149. 私達には真似出来ない命懸けの荒行の成果です
翌日、トピアがこの世界に来てから9日目。
反攻作戦開始前の最後の会議だ。十分な準備をしてきた自負からかそこに過剰な緊張は無いが、何故か
トピア「それでは作戦前の最後の会議を開始します。一応確認ですが、間に合ってない仕事はありますか? もしあったら作戦に影響が出るので報告して下さい」
一同から視線を集めながらトピアが会議の開始を宣言した。各自が昨日から今日までやっていた仕事は最後の追い込みなので、殆どの報告内容はこの確認だけで済む筈だ。
トピアが一同を見渡すと、意外なことに工場長が挙手したので研究に関与していない面々に動揺が走った。
トリオ「新型核融合炉用の武装の調整にもうちっと時間が掛かる。完成予定は今日の昼頃じゃの。あと宇宙戦艦は流石に手を着けとらんぞ」
トピア「……いや、予定していた新型核融合炉自体は出来たんですよね? そもそも昨日の時点の性能でも十分と言えば十分なんですが」
トリオ「おう、出来たぞい。性能はこうじゃ」
トリオ工場長が端末を操作すると、ディスプレイに新型核融合炉の現物映像と性能諸元が表示された。
■名称:Meisters 核融合炉Mk.2
・サイズ:3m×3m×3m
・発電量:全力運転で7.5GW、仮想実体化燃料駆動で75MW
・変換効率:97%
・燃料:液体重水素
・燃料タンク容量:1m3=168kg
・稼働日数:全力運転で107日、ただし必要出力に応じた省力稼働が可能な上、最低出力の仮想実体化燃料駆動中は燃料消費0
・備考:G元素カフェ1、カフェ6/9、13を少量使用
トピア「ななてんごぎがわっと……!? またこう……とんでもない性能に仕上がりましたね」
何と従来の携帯核融合炉に比べ全力運転出力が1万倍だ。従来品を200基搭載予定としていたミラージュ全体の発電量150MWと比べても50倍に達している。燃料消費無しのモードですらその半分を発揮出来るので、戦闘態勢に入るまでは燃料消費無しと見て良いだろう。
ちなみに従来品は1m3のTechブロックに8つ詰め込んだものを25ブロックで200個分としていたので、体積あたりの出力は150/25=6MW/m3。新型は7,500/27=278MW/m3になる。省体積性能でも46倍だ。
スコア「しかしこちらの方が発電所に据え付ける核融合炉のイメージに近いな。パワフルだ」
頷くスコアはやはり核融合炉の出力が750kWというのには満足していなかったようだ。
トリオ「まあ戦艦の動力にも使えるように設計したからの。本来これだけの出力を発揮するとこのサイズの炉心じゃあ耐えられんかったんじゃが、ナノマシンとカフェ1による構造強化のお陰でどうにかなったわい。あとはカフェ13による燃料加熱レーザーの効率化、カフェ6/9の応用による重水素の常温液化などの合わせ技じゃの。流石にマイナス250度を維持するのはしんどいからの」
サティ「カフェ1による構造強化は
ラリー「おお、やるな。流石は科学の申し子」
サイボーグのゼータ「フフフ、面目躍如トイッタトコロデスネ」
スチームパンカーのホープ「ナノマシンって色々便利でね、ミラージュの装甲強化は最後に実装したけど、それ以外の機能はシミュレーターで使った通りだよ!」
トピア「確かに昨日の午後の時点でもとんでもなくパワーアップしてましたからね。ナノマシンすごいですね」
流石は宇宙世紀の文明を灰にする最終兵器だとトピアは納得した。
ラリー「しかしそうか、武装の調整が出来てねえってのは、この大電力を活かせる武装がねえってことだな?」
そう、電力に余裕があるのは良いことだが、それを武装に使えないのなら宝の持ち腐れである。
テクス「その通りでござる。まあ当面は余ってるウェポンベイに詰め込んで、パワー・シャードの2.5倍オーバークロックで使うと良いでござるよ」
トピア「え、パワー・シャードに対応してるんですか?」
テクス「折角一からブロックを設計したのでござるから、対応しない理由が無いでござるよ。機動兵器に非対応でもござらんし」
言われてみれば、加速ドームは動き回るものには使えないとは聞いたが、パワー・シャードにその制限があるとは聞いていない。
サティ「消費電力の問題で、自動設置のタレットには組み込んでないけどね」
トリオ「つまり動作速度2.5倍、消費電力4.33倍になるわけじゃ。ただしレールガンとミサイルは連射が速くなるだけで威力は上がらんぞ」
トピア「うーん、これは有能」
スコア「助かるな」
ラリー「ミサイルやレールガンの威力は上がらなくても、弾が無限っていうTech特性で連射し放題になるな」
マイン「各自シミュレーターで使い勝手くらいは確認しておけよ」
ミラージュに組み込むTechブロックについて、電力ブロックが従来の25m3から27m3に増えてしまっているが、これは完全に内側に収まっているのでウェポンベイには干渉しない。搭載するだけ得ということだ。
しかし武装の数、威力、連射速度が上方修正されるため、持て余さないために使用感の確認くらいは必要だ。
トピア「了解しました。それで話が逸れましたけど、衛星観測情報は今どんな感じですか?」
トリオ「ふむ、ハイヴ24と10の包囲までは既に終わっとるが」
