【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 [2023/10/22]ボールライトニングの有効半径を実測してみたら意外と広かったので修正しました。(4、5m→10mほど)
 [2025/11/03]空回りアセンの説明が分かりづらかったので書き直しました。


015. 円環魔導士の装(フォーム・サーキュラー・ソーサラー)Mk.2

 翻ってこちらは単身突撃を敢行したトピア。彼女は漸く突撃(デストロイヤー)級や要塞(フォート)級などの比較的数が少ない大物を一通り掃討し終わったところであった。

 ただしここからが問題である。何故かと言えば居合斬りの攻撃力は優秀であるし双撃決闘者の装(フォーム・デュアル・デュエリスト)Mk.2ならある程度の連発も可能だが、複数に絶対に同時攻撃出来ない完全な単体攻撃であるため、数で押してくる連中に対しては無力だったからだ。この特性により、大物を狙っていたのに小物に攻撃を吸われるという事故がしばしば発生していた。攻撃力に特化した決戦仕様ゆえの弊害である。

 また、武器には耐久力の限界があり、剣であれ魔法の杖であれ、あまりにも敵が多いとずっと戦い続けることが出来ないという問題もあった。普通は武器が壊れる前に本人が動けなくなるなどという常識は各種ポーションを量産する理想郷の建設者(クラフトピアン)の前では無力である。

 だが、これは理想郷の建設者(クラフトピアン)にとっては既に乗り越えた問題でもあった。

 

トピア「蒸着!」

 

 キーワードに伴ってトピアの体から光が溢れ、再び装備が一新された。

 

 左手に不安定な 秘宝を抱く 悉く欲する マッド・ エンチャントテーブル。

 右手に不安定な 空回りな マッド・ ファーヴニルの 鉄の魔触媒。

 頭部に不安定な マッド・ ファーヴニルの 早食いの クラシカルウィッチハット緑。

 服は不安定な 空回りな マッド・ ファーヴニルの エレメンタルローブ緑。

 背中に不安定な 万物流転の 焼尽の ファーヴニルの ジェットパック。

 補助ツールに不安定な 空回りな ファーヴニルの 早食いの 灰の戦闘ツール。

 アクセサリ1に不安定な 昂り爆ぜる マッド・ ファーヴニルの グリフォンテイマースカーフ。

 アクセサリ2に不安定な 伝説の マッド・ ファーヴニルの グリフォンテイマースカーフ。

 

トピア「円環魔導士の装(フォーム・サーキュラー・ソーサラー)Mk.2!」

 

 名乗りとともに半径10mほどの球状のライトニング・フィールドが展開され、自動迎撃の雷が周囲の小型種を片っ端から黒焦げにしていく。

 

 円環魔導士の装(フォーム・サーキュラー・ソーサラー)Mk.2。全身の装備にレジェンダリ13、エピック17、レア2で合計32のフルエンチャントを付与し、無補給で延々魔法を使い続けることを目的とした装備である。

 この装備には他と比べて明らかにおかしな点がある。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 とある理想郷の建設者(クラフトピアン)が気づいたのだ。「武器の耐久限界が問題ならば()()()()()()()()を使えば良い」と。

 そこで着目されたのが、設置の際に一時的に武器・道具スロットに入る設備品である。設置された設備品そのものには耐久値があるが、設備品を設置する目安となるブループリント・ホログラフにはそのようなものは無い。そうした発想で設備品にエンチャントを施してフルエンチャント装備の一部に組み込むことが、結論から言って可能だった。ただ設備品を装備すると目の前にブループリントが出現する為、視界の阻害という点でサイズの大きい建材は使用に適していなかった。また、その素材によってつけられるエンチャントの種類が変わる為、最適として選ばれたのがよりによって『札束』だった。クラフトピア世界において札束とは銀行預金可能額を増やすための設備品である。

 そうして編み出されたのが杖の代わりに札束のブループリントを構えて札束より出づる魔法の力で無限の敵を張り倒す札束魔導士という冒涜的スタイルであり、トピアの現在の装備はその発展形であった。エンチャントテーブルとはテーブルの上に本が載った設備。つまりはドラゴンを瞬殺したアレである。

 札束よりも後に実装されたエンチャントテーブルは札束と同じ設備カテゴリであり、素材にエレメンタルダストを含む為に マッド・ という札束にはつけられない強力なエピック級エンチャントを継承することが可能だったのだ。トピアの目の前にはエンチャントテーブルのブループリントが浮かんでおり、札束同様に視界を遮らない程度の手頃な大きさであることも良かった。

 

