【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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152. プラン4 勝手知ったる他人のハイヴ作戦(オペレーション・マイホーム)開始せよ

 次はフェイズ3になるハイヴ10の攻略だが、その前にトピア達は一旦拠点に戻って情報を共有することにした。

 戦闘指揮官であるマインはコア001におり、他の生産班もその近くの格納庫でトキソピッド・ミラージュの調整を進めていたので、戦闘班四人とスコアの身を案じたファムがそこに集合した。

 

トピア「……というわけで攻略は完遂しましたが、酷い目に遭いましたね。主にスコアさんが」

 

マイン「ふむ、やはり奴らは囮戦術を多用するようだな。まるで人間のような思考だ」

 

ファム「それで、お体は大丈夫なんですか!?」

 

スコア「ああ、ハイリザレクションLv.6はすごいな。まさに生き返ったようだ」

 

 スコアが両手を開いて無事な様子を見せると、漸くファムは少し落ち着いたようだった。魔法で生えてきた腕の付け根にも傷跡などは残っていない。

 

ラリー「今回初めて実際の効果が分かった訳だが、腕まで生えてきたのはすごかったな。まあいっぺん死んで検証するわけにも行かなかったからぶっつけ本番なのは仕方ねえ」

 

聖騎士「誘電体多層膜というのもしっかり機能してくれたぞ」

 

マイン「あとはフェイズ1ハイヴ程度なら問題無く通信が通るというのが今回判明したことか」

 

スコア「確かそのために通信機能も強化したんだよな?」

 

トピア「とはいえどんな妨害があるか分かりませんからね」

 

マイン「まあいい、ハイヴ10には予定通りの作戦プラン4で突入しろ。現状のトキソピッド・ミラージュならばレーザーの集中砲火を受けたところで問題は無い」

 

トピア「でしょうね。危ない橋を渡るのはここまでです」

 

 トピアはトキソピッド・ミラージュの現状の性能を思い起こしてすんなり頷いたが、それはそれとして最後まで一筋縄ではいかなそうだと判断し、保険の札を用意しておくために聖騎士に目配せした。聖騎士はただ静かに頷いた。

 戦闘班はシミュレーターでハイヴ10の構造を復習した後に再出撃した。一旦戻ってくる暇が無い場合に備えて一応ハイヴ10の方も前回一緒に予習していたのだ。

 

 

 

 1時間後、トピア達戦闘班の機体はハイヴ10の東西南北それぞれに布陣していた。ハイヴ10の太い横坑(ドリフト)の直径がおよそ80mなのでトキソピッド・ミラージュが戦闘しながら通行出来るギリギリであり、固まって突入しても互いに邪魔になるので、別ルートで突入して敵戦力を互いに引きつける作戦だ。戦闘班各員のトキソピッド・ミラージュの他に後ろ側を守る随伴トキソピッド・ミラージュと、その間に位置して修復を担当するクアッドの3機編成だ。合計12機編成ということになる。1つのコア:ニュークリアスの指揮可能数は最大24機なので、全部コア044の指揮下に入れてもまだまだ余裕だ。

 コア044から探査したフェイズ3ハイヴ10の構造は以下のようになっている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ハイヴ10は主縦坑(メインシャフト)の横の部屋ではなくそこから迂回した主縦坑(メインシャフト)直下の部屋に頭脳(ブレイン)級が鎮座する構造で、ヴォールク連隊が突入した当時のフェイズ3ミンスクハイヴに近い。ただし深さや影響半径の規模的にはフェイズ4に近くなっている。直径80mサイズの横坑(ドリフト)頭脳(ブレイン)級の鎮座する大広間(メインホール)から東西に出ており、特に東側は主縦坑(メインシャフト)を経由せずに地上に出られることが判明している。ここから一番太い横坑(ドリフト)を辿った先が中心から8km先の(ゲート)になる。トキソピッド・ミラージュでそこからまっすぐ侵攻していくのが今回の作戦のメインだ。つまりマップが分かった上での正面突撃であり、他の3部隊は陽動だ。まあより引きつけるために西・南・北の部隊も主縦坑(メインシャフト)直前まで突撃して良しとなっているが。なお頭脳(ブレイン)級破壊後は陽動部隊がそのまま掃討部隊になる流れなので、攻略を失敗した場合以外にはどう転んでも無駄は無い。

 ちなみに何故こんな都合の良い通路があるのかと言えば、内部で生産した要塞(フォート)級を外に出すためだろう。むしろフェイズ3未満で要塞(フォート)級をどうやって外に出すのかが疑問である。そもそもフェイズが3以上に進むまで生産しないのだろうか? ともあれ、そのための通路を都合良く使うために原型から大幅にリサイズして80m通路を通行可能に設計したのがトキソピッド・ミラージュである以上、遠慮無く使わせてもらうべきである。

 

スコア≪北側突入準備よし≫

 

ラリー≪西側突入準備OKだぜ≫

 

聖騎士≪同じく南側突入準備よろし≫

 

トピア「東側突入準備ヨシッ!」

 

