会議室を出たトピア、ラリー、スコアはコア001、002、003に移動してユニット操縦の指導を開始した。
しかしはじまりの島の住民は操縦適性が低かった。文明教化されたとはいえ、ほんの数日前まで石器時代相当の知識しか無かったのだから無理は無い。
とはいえ戦闘機動が出来る必要は無いのでトピア達は根気よく教えて11時頃には全員の教育を終えた。しかし予定より指導に時間が掛かったのにその終了時点でも統合建設システム完成の連絡が無かった。生産班が全員集まって仕事を進めているのにまだ完成していないのは不自然だ。何か不測の事態だろうかと不審に思ったトピアは、サティに連絡を入れてみた。
サティ≪あらトピア、操縦訓練は終わったの?≫
トピア「あ、どうもサティ姐さん。訓練は今し方やっと終わりました。そちらの進捗はどうなってます?」
サティ≪ええ、今新型トキソピッドの生産ラインを作ってる所ね≫
トピア「……あれ、統合建設システムはどうなりました?」
聞いていた話と大分違うことをサティ達がやっているようなのでトピアは困惑した。
サティ≪勿論もう出来てるわ。訓練が予定より長引きそうだし、折角生産班全員が集まってるから、朝の時点で完成まで大詰めに掛かってた新型トキソピッドをあれこれいじり始めたのよ≫
トピア「ああ、そういうことでしたか」
サティ≪マインがコア022まで設置したから、コア020に全員集めてくれるかしら? こっちもすぐに行くわ≫
トピア「抜かりないですね、分かりました」
サティの言葉に従ってトピアはラリーやスコアとも連絡を取り、コア020に人員を集合させた。
コア020はユグドラシルやコアベースから見て南西、南極大陸から北に突き出た半島の先に設置されたもので、対岸にハイヴ24を睨む立地だ。対岸と言っても2,000km以上離れていて直接目視出来ない上に、ハイヴ24は最近建設が始まったばかりなので当面警戒すべきはその隣のハイヴ17の方だが。
さて、繰り返すがコア020はユグドラシル大陸から見て南西にある。辺りを見渡せば、ヤシの木が生えた南国の島のような有様であった。太陽は強く照りつけており、寒さは微塵も無い。助手見習い達はここが南国かあ、流石南国の陽気は違うなあなどと口々に呟いている。いやまあ確かに
しかしクラフトピア世界でもラリーの世界でも同じ緯度で雪山と砂漠が混在するくらいなので緯度は全く当てにならないのはご覧の通りである。相変わらず出鱈目な環境だが、寒くて仕事にならないよりは余程マシだとトピアは割り切っていた。
また、これまでユグドラシル大陸だけで活動していたので触れてこなかったが、この世界には時差も無い。いや勿論場所によって日の出や日没の時間には差があるのだが、どうせ1日に24回も日が巡るのだからと各地で日の巡り基準の時間を採用しておらず、最初にユグドラシルで設定した時刻を全世界に適用している形だ。地球で言うなら日本でグリニッジ標準時が通用していて午前3時に太陽が南中するような状態だ。しかし全員が同じ生活時間帯を共有したまま全世界を飛び回るのなら全く時差を気にする必要が無いこの方式の方が利便性が高いのだ。
ところで何故コア020に集合なのかと言えば、地図を見れば分かる通り、このコア020はコアから想定防衛ラインが非常に近い上に、地上防衛ラインの構築と水中防衛ラインの構築両方に関わることが出来る立地だからだ。
また、新しい6つのコアのうち017、018、021、022が海に立地している特殊環境なので新人研修で最初に使うには向かないという事情もある。残るコア019は地上に立地しているが、コア020ほど新人研修のための条件が良くない。
地図上で見ると既存コアのうちコア005、006、011、015、016も海に設置してある。探査範囲の無駄を無くすためにこういう配置になっているのだが、コアは基本的に地上に設置するものである。しかしこの星は海の面積が広く、陸地だけにコアを設置していてはどうしても探査漏れが出来るので、海にも設置せざるを得ないのだ。
コアを海に設置する場合、まずコアの本体を水上に浮かべた状態にして、そこからコアと一緒に持ち込んだ資源を使って固定用の柱を海底まで伸ばし、その柱に沿って探査用の機材を海底まで下ろしている。
