【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

146 / 387
146. あ、これ時間があれば出来そうでござるな?

 月の支配者(Moon Lord)狩り周回完了後、トピアは★×10以上の量産が不可能な精錬石を稼ぎに出かけた。★×10以上で現在必要な精錬石はソーラーフレアアーマー(Solar Flare Armor)の為の★×10、飛翔記章(Soaring Insignia)の為の★×12だ。★×11は 伝説の ゼニス(Zenith) や 神話の ラストプリズム(Last Prism)などのモディファイア付き★×10武器だけで、現在武器に精錬の必要は無い上に仮にあったとしてもマイナスモディファイアで★9以下に一時的に下げることが可能なので現在のところ全く需要が無い。そして★×10は全レベル帯のドラゴンがドロップする旧・フランベルジュでまかなえるため、ダンジョンに潜る必要が無い。通信会議しながらでも精錬石稼ぎが出来るというわけだ。

 精錬石稼ぎの時間効率のために悲願の罪の薬が必要だが、トピアはこの世界に来る際に悲願の罪の薬を4,000個持ち込んでいるのでまだまだ在庫に余裕がある。罪の薬の供給元である地下のダークアヌビス神殿の位置はコア・ニュークリアス003を設置した時点で既に判明しているが、稼ぎに行く必要も今のところ無いのだ。

 

トピア「……というわけでピラーとムーンロードが無限に召喚され続ける状態は鎮圧・封印に成功しました」

 

 トピアはアヌビスの免罪符でドラゴンを繰り返し召喚してボールライトニングで滅殺しながら通信会議で報告を行っていた。

 

サティ≪赤道送電網の被害については今チェックをさせている所よ≫

 

トリオ≪教化の影響が敵に利用される可能性は考えとったが、BETAでなくて良かったの≫

 

カミール≪それほど強くなくても延々召喚され続けるのは流石に厄介だから、結界の旗が思った以上に重要アイテムだったわけだな≫

 

ラリー≪前のままの俺なら多分勝てねえくらい強くはなってたから、あのまま強くなり続けたら危なかったかもしれねえけどな。まさか元の状態がレベル1扱いとはな≫

 

スコア≪なあ、もしレベル255まで上がり続けたらどのくらいの強さになったんだ?≫

 

トピア「あー、カミールさん、計算お願いします」

 

カミール≪ちょっと待ってくれ≫

 

シュミット≪ここをこうだわよ≫

 

カミール≪……ライフ3827万、攻撃力104万になるな≫

 

 カミールがシュミットに手伝ってもらって出した結果はマスターモード換算なので、実際はこの4/3倍になる。しかしマスターモードのままでも驚異的な数字だ。

 

スコア≪やはりそこまで行くと生身だと()()()()になるな≫

 

聖騎士≪早めに潰せて良かったであるな≫

 

マイン≪ミラージュならば問題無く倒せたであろうが、月から見られているからな≫

 

トピア「あと狂信者にはエンチャントの基礎知識が無かったのでノーマル積み上げ型エンチャントでそれほど強烈なエンチャント構成ではなく、レベルに比べると影響が少なかったですね」

 

 制圧した狂信者達の拠点に残っていた武具から見る限り、エンチャント構成は空回りアセンでもなくファーヴニル由来のものやケビンのエンチャントも付与していない初歩的なものでしかなかった。焦げた樹木から入手出来る 炎の精霊の やペットの羊から入手出来る ふかふかの 、ゴブリンバードから入手出来る バードの といったエンチャントは入手性の良さから流石に付与されており、そのせいで魔法攻撃力(MATK)やライフ、空中移動速度、攻撃速度に向上は見られたが。レガシー小麦畑が手に入らないのでエンチャントの量産が難しいという都合もあっただろう。

 

聖騎士≪流石は人類の最前線であるな。邪教徒どもとは水準が違う≫

 

 この世界の他の地域の常識をぶっちぎる水準に至っている匠衆(マイスターズ)基準の見解に、聖騎士がしみじみと頷いた。

 なお名目上邪教ではない方の神様であるアヌビス神は、上司が原因である教化の影響で重大な危機に陥らずに済んだことで安堵のため息を吐いていた。

 

トピア「BETAと生存闘争をしているさなかに破滅主義の人間に足を引っ張られるのは地球でのBETA戦争でもよくあることだったので、ちょっと思うところはありますけどね」

 

サティ≪そこはちょっと地球を笑えないわね≫

 

テクス≪多様性も場合によるでござるなあ≫

 

