【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 第7章開始です。


第7章:匠 VS クトゥルフ
142. やっぱりこれちょっとおかしいですよね?


 BETAとの決戦を宣言したマインが、注目を集めて得意げな顔でその意図を語る。

 

マイン「まず生産と電力確保のための資源は現在の42のコアの探査範囲だけで全28のハイヴ攻略のために必要な量の3倍に達している。これは間違いないな?」

 

 マインが生産班に視線を向けると、トリオ、サティ、テクスが頷いた。

 

サティ「ええ、まだ手を付けてない部分が多いけれど、建設ロボットで採掘設備を設置し終わればそうなるわね」

 

マイン「ならば新しいコアを射出・設置して生産力を増やす段階は終わりだ。新しいコアを設置する為の資源はそのまま貯め込んでおき、状況に応じてどこにでも新しいコアを飛ばせるようにする。そしてコア020のある半島の北端からコア043予定地に向けて防衛設備と送電網を伸ばして周辺BETAを掃討次第コア043を設置してハイヴ24の地下構造を探査。ハイヴ24をタレットで囲んでBETAの逃げ道を塞ぎ、突入して攻略。その繰り返しで明日以降コア043から046を建設しつつハイヴ24、10、03、01を順次攻略していく。これでこの星のBETA共はチェックメイトだ」

 

 マインは正距円筒図法の世界地図を180度スクロールしてハイヴ01を中心にした地図にし、攻略経路を描いていった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

マイン「ハイヴ攻略前にはハイヴ内の防衛力を低下させるためにBETAの間引きや誘引を行うのが常道だが、こうなってしまえば未だに続いている8箇所同時攻勢も、自ら間引かれに来てくれてむしろ手間が省けたというものだ。害虫共がこの我に戦略で勝負を挑もうなど、百年早いわフハハハハ!」

 

スコア「なるほど、確かに好機と言えば好機だな」

 

ラリー「これは行けそうだな」

 

モモ王女「素晴らしい作戦ですわマイン様」

 

マイン「フッ、それほどでもない。付け加えるとこの侵攻ルートに設置する迎撃設備だが、ミサイルタレットの都合上、線の両側に撃てるように加速ドーム60m分の距離を空けて背中合わせに二重に設置する。ハイヴ包囲では三重だな」

 

カミール「ああ、ミサイルは後ろに撃てないものな」

 

テクス「まあ両側から同時に攻められた場合に迎撃能力に余裕が持てるゆえ、仮に後ろに撃ててもそうするべきでござろう」

 

 レーザータレットは旋回砲塔になっているので真後ろにも撃てるが、ミサイルタレットは同じ自動迎撃装置ではあるものの回転砲塔方式ではないため、決まった方向にミサイルを射出してから軌道の変更で方向を調整するようになっている。そのため真後ろのターゲットを撃つのは困難なのだ。長めの発射間隔を補うために設置密度を優先して幅1mの省スペース設計にした弊害とも言えるが、そもそもの原型であるHawkeye 巡航ミサイルからしてこういう設計なので仕方の無いところだ。

 また、レーザータレットも砲塔の旋回に時間が掛かるため、前後交互にターゲットするとDPSが大きく低下してしまう。やはり前後別々のタレットに担当させた方が良いだろう。

 なおハイヴ包囲の三重タレット構成も図示されており、以下のようになっていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 コアの地下探査によりハイヴの構造は簡単に判明するので、一番外側の(ゲート)ごと包囲して孤立させてしまうということだ。これにより間引きは益々捗るし他のハイヴからの援軍も遮断出来る。

 

ファム「いよいよ攻略開始ですか……」

 

 決戦の時が近いと聞いて、ファムは小さな拳を握りしめた。神敵討滅の時は近い。その聖戦に役に立てることの何と素晴らしいことか。

 いざ戦争となれば直接戦う人員だけが目立ちがちだが、この匠衆(マイスターズ)ではそれを支える人員もしっかり評価されている。物作りのプロが上に立っているからだろう。神に奉仕出来て評価の言葉まで戴ける、他には無い職場だ。島の皆が集うのも必然というものだ。

 

ラリー「ハイヴ1つの攻略に1日掛けたとしてもあと4日で終わる計算か」

 

スコア「光線(レーザー)級が出てくると飛ばしたコアを撃墜されるようになるから、出てこないうちに本丸を速攻で攻め落とすわけだな」

 