この作業に結構手間が掛かっているのだが、そもそもコアを多数並べる主目的は周辺資源探査とBETA警戒のためなので探査が出来なくては話にならず、半径1,000km全域で十分な精度の探査を行うためには探査装置が地表に接している必要があり、かといって水中にコア本体を設置してしまうと資源の集積もコアユニットの離着陸も新しいコアの打ち上げも困難になるのでこういう形を取っているのだ。
しかしこれは昨日までの事情だ。コア017以降は最初から海底に設置し、そこから水中活動が可能になった改良型コアユニットが発進し、テレポーターロジスティクスやストレージロジスティクスを活用することで資源の集積も水上で行う必要が無くなった。新しいコアの打ち上げもまあちょっと贅沢に資源を使えば水中打ち上げも出来なくはないし、それ以前にストレージロジスティクスのお陰で資源の移動が格段に簡単になったため、集積した資源を別のコアに回してそこから打ち上げるという手がある。
そのコア020に生産班の面子がやってきて、改良型のコアユニット・ガンマで実演しながら統合建設システムとストレージロジスティクスについて説明を始めた。どうも改良型の名前はコアユニット・ガンマ・ジェネラルというらしく、水中での活動も可能になったようだ。
最後についたジェネラルというのはあらゆる領域であらゆる施工を可能とするという意味で、
統合建設システム搭載のガンマGは、基本操作は今までと同じで、色々と切り替えて建設をする必要が無くなったようだ。
例えば発電所なら油脈と水源と建設する場所を指定すると、それぞれの建設システムが協働して勝手に建設が進む。これは発電所配備の防衛用タレットまで含めてだ。同様に集合ケーブルと電力ケーブルを内蔵したレールの敷設も位置を指定するだけで進むので、あとは敷設すべきルートをガンマGで移動するだけだ。そして建材は汎用化したTechインベントリから取り出すのでいちいち補充しに戻る必要も無い。
トピア「なるほど、これなら
トリオ「そっちは宝石樹園も含めて建設ロボットに同じ形式のラインを自動増設するルーチンを組んだから大丈夫じゃ。現状の性能じゃあ長距離を移動して敷設するには性能が足りんから人手が必要になったがの」
トピア「ライン自体も自動で増設出来るようになりましたか。それは捗りますね」
生産ラインの中でも宝石樹園についてはダイヤの必要生産量に対し敷地面積がやや足りないように思えるが、宝石樹園の造成に必要な石材を宝石樹園自体が生産しているので、あとは
ロボットの性能が不足している点については、逆に言えば将来的には性能の向上によって建設ロボットが自力で長距離を移動しながらTechインベントリから物資を取り出して自動で必要なものを敷設していく形になりそうだ。特に送電網とタレットの敷設はやることが単純なので、明日か明後日にはそうなりそうな予感がある。今日のところは人を使ってやらせるのは、恐らく基礎訓練の目的もあるのだろう。
なおガンマGの建設講習はトピア達戦闘班や助手のカミールと聖騎士、管理職のファム、モモ王女も一緒に受けていた。トピア達は戦闘班とは言っても特に生身の戦闘能力が優れているだけでそれぞれ生産や建設の仕事もあるし、人員管理職はどんな仕事をしているのかを知らなくては適切な人員配置が出来ないからだ。カミールも貴重なクラフトピア建設権能の所有者だからこの枠に入った。残る聖騎士は一人だけ待機させても勿体ないしガンマGを使う機会も多いのでついでに覚えてもらった形だ。あと全くマナを使っていない仕様なので、シュミットが操縦するのは無理だった。
ガンマGの建設講習が終わると、
業務内容としてはサティが発電所設置と送電網敷設、工場長が衛星観測とタレット配備、スコアがポータル管理、マインがコア敷設の業務教育をすべく人員を確保していった形だ。残りのラッシュ銀貨稼ぎと釣りは後回し、買い付けはカミールが一時的に代替することになる。ファムとモモ王女は業務内容を理解すべく研修を順に視察する予定だ。
トピアも現状で禁止されているダンジョン関連、ラッシュ銀貨稼ぎや精錬石稼ぎを除外するとさしあたって急ぐ仕事が無いので、防衛線構築の要になっているであろうコア敷設業務を手伝いに行くことにした。