ハイヴ内の戦闘内容に戻ると、落着までの5秒が経過する前にプラスタニウムの巨大な壁が赤熱し、レーザー貫通の予兆を伝えていた。なので当然スコアはその上に次の壁を置いた。複数の壁を使えば5秒防ぎきれることは建設ロボットを使って検証済である。一つの作戦プランを断念したからと言って得られた知見を使わない手は無い。
そうしているうちに5秒が経過し、プラスタニウムの巨大な壁が主縦坑の底に到達。トピア達はロケットパックで着地の衝撃を緩和し、周囲に残った光線級の掃討を開始した。防護壁の設置役をつつがなく終えたスコアもパルスボウに切り替えて攻撃を開始しようとした……のだが、いつもの癖でちらっとトピアの方を見た瞬間に目を見開き、咄嗟の判断でトピアを突き飛ばした。突然のことにトピアが振り向くと、トピアを突き飛ばしたスコアの右腕を上から降ってきた光線が切断した。
スコア「がっ……!!」
レーザー攻撃を受けたスコアが短い悲鳴を上げて倒れ伏す。こうしていなければトピアが頭を吹き飛ばされていたので後悔は無いが、それはそれとしてダメージは深刻だ。
不幸中の幸いで、断面が焦げているため出血量はそれほどでもない。
トピア「スコアさん!?」
聖騎士「スコア殿!?」
ラリー「上からだと!?」
マイン≪伏兵か!≫
トピアの思考が一瞬止まるが、脳内師匠に叱咤されてすぐさま再起動する。既に次の予備照射が始まっていたため、ロケットパックを起動、手近な戦車級を殴りつけてその下に滑り込むと予備照射が解除された。流石にフレンドリーファイアまでは解禁されていないようだ。
見上げてみれば未制圧の横坑から複数の光線級が顔を出していた。地上まで繋がっていない一番浅いところの小さな横坑だ。もし気付いていても一旦主縦坑に出ないと制圧しに行けないという実にいやらしい位置だ。主縦坑の底に光線級をこれでもかと密集させたのもそちらに注意を向けるためだったのだろう。上の確認は降下前、BETAが顔を出していないから今なら挟まれずに済むという程度にしかしておらず、警戒が疎かになっていたのだ。自動迎撃を行うブレード・ランナーズ改の携帯レーザー防御モジュールは光線属種を最優先ターゲットにしているが、光線属種の中でも射線が通っていて近い方、つまり主縦坑の底にいる方を優先したのでターゲットにするのが遅れてしまったのだ。
この機会を待っていたのだろう、主縦坑の底の周囲の穴から大量のBETAが湧き出してきた。見たところスコアは気絶している。命中部位は腕だが、ライフが0で瀕死の状態なのだろう。いや逆か。ライフが0になったから欠損レベルの怪我をするようになったのだ。どちらにしろ自力での回復は無理だ。魔法の鏡は一人用なので連れ帰ることも出来ない。
周囲のBETAを攻撃しながら状況を把握した結果、トピアは聖騎士を頼った。
トピア「聖騎士さん、救護を!」
マイン≪盾を使え!≫
聖騎士「承知! 失礼する!」
聖騎士はスコアの胴体を跨ぎ、頭上に聖十字の盾を構えた。続いて上から降り注ぐレーザーを聖十字の盾が遮断、反射する。光線級が発するレーザーの波長はこれも建設ロボットが測定済だ。それに合わせて戦闘班の防具は誘電体多層膜でコーティングされている。9割以上は反射出来ているはずだ。更に言えば防具破損デバフに耐性がある聖十字の盾や聖十字のお守りを身につけているため、防具そのものはレーザーでも絶対に壊れない。スコアが身につけている上半身防具であるアイヴィーのハーネスは腕が露出しているのでレーザーがそのまま通ってしまったのだ。しかし防具自体が壊れなくても熱を完全遮断するわけではなく、冷却装置も付いていない。つまりもの凄く熱いのでこれによりある程度ダメージが通る。集中砲火なら尚更だ。聖騎士は14万を超える膨大なライフでこれに耐えつつ集中し、ハイリザレクションを発動した。
聖騎士「ぬううッ……ハイリザレクションッ!」
緑色の光が広がり、瀕死のスコアだけでなく全員のライフを100%回復する。切断されたスコアの腕はどうなったのかと言えば、何と切断部に魔法の光が凝集して新しい腕になった。危険すぎるので欠損回復の検証は出来なかったが、瀕死から復活させるくらいの魔法なのだからこのくらいは出来るということだろう。ここで検証出来たのはある意味幸運であった。これも魔法の効果なのか、瀕死状態を脱したスコアは即座に意識を回復した。
その間にトピアとラリーが周囲の光線級を優先して殲滅し、近くに光線級がいなくなったことで四人分のブレード・ランナーズ改が上層の光線級をターゲットに捉えて平らげた。上層はゼニスやフライングドラゴンの射程外で、かといって蒸着でラストプリズム装備に切り替えて手動で遠距離の小さい標的を狙うよりはブレード・ランナーズ改に標的を認識させて自動攻撃させた方が早いと判断したのだ。
また、主縦坑の手前で止まっていたタレットの設置をマインの指示により主縦坑壁面にも展開し始めたため、上から容易に攻撃出来ない環境が出来上がりつつあった。
トピア「よし、突入します! スコアさんは動けますか!?」
ラリー「おう!」
聖騎士「承知!」
スコア「む、大丈夫だ……すまない」
スコアは蘇生したてで意識の乱れはありそうだが、とりあえず移動は問題無さそうだった。新しく生えた右手を握ったり開いたりして調子を確認している。
トピア「いえ、お陰で助かりました」
トピアはスコアに突き飛ばされた結果助かったのを理解していたので、素直に礼を述べた。流石の理想郷の建設者も頭を吹き飛ばされたら瀕死で済んだとは思えない。レガシーならリスポーンも可能だが、ここはよりによって世界の接続を歪めているBETAの巣なので復活出来る保証も無い。
残存BETAに追われながら頭脳級が待ち構える中枢へと突撃したトピア達は即座に一斉攻撃を開始した。
トピア「ご機嫌よう、そしてご機嫌よう!」
ご機嫌ようは出会い頭からお別れまで使える便利なアイサツである。勿論カチコミにも使えることは言うまでもなく、どこかの世界の幼女隊長も使いこなしておられる。なおトピアは英会話は苦手だが、今回のものは戦うアメリカ大統領特有のアイサツなのでよく覚えていた。その用法からしてもやはりアイサツとはカチコミである。
パルスボウも含め全員の武器が敵を貫通するので、一見設置物に見えるがBETAの一種である頭脳級を貫通してその後ろに伏せられていた光線級ももろともに撃ち抜いた。頭脳級は当然数秒で沈黙した。
外敵駆除
頭脳級を1体倒す
Clear
Get!
EXP +10,000
レベル上限解放 +5
中枢を破壊されたBETAはハイヴから逃走を開始したが、周囲はタレットで完全包囲済なので全滅は時間の問題だった。脱出ルートがあるとすれば地下を掘り進んだ先だが、今回はそのような動きも無かった。
アイサツ作戦完遂である。
トピア「やはり油断は禁物でしたね。危ないところでした」
ハイヴ24の終焉を見届けたトピア達は次の作戦のために魔法の鏡で一旦コアベースに帰還した。