【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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141. 衛星観測班にログを確認させたときに偶然見つかったんじゃ

 翌朝、トピアがこの世界に来てかから8日目。トピアの号令でいつものように朝の会議が始まった。

 

トピア「昨日は結局会議の続きをやる暇がありませんでしたが、昨日の分も併せて会議を進めたいと思います。まずは工場長、衛星観測情報からどうぞ」

 

トリオ「うむ、新型の建設ロボットの導入で今朝までに防衛線が一通り完成しておるぞ」

 

 トピアの要請に応えてトリオがいつものように衛星観測図を出した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

トピア「うーん、新想定防衛ラインがわずか1日で完成とは」

 

ラリー「これがあの新型の建設ロボットの威力か」

 

スコア「相当能率が上がっているようだが、どんな性能なんだ?」

 

トリオ「うむ、こんな感じじゃの」

 

 トリオ工場長がいつものようにディスプレイに情報を出した。トピア達もコア026管轄戦線で見かけた、大型化した建設ロボットだ。

 

■名称:建設ロボットMk.3

・サイズ:5m×3m×3m

・建設方式:Techインベントリ対応型統合建設システム

・発電機関:Tech標準時空勾配発電機、携帯核融合炉併用

・推進機関:Better Future 直線運動エンジン×1、小型姿勢制御スラスター×8、小型イオンドライブ×11

・最高速度:311km/h

・航続距離:無制限

・座標固定機構:名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)製座標固定システム

 

スコア「以前のものに比べると随分でかくなったな?」

 

 確か以前の建設ロボットは長軸1mも無かったはずだ。かなり大型化している。

 

トリオ「特急仕上げじゃからの。単体ユニットじゃなくほぼ既存Techブロックの組み合わせで作ったけえ、ダウンサイジングは後回しになっとる」

 

サティ「こういうときにブロックの組み合わせだけで設計出来るTechは便利よね」

 

テクス「Techビルドシステムの強みでござるな」

 

スコア「ああ、だからこのサイズなのか」

 

 Techブロックの最小サイズは1m×1m×1mなので、機能ごとに複数組み合わせたら数m程度の大きさになるのが必然だ。サイズが奇数になっているのは、中央底面に1m×1mサイズで統合建設システムの機能を持つブロック、その上に上下方向の直線運動エンジンを配置しているためのようだ。また、スピードの要となるイオンドライブに殆どの容積を割り振っているため着陸用の車輪は無いのだが、これは以前の建設ロボットも同じだ。

 

トピア「その代わり燃料消費無しで突撃(デストロイヤー)級をぶっちぎる速度で飛び続けられるようになってるのが特長ですね?」

 

トリオ「バッテリーが切れるたびにロボットステーションに戻らざるを得んのと、歩く程度の速度しか出んのが最大の欠点じゃったけえの。充電の必要が無いならロボットステーションに入るサイズにこだわる必要も無いけえ、組み合わせるだけで要求を満たすならもうTechベースでええじゃろという話になってな」

 

テクス「ガンマには到底及ばぬとはいえ、突撃(デストロイヤー)級から逃げ切れる速度ならば十分と見たわけでござる」

 

サティ「サイズは大きくなってしまったけれど、これでも部材は量産しやすいものでまとめたのよ?」

 

マイン「1台の性能が格段に上がった分、数がそんなに要らんというのもある。速度がそれほどでない代わりに自動で動くガンマ・ジェネラルのようなものだ。勿論ガンマ・ジェネラルに比べれば生産コストは比較にならん程安いぞ」

 

ラリー「なるほどな」

 

トピア「BETAの群れの中に物怖じせずに飛び込んで高速でタレットを敷設しつつ確実に死骸を片付けていくのが非常に頼もしいですね」

 

スコア「そういえば先ほどの地図でオレンジの線が引いてあったが、あれが新たに引いた送電網か?」

 

サティ「そうね。ようやくこの大陸と前線の電力が共有出来るようになったわ」

 

 衛星観測図にはユグドラシル大陸から前線まで赤道沿いにオレンジのラインが引いてあり、大陸内にはコア同士を繋ぐ線も引いてある。更に青い線の防衛ラインは送電網を兼ねているので、防衛線1周分送電網が繋がっていることになる。

 

トリオ「幸い前線近くにも原油の油脈があったけえ現地で発電所を建てられたが、無い場合はレーザータレットが動かんからの」

 

テクス「まあ電力が無くてもミサイルタレットだけで前線をもたせられるのは確認済でござるが、今以上の勢いで押し寄せてきたらどうなるか分からんでござるからな」

 

トピア「リスク分散目的で作ってもらいましたが、停電に強いのも有難いですね、無限ミサイルタレット」

 

サティ「電力の状況については、現在のところ発電所が1,294箇所、発電量は等速34TW、2.5倍速で85TWよ」

 

トピア「一昨日伺ったときは等速2.6TWだったはずですが、また一気に増えましたね?」

 

