【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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136. メイン盾来たァ! これで勝つる!

 トピア達が到着したとき、コア026管轄の防衛ラインは以下のような状態になっていた。

 

 

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 既に西の島の1/4ほどをBETAの群れが覆っており、東からわずかに上陸した防衛設備がタレットから半径5kmに入ろうとしたBETAを撃退している状態だ。その周囲5km範囲だけぽっかり穴が空いており、迎撃性能の確かさが窺える。

 

 西の島は他の島に比べると小さく見えるが、南北101km、東西130kmと、はじまりの島に比べると実は20倍以上の大きさだ。面積はおよそ1万km2として、四国本島が18,298km2なのでその半分より少し大きいくらいだ。そんなイメージで見ると西から順に四国、九州、本州、北海道を雑に描いたように見えてこなくもない。実際の日本列島の青森北端から山口西端まで直線で1,220kmほど、C026本島の北西から南東の端までが1,160kmほどなので大体のスケールは一致する。それがどうしたのかというと、BETAの日本侵攻時の状況に似ているということだ。

 他の目安では、海岸線から防衛設備を設置しているラインまでの距離が約5kmと見れば大体の規模感が分かるだろう。

 

 さて、実を言うとコア025ではBETAの上陸にびびった作業員が持ち場を捨てて逃げてしまったためタレットの敷設が進まず事態が悪化したのだが、完成版タレットの制圧力からすると光線(レーザー)属種のいない戦場ではBETAの死骸の片付けさえ何とかなれば迎撃しながらでもタレットの敷設を進めることは十分可能だ。死骸の片付けも建設ロボットに任せれば敷設エリア近辺の分くらいはすぐに片付く。そういうわけでコア026の防衛設備構築は現在も進行中である。

 では何のために戦闘班全員を呼びつけたのかというと、タレットに機動力は無いため一度防衛ラインの内側に入ってきたBETAを片付けることが難しいからだ。トピア達は防衛ラインの内側に沿って東進しつつあるBETAを阻止しなければならない。

 

 コア026管轄範囲では地上部分で約400kmの防衛ラインが敷設されているので、設置されているレーザータレットMk.3は約20万台、等倍速全力斉射時の消費電力は等倍速で768GW。176並列26.4GW希釈燃料発電所の等倍速で30棟分、2.5倍速で12棟分の電力だ。

 そしてコア026近くの本島から南西の島にかけて、発電所が既に25棟建設されていた。ユグドラシル大陸から遠く離れているため、本土からの電力は届いておらず、近辺で採掘可能な資源で何とかしているということだ。全力斉射しているのは防衛ラインの一部にすぎないので現状でも電力は足りているが、まかり間違って南西の島に上陸されて南側の発電所群からの送電線を破壊されると一気に供給電力が減るという弱点がある。とはいえ、リスク分散でミサイルタレットも併設されているので、致命的事態になるケースは限られる。

 

マイン≪つまり貴様らは防衛ラインの内側に入ってきたBETAどもを皆殺しにしろ≫

 

ラリー「ハッ! シンプルで分かりやすいぜ!」

 

 まずはラリーが突撃してゼニス(Zenith)で一気に刈り取っていき、残った大物をスコアがマグナムショットで仕留め、トピアと聖騎士が更にその残りを平らげていく。ついでに各個人のターゲットとは別に、この戦場に向かう途中で工場長に貰ったブレード・ランナーズ改の6連装携帯レーザー防御モジュールMk.3 Type Gが小型BETAを景気よく殲滅していく。押し返す防衛戦なら小型種にいちいち手間を掛けていられないだろうということで四人分作ってきてくれたのだ。

 ブレード・ランナーズは脚部に装着する強化外骨格だ。ラリーやスコアの下半身装備枠に入りそうな気がするが、あくまで強化外骨格なので、これだけ装着してズボンを穿かないと見た目が酷いことになる。今回は四人ともエンチャント関係の枠とは無関係に純然たる科学装備として身につけていた。

 トピア達は全く危なげなくBETAを討ち減らしていくが、問題はすぐに露呈した。

 

トピア「攻め寄せてくる幅が広いのでカバーし切れていませんね」

 

 押し寄せるBETA軍団の幅は15kmほどある。これを綺麗に平らげようと4人で固まって南北に往復して名古屋撃ちのようにローラー作戦をしてもペースが追いつかないのだ。トピア達の戦場は東に向かって徐々に後退しつつあった。状況のまずさを察したトピア達は戦いながら相談を始めた。

 

ラリー「最悪俺が海の中まで追いかけることも出来るが」

 

スコア「いや一番殲滅力が高いラリーは一番密度が高い所をやらないと駄目だろう」

 

トピア「突撃(デストロイヤー)級を正面から相手しない前提ならラストプリズムの方が良かったですね。今更ですけど」

 

ラリー「あん時は相手の拠点を攻める前提の作戦で選んだからなあ」

 

聖騎士「これはどうしたものであろうな」

 

スコア「ミラージュを出すか?」

 

トピア「いえ、まずはチームを南北の2つに分けてローラーを2並列にしましょう。チーム分けはこの間と同じで」

 

スコア「分かった。聖騎士卿!」

 

聖騎士「委細承知!」

 

 スコアは聖騎士に声を掛けてトピアやラリーと反対の北側方向に飛んでいった。

 この間と同じチーム分けとは、N班がスコアと聖騎士、S班がトピアとラリーという編成だ。これで互いのターゲットが被らなくなることで殲滅力向上が期待出来る。デメリットは安全余裕が低下することだが、これだけの戦力を用意していて簡単にやられるトピア達ではない。また、いざとなればインベントリに入っているトキソピッド・ミラージュを出すという最終手段もあるが、今の段階ではBETAに知られたくない。