トピア「そう言えばラリーさんの話だと狂信者自身が誰かに倒されるまで召喚の儀式は実行されなかったそうですけど、何で能動的にやるようになったんでしょうね?」

 

 こちらから何かしなければ発生しないという前提で動いていたから、急に月の支配者(Moon Lord)召喚イベントが始まって急遽対処することになったのだ。何か原因があるはずだ。

 

ラリー≪あー、そりゃあ多分アレだ。元々は自分の命を生贄に捧げる踏ん切りが付かなかったんだろうが、交配所で幾らでも増やせると分かったら無駄にやる気が出ちまったんだろう≫

 

テクス≪なるほどでござるなあ……≫

 

 結局これも教化が原因という結論であった。もうやり過ごしたと安心していたアヌビス神は無言で冷や汗をかいていた。

 

トピア「ムーンロード召喚の原因も分かったところで、工場長、報告の続きをお願いします」

 

トリオ≪うむ、騎士の姉ちゃんが再設定した新しい防衛ラインが完成したのは既に報告した通りじゃな。建設ロボットの強化改修がひとまず終わったのも報告したの。統合建設システムとガンマ・ジェネラル、トキソピッド・ミラージュが完成したのも昨日操縦訓練をやったから知っとるじゃろ? 衛星観測と設備拡充の新人研修も昨日終わったの。んであと残っとるのは高出力核融合炉と、BETA着陸ユニット迎撃システムじゃな≫

 

サティ≪あれだけあった工場長のタスクが残り2つまで減ったのは感慨深いわね≫

 

テクス≪片付ける速度が尋常ではなかったでござるな≫

 

トリオ≪んで今現在必要なのは高出力核融合炉の方じゃけ、その開発をやっておる所じゃ。研究所の進捗からして、今晩までには終わるじゃろ。Tech規格のアタッチメントをつけるけえ、ミラージュにも問題無く搭載出来るぞい≫

 

スコア≪そういえばオプションが最終的にモジュールではなくTechブロックになったんだな?≫

 

トリオ≪その方が取り回しが良うなって機能密度を上げられることが判明したんでの≫

 

テクス≪こういうフレキシブルに付け替えるシステムもTechの十八番でござるよ≫

 

トリオ≪研究の方向性によっちゃG元素を使ったもっと効率のええ発電機も出来そうじゃったが、危険性が無視出来なくての≫

 

トピア「……それもしかしてムアコック・レヒテ機関では?」

 

スコア≪知っているのかトピアさん?≫

 

トピア「大雑把に言うと、原子爆弾に通じる核分裂をゆっくり反応させることで成立する原子炉のように、G弾を制御可能なレベルでゆっくり反応させたものがムアコック・レヒテ機関、略称ML機関です。どちらかというと重力制御を可能にするラザフォード(フィールド)の方がメインで、膨大な発電量は副産物なんですが、完全に暴走すると勿論爆発しますし、ちょっと制御バランスが崩れただけで付近の人間がミンチになるという、滅茶苦茶危険な代物です。正常な制御には量子コンピュータクラスの演算能力が必要らしいですよ」

 

テクス≪それはちょっと使いたくないでござるな≫

 

サティ≪量子コンピュータは入手したことはあるけど生産には至ってないのよね……≫

 

 FICSIT自体は製造技術を持っているはずなのだが、核融合炉同様に最後のマイルストーンまで到達してもレシピが解放されないのだ。過剰性能だからか、惑星開発では使うなということらしい。

 ちなみに量子コンピュータはクリスマスプレゼントで社員に配布されるので、使用自体が禁止というわけではないようだ。

 

トリオ≪じゃろうなあ。そもそも安定性が確保出来たとしても、燃料としてカフェ8/11を消費するのがどうにもならん難点じゃな。今現在は潤沢にあるが、BETAとハイヴからしか調達出来んからな≫

 

サティ≪BETAを介さないG元素の生成は今のところ目処が立ってないのよね≫

 

マイン≪そもそもそんな一か八かのものを使うほど困っておらんだろう≫

 

トピア「第7世代の戦術機では主機関に採用されてるらしいので研究を進めれば使える物になるでしょうし、レーザーをねじ曲げるラザフォード(フィールド)も魅力ですが、マインさんの言う通り今必要なものではないですね。高出力核融合炉で十分でしょう」

 

トリオ≪ちゅうわけでな、現在は核融合炉でカフェ6/9やイグナイトを使ったレーザー加熱の高効率化とプロキシマダークを使った力場封じ込めを採用する方向になっとる≫

 

スコア≪ここでもプロキシマダークか。Techの中間部品は思いのほか便利だな≫

 

