引き続き朝の会議。衛星観測情報の共有が終わり、
マイン「しかしニンジャ貴様、軽く流そうとしているがBETAの侵攻速度を見誤っていた失点は軽くないぞ?」
かなり重要な情報をトピアが見落としていたことにマインが納得していなかった。仰ることは尤もなのだが、この忙しい時に代表を追い落とすためのアピールとは面倒な、とマイン以外の大多数の心境は一致した。だがトピアの対処も手慣れたものだ。
トピア「ええ、マインさんの短期決戦構想の正しさが益々証明されてしまいましたね。流石は総司令官! すごいなー、あこがれちゃうなー」
マイン「む? ……フフフ、
追及を突如称賛で返されたことにマインは面食らい、総司令官という立場をことさらにアピールしながら反射的に謙遜した。トピアは多少棒読みの所はあったものの内容としてはマインの仕事ぶりを褒めただけなのだが、自尊心を満たす一連のルーチンに入ったことでマインの誤魔化しは完了だ。ちょろい。
実際の所
なおトピアにはマインを軍の総司令官で満足させられそうなプランが一つある。それは今回のBETA駆逐戦争の戦功を以てマインに「総軍大元帥」という肩書きを与えようというものだ。これは通常国家元首に与えられる「大元帥」という称号に相当するもので、マインに与えるものはただの名誉称号ではなく実際に最大の軍事権限があるのできっとマイン本人は喜ぶだろう。実態は今と何も変わらないのだが、名乗った時に「代表」よりも偉そうに聞こえるのが重要なポイントだ。ちなみにトピアが一番好きな大元帥は
トピア「ありがとうございます。ではまず、部署ごとに要望を出しましょう。うちは引き続きラッシュ銀貨確保のための頭数が臨時で必要なのと、それに加えて量産品に付与をする人が常設で数人欲しいですね」
サティ「私の所は採掘・電力関係の敷設作業自体は自動で出来るようになったけど、敷設ルートの指示や一旦敷設したものの破損やエラーを監視して修復の手配をする人員が必要ね」
トリオ「儂のところは衛星観測人員がそのまま、工場の拡張はロボットに指示をする者が数人必要じゃの」
ラリー「俺んとこは変わってねえな。引き続き釣りと買い付けだ」
スコア「ポータル管理人員は結局電力敷設ロボットに統合されたからもういいとして、地下農作物の種まきと料理、更に料理にエンチャントを行う人員が必要だ。エンチャント人員はトピアさんと共通でもいい」
マイン「コア周辺施設のロボットへの敷設指示に加え、そろそろ常設地中監視の人員が必要だな」
テクス「研究員は今のところ間に合ってるでござるが、サーバールームを作るにあたって管理者が必要でござるな」
一通りの要望が出揃い、人員管理を担当しているファムとモモ王女が相談して要望に応じた配分を考え始めた。
モモ王女「エンチャント付与人員以外にも衛星監視、地中監視、エラー監視、サーバー管理は一つの部署として統合出来ないでしょうか? 連絡が円滑になり、人員の融通も利くようになると思うのですが」
ファム「あとロボットに指示を出す人員も一つの部署に統合した方が資源や敷地の配分のバランスを適切に決められそうですね」
トピア「んー、そうですね、普段の業務は別々になると思いますが、類似の仕事をする人員を同じ部署にまとめて部署内で助け合えるようにするのはいいかもしれませんね。共有出来るノウハウもあるでしょうし。では作業員の方々をそれぞれ総務課、製造課、監視課、設備課としてまとめましょう」
モモ王女「分かりましたわ」
トリオ「しかし急に農業に人員が必要になったのは何でじゃ? 自動農場ではいかんのか?」
スコア「それなんだが、手作業でしか作れない金色地下作物を材料にしたレア料理にフルエンチャントすると、アンストッパブルやマスタリパッシブスキルと同じ枠のバフ攻撃力を112%、防御力を102上げられることが分かった。効果は5分間だ」
トピア「更にマスタリ由来の攻撃力上昇パッシブバフスキルも装備に付与出来ることが分かったので、このバフを前提とした、攻撃力と機動力を両立する装備の設計をカミールさん達にお願いしてるところです」
聖騎士「それはすごいな……!」
戦闘班四人の中では攻撃力が低い方になる聖騎士は、更なるパワーアップの予感に拳を握り込んだ。
サティ「ちょっと待って、ポーションじゃなくて料理なのよね? 5分ごとに1回食べられるものなの?」
トピア「……そうですね、一応確認しておきましょうか。5分に一度でいいのでディップスナックやスムージーを3秒以内に食べられる人、挙手してください。実物はこれです」
トピアが料理の実物をテーブル上に出して問いかけると、トピア自身とラリー、スコア、聖騎士、
一方、防衛用の戦力を持たされているカミールとファムは挙手しなかった。以前も 伝説の 特級の 高級な 上質な 特選にんじんハンバーグを食べきれなかったのだから無理も無い。
カミール「ワタシは数回程度ならいけそうだが、1時間戦闘が続いたりすると無理だな」
ファム「私もです」
トピア「あれ? カミールさんは
カミール「いや、そうは言われても無理な物は無理だぞ。実際の検証結果の方を採用してくれ」
トピア「まあそれは当然そうですけれども」
それはそれとして原因が気になるのだ。教化が途中で止まったために権能も一部欠落しているのだろうか?
