかりなのに忠臣というのは何なのかという話になってしまうのだが、ラリーの生まれた世界ではラリーもそのテラリア王国の出身で、クトゥルフ征伐で功績を挙げてその世界の王女(Princess)に忠臣と認められたそうで、大地の冒険者(テラリアン)という称号もこの時貰ったものだそうだ。これは読んで字の如く、テラリア王国民の中のテラリア王国民という最大級の名誉称号である。そしてこちらのモモ王女も人々のためになる仕事をする人物を積極的に認めているようであった。ラリーからしてもモモ王女は自身が仕える王女(Princess)の並行世界の同一人物のようなものなので臣下扱いで問題無いらしい。問題無いどころか、モモ王女の部屋にはラリーが惜しげも無く献上した海賊の襲来(Pirate Invasion)ドロップ品の高級家具が並んでいる。モモ王女の人徳効果が思った以上にすごくて(マイスター)一同は若干引いていたくらいなのだが、自分にとっての師匠のようなものだろうと考えればするりと納得出来るトピアであった。

 

トピア「ありがとうございました。それで王女殿下、ちょっと伺いたいんですけど、私達の活動に領土的問題はありますか?」

 

ラリー「……そいつは考えたこと無かったな」

 

 この星はあの女神的存在が作ったもののようだが、赤道付近は明らかにラリーの世界の影響を強く受けており、そこまで女神的存在が作ったとは言いがたい。

 ならばこのあたりはテラリア王国の領土だと主張されても不思議ではないわけだ。そこに勝手に拠点を作って資源を採掘していることになると問題だ。スタート地点からしてなんか知らない余所の国の国土というのは釈然としないが。

 

モモ王女「まず最初に、人々のために戦っている皆様の邪魔はしないと宣言しておきますわ。仮にも人々のために在る王族が、人々の幸せを奪うようなことがあってはいけませんもの」

 

トピア「それはまあ、ありがとうございます」

 

モモ王女「そして、この世界で我が王国が実効支配出来ている範囲はそれほど広くはありませんわ。完全に脅威を排除出来ているのは、王都近くのわずかな領土だけですの。赤道上も一応領土ではあるのですが、恥ずかしながらラリー様がいなければ開拓もままならないところですわ」

 

トピア「すると、王都にノータッチかつ未開拓エリアを利用する分には当面はお咎め無しということですか?」

 

モモ王女「そうなりますわね。我が国の法に照らせば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という扱いになる筈ですわ。むしろ王国内に皆様の本拠地があることは心強く思います」

 

トピア「なるほど」

 

 墾田永年私財法のようなものかとトピアは理解した。行動を阻害されないのならば問題は無いだろう。税金くらいは払う必要があるかもしれないが。

 しかしそもそも星を征服するのが仕事のマインからすると、これはまどろっこしく聞こえたようだ。

 

マイン「おい、わざわざ傘下に入るのか? 四の五の言わずに征服してしまわんか?」

 

 だが征服したところでせいぜい税金を払わなくて良くなるくらいで、代わりに統治という面倒が出てくる。トピアとしてはそんな無駄に仕事を増やすような真似は真っ平御免であった。しかし下手に突っつくと、面倒なら滅ぼすだけ滅ぼして放置すれば良しなどと言い出しかねない。

 その辺りをマインが納得するようにどう言葉にしようかとトピアが思案していると、先にラリーが立ち上がった。

 

ラリー「ハッハー、俺の前でテラリア王国征服宣言とは冗談でも聞き流せねえな?」

 

 仮にもモモ王女の臣下という認識があるラリーには聞き逃せない言葉である。ラリーがマインに睨みをきかせ、ゼータとホープの視線も鋭くなった。しかしそこにモモ王女が仲裁に入った。

 

モモ王女「まあ、マイン様! 人々を勝利に導く偉大なる騎士マイン様ですのね? 貴女のご活躍には大変心躍りましたの! 是非私と仲良くしてくださらないかしら?」

 

マイン「む、人々を勝利に導く偉大なる騎士(ナイト)だと……。悪くない響きだな?」

 

モモ王女「ええ、貴女の勝利と戦いぶりはきっと我がテラリア王国に代々伝えられる偉業になりますわ!」

 

マイン「代々伝えられる……フフフいいだろう。我が偉業を伝える我が友の国ならば、この我が守ってやらねばな」

 

モモ王女「まあ! マイン様に守っていただけるなんて我が国の未来は安泰ですわ! 数々の戦いを制してきた方はやはり違いますのね!」

 

マイン「フフフ、それほどでもない」

 

 すっかり上機嫌になったマインはいつも通り形だけの謙遜をした。

 

テクス「もう完全に扱い方を理解してるでござるな?」

 

ラリー「流石は王女(Princess)だ。俺の出る幕じゃなかったな」

 

 マインは戦略や戦術では強いが、コミュ力は壊滅的だというのを完全に理解してあっさり転がし始めたモモ王女の手並みに(マイスター)達は舌を巻いた。

 ついでに言うとマインは昨晩民衆に繰り返し称えられたことで、英雄的に称えられる楽しさにすっかりはまっていた。実際は何故か味方してくれる魔王様みたいな扱いであったが。魔王が味方というのはそれはそれで強キャラ感があって良いのだ。

 

トピア「領土に関する当面の話がまとまったところで、工場長、衛星観測情報をお願いします」

 

トリオ「うむ。防衛成功に湧いておったところ申し訳ないんじゃが、悪い報せじゃ」

 

マイン「何だ、討ち漏らしでもあったか?」

 

トリオ「いや、こいつを見てくれれば分かる」

 

 トリオ工場長がいつものようにディスプレイに衛星観測情報を表示すると、場の空気が凍った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

トピア「……一気に4つ来ましたか」

 

 そう、BETAの着陸ユニット2つの相手をしている間に裏側の大陸ではハイヴが4つも増えていたのである。




 第5章終幕です。次回12:16の登場人物紹介を挟んで12:46から第6章を開始します。

 なおテラリア王国などという設定は原作には多分ありません。テラリアンが何故王女に忠臣と呼ばれているのかも実際には不明です。
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