サティ「まだ目標値には足りないけれど、今は発電所の建設も建設ロボットが自動でやってくれてるから時間の問題よ」

 

スコア「おお、発電所も遂に自動で建つようになったか」

 

トリオ「希釈燃料発電所の建設が大分単純化出来た上に建設ロボットの方も多少複雑なルーチンにも対応出来るようになったからの」

 

トピア「ということはコア周辺の整備も?」

 

トリオ「複雑なコンベア構成がネックじゃから、ストレージロジスティクス方式にすれば可能じゃろうな」

 

スコア「全面的に切り替えるにはTechインベントリ管理サーバーの処理能力の問題がまだあると聞いたが?」

 

スチームパンカーのホープ「そーだねえ、まだちょっとインベントリ管理サーバーの処理能力が足りないから、もっと強化する必要があるねえ。でもそうなると研究所のスペースを圧迫しまくるから本格的にサーバールームを作った方がいいと思うよ?」

 

スコア「研究所の隣に今空いているスペースで足りるなら問題無い。遠慮無く使ってくれ」

 

スチームパンカーのホープ「ヒャッハー仕事の時間だァ!」 

 

サイボーグのゼータ「腕ガ鳴リマスネ」

 

トピア「……あれ? 昨日あれからちゃんと寝ました?」

 

 スチームパンカー(Steampunker)達のテンションが昨日の朝と変わりないのでトピアは首を傾げた。

 

スチームパンカーのホープ「勿論さァ」

 

サイボーグのゼータ「3時間ホドハ」

 

トピア「あなたたち早く寝なさーい!」

 

スチームパンカーのホープ「サーバールーム作ったらね!」

 

 昨日も仕事が終わったら寝ると言いつつ全然寝てないので全く信用ならない。しかしそんなことを言い争っていても時間の無駄なので、トピア達は話を進めることにした。

 

トピア「ともかく、コアが042まで進んで前線の穴もほぼ無くなりましたね。昨日の朝から26箇所も増えた形ですか」

 

テクス「しかしこの完成した防衛線に世界中で8箇所もBETAが食いついてるあたり、タイミング的にはギリギリでござったな」

 

スコア「マインが言った通り東側は他の方面の囮だったわけだな。本来連絡出来ないはずの月とどうやって連携したのかが謎だが」

 

トリオ「ああ、それなら原因が分かったぞい」

 

カミール「おお、流石は工場長だね」

 

トリオ「いや、儂じゃないわい。海に潜る前のBETAの動きを見るために衛星観測班にログを確認させたときに偶然見つかったんじゃ。それでハイヴ01から月に向けてレーザーが立ち上っておる瞬間を発見してな。つまり連中、()()()()()()()()()()()ぞ」

 

トピア「……その手がありましたかぁ」

 

 トピアは手で顔を覆い、天を仰いだ。

 

ラリー「どういうことだ、光線(レーザー)級はまだいねえんじゃなかったのか?」

 

トピア「いえ、光線(レーザー)級というのは元々原光線(レーザー)級という採掘・推進用の種を遠距離攻撃用に再設計したものなので、光線(レーザー)属種自体は元々いるんですよ。それを通信用に特化させたんでしょうね」

 

 BETAの学習・対応能力は脅威であり、環境が違えば違う方向に特化する可能性は十分に考えられたのだ。地球で確認されたもの以外の新しい種が出てこない保証など無いということだ。光線(レーザー)通信級とでも呼ぶべきか。

 

シュミット≪ともかく、どうやって連携していたかの種は割れたわけだわね≫

 

サティ「こちらの存在や拠点位置を概ね認識しているのも月からの観測情報があるせいということね」

 

カミール「しかし話に聞くよりも妙に応用力が高いな、この星のBETAは」

 

トピア「地球のBETA戦争では見られなかった方向性ですね。やけに戦略的な動きをすることと言い、知能の高さには注意が必要でしょう」

 

テクス「こちらのBETAが学習した内容がそのまま月に伝わるのも厄介でござるな」

 

トリオ「長期戦にもつれ込んだらBETAの種類や戦略が引き継がれて次の月攻略も泥沼になるわけじゃな」

 

マイン「油断も隙もあったものではないな。……まあどのみち連携がある前提で作戦を立てているから問題は無いがな」

 

スコア「それで話を戻すと、見せ札を使った多方面攻勢は無事防げたわけだが、今日はどの方面にコアを設置するんだ?」

 

マイン「いや、今日のところはコアの設置予定は無いぞ」

 

ラリー「お、どういうことだ?」

 

マイン「寝ぼけるな、この好機を活かして連中の息の根を止めるために決まっているだろう。文字通りの短期決戦だ」

 

 突如決戦の宣言をしたマイン。(マイスター)達の視線が集まり、会議室には緊張感が満ちた。




 第6章終了です。次回から第7章です。

 建設ロボットMk.3の最高速度は実際にそれっぽいTechを組んで測定してみました。せいぜい200km/hくらいかと思ってたら意外に速度が出てびっくりです。
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