 この装備セットにはもう一つ特徴がある。不安定な 空回りな という尖ったエンチャントが大量についていることだ。

 不安定な は魔法クリティカルダメージ+200%、魔法クリティカル率+30%と引き換えに魔法攻撃力(M A T K)-100魔法攻撃力(M A T K)-200%

 空回りな はスキルクールダウン25%削減、マナ消費25%削減、マナ回復+20%と引き換えに攻撃力(A T K)-40%魔法攻撃力(M A T K)-40%

 どちらも絶大なプラス効果を台無しにする深刻なマイナス効果が付随した、単体では使いようのないエンチャントである。かと言って普通に他のエンチャントでマイナス分を相殺しようとするとそれでエンチャント枠が埋まってプラスの効果が大きく薄まってしまう。だが落ち着いて考えてみてほしい。()()()理想郷の建設者(クラフトピアン)()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 まず考えつくのは、基礎魔法攻撃力(M A T K)がマイナスならば魔法攻撃力(M A T K)割合補正のマイナスと掛け算して結果がプラスになるのでは? というところだ。だがこれは結論としては不可能だった。何故なら魔法攻撃力(M A T K)基礎値の下限値は0となっており、マイナスにならなかったからだ。結局最終的な基礎魔法攻撃力(M A T K)は0になってしまう。

 ではどうするのかと言えば、ここで他のパラメータを参照するエンチャントを使う。「マナのxx%魔法攻撃力(M A T K)増加」といった類いのものだ。これには魔法攻撃力(M A T K)割合補正がかからず、基礎魔法攻撃力(M A T K)を別枠でプラスすることが出来るのだ。どうしてそうなっているのかと言えば、他から参照される基礎値と別枠にしておかないと「マナのxx%魔法攻撃力(M A T K)増加」と「魔法攻撃力(M A T K)のxx%マナ増加」のような効果が同時に掛かった場合に循環参照が生じてしまうためだ。

 これらを併せて、

1.まず本人と装備とエンチャントの魔法攻撃力(M A T K)加算・減算の合計で基礎魔法攻撃力(M A T K)を0まで下げる。こうすることで魔法攻撃力(M A T K)割合減の効果が0になる

2.これと別にマナ参照や防御力(DEF)参照で基礎魔法攻撃力(M A T K)を確保する

3.これに不安定な 8つ分の魔法クリティカル率+240%、魔法クリティカルダメージ+1600%をかけることで絶大な威力を発揮する。更に空回りな×3によりスキルクールダウン-75%もついているのでエンチャント効果上限の-70%に届いており、理論値最速での魔法連射が可能

 という原理で動いているのがこの装備セットである。不安定な エンチャント自体に魔法攻撃力(M A T K)-100がついていることと、設備には魔法攻撃力(M A T K)をプラスする効果などあるわけがないこともこれには都合が良かった。

 更にここで生きてくるのが「マナ+450」の効果がある 秘宝を抱く 、「マナの70%魔法攻撃力(M A T K)増加」の効果がある尽く欲する 、「マナの10%魔法攻撃力(M A T K)増加」の効果があるマッド・ ×6だ。一見 秘宝を抱く尽く欲する をもっと沢山つけた方が良いのではないかと思えるが、これらは極めて強力な代わりに全身でそれぞれ1つ分しか効果を発揮しない制限のある重複不可エンチャントである。付け加えて、成長の石板でパラメータをマナに偏らせることで更にマナ参照の効果が上がる。

 運用においては普通の魔法攻撃力(M A T K)上昇バフは基礎魔法攻撃力(M A T K)の方にかかるので使えないが、最も強力なマナサイフォンのスキルダメージ3倍はそのまま使えるので、むしろバフ管理が楽になっている。

 こうしたマイナス効果のでかいエンチャントを積極的に活用するアセンブルを空回りアセン、もしくは逆積みアセンと呼ぶ。不安定アセンと呼ばれることもあるが、物理攻撃用だと 不安定な エンチャントが むらのあるむらっけのある に変更となる為、不安定アセンは魔法攻撃用に限定した呼称となる。

 この方式の構成を思いついたのも札束魔導士と同一人物だというのだから上位の理想郷の建設者(クラフトピアン)はまったく恐ろしいものである。

 一応エンチャントテーブルの活用を思いついて実用化したのはトピアであるが、これは既に高位エンチャント用の工房を持っていた為に必要な素材を集めて作り上げるのが他より早かっただけで、そのうち誰かが発見したであろう。

 

 つまり円環魔導士とは前者の無限の武器耐久力と後者の空回りアセンを併せて無限ループ、無尽蔵の意味に転じたものだ。ちなみにMk.1が札束装備版である。

 

 トピアが地面に手をつけて発動するのはお馴染みのボールライトニング。これはボス周回に使われることが多いが、実は6目標を同時に攻撃出来るので、ボスと同時に周囲の雑魚を殲滅出来るという意味でも便利であった。これの威力が1HITあたり13万ダメージ。エネルギー換算で1.30MJである。小型BETAは突撃砲の36mm砲弾で簡単に倒せるが、これを若干上回るアメリカンアーマメントM4機関砲の37mm弾1発の運動エネルギーが113kJであり、つまりボールライトニングは10倍以上のオーバーキルなので球状のライトニングフィールドの範囲に入った瞬間にBETA小型種は黒焦げ確定である。BETAに比べてトピアが小さい為に開けた平地では7体以上が同時に殺到するのも不可能だった。

 

 無尽蔵の雷がBETAの津波を掻き分けて前へ進む。

 それはまるで海を割ったようであった。




 今回何と台詞が二言しかありません。話し相手がいないからね!
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