テクス「光線(レーザー)級が出てこないうちに本拠地を叩いてしまえば学習機能を喪失して開発されなくなる故、残ったハイヴの攻略が格段に楽になるというわけでござるな」

 

トピア「……あの、ちょっといいですか、このハイヴナンバーの後に付いてる括弧の数字は各ハイヴのフェイズで合ってますか?」

 

 暫く首を傾げながら黙っていたトピアが工場長に疑問を投げかけた。

 

トリオ「そうじゃな。昨日観測員に確認させたものじゃ」

 

トピア「とすると、やっぱりこれちょっとおかしいですよね?」

 

 いよいよ攻略開始の算段が付いたと思われたところでトピアが呈した疑問に、(マイスター)達の注目が集まった。

 既にトリオ工場長や衛星観測担当には伝えてあるが、トピアの知識によるとハイヴの規模判定は概ね以下のようになっている。

 

・フェイズ0:落着直後からフェイズ1に至るまでの状態

 

・フェイズ1:地表構造物(モニュメント)高度0。落着地点直下に向けて主縦坑(メインシャフト)の掘削が始まっており、反応炉にあたる重頭脳(ブレイン)級や頭脳(ブレイン)級が主縦坑(メインシャフト)の底に移設されるため大分攻略が困難になる。設営開始から20時間以内にこのフェイズに達するため、20時間以内の対処が重要になる

 

・フェイズ2:地表構造物(モニュメント)高度50m以上、地下茎構造物半径約2km、最大深度約350m。この段階で蟻の巣のように地中を横に走る横坑(ドリフト)横坑(ドリフト)の地上側出口にあたる(ゲート)、地下の横坑(ドリフト)同士の結節点である広場(ホール)が形成され、主縦坑(メインシャフト)の底が広く掘削されて大広間(メインホール)になる。フェイズ1までに比べBETAの数が爆発的に増え、ハイヴの周囲30km圏内の植物は5割方駆逐される。設営開始から1年もあればこのフェイズに達する

 

・フェイズ3:地表構造物(モニュメント)高度100m以上、地下茎構造物半径約4km、最大深度約700m。地表構造物(モニュメント)(ベント)という穴が空くため主縦坑(メインシャフト)が露天状態になる。(ベント)から最短で侵入しようとすると光線(レーザー)属種に集中迎撃されるが、光線(レーザー)属種さえいなければ非常に容易に侵入出来るとも言える。設営開始から最短2年でこのフェイズに達する

 

・フェイズ4:地表構造物(モニュメント)高度300m以上、地下茎構造物半径約10km、最大深度約1,200m。この段階でハイヴから半径40km圏内は火山以外ほぼ真っ平らに均される。当然生きているものもいない。設営開始から最短2年でこのフェイズに達する

 

・フェイズ5:地表構造物(モニュメント)高度600m以上、地下茎構造物半径約30km、最大深度約2,000m。宇宙へ物資を打ち上げる機能が追加され、ハイヴに必要な機能を全て備えた状態になる。最短11年でこのフェイズに達する

 

・フェイズ6:地表構造物(モニュメント)高度1,000m以上、地下茎構造物半径約100km、最大深度約4,000m。地球のオリジナルハイヴが2001年時点でこの規模。27年ほどでこのフェイズに達する

 

・フェイズ7:火星のハイヴは全部これ以上の規模で、フェイズ9まで存在する

 

 なおフェイズ3と4がどちらも最短2年になっているが、成長速度は周囲の環境やBETAの間引きをどれだけ実行出来たかにも左右されるので、全てのハイヴが同じスピードで成長するわけではない。

 

マイン「おいニンジャ、おかしいとは何がだ? 我の作戦に穴があるとでも言うのか?」

 

トピア「そっちじゃないです。これ、ハイヴ01がフェイズ6に達してるじゃないですか。私はシームレスワールドの構築を阻害する外敵を駆除してこのベータテストを終わらせろと命じられてここに来たんですけど、フェイズ6に至るには27年掛かるはずなので、1年前にうちの女神的存在がこの世界の構築を始めた時点よりも前からBETAが居座ってたことになりません? せいぜい2年で到達するフェイズ4くらいを想定してたんですけど」

 

スコア「言われてみればそうだな」

 

サティ「そこのところどうなのかしら、アヌビス様?」

 