トピア「これルートを指示したら建設ロボットが自動でやったんですよね。ここまで来ましたか……」
マイン「まあ敢えて札を伏せている感はあるがな」
スコア「……ああ、未だに上陸を続けているのは不自然だな」
スコアが言う通り、BETA上陸阻止防衛線はまだ8箇所全部が稼働を続けている。
テクス「1日半も続くとは一体どういう物量でござるかね……?」
トリオ「大雑把なキルカウントではそろそろ1億を超えとるんじゃがの」
トピア「物量自体も脅威ですが、既に戦略的な動きを見せたBETAがここに来て撤退もせずに単調な突撃を続けていることが怪しい、ということですね?」
サティ「それはそうよね。ここに目を引きつけて何かの作戦が進行中か、或いはレーザーに突撃すること自体が何かのデータ取りなのか」
マイン「まず考えられるのが防衛線が完成する前に隙間を抜けていたBETAが本土に上陸してくることだな。その次には現在わずかに空いている探査網の隙間を通ろうとすることだが、この場合隙間エリアの海底の更に地下を通ることになる。どちらにしろ建設ロボットとミラージュを出せば後手でも迎撃が間に合う。他にも想定外の手を打ってくる可能性があるから監視は厳にする」
コアの探査が届いていない隙間はコア018とコア024の間、コア020とコア036の間、コア027とコア041の間、コア027とコア042の間の4箇所だ。しかし地上・海底を問わず防衛設備が設置してあるので下を潜らない限りは素通り出来ない。それに迎撃設備群にもコアほどの精度は無いにしろ多少の振動検知設備くらいは設置してある。隙間だと見なして突撃して来るなら一網打尽にするだけだ。
マイン「大まかな作戦は昨日説明した通りだ。コア043と044を設置したことでハイヴ24と10の内部構造は既に判明している。ハイヴ24は戦闘班四人が生身で突入して制圧しろ。その後、ハイヴ10は遠隔操縦トキソピッド・ミラージュとクアッドの混成部隊で正面から制圧する」
テクス「何度聞いてもシンプルな作戦でござるなあ」
ラリー「既にタレットで包囲出来てるのを考えると、わざわざ突入しなくてもタレットだけで制圧出来ないか?」
マイン「そのプラン1、
トピア「あ、実行済だったんですね」
スコア「集中砲火ということは、遂に出てきたのか?」
マイン「ああ、
建設ロボットのカメラが捉えた
トピア「間違いなく
似てはいるが、ぱっと見るだけでも原
どう聞いても茶化してはいないトピアの言葉に、遂にこの時が来たかと
ラリー「なるほど、誘い込んで罠に掛けるパターンか」
かつてのラリーも
スコア「ということは、プラン2の
マイン「無論だ。普通に避けられたな」
トピア「なら……いや、もう直接行った方が早いですね」
トピアは他のプランも思いついていたが、わざわざこれ以上手札を切る必要も無いだろうと思い突入に同意した。そもそもプラン1と2は、今までタレットで完全防衛出来ているのでその調子で自動で攻略出来たら儲けものという程度のプランなのだ。
ラリー「まあ何とかなるだろ」
サティ「生身でハイヴに突撃しろなんて改めて聞いても冗談みたいだけど、今現在の戦闘班の戦闘能力なら問題無く遂行出来そうなのよね」
トリオ「どっちも問題無く行けるじゃろな。別に両方ミラージュでもええんじゃが、ハイヴ24はフェイズがまだ1なせいで
サティとトリオ工場長がトピアの方に視線を送りながら作戦に同意すると、他の面子も頷いた。
従来のトキソピッドは歩行中の機体幅が240mに達するが、トキソピッド・ミラージュは胴体のサイズはそのままでありながらハイヴ攻略用途を見越して脚部を短縮し、バランサーの見直しも含めて最悪80m程度の洞窟も通行出来るようになっている。この80mというのは、
マイン「フン、出来れば同時に攻略制圧したいところだが、生身突入で人数を分けると万が一の時にカバー出来んからな。かと言って生産班は開発の仕事から手が離せん」
トピア「そうですね。作戦指示は以上で宜しいでしょうか?」
マイン「以上だ。戦闘班はシミュレーターでミラージュの新しいアセンブルとハイヴの構造を覚えた後出撃せよ。出撃は1時間後だ」
テクス「えっ……いやちょっと尋ねたいのでござるが、一人だけLv.255なのは何なのでござるか? Lv.97が上限だったのでは?」
サティ「ああ良かった、マインがスルーしたから疑問に思ってるのは私だけかと思ったわ」
ラリー「いや俺も気になってたんだがな」
テクス達が疑問に思っていたのは先ほどから視線が集中していたトピア……の斜め後ろ。「Lv.255 封印を守護する上級聖騎士」という頭上の表示が嫌でも目立っていた聖騎士のことだ。
トピア「私達には真似出来ない命懸けの荒行の成果です」
聖騎士「人々を救うためならばあの程度の試練は何でもないのである。ウッ!」
モモ王女「とても頼もしいですわ聖騎士様」
テクス「一体どんなおぞましい特訓をしたのでござるか……?」
トリオ「まあ味方が強い分には問題無いがの」
ここで「こいつは強すぎるから戦後のために始末しておこう」などと勝ってもいないうちから余計なことを考えて足を引っ張り結局負けるのがマブラヴ地球人の愚かなところだが、今のところそのような気配が無いことにトピアは満足した。
トピア「では本日の会議を終了します。今日も一日ご安全に!」
トピアの号令に応じて