マイン≪宜しい、プラン4 勝手知ったる他人のハイヴ作戦(オペレーション・マイホーム)開始せよ≫

 

トピア「了解、トキソピッド・ミラージュ、戦闘モード起動!」

 

ラリー&スコア&聖騎士≪起動!≫

 

 トピアは操縦席のツインスティックの両外側に据え付けられたチェンジレバーを掴み、レバーの頭にあるボタンを押しながら左右同時に奥側へと回した。すると7.5GW核融合炉が低出力モードから全力運転モードに切り替わって低く唸り、原型から大幅に増設されて8つになった頭部光学センサーの色を黄色から青に変えた。別にトピアが注文したわけではないのだが、このモード変更レバーがどういうわけかマイトガインの起動レバーに似ているのでトピアも気に入っている。勿論平和の青信号が灯る所も含めてだ。いやマイトガインの青信号は緑色だった気がするが、細かいことはいいのだ。

 戦闘モードに切り替わったトキソピッド・ミラージュは畳んでいた脚で地面を掴んで塹壕から起き上がり、空色の機体を晒してハイヴ10の地表構造物(モニュメント)を睨んだ。トキソピッド・ミラージュのこの状態での全高は65m。トキソピッド・ミラージュの胴体は長さ50m、幅40m、上下厚みが30mと原型のトキソピッドと同じ。半径80mの通路なら上下に25mずつ空く計算で、胴体の上端は地面から55mになるが、膝関節の方が胴体よりも上に出て65mに達する。

 ミラージュが機体を起こしたのはハイヴ10を包囲するタレットの列の外側だが、大きい分だけ当然タレットよりも大分高い位置になる。つまり地平線に隠れにくいのでレーザーが飛んでくる。ミラージュはそれを()()()()()()()前へと進む。光線(レーザー)級が放つ光線は3秒の予備照射を終え本照射に至るが、ミラージュは当然のようにそれを反射した。戦闘班の防具にすら使用していた誘電体多層膜をミラージュに使っていないわけがない。当然冷却も万全である。しかもただ反射するだけではない。反射角を調節して敵の光線でBETAをなぎ払ったのだ。これがナノマシン技術との融合により生まれた可変誘電体多層膜である。

 当初この機能は相手のレーザー波長に応じてそれを最大効率で反射する誘電体多層膜を構成するのが目的であった。そのためにナノマシンによる制御を導入したのだが、サイボーグ(Cyborg)が持ち込んだこのナノマシンが思った以上に高性能で、自動研究所と分子分析機(M.A.M.)で検討を繰り返した結果、レーザーを反射する角度まで制御出来るようになってしまったのだ。なおミラージュの機体色が空色に見えるのはBETAが使用するレーザーと同じ青波長の光を強く反射しているためだ。

 ミラージュは敵の攻撃を反射しつつ自分の搭載兵装を起動した。100を超える数のミラー端末が上下の装甲から分離して空中に躍り出ると位置と角度を調整。それが終わると胴体の上下から光線を発射、ミラー端末で反射してBETAを撃ち貫いた。レーザータレットMk.3 Type Gだ。トキソピッド・ミラージュは内装オプションからTechブロックに対応しているが、胴体上下には同じくTechブロックに対応した合計2,000m2のウェポンベイがある。これには4m2のレーザータレットMk.3 Type G、5m2の巡航ミサイルタレットMk.1、4m2の放電タレットMk.1、25m2のクアッドレールガンを必要数組み込んでいるが、発電量増強に伴って武装搭載量が格段に増している。

 

・昨日のトキソピッド・ミラージュ(150MW)の搭載武装:レーザータレット25基96MW、ミサイルタレット64基0MW、放電タレット8基80MW、クアッドレールガン1基40MW、合計消費電力216MW、兵装面積477m2

 

・現在のトキソピッド・ミラージュ(7,500MW)の搭載武装:2.5倍駆動レーザータレット128基2,128MW、2.5倍駆動ミサイルタレット64基64MW、2.5倍駆動放電タレット32基1,385MW、2.5倍駆動クアッドレールガン32基5,542MW、合計消費電力9,120GW、兵装面積1,766m2

 

 どちらも合計消費電力が発電量をオーバーしているが、放電のように他との同時使用が不可能な武器というものもあり、全部同時に使うことは無いので問題無い。ミサイルタレットが多少の電力を食うようになっているのは、どうもパワー・シャードと仮想実体化の相性が悪く省電力性能が想定以上に悪化してしまったためである。とはいえそれでも1基1MW程度なので安いものだ。ウェポンベイの面積がまだ余っているのにこれ以上搭載しないのは、実際にはレイアウト上の制限があるほか、狭い洞窟内でのミラー展開数にも限界があるからだ。

 

 新型核融合炉がもたらす膨大な発電量と128基の反射レーザーを以てしてミラージュは目に付く限りのBETAを消し炭に変えていった。まるで王の行進を妨げるものなど無いかのように。しかも手札を無駄に見せないためにこれでもレーザー以外の武装を全く使っていないのだ。

 戦闘班が操作するミラージュは4方面でそれぞれ(ゲート)周辺のBETAを殲滅。殲滅が終わったと見るやクアッドと殿担当のミラージュをインベントリから呼び出し、それぞれ縦一列で(ゲート)へ侵入していった。