テクス≪まあそれを使って新しいブロックを設計するのは言うほど簡単ではない……筈なのでござるが≫

 

 助手達や工場長があっさり実現してしまうので簡単なように見えてしまう。常識がバグっていた。

 

サティ≪工場長に常識を求めるのは不毛よ≫

 

トピア「そう言えば今更なんですけど、工場長の核融合炉に燃料補給ってしてませんよね? あれ何が燃料でどのくらいの期間無補給で動くんですか?」

 

スコア≪それは私も興味があるな≫

 

トリオ≪ふむ、そうじゃの。まず燃料は重水素じゃ。これは天然の水に含まれる重水や半重水を抽出して、そこから更に分解・精製して重水素99.9%にしておる≫

 

トピア「あ、ヘリウム3じゃないんですね」

 

トリオ≪ヘリウム3は存在量が少なすぎるからの≫

 

トピア「まあ木星まで採取しに行くなんてやってられませんからね」

 

トリオ≪何の話じゃ?≫

 

 トピアの知識はミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉のものなので大分偏っていた。

 しかしミノフスキー・イヨネスコ型は核融合の割に容積あたりの出力が低く、一年戦争時のMS搭載型反応炉の出力はMS-06で976kW、RX-78で1,380kWしかない。どちらも人間が携行出来るサイズの工場長謹製携帯核融合炉2つ分にも満たないのだ。

 そう考えるとビームライフルの攻撃力がBETAに通じるのか怪しく見えてくるが、これはエネルギーCAP技術で縮退寸前までエネルギーを貯め込んだミノフスキー粒子を持ち歩いているので発砲の際にMSのジェネレーターから使う電力は最後の一押しだけで済むという事情がある。実際ビームライフルやその弾倉にあたるEパックは母艦でエネルギーチャージする描写があるしそれを使い切ったら弾切れになるのだから、攻撃に使っているエネルギーの大半はこのエネルギーチャージによるものだ。本編ではあまり触れられないが、機動兵器に戦艦の攻撃力を持たせるとはそういう意味で、赤い彗星がその馬鹿げた攻撃力に冷や汗を流し、ジオン技術部でも再現に苦労する程度にはすごい技術なのだ。いや、エネルギーCAP無しの低出力メガ粒子砲を装備したMSはある程度早い段階で出てきたので、再現以前にそもそも母艦でチャージしたエネルギーを持ち歩かせるという発想が無かったのかもしれない。

 

トピア「いえ、連邦の技術も結構すごかったんだなと」

 

トリオ≪ふむ……? まあええわい、儂の携帯核融合炉はその重水素を150気圧で1リットル、27g封入しておる。こいつをヘリウムに核融合することで質量欠損で生み出せるエネルギー量は15.4TJ、750kW稼働させれば計算上8ヶ月近く使えることになるが、実際は冷却や演算にも電力を使っとるけえ、エネルギー変換効率はまあ半分、燃料切れまで4ヶ月といった所じゃの。今開発中の新型核融合炉はこの効率と秒間出力の向上、更に燃料の圧縮を目標にしておる≫

 

スコア≪なるほど1週間程度では燃料の補給も必要無いわけだな≫

 

トリオ≪付け加えると、ギガ・プラズマの核融合炉は仮想実体技術の応用で燃料補給が要らんようになっとるが、この用途じゃと仮想実体化に要求されるエネルギーが通常の質量実体化と大して変わらん上にリサイクルも効かんからの、その分占有体積あたりの出力が何桁も低いわけじゃ≫

 

テクス≪容積が限られる決戦兵器に搭載するなら永久稼働よりも瞬間出力の方が必要でござろうな。稼働期間も4ヶ月もあれば十分すぎるでござろうし≫

 

トリオ≪まあ燃料切れ防止のために仮想実体化燃料による低出力稼働で燃料消費を節約する機能も付けておいて損は無いがの。儂からの報告は以上じゃ≫

 

トピア「ありがとうございました。次はサティ姐さんどうぞ」

 

 淡々とドラゴンを狩りながらトピアが次の報告を促した。発言の合間に雷鳴とドラゴンの悲鳴が響いている。

 なお今回のオモチツキは助手がおらず一人でやっている。聖騎士はより人手が必要なラリーの方を手伝っているからだ。

 

サティ≪私は生産班共同でやってたもの以外は電力と資源の確保くらいだから、会議室で報告したもので終わりね。その仕事も今は建設ロボットに指示を出してやらせてるし、建設ロボットの数もどんどん増えてるから、今日中には十分な水準に達する筈よ。今は新型核融合炉の開発を手伝ってるわ。分子分析機(M.A.M.)で引き続きマナの利用法も探ってるけど、こっちは高濃度のマナを辛うじて検出出来る程度の精度だから、成果が出るかは微妙なところね≫