アヌビス神「XXX. XX. XXX(連中がこの星に来てからまだ半年も経過していない。単純にペースが速いのだ。恐らくこれまで邪魔が無かったことと、この星の資源の質が高く豊富なことが原因だろう)」

 

 何とこのシームレスワールドはBETAの活動に非常に適した環境であるらしい。

 

マイン「アヌビス神んん!? 貴様そういうことは早く言え!! ()()()()()()()()()()()!?」

 

 マインが机に拳を叩き付けながらアヌビス神に抗議した。アヌビス神は神としてのスタンスなのか、問われなければ情報を公開しないところがあるので、またやらかしたのかと判断したわけだ。しかし今回はアヌビス神も困惑していた。

 

アヌビス神「X,XXX?(いや、そもそも通常どのくらいのペースでハイヴが大きくなるのかなど今知ったところなのだが?)」

 

トピア「……言われてみればその情報を共有しておかないと気付くはずもなかったですね。申し訳ありません」

 

 結局アヌビス神の代わりにトピアが頭を下げることになった。つまり前提知識が足りないためにこの星のハイヴの拡張速度がおかしいことに気付いていなかったという事故であった。

 

カミール「しかし邪魔が無かったとは言え50倍以上のペースか……手強いな」

 

マイン「チッ、まあいい。モタモタと27年も掛けた連中に比べれば、2週間で攻略すれば700倍のペースだ。50倍程度なんとでもしてくれる」

 

モモ王女「頼もしいですわマイン様」

 

スコア「地球に比べて700倍のペースか。あまり意識していなかったがこちらの進捗速度も相当なものだな」

 

トピア「伊達に(マイスター)が七人も集まってないということですね。あと足の引っ張り合いが無いのも大きいです」

 

 BETAが地球に襲来したのが1973年なのでそもそも対抗するための科学技術の発展に時間が掛かったというのも大きな原因ではあるが、BETAを侮って資源独占目的で他国の軍事介入を拒否するとか、BETAに負け続けているのに何故か勝った後のことを考えて対人戦略に注力するなどといった危機感の欠如もBETA戦争が悲惨なことになった一因であった。また、難民政策をおざなりにして管理組織を腐敗させ、恭順派や難民解放戦線に後ろから撃たれるようになったのも痛い。

 

テクス「問題はそれに加えてハイヴごとに攻略方法を変える必要性もあるかもしれんということでござるな」

 

サティ「学習対応速度も速い可能性があるということね?」

 

トリオ「考えたくもないが、それも想定しておくべきじゃろうな。そんでさっき言いかけたことじゃが、海に入ったBETAの集団は8つじゃったから、水中で分割されてない限りは現状の8箇所襲撃で全部じゃろう。衛星観測情報は以上じゃ」

 

トピア「ありがとうございました。では次に……いやちょっと待って下さい。一つ重大な情報を思い出しました」

 

マイン「何だ、まだ何かあるのか?」

 

トピア「地球に到達したBETAは資源開発マッピング機能が壊れていたために侵攻速度が遅かったという、本編には全く出てこない裏話です」

 

 地球を襲ったBETAは一部の機能が故障していたというのは本編に全く出てこない裏設定である。それ自体はファンにはある程度知られているのだが、どうも半端な形で伝わっており、壊れていなければ人間などの炭素生物を生物と認識出来ていたという()()も一緒に広まっている。しかし実際壊れていたのは資源開発マッピング機能であり、もしこれが故障していなかったらむしろ地球人類など「あっつう間に」滅ぼされていたらしい。つまりBETAとしては地球に襲来した連中より侵攻速度が速い方が普通なのだ。

 

マイン「おいィ貴様ニンジャ!?」

 

サティ「つまりうちの資源スキャナーやカンパニーの資源探査機能が無い状態だったということね? それは当然大きな差が出るわよね」

 

テクス「しかし学習機能まで50倍という悪夢の可能性はむしろ低くなったとも言えるでござるな」

 

スコア「それは不幸中の幸いだな」

 

トピア「ともあれBETAの勢力拡大が速い原因は概ね分かりましたので、次に新型の建設ロボットが前倒しで導入されたことで大きく変わりそうな作業員の人員配置の話をしましょう」

 

 建設ロボットMk.3の導入により作業効率は見違えるほど上がったが、その代わりに人員が余るのでそれはそれで再振り分けが必要だという話だった。

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