 

 この並列ローラー作戦によりトピア達の後退速度が大分緩やかになった。北から西の海岸線の防衛設備の設置が進めばBETAの流入量が減って状況が好転するはずだが、それまでに東海岸を突破されないかが問題だ。或いは西の島の東海岸に東進阻止用の第二防衛ラインを構築する案もあるが、その分余計に設備と電力と人手が必要なのが悩みどころだ。

 だがマインからの追加指示は無い。この戦い方で間に合うという判断の筈だ。

 

ラリー「その判断は信じていいのか!?」

 

トピア「間に合わなくてもちょっと追撃が面倒になるだけですよ!」

 

 そうして暫く戦闘を続け、東海岸まであと僅かとなった。縦深を使い切ったことで距離を取れなくなり、回避機動に時間もかけられないので必然的にギリギリで攻撃をかわすことになる。混戦に近い状況だ。今も後から詰めてきた要塞(フォート)級が溶解触手をトピアに発射し、トピアはそれを聖十字の盾(Ankh Shield)で斜めに逸らした。流石にこれが直撃すればタダでは済まないだろうが、聖十字の盾(Ankh Shield)には防具破損デバフを防ぐ効果があるため、防具だけで防ぎ切れれば溶解液によるダメージは無い。触手を逸らしながらもトピアは上昇して要塞(フォート)級の喉元に中華斬舞(ちゅうかざんまい)を叩き込んで沈黙させた。そうしている間にも後続の要塞(フォート)級が更に迫ってくる。ラリーのゼニス(Zenith)の通常攻撃単発威力17万では要塞(フォート)級の防御を突破するのが困難で、かと言ってスキルを使うと殲滅の手が止まるため、ラリーはそれ以外の大型種の殲滅を担当し、トピアが要塞(フォート)級の相手をすることになっていた。しかしトピア達が倒す数よりも海岸に迫ってくる数の方がまだ少し多い。スコアと聖騎士の方も同様の状況だ。

 いよいよミラージュ投入の必要性が高まってきた所で、トピア達の上空を複数の機影が通過した。ブロック構造でおよそ箱形のシルエット。後ろ側から青いブースト光を発しており、そのスピードは突撃(デストロイヤー)級を優に超える。

 

マイン≪戦闘班に通達、防衛ライン構築に新型建設ロボットを投入開始した≫

 

トリオ≪自動で防衛ラインを伸張するルーチンを組んだからの、ここからは人力よりも大分手早く進むはずじゃ≫

 

テクス≪お待たせして申し訳無いでござる≫

 

サティ≪よく保たせてくれたわね≫

 

トピア「メイン盾来たァ! これで勝()る!」

 

 建設ロボットと言うからには直接の戦闘能力は無いはずだが、トピアは勝利を確信した。戦闘班が苦戦を強いられているのには殲滅力の不足もあったが、そもそも防衛ライン構築速度が人手を増やしても今ひとつ足りていないというのが根本的原因だったのだ。

 急ぎの設置作業なのに工場長やサティ、テクスが現場に参加していないと思ったら、特急で新型建設ロボットを仕上げていたようだ。

 

 ここからBETAの流入量が目に見えて減り始めたことで徐々に戦線が前進し始め、1時間経つと防衛設備がBETA上陸地点全域をカバーして上陸済BETA掃討戦の様相になり、2時間経つ頃にはトピア達の西の島掃討戦も完了した。

 

マイン≪026西の島全域でのBETA全滅を確認した。戦闘班は撤収せよ≫

 

サティ≪お疲れ様。夕飯の時間だから一旦戻りなさいよ≫

 

 

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 新型建設ロボットの威力は凄まじく、南北の海中防衛ラインの設置も急ピッチで進んでいた。コア026以外の場所でも同様に進んでいるらしい。

 コア026管轄戦域で戦っている間にコア019や024、それからコア017の西側にもBETAが押し寄せてきたが、こちらは防衛設備構築が間に合って事なきを得たようだ。生産班自ら戦場で建設に従事する方針ではコア026以外の防衛設備建設が間に合わず、戦闘班は次の戦場にまた急行する必要があったかもしれない。

 

 

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トピア「……何とかなりましたね」

 

スコア「押し返す防衛戦となると流石に数の暴力が酷かったな」

 

ラリー「全域で見ると既に8箇所同時の上陸か」

 

聖騎士「戦線1もまだ迎撃中というのはとんでもない物量であるな」

 

トピア「まあ億は確実にいますからね。自動迎撃出来ないとどうしようもない物量ですよ」

 

 億、或いは十億のBETAに対抗するのは七人の匠と百人程度の人間なのだ。戦闘班がどれだけ強かろうと、こちらも量産や自動化で対抗しないとどうにもならない。

 

 日が東から昇り、夜が明けていく。トピアが周囲を見渡すと、既に建設ロボットによる死骸回収が始まっていた。建設ロボットの形状は以前とは大分変わっており、どちらかと言うとTechに近い形になっていた。

 建設ロボットは以前のように幾つか掴んで回収したら戻るというような挙動はしておらず、恐らくTechインベントリにひたすら詰め込んではそれを遠方の還元施設で別のロボットが取り出して資源化するという動作をしていた。

 ここまで突貫で進めてきたため一部人力でカバーする必要があったが、ここに来て最終的な自動化システムが動き始めているということだ。神に定められたものではない、(マイスター)達の総力を結集したことによる文明レベルの進歩をトピアは実感した。

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