 

トピア「端的ですね。順調なようで何よりです。では次にマインさんどうぞ」

 

マイン≪ふむ、まずコアシステムの安定化が終わったのは昨日言った通りだ。コア:ニュークリアスの設置状況は衛星観測状況から分かっているだろう。攻勢のためのコアを打ち上げる資源については、現在既に20基分は貯まっている。更に月侵攻に備えて惑星間加速器のための資源プールも開始した。建設予定地は赤道上、コア003の近くだ≫

 

スコア≪惑星間加速器というと、コアを軌道周回させて偵察するために使おうとしていたものか≫

 

マイン≪まあ打ち出したとしてハイヴがひしめく月にどう着陸するかが問題だがな≫

 

テクス≪コア自体に防衛能力は無いでござるからなあ≫

 

トピア「いっそ宇宙戦艦でも建造して打ち上げますか?」

 

ラリー≪そいつはいいな!≫

 

トピア「大出力炉を搭載してハイヴを吹っ飛ばす荷電粒子砲とかぶっぱなしたいですね」

 

サティ≪それを誰がどうやって作るかが問題だけれどね≫

 

 サティの言葉に、トピア達は工場長に視線を向けた。困った時の工場長頼みだ。そもそも何度も宇宙遭難して自力で惑星を脱出しているのだから、有人宇宙船の製造技術は元々持っているはずなのだ。

 

トリオ≪今は発電機を作っとるけ、後にしてくれんかの?≫

 

テクス≪あ、これ時間があれば出来そうでござるな?≫

 

 余程のファンタジー案件でない限り大概のことは実現出来る、それが工場長クォリティであった。

 

マイン≪続けるぞ。設備のパワー・シャード対応は根本的な設計変更が必要になるから数日では無理だ。今後はともかく決戦には間に合わん。全土からの資源を戦力に注ぎ込む総力戦体制の構築は順調だ。ストレージロジスティクスの恩恵で大分簡単になっているが、何が起きるか分からんからな。リスク分散でテレポーターロジスティクスにもある程度対応させている。現在海中をコア043設置予定ポイントに向かってタレットの設置を続けており、明日の作戦決行までにハイヴ24だけでなく、ハイヴ10までの包囲は完成させる予定となっている。我からは以上だ≫

 

スコア≪総力戦体制とリスク分散か。それは重要だな≫

 

テクス≪どれだけ兵器を強くしても兵站が崩壊するとそこまででござるからな≫

 

トピア「ハイヴを(ゲート)まで含めて完全に包囲してしまえば地下侵攻が来ない限りおよそ無力化完了ですから、状況によっては攻略を後回しにする手もありますね」

 

マイン≪まあ状況次第だな≫

 

トピア「では次にテクスさんどうぞ」

 

テクス≪承知。Techシステム安定化、Techインベントリ改良、ストレージロジスティクス完成は既に報告した通りでござるな。Techインベントリサーバーの増強は先ほど完了したゆえ、助手二人は何とか寝かしつけたでござるよ≫

 

サティ≪あら、意外に素直に従ったのね?≫

 

テクス≪全然素直じゃなかったでござるよ。何故強く説教するほど頭を撫でようとするのでござるか?≫

 

トピア「可愛いからでは?」

 

カミール≪間違いないな≫

 

ファム≪ですねえ≫

 

モモ王女≪ですわね≫

 

サティ≪ということよ?≫

 

マイン≪諦めろ≫

 

テクス≪納得いかないでござるゥ……≫

 

 女性陣の妙に一致した見解にテクスは小さな手で頭を抱えた。

 テクスは間違いなく一人前の(マイスター)なのだが、見た目が4歳児なので発言内容がまともな説教でもほほえましく見えてしまうのだった。絶望的に威厳が足りない。

 

テクス≪まあそれで、今は新型核融合炉の開発を手伝ってるところでござる。それがしからは以上でござる≫

 

トピア「テクスさんありがとうございました。総じて生産班のタスクは順調に消化を終えつつあるということで、何よりですね」

 

トリオ≪まあ1週間もあればの≫

 

スコア≪……地球では27年掛かったらしいがな≫

 

 BETAの侵攻速度が地球の50倍でも地球の700倍以上の開発・生産・建設速度で軽々と乗り越える、それが匠衆(マイスターズ)クォリティである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。