 

 ハイヴ侵入後も戦闘の模様は大して変わらない。広い通路を選んで突き進み、立ちはだかるBETAを片っ端から消し炭にし、やや狭い部分は指向性爆薬弾頭ミサイルで爆破して通行可能にし、コアからの地下探査で既に判明している偽装縦坑(スリーパー・シャフト)偽装横坑(スリーパー・ドリフト)を見つけては薄い蓋ごとやはり指向性爆薬弾頭ミサイルで攻撃して伏兵を消し炭にする。ハイヴ攻略に最適化して作られた機械の蜘蛛達は、もはや自らがこの巣の主であるかのように平然と前進を続けた。あと指向性爆薬弾頭が閉所で思った以上に便利だった。普通は坑道を爆破して広げるにはかなりの慎重さが求められるのだが、仮に崩落した所でインベントリに仕舞ってしまえば良いので全く気にしていなかった。

 東以外の3方面も大量のBETAが押し寄せてはいるが、やはり東が最も突破されると不味いからか東に一番多くのBETAが集まっていたようだった。そしてその全てが例外なく、ミラージュの歩みを碌に遅らせることすら出来ずに活動を停止した。ミラージュの方もレーザーを反射する際に1割未満の熱量は受けているので全く損傷していないわけではないが、冷却が万全な上にクアッドがついてきているので割合回復で即座に回復してしまう。殿を任せたAIミラージュも難しい動作が必要無いせいかしっかり役割を果たしている。

 

 そんなことを続けているうちに8kmの行程を消化し、トピア機は大広間(メインホール)へと到達した。

 目の前にはそれなりに大きく育った頭脳(ブレイン)級。全高40mくらいか。光線(レーザー)級など他のBETAがいないということは、他の方面から突入した面々が主縦坑(メインシャフト)あたりで引きつけてくれているのだろう。

 

トピア「我が城です!!(あいさつ)」

 

 ニューヨークの王(King Of New york)(自称)特有のアイサツとともに広々とした空間にエントリーしたトピア隊のトキソピッド・ミラージュは左右に分かれ、胴体の上下にそれぞれ128基全てのミラー端末を展開……しようとしたところで動作を停止し、トピアの視界がブラックアウトした。目の前の全天周囲モニターには通信障害のエラー表示。トピアの現在位置はコア044の遠隔操縦席だ。遠隔操作でハイヴ攻略が可能かを検証するために今回は敢えてこの方式で作戦に参加していたのだ。結論として、やはりBETAはそれなりに強力な通信妨害が可能なようだ。レーザー通信をするだけあって、電磁波を情報伝達に利用することをそれなりに理解していると見ていい。

 

 

 

 トピアが観測出来なくなったハイヴの方では、好機とばかりにトキソピッド・ミラージュを鹵獲すべく大広間(メインホール)の外からBETA達が群がってきていた。要撃(グラップラー)級が8つの脚にしがみつき、戦車(タンク)級が機体の全身にまとわりつく。戦車(タンク)級が噛みついても歯形すら付かない頑強な装甲も、レーザーを任意の方向に反射する機構も、周囲のBETAを殲滅するほどの火力を実現する主機関も、突撃(デストロイヤー)級を上回る機動力も、トキソピッド・ミラージュの全てがBETAにとって興味深いものだろう。折角最奥まで誘い込んで無傷の完品が手に入ったのだから解析しない手は無い。が、これで手に入ったと思うのは気が早いというものだ。

 

 

 

スコア≪トピアさん、そっちも停まったのか?≫

 

 ブラックアウトした操縦席ではパイロットの戦闘班が互いの状況を確認していた。しかしその様子は焦燥や悲壮感と言ったものとは無縁だ。

 

トピア「ええ、まあやっぱりと言ったところですかね。むしろ早めに分かって良かったです」

 

聖騎士≪果たして()()()()()であるかな?≫

 

 

 

 2機のミラージュの胴体上下から橙色の光線が迸り、それをミラー端末が反射してまとわりつくBETAを瞬時に焼き払った。操作・司令の信号が途絶した2機のミラージュは音信不通となるや数回のリトライの後にコア044の制御から離れ、オフラインモード設定で独自行動を開始したのだ。()()()()()()は「BETAの殲滅」、そして目の前の頭脳(ブレイン)級もBETAだ。()()()()()()()()()()

 ミラージュ達はそのままレーザーの斉射を続けた。周囲のBETAに多少分散するとは言え、元が合計2億4330万DPSの光の嵐だ。当然頭脳(ブレイン)級は1秒ももたずに沈黙し、光を失った。それとほぼ同時に遠隔操作も回復し、ミラージュ達はコア044の指揮下に戻った。

 なお東西南北のうち西側のラリーは直接操作だったので、他の面々が大広間(メインホール)付近に辿り着けないうちに操作不能になった場合はラリー機が突撃して仕留める予定であった。

 勝手知ったる他人のハイヴ作戦(オペレーション・マイホーム)、完遂である。

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