テクス「しかしドワーフやサイボーグは胃の作りが違うからいいとして、王女殿下は意外でござるな?」
ファム「失礼ながら、それほど健啖家には見えませんが」
モモ王女「あら、そのくらいは王族の嗜みですわよ?」
ラリー「ああ、
テクス「王族とは一体」
マイン「フフフ、我が友もなかなかやるではないか」
サティ「あとは、聖騎士卿も本当に大丈夫なの?」
聖騎士「うむ、鍛えているからな」
サティ「ああ、うん、そう……」
鍛えてどうにかなるものなのかという疑問はあるが、他にも出来るという者がいるので、サティもファンタジー人類について深く考えるのはやめにした。
トピア「えーまあ、戦闘班は全員大丈夫そうですが……どうします、王女殿下にも戦闘用の装備を作りますか?」
現在地上で仕事をする作業員とその管理をする者にはカミールが作った量産型のフルエンチャント装備が支給されており、ラリー関連の襲撃では殆どダメージを受けないようになっているが、スキルを付与していない上に大半の者は覚悟も出来ていないのでBETAと戦うのはまず無理だ。カミールやファムにはそれより上位の装備が支給されているが、そういった戦闘用の装備を受け取ると、今度はいざというときに戦闘や防衛の役割を持たされることになる。
実はモモ王女の装備スロット仕様はラリーと同じなので、フル装備にするとかなりの戦力になるのだが、それはそれとして
ラリー「ラッシュ銀貨が必要なら俺が稼いできてもいいが、そもそも積極的に戦ってほしくはねえんだよな……」
モモ王女「いざというときに戦える備えがあっても良いとは思いますが、積極的に戦わないのに装備を用意していただくのは皆様のご負担になるのでは?」
テクス「そもそも戦闘班ではなく管理職でござろう?」
サティ「でもトピアもその管理職の一番上だからあんまり理由にならないのよね」
トピア「では作戦開始までの準備で装備やラッシュ銀貨が余ったら王女殿下の分も作りましょう。その場合も別に攻略戦に参加しろとか言いませんので、いざというときの防衛だけお願いします」
モモ王女「分かりましたわ」
トピア「あと時間があったらラッシュ銀貨稼ぎへの参加をお願いします」
ラリー「おい、それはどうなんだ」
トピア「直接戦ってもらうわけじゃないんですから、既に守りが万全な上にこんなに物怖じしない人を連れて行かない理由が無いですよ」
モモ王女「うふふ、大丈夫ですわラリー様」
なおモモ王女はアヌビス神から授かる必要も無く教化の影響でクラフトピア世界の住民としての基礎能力を授かっており、レベルが上がるようになっている。更にラリーの要望で既に防具精錬だけはしてあるので
ラリーは相変わらず
トピア「では他にこの場で出しておく情報や物の受け渡しは……ラリーさんどうぞ」
ラリーが挙手したためトピアが発言を促した。
ラリー「おう、明日から攻略作戦が始まるならそろそろ
テクス「確かクトゥルフの王でござったな?」
マイン「BETAに対空攻撃を覚えさせると面倒だから先送りにしていた奴だな。……まあこのタイミングなら悪くあるまい。折角明日まで時間を取ってやったのだから、万全に準備するがいい」
ラリー「ありがてえ」
マインが作戦決行を明日からとしたのはまず生産と発電を必要十分なレベルに引き上げるためではあったが、いまだに伸びしろがある戦闘班の準備を待つ意味もあった。
トピア「ムーンロードの討伐報酬は確か……ゼニスの材料やラストプリズムでしたっけ」
ラリー「おう、
トピア「確かにラストプリズムは私も欲しいんですよね。聖騎士さん用のゼニスもあれば頼もしいですし」
聖騎士「いや、ゼニスの攻撃方法は剣技とは言いがたいので、我が使いこなせるかどうかは微妙であるな。フライングドラゴンの衝撃波にスキル威力が乗るのでこちらの方が使いやすいであろう」
確かに
トピア「では聖騎士さんにはそのままフライングドラゴンを使っていただきましょう」
ラリー「まあゼニスの素材は希少だから要らなくても捨てねえけどな。あと一度倒せば近距離テレポートを無制限に発動出来る
サティ「待って、予めやる時間を決めておいてくれるかしら? 地上の作業員が巻き込まれたら問題だもの」
ラリー「そうだな、じゃあ作業員の割り振りが決まって現場に出る前、つまりこの後すぐに……」
ラリーが実行のタイミングを告げようとした丁度その時、その場の全員に通信が入った。
トリオ「おう、何事じゃ?」
衛星観測員≪赤道上に4つの謎の物体、推定ピラーが出現、周囲の空間を侵食しています!≫